元麻布春男の週刊PCホットライン

ピクセラPIX-MPTV/P1Wを試す


●MTV1000の対抗馬登場?

 発売されて以来、この種の製品としてはかなり売れたのがカノープスの「MTV1000」だ。ハードウェアエンコーダーを搭載したTVチューナーカードであるMTV1000は、PCをVCR(Video Cassette Recorder)に変えるものとして、あるいはDVD-Videoの素材となるMPEG-2ファイルを作成するツールとして、4万円前後という価格にもかかわらず、一時は秋葉原でも入手が困難なほどだった。確かにハードウェアエンコーダーを搭載したTVチューナーカードというのは、ありそうで、それほど種類の多くなかった製品だったように思う。

 今回取り上げるピクセラの「PIX-MPTV/P1W」も、ハードウェアエンコーダーを搭載したTVチューナーカードというジャンルの新製品だ。下の写真のように比較的小型のPCIカードで、もちろん日本向けのステレオ/音声多重放送に対応している。写真でファン付きヒートシンクが取り付けられているのがエンコーダーチップであるGlobeSpanの「iTVC15」だ(同社製のMPEG-2エンコーダーチップは、NECの「SmartVision Pro for USB」に「iTVC12」が使われている)。対応するビデオビットレートは、MPEG-1なら0.5Mbps~12Mbps、MPEG-2で1Mbps~8Mbpsとなっている(プリセット使用時)が、カスタム設定を行なうことで最大12Mbpsまで対応することができる。音声のサンプリング周波数も32KHz、44.1KHz、48KHzの3種に対応している(画面1)。

ピクセラ PIX-MPTV/P1W 画面1


●録画と再生は別々のソフトで

 本カードの性格を物語っているのは、音声出力について、サウンドカードと本カードをケーブルで接続する必要がないこと。つまり音声データはMPEGのストリームとして取り出され、PCIバス経由で転送される(逆に言えば、MPEGエンコードされていない形で、アナログの音声を取り出すことはできない)。つまり、本カードではビデオおよびサウンドの出力は、常にMPEGエンコードされているということであり、いつでもタイムシフト再生や巻き戻し再生が可能な状態にある(初期設定は4分間、変更可能)、ということだ。

 このため、TVを視聴する添付ソフト(PixeStationTV)を起動してTV番組を表示するのにタイムラグがあるし、キビキビとしたレスポンス、というわけにはいかない(ただしこれは、本製品だけでなく、常時タイムシフトする製品全般に言えることである)。単にTVをオーバーレイ表示しておきたい、ということはできないので、購入する場合はこれを承知しておく必要がある。

 画面2がPixeStationTVの起動画面だ。TV画面を表示するウィンドウ内が真っ青だが、まさにこの状態で起動する。しかも悪いこと(?)に、いつまで待っていても、画面は青いままである。TV番組を表示するには、チャンネル表示下の小さな三角のボタン(再生ボタン)を押さねばならない。これが、このPixeStationTVの仕様なのだが、最初は壊れているのではないかとビックリしてしまう。できれば、ボタンを押さない状態でもTV番組の表示をスタートさせて欲しいところだが、せめてロゴを表示するとかして、この真っ青は止めて欲しいところだ。

 再生ボタンを押してから、TV番組が表示されるまで数秒のタイムラグがあるが、これは常時タイムシフト型の製品では止むを得ないところだろう。その代わり、いつでもポーズすることができるし、いつでも巻き戻すことが可能だ。常時MPEG-2のエンコードがかかっているから録画も簡単で、単に右下の録画ボタンを押せば、ファイルとして保存することができる。iEPG(出荷時「OnTV Japan」に設定済み)による番組予約もサポートしている。

画面2 画面3

 PixeStationTVでもうひとつ戸惑う点は、録画したMPEGファイルの再生ができないことだ。通常、この種のソフトでは、録画と再生の両方ができるのが一般的だが、PixeStationTVはあくまでもタイムシフトをサポートしたTV視聴および録画専用で、再生には別のソフト(録画ファイルブラウザ、画面3)を用いる。別ソフトを用いる形式が特にわかりにくかったり、悪いということはないのだが、戸惑ってしまう。また、PixeStationTVと録画ファイルブラウザを同時に起動できない(たとえ片方が動作していない状態だとしても)のも戸惑う点かもしれない。逆に、だからこそ、1つのソフトで録画と再生をサポートした方が分かりやすいとも言える。


●民生機との互換性が高いPixeDV EX

画面4
 さて、PIX-MPTV/P1Wの特徴は、もう1つの添付ソフト、「PixeDV EX」にある(画面4)。PixeDV EXは、P1X-MPTV/P1Wのアナログビデオ入力によるリアルタイムキャプチャ(内蔵TVチューナーは不可)、P1X-MPTV/P1W等でキャプチャ済みのMPEGファイル、DVカメラ(別途IEEE 1394ホストアダプタが必要)、あるいはビデオレコーディング規格で録画されたDVD-RAMからビデオデータを入力し、簡単なビデオ編集やタイトル作成を行ない、MPEG-2ファイル、DVカメラ、Video CD、ビデオレコーディング規格のいずれかのフォーマットで書き出すことが可能な、ビデオ編集ソフトだ。

 面白いのは、ビデオレコーディング規格に準拠したメディアからデータを吸い上げることができる点で、日立や松下が販売するDVD-RAMを用いたカムコーダー(ビデオカメラ)のデータを取り込んだり、しばらく前にこのコラムで取り上げた「DVD-MovieAlbum」で作成したビデオレコーディング規格のメディアから、MPEG-2ファイルを生成できる。残念ながら、対応可能なファイルには「オーディオデータがMPEGオーディオであること」という条件が付く(つまり音声がドルビーデジタルで記録されたビデオレコーディング規格のメディアからはデータを吸い上げられない)ものの、他ではあまり見たことがない機能だ。

 また、出力にビデオレコーディング規格があるということは、DVD-RAMと組み合わせれば、(対応機種は極めて限定されるものの)民生機で再生可能なメディアに、ビデオデータを追記する環境がPC上で実現できる、ということでもある。これが可能なソフトは、現時点で、上述したDVD-MovieAlbumとこのPixeDV EXしかない(DVD-RWやDVD+RWには、今のところ民生機互換でビデオデータの追記が可能なソフトが存在しない)。

 もちろんこの辺の特徴は、同社がDVD-RAMドライブを販売していることと無縁ではない。実際、ピクセラが販売するDVD-RAMドライブには同じPixeDVが添付されている(ただしVideo CDフォーマットでの出力機能が無いなど、若干機能が異なる)。そして、良くも悪くもDVD-RAMあるいはビデオレコーディング規格との連携が、PIX-MPTV/P1Wの性格を決めているようだ。

 冒頭で触れたように、PixeStationTVでキャプチャする際のプリセットとして、最高画質(ビデオビットレート8Mbps)、高画質(同6Mbps)、標準(同4Mbps)といった設定が用意されているが、オーディオのフォーマットは常にサンプリング周波数44.1KHzになっている。ビデオレコーディング規格ではなく、DVD-Videoとの互換性を重視すれば、サンプリング周波数は48KHzにしておいた方が良いのだが、そうなってはいない。カスタム設定を使えば、DVD-Videoのオーサリングに便利な(最も普及しているオーサリングソフトである「DVDit! LE」でそのまま使える)オーディオのサンプリング周波数が48KHzのMPEG-2ファイルを生成できる。が、何も考えずにプリセット設定でデータを蓄積し、後でDVD-Videoにしようと思うとデータを変換する手間がかかってしまうので、注意が必要だ。

 もちろん、そこまでしてDVD-Video互換にしておく価値があるのか、DVD-RAMにビデオレコーディング規格で書いておいて悪いのか、ということはまた別の話。単に自家用として使うのであればDVD-RAMで困らないし、むしろ書き換え回数に事実上制限のないDVD-RAMの方が使いやすい、というユーザーも結構いるのかもしれない。そうしたユーザーにとっては、DVD-Videoとの互換性にこだわるより、DVD-MovieAlbumがサポートしている「リアルタイムでのDVD-RAMメディアに対する直接キャプチャ」を、PixeStationTVもサポートする方が待たれていることだろう。これが実現すれば、民生のDVDレコーダーと同じように、1時間のTV番組を1時間でDVD-RAMに直接予約録画する、という機能がPCで可能となる。これが実現して初めて、PCが民生用レコーダーに機能的に追いついたことになる。


●録画ソフトのブラッシュアップに期待

 最後に、冒頭でも触れたMTV1000との比較を行なっておこう。まず画質だが、単にTVを表示するだけなら、PIX-MPTV/P1Wの方が見やすいかもしれない。が、キャプチャしたMPEG-2ファイルの画質という点では、やはりMTV1000に軍配が上がる。キャプチャしたファイルがそのままDVD-Videoオーサリングソフトで利用できる、という点もMTV1000の使いやすさの1つだ。録画ソフトの完成度、安定感という点でも、MTV1000の方が上回っている。

 逆に、PIX-MPTV/P1Wのメリットは、15,000円近く安価でありながら、機能的にMTV1000が可能なことで、本機でできないことはほとんどない、ということだろう。また、ビデオ編集ソフトとしてPixeDV EXが付属することも、特にDVD-RAMドライブやDVD-RAM対応のカムコーダーを所有しているユーザーにはポイントとなる。まだ荒削りな感がある録画ソフト(PixeStaitonTV)のブラッシュアップと、リアルタイムレコーディングのサポートに期待したいところだ。

□ピクセラのホームページ
http://www.pixela.co.jp/
□関連記事
【10月30日】ピクセラ、実売25,800円のTVチューナー付きMPEG-2キャプチャカード
~iEPGにも対応し、Windows XPもサポート
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/20011030/pixela.htm
【6月27日】【元麻布】カノープスMTV1000を試す
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/20010627/hot152.htm

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(2001年12月7日)

[Text by 元麻布春男]


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