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Athlon XPに最適なチップセットはどれ?
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第143回のこのコーナーでは“Pentium 4に最適なチップセットはどれだ? ~市場にある5つのチップセットをテスト”( http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/20011221/hotrev143.htm )として、Pentium 4用のチップセットを集め、そのパフォーマンスを計測した。そこで、今回は自作PC市場におけるもう1つの選択肢であるAthlon XP、Duron向けにリリースされているチップセットを集め、ベンチマークなどによりAthlon XPの性能をもっとも引き出しているチップセットは何か、ということについて考えていきたい。
今回は、DDR SDRAMをサポートするAthlon XP向けチップセット5つを集め、それぞれにベンチマークを行なってみたので、年末年始にマザーボードを購入する時の参考にして欲しい。
●いずれのチップセットもPC2100、AGP 4Xという仕様で、差は小さい
現在、秋葉原などで購入できるAthlon XP Duron用チップセットには、表にまとめた5つのチップセットがある。
AMD-760 | ALi MAGiK1(Rev.C) | VIA Apollo KT266A | SiS735 | nForce | |
---|---|---|---|---|---|
ノースブリッジ | AMD-761 | M1647 | VT8366A | SiS735 | IGP |
システムバス/クロック | EV6/266,200MHz | EV6/266,200MHz | EV6/266,200MHz | EV6/266,200MHz | EV6/266,200MHz |
メモリ | DDR SDRAM(266/200MHz) | DDR SDRAM(266/200MHz) | DDR SDRAM(266/200MHz) | DDR SDRAM(266/200MHz) | DDR SDRAM(266/200MHz) |
AGP | 4X | 4X | 4X | 4X | 4X |
グラフィックスコア | - | - | - | - | GeForce2 MX相当(2P/2T) |
ノース・サウス間 | PCIバス | PCIバス | V-Link | - | HyperTransport |
帯域幅 | 133MB/sec | 133MB/sec | 266MB/sec | - | 800MB/sec |
サウスブリッジ | AMD-766 | M1535D+ | VT8233/C | - | MCP |
IDEインターフェース | Ultra ATA/100 | Ultra ATA/133 | Ultra ATA/100 | Ultra ATA/133 | Ultra ATA/100 |
USBポート(コントローラ) | 4(2) | 6(2) | 6(3) | 6(2) | 6(2) |
AC'97 | - | ○ | ○ | ○ | ○ |
イーサネット | - | - | ○ | ○ | ○ |
デジタルアウト | - | - | - | - | - |
ここにあげた以外にも、VIAのKT133/KM133、SiSのSiS730Sなどが存在しているが、いずれもSDRAMのみのサポートとなっているため、今回は対象から外した。以下に簡単に紹介しておこう
★AMD-760チップセット
AMD純正のチップセットで、DDR SDRAMを最初にサポートしたチップセットとして登場した。システムバスとメモリバスのクロックは同期しており、非同期にすることはできない。サウスは、本来はAMD-766だが、AC'97コントローラなどが統合されていないこともあり、VIA TechnologiesのVT82C686Bが利用されている例がほとんどだ(というより純正のAMD-766を搭載したAMD-760マザーボードというのに筆者はお目にかかったことがない)。
★ALi MAGiK1
ALi(Acer Laboratories Inc.)のDDR SDRAMチップセット。現在出荷されている分はリビジョンCと言われ、若干の性能が改善されているのと、サウスブリッジのM1535D+がUltra ATA/133をサポートしているのが特徴となっている。サポートするベンダは多くないが、ASUSTeK ComputerやIwillなどが搭載マザーボードをリリースしている。
★VIA Technologies Apollo KT266A
Apollo KT266A(以下KT266A)は、従来版であるKT266の改良版で、特にメモリコントローラ周りのパフォーマンスが大きく改善されているのが特徴。GIGA-BYTE、MSI、EPoXなど、多くのマザーボードベンダがリリースしており、選択肢の多さも1つの特徴と言える。
★SiS735
SiS735は、ノースとサウスを1チップにしたDDR SDRAMチップセット。チップ数が少ないこともあり、ローコストなのが特徴。SiS735をリリースしているベンダもあまり多くなく、事実上ECSのK7S5Aぐらいしか選択肢がないのも事実。
★nForce
nForceはNVIDIAが発売した統合型チップセット。内蔵グラフィックスコアにはGeForce2 MXを採用してほか、メモリをDDR266(PC2100)の2チャネル構成で利用可能なため、メインメモリの帯域幅が理由で内蔵ビデオの性能低下が発生せず、内蔵グラフィックスながら高い性能を発揮する。外部AGPスロットもサポートしており、単体のビデオカードをさして利用することも可能。
表のノースブリッジの項目を見ればわかるように、グラフィックスを内蔵しているnForceは別として、ノースブリッジの仕様はほとんど変わっていない。いずれのチップセットも、EV6バス(266/200MHz)、AGP 4X、メインメモリはPC2100(DDR266)サポートとなっている。ノース・サウス間のバスに違いはあるものの、特に性能に大きな影響をあたえるシステムバス、AGP、メモリに差がないため、性能差はチップセット自体の出来が大きく影響する可能性が高いと言える。
●nForceの128bit幅メモリバスは内蔵グラフィックスのため
nForceに関しては若干の補足をしておきたい。一部には「nForceは128bit幅のメモリバスをサポートしていて、そのためにAGPビデオカードを挿した場合でも高いパフォーマンスを発揮する」という誤解をしている人がいるようだが、nForceマザーボードでメモリを2枚1組で利用した時、つまり128bit幅アクセスによる4.2GB/secという帯域幅は、AGPビデオカードを挿した時にはほとんど意味をなさない。その理由は、Athlon XPのシステムバスの帯域幅が2.1GB/secであるからだ。システムバスとメモリバスは、両方とも同じ帯域であれば真価を発揮するが、どちらか一方が低い帯域幅である場合には、低い方がボトルネックになり、高い方の帯域幅が余ってしまうため、性能向上には寄与しないのだ。
では、nForceの4.2GB/secの帯域幅は何にきいてくるのか? それはずばり内蔵グラフィックスを使っている時だ。すでに述べたように、Athlon XPのシステムバスの帯域幅は2.1GB/secで、nForceマザーボードでPC2100を128bit構成にしたときの帯域幅である4.2GB/secの半分でしかない。つまり、CPUがメモリに対してフルに帯域を利用してアクセスしても、まだ2.1GB/sec分を利用することができるのだ。これがまるまる内蔵グラフィックスがビデオメモリとしてメインメモリにアクセスする際に利用できるわけだ。先ほど「高い方の帯域幅は単に余っているだけ~」と述べたが、内蔵グラフィックスのように他にアクセスするものがあれば、それは意味を持ってくる。
●KT266Aが最高性能をたたき出し、続いてnForce、ついでAMD-760
以上のようなチップセットの中で、どれが最高性能であるのかを確認するため、今回は複数のベンチマークテストを実行してみることにした。行なったテストは、BAPCOのSYSmark2001、MadOnion.comの3DMark2001、id SoftwareのQuake III Arena(demo1)、SPECのviewperfのうちDX-06、MadOnion.comのVideo2000のうちMPEG2 Encoderテスト、さらにシステムバス、メモリの帯域幅を計測するStream for DOS(StreamD)を利用することにした。テスト環境は表2の通りで、CPUにはAthlon XP 1900+、ビデオカードはGeForce3(64MB、DDR SDRAM)、メモリはPC2100(CL=2.5)を利用した。全結果は項目があまりに多いので別ページにしておくので、興味があるユーザーは参照して欲しい。
nForce | KT266A | SiS735 | ALi MAGiK1 | AMD-760 | |
---|---|---|---|---|---|
CPU | Athlon XP | Athlon XP | Athlon XP | Athlon XP | Athlon XP |
マザーボード | MSI K7N266 Pro | EPoX EP-8KHA+ | ECS K7S5A | ASUS A7A266-E | GIGA-BYTE GA-7DXR |
チップセットドライバ | NVIDIAバージョン2.03 | 4in1 v4.35 | SiS AGPドライバ 1.07 | Integrated Driver V1.06 | Windows標準 |
メモリ | DDR SDRAM(PC2100,CL=2.5) | ||||
容量 | 256MB | ||||
ビデオチップ | NVIDIA GeForce3(64MB、DDR SDRAM) | ||||
ビデオドライバ | NVIDIA Detonator XP(v23.11) | ||||
ハードディスク | IBM DTLA-307030 | ||||
フォーマット | NTFS | ||||
OS | Windows XP Home Edition |
・外部ビデオカード+128bit幅(メモリ2枚1組)
・外部ビデオカード+64bit幅(メモリ1枚)
・内蔵ビデオ+128bit幅(メモリ2枚1組)
・内蔵ビデオ+64bit幅(メモリ1枚)
という4つの組み合わせでそれぞれ実行してみた。
グラフ1 | グラフ2 | グラフ3 |
グラフ4 | グラフ5 | グラフ6 |
グラフ7 | グラフ8 | グラフ9 |
以下、実アプリケーション(グラフ2~9)による結果でも、おおむねこの結果を反映した結果になっている。異なっているのは、ほとんどすべてのアプリケーションでKT266Aがトップという結果になっており、以下nForce+外部AGPビデオカード、AMD-760、ALiMAGiK1、SiS735で、アプリケーションによってはSiS735とALiMAGiK1の順位が入れ替わるという結果になった。
さて、nForceの結果だが、結果を見て一目瞭然のように、外部AGPビデオカードを利用している場合には、どのようなアプリケーションでも128bit幅(つまり2枚1組で利用した場合)でも、64bit幅(つまり1枚のみ)でも、差がないことがわかる。すでに述べたとおり、nForceで外部AGPカードを挿した場合には、128bit幅は全く意味がないことがこのことからもわかるだろう。
しかし、内蔵グラフィックスコアを利用している場合には、64bitと128bitの差はほとんどのアプリケーションででている。たとえば、グラフ5は3DMark2001をnForceの4つのパターンで計測した結果だが、外部ビデオカードを利用している場合には、64bitと128bitで全く差がないといっていいのに対して、内蔵グラフィックスを利用している場合には、64bitと128bitで大きな差がでている。これはグラフ7のQuake III Arenaでも同様で、SYSmark2001(グラフ2、3)、Video2000(グラフ9)でも同様の傾向となっている。こうしたことから、nForceで128bit幅の恩恵を受けられるのは内蔵グラフィックスを利用した場合のみであるということができるし、逆に言えば内蔵グラフィックスコアを利用する場合には、同じメモリモジュールを2枚1組で利用して128bit幅にすべきだと言える。
●絶対パフォーマンスのKT266A、総合力で勝負のnForce、コストで勝負のSiS735
以上のような結果から、とにかくパフォーマンスを追求したいユーザーはKT266Aを選択すべきだと言っていいだろう。KT266Aを搭載したマザーボードは、いずれも1万円台の半ばとコストパフォーマンスも悪くない。そうした意味では、AGPのビデオカードをさして使うというユーザーであれば文句なくKT266Aを搭載したマザーボードをおすすめする。
これに対して、ビデオはそこそこであれば不満はないというユーザーには、nForceはよい選択となるだろう。特に、今回紹介したチップセットの中で、nForceは唯一S/PDIFをサポートしている。これを使うことで、簡単にPCによるDVD5.1チャネル環境を安価に構築できる点はメリットと言ってよい。nForceに内蔵されているグラフィックスコアはGeForce2 MX相当だが、GeForce2 MXシリーズのビデオカードを単体で買うと1万円ぐらいするので、nForceの2万円台半ばという価格は、KT266A+GeForce2 MXという組み合わせと変わらないだけでなく、S/PDIFオンボードという点から、nForceの方が安価とも言えなくはない。そうした意味では、これまでGeForce2 MXを買っていたユーザー層にはnForceはおすすめだということができるだろう。
パフォーマンスではあまりよい結果を残さなかったSiS735だが、搭載されているマザーボードはEthernetオンボードでありながら、1万円を切る価格で販売されている。そうした意味では、何よりもコストが優先というユーザーであれば、SiS735を選択するというのもありだろう。
(2001年12月28日)
[Reported by 笠原一輝@ユービック・コンピューティング]