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【速報】AMD Athlon XP 2000+登場!
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AMDはAMD Athlon XPプロセッサ(以下Athlon XP)の最新グレードである2000+を本日リリースした。実クロックは1.67GHzで、従来のAthlon XP 1900+の実クロックから0.066GHz向上しただけだが、モデルナンバーで大台に乗ったこともあり、注目の新製品と言える。
すでに恒例といってもよい、モデルナンバーで相当となるPentium 4とのパフォーマンス差はどうなるのか、などが気になるところだろう。今回も、Athlon XP 2000+のサンプルを入手したので、それを利用したベンチマーク結果などについてお伝えしていく。
●基本的には従来のクロックアップバージョンで特に大きな差はない
Athlon XP 2000+のコア |
今回発表されたAthlon XP 2000+は、実クロック1.67GHzとなっているほかは、従来のAthlon XP 1900+と大きな差はない。コアの表記は「AX2000DMT3C」となっており、それぞれ“D”はパッケージがOPGA(Organic Pin Grid Array)、“M”が駆動電圧が1.75Vであることを意味し、“T”はダイ温度、いわゆるTcaseの値が摂氏90度であること、“3”はL2キャッシュの容量が256KB、“C”はシステムバスのクロックが266MHzであることをそれぞれ意味しており、この「DMT3C」は従来のAthlon XP 1900+と同一になっている。
原稿執筆時点ではデータシートが公開されていないため熱設計電力(TDP)はわからないが、基本的にはクロックがあがっただけでコア電圧などは変わっていないため、クロックがあがった分だけリニアに消費電力が増えることが予想される。それを前提に計算すると、Athlon XP 1900+が68Wであるので2000+は70.8Wとなる。
Tcaseと呼ばれるダイの稼働保証温度は従来と変化がないので、消費電力があがったぶん熱設計は難しくなる。このため、これまでと同様、いやそれ以上に放熱周りに気を遣う必要がある。AMDのリテールボックスでも、1900+は1800+に同梱されていたものに比べて大型のCPUクーラーが同梱されていることを考えても、バルク版を購入して利用する場合には、できるだけ高性能なファンを利用するなどの対処を行なうようにしたい。
●Pentium 4 2GHzを上回る性能を実現するAthlon XP 2000+
Athlon XP 2000+(1.67GHz)の性能をチェックするために、今回もいくつかのベンチマークを行なってみた。利用したのは、本コーナーで通常CPUやチップセットをレビューするのに使っているBAPCOのSYSmark2001(Office Productivity、Internet Contents Creation)、MadOnion.comの3DMark2001、id SoftwareのQuake III Arena、さらにMadOnion.comのVideo2000の5種類だ。なお、これ以外にも参考としてベンチマークをとっているが、データ量が膨大であるため、別ページに分けて掲載しておくので興味があるユーザーは見て欲しい。
今回は比較対象として、Athlon XP 1900+(1.6GHz)と1800+(1.53GHz)、Pentium 4 2GHz、1.9GHz、1.8GHzを用意した。環境は表の通りだ。
CPU | Pentium 4 | Athlon XP |
---|---|---|
チップセット | Intel 850 | VIA Apollo KT266A |
マザーボード | Intel D850MDL | EPoX EP-8KHA+ |
チップセットドライバ | 3.10.1008(2001/10/8) | 4in1 v4.35 |
メモリ | Direct RDRAM | DDR SDRAM(PC2100,CL=2.5) |
容量 | 256MB | |
ビデオチップ | NVIDIA GeForce3(64MB、DDR SDRAM) | |
ビデオドライバ | NVIDIA Detonator XP(v23.11) | |
ハードディスク | IBM DTLA-307030 | |
フォーマット | NTFS | |
OS | Windows XP Home Edition |
グラフ1 | グラフ2 | グラフ3 |
グラフ4 | グラフ5 | グラフ6 |
グラフ2はSYSmark2001のInternet Contents Creationの結果だ。Internet Contents CreationはAdobe SystemsのPhotoshop、Premiereなどのいわゆるコンテンツ作成系のアプリケーションを利用したベンチマークで、やはりこの手のアプリケーションを多用するユーザーの体感に近い数値をたたき出す。この結果ではPentium 4がAthlon XPを上回り、Pentium 4 1.8GHzがAthlon XP 2000+と同じスコアとなった。これは、Internet Contents Creationに含まれるWindows Media Encoder 7が、ストリーミングSIMD拡張命令(SSE)にAthlon XPが対応していることを認識できず、SSE命令を使わずに実行してしまうため、本来Athlon XPが持っている処理能力を発揮できないためだ。
実際に、AMDがプレス向けなどに限定的に配布している非公式パッチを当てると、Windows Media Encoder 7がSSE命令を利用して処理を行なうようになり、パフォーマンスが向上する。その結果がグラフ2の破線だ。このパッチを当てることで、1800+もPentium 4 2GHzを上回るようになる。ただ、現時点ではAMDは正式にこうしたパッチを配布していない。現在のCPUの性能はこうしたソフトウェア側の対応ということも含んでおり、ソフトウェアベンダに対するサポートなども評価に含まれると考えてよいし、何よりもユーザーの環境では実線のグラフが実性能ということになるため、あくまで破線は参考にということにしたい。
グラフ3はMadOnion.comの3DMark2001、グラフ4はQuake III Arenaというどちらの3D系のベンチマークプラグラムだ。見てわかるように、どちらでもAthlon XPがPentium 4 2GHzを上回った。また、MPEG-2エンコード性能をテストするMadOnion.comのVideo2000 MPEG2 Encoderテスト(グラフ5)でもAthlon XP 2000+がPentium 4 2GHzを上回ってみせた。
●2000+の名はダテじゃない!
なお、Pentium 4 2GHzを1としてAthlon XP 2000+のスコアの伸び率を示したグラフがグラフ6だ。上にグラフが伸びて行っている場合、Athlon XPが上回っていることを意味し、下にグラフが伸びて行っている場合Pentium 4が上回っていることを指し示している。見てわかるとおり、Internet Contents Creation以外はAthlon XP 2000+が上回っている。また、Internet Contents Creationに関しても、パッチを当てた場合は、逆にAthlon XP 2000+が大きく上回る結果となる。こうしたことから、Athlon XP 2000+はPentium 4 2GHzを性能面でおおむね上回っているといっていいだろう。
価格面だが、AMDの発表資料によれば1,000個ロット時の価格で、339ドル(日本AMDによる日本における価格は45,765円)となっている。IntelのPentium 4 2GHzのOEM向け価格が342ドルであるから、Athlon XPは価格はほぼ同等ながら性能では若干のアドバンテージがあると考えられ、メモリのDDR SDRAMがDirect RDRAMに比べて安価なことを考えると、Athlon XPのコストパフォーマンスは優れているといってよい。性能とコストパフォーマンスの両方をゲットしたいというユーザーであればAthlon XPはよい選択だと言える。
気になるのは、すでに秋葉原などで販売が開始されているNorthwoodコアと見られる新Pentium 4の存在だろう。すでに明らかになっているように、NorthwoodはL2キャッシュが現行Pentium 4の倍となる512KBに増量されており、同じクロックであっても現行Pentium 4に比べて高いパフォーマンスを発揮することが予想される。
すでに秋葉原では2.20GHz、2A GHzという2製品が登場している。この2A GHzというのが、2GHz版であるとすれば、当然今回比較に利用したPentium 4 2GHzに比べて高いパフォーマンスを発揮する可能性が高い。となれば、新Pentium 4を入手して、もう一度検証を行なう必要はあるが、少なくとも現時点の、正式発表ベースのCPUとしてはAthlon XP 2000+は最高性能のx86であるといっていいだろう。
(2002年1月7日)
[Reported by 笠原一輝@ユービック・コンピューティング]