JavaOneが終わり、試されるSunの実力

●Sunは、JavaOneで示したJavaワールドを実現できるか


 5000名以上のJavaシンパを集め、先週、開催された米Sun Microsystems社の「JavaOne」カンファレンス。ニュースサイトの記事を見ると、Sun幹部は、スピーチでこの5000以上という数に力を込めたようだ。それもそのはず、ライバル米Microsoft社が3月に開催した「Professional Developers Conference (PDC)」の参加者は「5000名近く」だったのだ。
 Sunはこのカンファレンスで、Microsoftを参加者数でしのいだだけでなく、Microsoftを脅かす材料も新たに増やした。  JavaOneでの発表内容は、おおむね先週のこのコラムで予想した通り。Javaプラットフォームを拡張する各種APIセットとその提供時期、JavaベースのOSである「JavaOS」の計画とそのライセンス先ハードメーカー、JavaアプレットとJava以外のコンポーネント技術の連携を行うAPI「Java Beans」、JavaチップのOEM製造メーカーなどを並べ、壮大なJavaワールドの完成図を描いて見せた。つまり、JavaのAPIを整えることで、エンタープライスからデスクトップまでのアプリケーションプラットフォームとしての体裁を整え、しかもJavaOSでOSの領域も侵食し始めたというわけだ。
 しかし、実際には、これでJavaの世界がガラっと変わり、Microsoftにとっての悪夢が始まるというわけではない。というのは、今回は、あくまでもJavaのロードマップが示されただけで、ようやくスタートラインに着いたに過ぎないからだ。たとえば、各種APIやJavaOSにしても提供はまだ先。発表を見ると、API群のなかにはスペックすらまだ提供されていないものもある。
 そのため、レースの行方はSunが今後、この勢いを維持して、API群などの提供スケジュールを守ることができるかどうかにかかっている。Sunは、イントラネットでの利用のカギとなるエンタープライズAPIとセキュリティAPIを最優先し96年中に完成させる計画だが、当面、これが実現できるかどうか注目だろう。また、まだ豊富とは言い難い状態のJava開発ツール、そして次のステップとして本格アプリケーションやソリューション提供体制の充実が重要になる。ちなみに、今回は、加Corel社がJavaバージョンのWordPerfectやQuattro Proなどの開発を正式発表して、Javaがインターネットや企業向けアプリケーションだけでなく、デスクトップアプリケーションにも広がることを明確にした。しかし、WordPerfectを引き継いだばかりのCorel社が、本当に十分な機能と性能を持った製品をそんなに早く出せるかどうかはまだ未知数だ。
 JavaOSやJavaプロセッサの舵取りも難しい。プラットフォームインディペンデントであるはずのJavaに、最適化したOSとMPUを提供するというSunの戦略は、他メーカーに取って疑念の材料だ。つまり、Javaアプリケーションをインターネット/イントラネットの標準にしてしまい、そのあとで自社のOSとMPUを売り込もうというというハラなのではと見られているわけだ。Sunはそうした疑念を払拭し、イントラネットソリューションを提供する大手ベンダーの支持を積極的なものにしていかなければならない。
 前途はそれほど容易ではないが、それでもJavaOneは、Javaサポーターにとって強力なブースト剤になったようだ。ニュースサイトでも、先々週の疑問だらけだったNetwork Computer規格策定発表報道とは打って変わって、好意的な記事が多い。はたしてSunは、この「Javaびいき」現象をうまく利用できるのだろうか?

JavaOneの公式WWWサイト
CorelのWWWサイト

('96/6/3)


[Reported by 後藤 弘茂]


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