初のPentium 4用統合型チップセット「SiS650」のパフォーマンスはいかに?



JETWAY「S450L」

 Intelが昨年発売したPentium 4プロセッサは、リリースより1年がたち、Pentium IIIとの代替わりも急速に進んだ。すでに秋葉原ではNorthwoodコアと見られる新しいPentium 4も発売されており、ユーザーの大きな注目を集めている。

 しかし、これまでPentium 4にはミッドレンジやバリューセグメントで求められるある要素が欠けていた。それが統合型チップセットだ。統合型チップセットを採用することにより、ビデオカードにかかるコストを減らすことができるので、PCメーカーにとっては統合型チップセットの存在はCPU選びを左右する要素の1つと言ってよい。今回は、先週から販売が開始されている、Pentium 4用統合型チップセット「SiS650」を搭載したJETWAY製マザーボード「S450L」を利用して、そのパフォーマンスに迫っていきたい。



●PC2100のみサポートとなるSiS650。PC2700のサポートはSiS651から

SiS650

 今回登場したSiS650は、単体チップセットのSiS645にSiS315相当のグラフィックスコアを統合したものだ。ただし、SiS315のすべての機能を詰め込んだわけではなく、正確にはSiS315の、2Dエンジンと3Dエンジンのうちレンダリングエンジンのみを統合したものとなっている。このため、SiS315で内蔵されているハードウェアT&Lエンジンは内蔵されていないため、SiS645+SiS315という組み合わせよりもパフォーマンスは劣るということになる。

 レンダリングエンジンは2パイプライン、4テクスチャユニットという構成になり、Pentium III世代用のSiS630ファミリーの1パイプライン、2テクスチャユニットという構成に比べて、3D描画能力が大きく向上する可能性を秘めている。

 SiS650の内蔵グラフィックスは、ビデオメモリとしてメインメモリの一部を利用する。実際、BIOSで8、16、32、64MBをビデオメモリとして割り当てることが可能になっている。SiS630ファミリーのメモリコントローラはSDRAM(PC133 SDRAM、1.06GB/sec)のみサポートとなっていたのに対して、SiS650ではDDR SDRAMもサポートされるようになった。266MHzのDDR SDRAMのメモリモジュール(PC2100)を利用した場合には、帯域幅が2.1GB/secとなる。このため、内蔵ビデオコアが利用できる帯域幅がSiS630ファミリーなどに比べて増えるため、こちらの面でも性能向上を期待できる。

 なお、やや情報に混乱があるようだが、SiS650自体は333MHzのDDR SDRAMモジュールであるPC2700(2.7GB/sec)は正式にはサポートしていない。

 当初からSiSはSiS650はPC2100までのサポートとOEMメーカーに対しては説明してきたのだが、SiS自身にも混乱があるようで、SiS650の機能を説明するプレゼンテーション( http://www.sis.com/presentation/650/650.ppt )では、あるページにはDDR266、つまりPC2100とPC133のみサポートとしているのに、別のページではあたかもPC2700がサポートできるような記述が混在している(どうも、PC2700と記述されている部分はSiS645のプレゼンからコピーしてきたため、こうなっているような気がする)。SiS650のPC2700対応版は、別のSiS651という型番が与えられることになっており、正式に対応するのはSiS651からということになる。



●ビデオコネクタは後付となっているJETWAYのS450L

 今回SiS650の評価に利用したのは、先週末より秋葉原で販売されているJETWAYのS450Lで、micro ATXフォームファクタのマザーボードだ。ノースブリッジのSiS650、サウスブリッジのSiS961で構成されており、メモリスロットは180ピンのDIMM×2となっている。CPUソケットはmPGA478で、478ピンのPentium 4を利用することができる。本製品はオンボードでEthernetポートが用意されており(搭載されていないS450というモデルもある)、AC'97サウンドもオンボードで用意されている。いわばすべてオンボードなオールインワンマザーボードだ。

 なお、本製品には姉妹品としてS445/445( http://www.jetway.com.tw/evisn/product/p-4/s445/s445.htm )というバージョンが用意されている。違いは、チップセットだけで、基板のデザインなどは、S450/450Lと共通になっている。

ビデオコネクタは拡張スロットに引き出す設計となっている

 これは、SiS645とSiS650がピン互換であるためで、メーカーは同じ基板でSiS645にもSiS650にも対応できるようにすることが可能だからだ。ただ、このためか、S450Lではビデオコネクタは背面のパネルではなく、別途ケーブルで拡張スロットのところに引き回す形になっている。ちょうどAGPのスロットがあいているので、そこに取り付けるとよいだろう。

 なお、AGPのスロットもオンボードで用意されており、AGPのビデオカードを利用した場合にはSiS645と同等のチップセットとなる(ただしSiS645が対応しているPC2700には正式には対応していない)。内蔵のグラフィックスコアに飽き足らなくなったら、AGPビデオカードをさしてアップグレードすることが可能だ。



●3Dはやや物足りないものの一般的なアプリケーションでは十分なパフォーマンス

 さて、今回はSiS650のパフォーマンスを見るために、SiS650(内蔵グラフィックス利用、メインメモリのうち64MBがビデオメモリ)+PC2100、SiS650+GeForce2 MX(32MB SDRAM)、SiS645+GeForce3、nForce(Athlon XP/1900+を利用)という5つの構成を用意した。さらに非公式な環境となるが、SiS650(内蔵グラフィックス利用、メインメモリのうち64MBがビデオメモリ)+PC2700という環境も用意した。

 S450LはBIOSでメモリのクロックを166MHzに設定可能で、とりあえず筆者の環境では使うことができたが、利用する場合には自己責任ということになるのでご注意願いたい。あくまで、サポートされている環境ではないので、この結果は参考値としたい。また、前回の「Pentium 4に最適なチップセットはどれだ?」( http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/20011221/hotrev143.htm )で計測した環境とまったく同一の環境で計測したので、単体チップセットとの比較も可能だ。全データは膨大になるので、別ページに掲載しておく。興味があるユーザーは参考にしていただきたい。環境はこちらを参照していただきたい。

■ベンチマークテスト結果
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/20011227/bench.htm

グラフ1 グラフ2 グラフ3

グラフ4 グラフ5 グラフ6

 グラフ1はBAPCOのSYSmark2001に含まれるInternet Contents Creationのテストだ。Internet Contents CreationはAdobeのPhotoshop、Premiereに近いコンテンツを作成するベンチマークで、前述のようなアプリケーションを利用している場合の実環境に近いスコアがでる。グラフ2は同じくSYSmark2001に含まれるOffice Productivityで、こちらはマイクロソフトのOffice 2000、Netscape Communicatorなど実在するビジネスアプリケーションの本物のコードを利用したベンチマークで、一般的なビジネスアプリケーションを利用する場合の性能を計測するのに適している。

 これらの結果を見る限り、SiS650を内蔵コアを利用した場合、外部ビデオカードとしてGeForce2 MXを利用した場合に比べると、若干性能が低下していることがわかる。

 しかし、メモリをPC2700にした場合、ほぼGeForce2 MXを利用した場合と同等のスコアになった。以前の統合型チップセットであれば、こうした一般的なアプリケーションベンチマークで圧倒的に処理能力が低下していることが多かったのに比べると、SiS650の性能低下はわずかであり、このあたりの帯域幅が十分なDDR SDRAMを採用した効果がでていると考えていいだろう。

 グラフ3、グラフ4はMadOnion.comの3DMark2001、id SoftwareのQuake III Arenaによる結果だ。どちらの結果も、(ビデオメモリの容量の問題で結果がでなかった1,600×1,200ドットをのぞき)すべての解像度でSiS645+GeForce3、SiS645+GeForce2 MX、nForce、SiS650(内蔵)の順という結果になった。これを見るに、3Dに関してはハードウェアT&Lがない分、SiS650はGeForce2 MXに劣る結果となっていることがわかる。3Dに関しては、やや不満な結果だといっていいだろう。

 また、同じくOpenGLのベンチマークであるSPECのviewperfのうちDX-06(グラフ5)でも、SiS650の内蔵コアは他の結果に比べて不利な結果となっている。


●3Dに関しては不満も残るが一般的な用途には十分な性能

 以上のように、3Dに関しては若干の不満も残るが、比べている相手がnForceだったり、GeForce2 MXであったりと、“相手が悪い”わけで、従来タイプの統合型チップセットに比べると、3Dの性能も大きく上がっている。その点は評価していいだろう。

 重たい3Dゲームをやったり、OpenGLに対応した3Dアプリケーションをバリバリ使うというユーザーにはお勧めではないが、逆に一般的なアプリケーションを利用する限りであれば、十分なパフォーマンスを持っていると言える。こうしたアプリケーションで使う限り、ビデオ、サウンド、Ethernetがついて13,480円はコストパフォーマンスが高いと言え、2万円を切るなど安価になってきたPentium 4の低クロックモデル(1.5GHzなど)と組み合わて安価なPentium 4マシンを作るなどの用途には向いていると言えるだろう。

 ただ、今回参考値としてPC2700の結果が、PC2100を利用した場合に比べてよかったことを考えると、PC2700が利用できるSiS651が欲しいところで、早期に出荷されることを期待したい。

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http://www.watch.impress.co.jp/akiba/hotline/20011222/sis650.html

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(2001年12月27日)

[Reported by 笠原一輝@ユービック・コンピューティング]


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