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第82回:身近になった海外ローミングでISPを選ぶ |
助かったと安心する一方で、すっかりAT&Tの快適な米国でのアクセスに浸っていた私は、同じぐらいに快適な海外接続用のISPを探す羽目になった。
●AT&T World Netの何が快適だったのか
2000年、どれぐらい海外にいたのかと調べてみると84日にもなることがわかった。年間20回以上も海外取材に出るという某君よりはマシとしても、国外で仕事をしなければならない日数は比較的多い方だろう。おかげで出張用に使っているPCのキートップは、半年もすればすり減ってツルツルになる。
あちこちの都市を移動するような出張、というのも当然あるわけだが、面倒なのがアクセスポイントだ。リストをダウンロードしておけばいいだけなのだが、そのリストが更新される事も多く、最新のものにするのは出かけるときの行事。海外APを提供するISPによっては、都市名検索などのよけいなアプリケーションが付いているため、リストを丸ごとダウンロードできないところもある。
しかし、出発前のお約束とはいえ、そんなことを調べるのは面倒なもの。そこで専用ダイヤラなるものが存在するわけだが、操作を簡略化しようとの意図が空回りして、逆によくわからない仕様になっているものもある。というわけで、できれば自分で簡単にダイヤルアップ接続の設定を行なえるISPが望ましい(急に他人のPCでアクセスしたい場合もあるからだ)。
AT&Tが海外接続に便利だったのは、米国内にフリーダイヤルのAPがあり、しかもその利用料が無料(実際には通常の月額固定料金に含まれる)だったからだ。AT&Tのユーザーは、米国からのアクセスで全米共通の1-800ダイヤルをダイヤルアップネットワークとして登録しておけば、どんな都市に出かけたときも同じ設定でインターネットに接続できる。その上、料金は接続料、電話料金ともに(日本で契約している)固定料金で構わないというのは、ほかのプロバイダと比較して大きなアドバンテージだった。
ところが、冒頭で紹介したお知らせを見ると、これが1月4日で変更になるというのだ。変更のタイミングがあまりに急というのもあるが、ローミング料金が120分まで無料ながら、その後は1分20円と結構高い。
ホテルの部屋から常時インターネットに繋いだまま仕事をしていた僕にとっては、もうAT&Tは魅力的なISPではなくなってしまったのだ。
●ローミング無料プロバイダの増加
そもそも、国内の固定料金を支払っていればローミング料金は不要というISPは、海外に拠点を置くISPしか存在しなかった。AT&Tもその1つだが、僕が海外に出始めた頃は、ほかに選択肢が存在しないに近かったため、ISPを選ぶことはなかったのだ。
ところが最近は海外ローミングを充実させた大手ISPが目立つ。個人的な用途で調べたため、漏れはあるかもしれないが、ASAHIネット、So-net、Infosphereが海外ローミング料金無料になっている。まだISP全体からすれば少数派だが、2,000円以下の使い放題コースで契約しておけば、海外で繋ぎっぱなしの仕事ができる。
実はまだこれらのISPと契約していないのだが、個人的にはSo-netを選択しようと考えている。So-netとInfosphereは、いずれも米国、欧州共に多くのAPが無料で利用できるが、以前、数年に渡ってSo-netを利用していたため、使い慣れていることからSo-netを選択した。
米国でのアクセスは、AOL(アメリカオンライン)が最も便利なはずという意見もあるだろう(ここも自前で用意しているAPならローミング料金はいらない)。しかし、AOLはPPPでのアクセスポイントを用意しておらず、ダイヤルアップネットワークからIP接続することはできないという(サポートダイヤルで確認)。AOLのクライアントがWindowsにバンドルされているとはいえ、個人的には専用クライアントが必要という点がマイナスとなって候補から外した。
ASAHIネットの海外ローミングも非常に魅力的なのだが、PAP(PPP認証プロトコル)での認証を行なえないため、スクリプトを利用しなければ自動ログインできない。PCを変更した時や、他人のPCからアクセスするときに面倒と思ったわけだ。
しかし、以前であれば選択の幅がなかった安価な海外ローミングも、これだけサービス内容が充実したことは素直に喜びたい。ここしかない、ではなく、好きなところから選べるようになったのだから。
フリーダイヤルでどこからでも同じアイコンでダイヤルアップ、という便利さは失なわれるが、インターネットに繋ぎっぱなしで仕事をする環境を失なうことだけからは逃れられたことにホッとしているところだ。
今年も一年、なんとかこの連載を続けてくることができました。応援していただいた読者に感謝いたします。今年はこれが最後の更新。みなさん、良いお年をお迎えください。
[Text by 本田雅一]