ミドルクラスビデオカード対決!
GeForce2 Ti 対 RADEON 7500



 現在NVIDIAとATI Technologies(ATI)は、ビデオチップ市場でトップの座を奪うべくしのぎを削り合っている。NVIDIAはGeForce3の高性能モデルとなる「GeForce3 Ti」シリーズを、ATIは最新コアを採用した「RADEON 8500」をそれぞれ発表しており、搭載製品の登場も目前に控えている。その中で、双方のメーカーがバリュー市場からミドルクラスをターゲットとするために用意した新ビデオチップを搭載する製品が、ハイエンドモデルに先駆けて秋葉原に登場。今回は、それらバリュー~ミドルクラス向けビデオチップを搭載するビデオカード2製品を取り上げ、それぞれのパフォーマンスを検証してみたい。

GeForce2 Ti RADEON 7500



●GeForce2 Ti

 「GeForce2 Ti」は、先日発表されたGeForce Titaniumシリーズの最下位に位置するビデオチップで、GeForce2シリーズのコアをベースとしている。

 GeForce2シリーズは、初代の「GeForce2 GTS」登場後、高クロック動作のハイエンドモデル「GeForce2 Ultra」、GeForce2 UltraとGeForce2 GTSの中間に位置するパフォーマンスを発揮する「GeForce2 Pro」の3種類が存在している。そして今回登場したGeForce2 Tiは、GeForce2 Ultraを置き換える製品として位置付けられている。

 NVIDIAが発表する、GeForce2 Tiの動作クロックなどの仕様は下にまとめたとおりで、GeForce2 Ultraと全く同じとなっている。ただし、ビデオドライバに用意されているクロック周波数の調節機能でチェックしたところ、ビデオチップの動作クロックは250MHzと、GeForce2 Ultraと同じだったが、ビデオメモリの動作クロックが444MHzとなっていた。つまり、メモリバンド幅は若干低下していると考えられる。このクロック値は、今回利用した製品である、PROLINKの「PixelView GeForce2 Ti」独自の仕様という可能性も考えられる。ただ、それでもGeForce2 Ultraとの差はほとんど無視できるほどなので、おそらく実際のパフォーマンスも、双方の間に大きな差はないと思われる。

 ちなみにGeForce2 Tiは、動作仕様だけでなく、その他の基本仕様も従来のGeForce2シリーズとほとんど同じとなっている。また、NVIDIAのGeForce2シリーズのラインアップからGeForce2 Ultraが消えている。こういった点を総合すると、GeForce2 Tiは、GeForce2 Ultraの後継チップであることは明白だ。

【GeForce2 Tiの主な仕様】
GeForce2 TiGeForce2 Ultra
メモリインターフェイス128bit128bit
メモリバンド幅6.4GB/秒6.4GB/秒
ピクセルフィルレート1Gピクセル/秒1Gピクセル/秒
ポリゴン処理能力3,100万トライアングル/秒3,100万トライアングル/秒
ビデオチップの動作クロック*250MHz250MHz
ビデオメモリ動作クロック*444MHz(DDR動作時)460MHz(DDR動作時)
*:GeForce2 Tiのビデオチップとビデオメモリの動作クロックは実測値

ビデオドライバのクロック調整メニューを見ると、GeForce2 Tiのコアの動作クロックは250MHz、ビデオメモリの動作クロックは444MHzとなっていた


●RADEON 7500

 ATIは、従来のRADEONシリーズの後継ビデオチップとして、DirectX 8.1をフルサポートする「RADEON 8500」を発表しているが、同時にバリュー市場をターゲットとする「RADEON 7500」も発表している。

 RADEON 7500は、先ほど紹介したGeForce2 Tiとほぼ同じ位置づけのビデオチップだ。RADEON 8500は最新コアを採用しているのに対し、RADEON 7500は従来のRADEONコア(A22コア)をベースとするビデオチップで、高クロック動作モデルである。RADEONは、初代A13コアから2代目のA22コアへと進化してきたが、その最終形がこのRADEON 7500と言っていいだろう。

 RADEON 7500では、A22コアのRADEONをベースとしているが、コアの製造プロセスは従来の0.18μmから0.15μmへとシュリンクされている。そして、ビデオチップ動作クロックは270MHz、ビデオメモリの動作クロックは460MHz(DDR動作)と、従来モデルから大幅に動作クロックが向上している。また、動作クロックの向上に加えて、RADEON VEに搭載されていた、1チップでデュアルディスプレイ表示をサポートする「HydraVision」も新たに搭載されている。つまり、ただ単純にシュリンクしただけの製品ではない。

 今回入手した製品は、RADEON 7500のバルク品だが、VGA出力端子に加えてDVI端子とSビデオ出力端子が用意されている。ドライバCD-ROMにはHydraVisionドライバも搭載されており、もちろんデュアルディスプレイ表示が可能となっている。ちなみに、先週末にはバルク品だけでなく、リテールパッケージ(英語版)の発売も始まっており、製品も潤沢に供給されているようだ。

【RADEON 7500の主な仕様】
RADEON 7500RADEON(A22コア搭載)
製造プロセス0.15μm0.18μm
ビデオチップの動作クロック250MHz200MHz
ビデオメモリ動作クロック460MHz(DDR動作時)400MHz(DDR動作時)
メモリバンド幅(HyperZ有効時)8.8GB/秒8GB/秒



●パフォーマンスは互角

 それでは、GeForce2 Ti搭載カードとRADEON 7500のパフォーマンスを、いつものようにベンチマークテストを通して検証してみよう。利用したベンチマークソフトは、本連載でいつも利用しているものだ。テスト環境は下に示したとおりである。

 また、比較のために、GeForce2 Ultraを搭載するカノープスの「SPECTRA 8800」でも同様のテストを行なった。ビデオドライバは、RADEON 7500については基本的に付属のものを利用しているが、GeForce2 Ti搭載カードとSPECTRA 8800についてはNVIDIAのホームページに掲載されている最新ドライバを利用した。

【テスト環境】
・CPU:Pentium III 800EB MHz
・マザーボード:ASUS CUSL2
・メモリ:256MB PC133 SDRAM(CL3)
・ハードディスク:IBM DTLA-305040
・OS:Windows 98 Second Edition + DirectX 8.0a


●2D描画能力

 2D描画能力の測定には、Ziff-Davis,Inc.のWinBench 99 Version 1.2に含まれるBusiness Graphics WinMark 99とHigh-End Graphics WinMark99を利用した。

【WinBench99 Ver1.2】

【Business Graphics WinMark99】
1,024×768 16bpp 347
341
344
348
1,024×768 32bpp 348
342
332
349
GeForce2 Ti
RADEON 7500
3D Blaster GeForce2 MX400
SPECTRA 8800

【High-End Graphics WinMark99】
1,024×768 16bpp 975
968
963
977
1,024×768 32bpp 967
963
952
970
GeForce2 Ti
RADEON 7500
3D Blaster GeForce2 MX400
SPECTRA 8800

 結果を見るとおわかりのように、今回の2製品はともにトップクラスの2D描画能力を持っている。特に気になるような点もなく、問題となるような部分は全くなかった。


●DirectX環境下での3D描画能力

 次に、DirectX環境下での3D描画能力だ。MadOnion.com( http://www.madonion.com/ )の「3DMark2000」および「3DMark2001」を利用し、1,024×768ドット、1,280×1,024ドット、1,600×1,200ドットの16bitおよび32bitカラーモードにおける描画能力を測定した。

【3DMark2000】
1,024×768 16bpp 6,609
6,349
4,745
6,582
1,024×768 32bpp 5,720
6,095
3,366
5,868
1,280×1,024 16bpp 5,903
5,271
3,319
6,019
1,280×1,024 32bpp 4,198
4,859
2,131
4,407
1,600×1,200 16bpp 4,886
4,162
2,450
5,066
1,600×1,200 32bpp 3,127
3,719
1,339
3,305
GeForce2 Ti
RADEON 7500
3D Blaster GeForce2 MX400
SPECTRA 8800

【3DMark2001】
1,024×768 16bpp 3,126
3,019
2,725
3,130
1,024×768 32bpp 2,949
2,967
2,059
2,983
1,280×1,024 16bpp 2,965
2,763
2,132
2,992
1,280×1,024 32bpp 2,568
2,690
1,018
2,640
1,600×1,200 16bpp 2,747
2,471
1,650
2,777
1,600×1,200 32bpp 2,099
2,380
N/A
2,189
GeForce2 Ti
RADEON 7500
3D Blaster GeForce2 MX400
SPECTRA 8800

 まず、3DMark2000の結果を見ると、GeForce2 Tiの結果は、GeForce2 Ultra搭載のSPECTRA 8800に若干劣っている。おそらくこれは、今回利用したGeForce2 Ti搭載カードのビデオメモリの動作クロックがSPECTRA 8800よりもやや低いためと思われる。ただ、その差は小さく、ほぼ同等と言っても問題ない程度だ。それに対しRADEON 7500の結果は、16bitカラーモードではGeForce2 Ti搭載カードやSPECTRA 8800の結果にやや劣っているものの、32bitカラーモードでは逆にRADEON 7500の方が良い結果が得られている。RADEONシリーズは従来より32bitカラーモードでのパフォーマンスの高さが売りだったが、RADEON 7500でもその傾向がはっきりと現れている。もちろん従来のRADEON搭載製品と比較しても大幅なパフォーマンスアップとなっている。

 3DMark2001の結果も、3DMark2000の結果とほぼ同じとなった。GeForce2 Tiの結果はSPECTRA 8800に若干劣るもののほぼ同じだった。また、RADEON 7500の結果は3DMark2000の結果ほどはっきりとはしていないものの、16bitカラーモードではGeForce2 TiやSPECTRA 8800にやや劣り、32bitカラーモードでは解像度が高くなるにつれRADEON 7500の方が良い結果を示している。

 色数や解像度それぞれを見ると若干の差はあるものの、おそらく実際に利用した場合には描画速度などでそのパフォーマンス差を体感することはほとんどないと思われる。つまり、全体的にはGeForce2 TiとRADEON 7500のパフォーマンスはほぼ互角と考えていいだろう。


●OpenGL対応3Dゲームにおける3D描画能力

 最後に、OpenGL対応3DゲームソフトであるQuake III Arenaを利用して、OpenGL環境での3D描画能力を測定した。

【Quake III】
800×600 16bpp 121
113
112
121
800×600 32bpp 120
113
086
120
1,024×768 16bpp 119
102
086
119
1,024×768 32bpp 110
102
055
111
1,280×1,024 16bpp 108
078
054
109
1,280×1,024 32bpp 082
076
032
086
GeForce2 Ti
RADEON 7500
3D Blaster GeForce2 MX400
SPECTRA 8800

 このテストでは、RADEON 7500が若干低い結果となった。それでも、実際にアプリケーションを利用する場合には十分なパフォーマンスであり、このテストの結果ほどの差を体感するようなことはほとんどないはずだ。


●どちらもすばらしいコストパフォーマンスで甲乙付けがたい

 ベンチマークテストの結果を見ると明らかなように、GeForce2 Ti搭載カードとRADEON 7500はほぼ同等の2D/3D描画能力(それはGeForce2 Ultraともほぼ同等)を持っていると言っていいだろう。そして、何より嬉しいのが、そのように高い描画能力を誇るビデオカードが、2万円前後という安価で販売されているという点だ。現状ではGeForce2 Ti搭載カードの方が若干安く販売されているようだが、その差は1~2千円程度とほとんどないと言ってもいいほどだ。

 はっきり言って今回取り上げた2製品の間には、パフォーマンス面での差はほとんどなく、価格面での差もほとんどない。そうなると、どちらを選択すればよいのか、かなり迷うかもしれない。個人的には、HydraVision対応で、標準でデュアルディスプレイ表示をサポートし、DVI出力端子を持つRADEON 7500のほうに若干魅力を感じるが、もちろん、どちらを選択したとしても後悔するようなことはないはずだ。NVIDIAのビデオチップを搭載するビデオカードが市場を席巻していた近年の状況から考えると、製品選択で迷うような今回のような状況は、間違いなくユーザーにとって喜ばしいことである。

 今回はバリュー~ミドルクラス市場をターゲットとする製品のバトルだったが、今後はハイエンド市場でもNVIDIAのGeForce3 TiシリーズとATIのRADEON 8500の直接対決が控えている。しばらくはビデオカード市場から目が離せないと言っていいだろう。

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(2001年10月23日)

[Reported by 平澤寿康@ユービック・コンピューティング]


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