オリンピックで離陸するインターキャストって何だ
●テレビとインターネットを融合させる新テクノロジー テレビとインターネットの融合というテーマは、これまでも何度も浮上してきた。しかし、高品質な動画の伝送には非力な現状のネットワークインフラが壁となり、つねに未来形でしか語られて来なかった。ところが、先々週、米Intel社と米NBC社、米Compaq Computer社が、この夏のオリンピック放送から「インターキャスト(Intercast)」サービスを始めると発表したことで、テレビとインターネットの融合が現実となり始めた。 インターキャストという単語は、まだ耳慣れない人も多いだろう。Intelが開発したこの新技術は、これまでテレビとインターネットの融合を妨げていた問題を、コロンブスの卵的な発想で打ち破ろうというシロモノだ。何がコロンブスの卵かというと、(1)動画なんて無理にケーブルを通さないで、テレビの地上波にまかせてしまえと発想を転換し、(2)双方向性は限定されたものでいいんじゃないのと割り切ってしまった点だ。 インターキャストの原理はいたって簡単で、地上波のテレビ放送のすき間(文字放送などでも利用されている)を使って、HTMLファイルを転送、パソコン側ではテレビチューナーでテレビ放送を受信しながら同時に送られてきたHTMLファイルを次々に画面に表示してゆくというものだ。具体的には、ユーザーのパソコンの画面の一部にテレビ放送がそのまま表示され、その下のWebブラウザに、伝送されてきたWebページが表示される形になる。送られてくるHTMLファイルは、放送内容と関連した情報で、たとえば、オリンピックの陸上競技の実況を見ていると、競技のスコアや選手のバックグラウンドデータ、マラソンランナーの走っている位置などの情報が、文字と静止画でWebブラウザの部分に表示されるというわけだ。
テレビの部分はふつーの地上波テレビなので、もちろん一方通行、インタラクティブTVのように自在にプレイバックはできない。ただし,パソコンの場合は受信したHTMLファイルはハードディスク上にストックされ,リンクや画面に表示されるインデックスで開くことができる。言ってみれば,インターネットへのアクセスを持たなくてもWWWのハイパーリンク環境が自分のマシンのなかだけで利用できるというわけだ。また,ユーザーがインターネットにアクセスできるなら、インターネット上のリンクした関連ページを呼び出すこともできる。
なんだかピンと来ない?
ともかくコストが低い。インターキャスト対応のTVチューナーとそれに付属する専用ソフトがあればいい。それは100~200ドルのコストで実現可能だ。テレビ局の方はというと、文字放送と基本的には同じインフラを使うので、コンテンツの用意をのぞけばそれほどの負担ではない。
さて、このインターキャストの日本での可能性はどうだろう。じつは、地上波のすき間「VBI(Vertical Blanking Interval)」をデータ通信に使うための技術面での答申は昨年11月にもう出ている。問題は事業化で、このあたりの事情はあまり詳しくないのだが、「日本でも、CATVの伸びに悩まされている地方テレビ局とかはかなり乗り気」と証言する関係者もいるので脈はありそうだ。また、アイ・オー・データ機器のように、どう見てもインターキャストをにらんだとしか思えない文字放送対応チューナーを出した周辺機器メーカーもある。
Intercast Industry Groupホームページ ('96/7/8)
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[Reported by 後藤 弘茂]