米国ハイテク株暴落--その背景
●4-6月期の決算で大手ハイテク企業がこぞって業績悪化 3ヶ月--これが、米国のハイテク企業の経営者の時間の物差しだ。米国では、四半期ごとの業績で、企業と経営者が評価され、株価が上下する。もし業績が悪ければ、株価はあっという間に下落する。経営者は3ヶ月ごとにこの上ないスリルを味わっているわけだ。 そして、7月は、多くの企業が4-6月期(企業によって四半期の分け方などは異なる)の決算を発表する時期であり、その影響で、先週はハイテク株がのきなみハデに下落するという事態になった。 なにが下落の原因だったかというと、先々週の米DECに続き、米Motorola社や米Netscape Communications社、米Hewlett-Packard社、米Creative Technology社などハイテクリーディングカンパニがこぞって極めて悪い業績を発表または予測されたからだ。各ニュースサイトの記事を総合すると、これらの発表や予測で、ハイテク産業全体の先行きへの不安が広まり、MicrosoftやIBMといった他の企業の株も下がってしまったようだ。 米国では株価がすべてなので、そうなると業績の悪化した経営者は不採算部門を切り離すとかレイオフするとか、幹部の首をすげ替えるとか、ともかく何か対策を講じなければならない。というわけで、このところ不景気なニュースが多い。DECは大量レイオフとナンバー2と言われる幹部の辞職を発表、HPは不採算部門であるHDD部門の切り捨てを決定、Creative Technologyはプライス競争に陥っているCD-ROMドライブ市場からの撤退を宣言した。米企業でいきなり経営方針が変わってしまったり、製品計画が中止されたりするのは、こういう時が多い。 もっとも、これは、儀式のようなものだ。ほんとうに、その対策が効果があるかどうかよりも、現経営陣がこの状況に対して何か対策を講じているというジェスチャを示すというところに重点がある。 ここで、面白いのは、結構多くの企業が、本当に決算を発表する前に、先手を打って対策を講じてしまう点だ。HPやCreativeなんかは、決算を発表する前に対策の方を発表してしまうことで、発表時の衝撃をやわらげようとしている。なかには、米AMD社のように、今期は業績が悪いですよという発表だけを、事前にわざわざ行うちゃっかりした企業もある。まあ、米Apple Computer社のように、今期も赤字だとわかっていると、その必要もなさそうだけど。 ('96/7/15)
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[Reported by 後藤 弘茂]