Athlon/Duron用高性能チップセットSiS735がついに登場!



 SiSのAthlon/Duron用チップセットSiS735は、SiSが初めてパフォーマンスPC向けに開発したチップセットであり、低価格で高いパフォーマンスを実現するチップセットとして登場が期待されていた。量産開始は今年3月下旬とのことだったが、ようやく搭載マザーボードが店頭に並んだので、早速そのパフォーマンスを検証してみよう。


●Multi-Threaded I/O Linkの採用により、高い性能を実現

 SiSといえば、SiS630(Pentium III Celeron用)やSiS730S(Athlon/Duron用)といったビデオ統合チップセットで高い市場シェアを獲得しているが、SiS735は、ビデオ機能は統合されていない。ビデオ統合チップセットは、基本的に1,000ドル以下のPC(メインストリームPCとバリューPC)で用いられる製品だ。

 より高い描画性能を求められる1,000ドル以上のパフォーマンスPCでは、ビデオ非統合チップセットとGeForce3などに代表される高性能ビデオチップとの組み合わせが一般的である。SiS735およびそのPentium III/Celeron対応版のSiS635を投入することで、パフォーマンスPC市場にも進出しようというのが、SiSの戦略だ。

 SiS735は、ノースブリッジとサウスブリッジに相当する部分をワンチップに集積したチップセットであり、682ピンBGAパッケージで提供される。ビデオ統合型チップセットのSiS730SやSiS630もワンチップ構成だが、SiS735では、ノースブリッジ相当部分とサウスブリッジ相当部分をMulti-Threaded I/O Linkと呼ばれる超高速インターナルバスで接続することで、高いパフォーマンスを実現していることが特徴だ。

 チップセット間を結ぶ専用バスとしては、IntelがIntel 8xxで採用しているHubインターフェイスやVIA TechnologiesがApollo Pro266/Apollo KT266で採用しているV-LINKが存在するが、HubインターフェイスとV-LINKのバンド幅はどちらも266MB/secであるのに対し、SiS735のMulti-Threaded I/O Linkは、最大1.2GB/secという広いバンド幅を実現していることが売りだ。

 また、Multi-Threadedという言葉からもわかるように、同時に複数のデバイスに対して転送を行なえるので、マルチタスク環境で数多くのデバイスを利用している場合などに、特に威力を発揮する。

 サポートするメモリは、DDR/SDR SDRAMで、DDR266(PC2100)/DDR200(PC1600)に加え、PC133も利用できる(DIMMソケットの数はDDR/SDRともに3基まで)。FSBクロックは100/133MHz(DDR動作で200/266MHz相当)をサポートしているが、メモリクロックはFSBクロックと非同期で動作させることも可能なので、FSBクロック100MHz時にPC2100を利用するなど、柔軟な運用が可能だ。

 もちろんIDEインターフェイスはUltra ATA/100対応であり、USBポートも2系統6ポートまでサポートするなど、そのほかのスペックに関しても不満はない。また、100Base-TX/10Base-TやHome PNA 1.0/2.0対応のネットワークコントローラ(物理層)も内蔵している。


●ECSのK7S5AとCHAINTECHのCT-7SID0が登場

 SiS735搭載マザーボードとして、最初に店頭に登場したのはECSのK7S5Aである。K7S5Aは、ATXフォームファクタに準拠したマザーボードで、SDR SDRAM DIMMソケットとDDR SDRAM DIMMソケットをそれぞれ2基ずつ装備しており、SDR SDRAMとDDR SDRAMの両方に対応していることが特徴だ(SDR SDRAMとDDR SDRAMの同時利用はできない)。

ECS K7S5A CHAINTECH CT-7SID0

 また、100Base-TX/10Base-T対応のLAN機能も装備している。今回はまずこのK7S5Aを入手して、テストを行なったのだが、AGPドライバを組み込むと、3DMark2001やQuake III Arenaといった3D関係のベンチマークテストが正常に動作しない(すぐにハングアップする)という現象に悩まされた。

 AGPドライバは、マザーボードに付属するものだけでなく、SiSのWebサイトからダウンロードした最新版でも試してみたが、結果は変わらなかった。また、ビデオカードをGeForce3搭載ビデオカードからRADEONに変更しても、やはり正常に動作しなかった。

 インターネットで調べてみたところ、筆者とほぼ同じ環境で正常に動作している例もあるようなのだが(K7S5A+GeForce256搭載ビデオカードで、やはり3DMark2000/2001が動作しないという報告例もあった)、原因は不明である。

 BIOSを最新版にアップデートしたり、OSをWindows 2000とWindows Meの両方で試してみたが状況は変わらないので、別のSiS735搭載マザーボードであるCHAINTECHのCT-7SID0を入手したところ、こちらは問題なく動作した。

 CT-7SID0では、同じAGPドライバ(SiSのWebサイトからダウンロードした最新版のV1.06)で正常に動作したので、今回入手したK7S5Aが不良品であった可能性も否定できない。そこで、今回は、CT-7SID0を用いてテストを行なった。CT-7SID0は、microATXフォームファクタ準拠のマザーボードであり、メモリはDDR SDRAMにのみ対応している。

 比較対照用として、AMD-760を搭載したASUSTeK COMPUTERのA7M266とVIA TechnologiesのKT266を搭載したGA-7VTXを用意した。AGPドライバは、それぞれチップセットベンダーのWebサイトからダウンロードした最新版を用いた。マザーボード以外のテスト環境は以下の通りである。

【テスト環境】
CPU:Athlon 1.13GHz(FSB266MHz)
メモリ:PC2100 DDR SDRAM(128MB)
ビデオカード:PROLINK MVGA-NVG20A(GeForce3、64MB DDR)
ビデオドライバ:Detonator3 v12.41
HDD:Seagate Barracuda ATA ST313620A(13.6GB)
OS:Windows Me+DirectX 8.0


●3Dアプリケーションで特に高いパフォーマンスを発揮

 ベンチマークテストとしては、BAPCO( http://www.bapco.com/ )のSYSmark2001とeTesting LabsのWinBench 99 Version 2.0、MadOnion.com( http://www.madonion.com/ )の3DMark2001、id Software( http://www.idsoftware.com/ )のQuake III Arenaを用いた。

 SYSmark2001は、Microsoft Office 2000やDragon Naturally Speaking、Netscape Communicatorなどのオフィス系アプリケーションと、Macromedia DreamweaverやMacromedia Flash、Microsoft Windows Media Encorderなどのインターネットコンテンツ作成系アプリケーションを用いて、システム全体の総合的なパフォーマンスを計測するベンチマークテストである。

 WinBench 99 Version 2.0は、2Dグラフィックス描画性能やディスクアクセス性能などの、デバイス単位のパフォーマンスを計測するベンチマークテストであり、今回はその中から、2Dグラフィックス性能を計測するBusiness Graphics WinMark99/High-End Graphics WinMark99、ディスクアクセス性能を計測するBusiness Disk WinMark99/High-End Disk WinMark99を用いた。

 3DMark2001は、DirectX 8.0環境に対応した3D描画性能を計測するベンチマークテストであり、Quake III Arenaでは、OpenGL環境における3D描画性能を計測することができる。

【SYSmark2001】
SYSmark2001 Rating 120
122
119
Internet Content Creation 115
122
119
Office Productivity 126
122
119
SiS735
AMD-760
KT266

【WinBench 99 Version 2.0】
Business Graphics WinMark 99 000464
000482
000466
High-End Graphics WinMark 99 01,510
01,470
01,450
Business Disk WinMark 99 04,290
03,820
03,970
High-End Disk WinMark 99 11,800
14,400
13,700
SiS735
AMD-760
KT266

 SYSmark2001の結果は、SiS735、AMD-760、KT266の3製品ともにほぼ同程度のスコアとなっている。細かく見ると、SiS735は、インターネットコンテンツ作成系アプリケーション(Internet Content Creation)実行時のパフォーマンスの値がほかに比べてやや低く、オフィス系アプリケーション(Office Productivity)実行時のパフォーマンスが高くなっている。

 WinBench 99の結果も、SYSmark2001の結果と傾向は似ている。High-End Disk WinMark99の値はほかの2製品に比べてやや低くなっているが、逆にBusiness Disk WinMark99の値は高い。通常のビジネスアプリケーション実行時の性能は、AMD-760やKT266と互角だといえるだろう。

【3DMark2001】
1,024×768ドット16bitカラー 5,485
5,354
5,177
1,024×768ドット32bitカラー 5,279
5,073
5,038
1,280×1,024ドット16bitカラー 4,750
4,646
4,590
1,280×1,024ドット32bitカラー 4,349
4,197
4,243
SiS735
AMD-760
KT266

【Quake III Arena】
1,024×768ドット16bitカラー 154.8
148.2
143.1
1,024×768ドット32bitカラー 151.8
143.6
141.6
1,280×1,024ドット16bitカラー 121.1
118.6
117.6
1,280×1,024ドット32bitカラー 112.5
105.3
110.7
SiS735
AMD-760
KT266

 3DMark2001の結果は、SiS735がほかの2製品に比べて明らかに頭1つ抜け出している。高解像度多色環境になるほど、ビデオカードに対する負荷が高くなるため、チップセットによる差は出にくくなるが、1,024×768ドット16bitカラーではKT266に比べて6%ほど高いスコアを記録している。

 また、Quake III Arenaの結果も3DMark2001と同様に、SiS735が最も高いスコアを出している。3D系ベンチマークテストの結果から、チップセットパフォーマンスの順位をつけると、SiS735>AMD-760>KT266となる。


●コストパフォーマンスを求めるユーザーには最適な選択肢の1つ

 SiS735搭載マザーボードは、まだ製品が出始めたばかりにもかかわらず、期待通りのパフォーマンスを実現しているといえるだろう。CT-7SID0は実売1万円を切る価格で販売されているので、コストパフォーマンスも非常に高い。安定性や信頼性という面では、やはり純正チップセットのAMD-760に軍配があがるが、CT-7SID0も動作自体は十分安定していた。大幅な値下げを果たしたPentium 4に対抗するため、Athlonの価格も急激に下がっており、執筆時現在、リテールパッケージの1.4GHz動作品が17,000円前後で購入できるようになっている。低価格かつ高性能なマシンを作りたいのなら、Athlon+SiS735搭載マザーボードという組み合わせは有力な選択肢となる。

 なお、今回のテスト(特に3D系ベンチマークテスト)であまり成績が奮わなかったKT266だが、すでに後継のKT266Aが発表されている。KT266AはKT266とピン互換のチップセットだが、パフォーマンスは最大20%程度向上しているといわれている。こちらも期待できそうだ。

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(2001年9月13日)

[Reported by 石井英男@ユービック・コンピューティング]


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