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速報:Pentium 4用SDRAM対応チップセットIntel 845の実力 |
急速なPentium 4の普及を支えるのが、本日正式発表されたIntel 845チップセットだ。Intel 845チップセットは現時点で最もローコストなPC用のメインメモリであるSDRAMをサポートしているため、システム全体のコストを抑えることが可能になっている。このレポートでは2チャネルのDirect RDRAMが利用可能なIntel 850チップセットと、VIA TechnologiesのDDR SDRAMをサポートしたP4X266の3製品を利用して、Intel 845のパフォーマンスに迫っていきたい。
●コストパフォーマンスに優れるがパフォーマンスは劣るIntel 845
Intel 845チップセット(以下Intel 845)が、これまで唯一のPentium 4プロセッサ(以下Pentium 4)用チップセットだったIntel 850チップセット(以下Intel 850)ともっとも異なっているのはメモリインターフェイスだ。従来のIntel 850マザーボードが2チャネルのDirect RDRAMをサポートしていたのに対して、Intel 845では1チャネルのSDRAMをサポートしている。ほかにも細かな仕様の変更はあるが、性能面に大きな影響を与える違いはこのメモリインターフェイスだけと言っていい。
メモリインターフェイス変更の目的はシステム全体でのコスト削減だ。例えば、AKIBA PC Hotline!の先週末調べにおけるメモリの平均価格は、256MBのPC133 SDRAMは3,051円だが、128MB×2で256MBのPC800 RIMMは10,098円と実に3倍近い価格差がついている。
つまり、メモリだけで7,000円近い差がついているのだ。さらに、Intel 850搭載マザーボードとIntel 845搭載マザーボードでも若干の価格差がある。情報筋によれば、もっとも安価に提供されているIntel 850マザーボードでも、OEM価格で100ドルを切るのがまれであるのに対して、Intel 845マザーボードでは最安値のものは80ドル台で出荷されているという。ここでも若干の価格差がついている。
これだけ価格が異なる理由は、Intel 845マザーボードがローコストな4層基板で作られているためだ。また、ピンピッチが高密度になっているIntel 850に比べて、Intel 845はピンのピッチに余裕がある。こうしたピン配置をとることにより、マザーボードベンダは配線のとり回しが容易になるのだ。
また、Intel 850はDirect RDRAMの価格が高かったこともあり、どちらかと言うと数が見込めないハイエンドに利用される例が多かった。これに対してIntel 845は安価なSDRAMが利用可能であるため、今後はボリュームが見込めるメインストリーム市場に利用されることになるだろう。このため、生産数が増えれば増えるほどコスト削減効果により、価格が下がることが期待できる。
マザーボードのチップセットをIntel 850から、Intel 845に変えることにより、256MBメモリ搭載時のシステムコストが1万円程度は下がる。これがIntel 845が注目されている理由であるのだ。
しかし、2チャネルのDirect RDRAMをサポートしているIntel 850のメモリ帯域幅が3.2GB/secあったのに対して、Intel 845はその3分の1の1.06GB/secにすぎない。性能面の低下は避けられないと言える。
●ICHシリーズに対応したIntel Application Accelerator
今回IntelがIntel 845と同時に公開したのがIntel Application Acceleratorだ。Intel Application Acceleratorは、要するにUltra ATA用のバスマスタドライバで、サウスブリッジにICHを搭載したチップセット(Intel 850、Intel 845、Intel 815など)で利用できる。
Intelの説明によれば、このIntel Application Acceleratorを利用することにより、システムのブートや、ディスクの読み書きが高速になるほか、Pentium 4ではデータプリフェッチが可能になると言う。ここで言っているデータプリフェッチとは、おそらくSSE2によるデータプリフェッチのことを言っているのだろう。Pentium 4ではSSE2の命令で明示的に指定することにより、キャッシュへのデータの取り込みが可能になる。
ディスク周りの性能をチェックするe-Testing LabsのWinbench99 Version 1.2に含まれるディスクベンチマークでチェックしたところ、Intel Application Acceleratorをインストールすると高速になることが確認できた。
アプリケーション環境下におけるディスクアクセスを再現するDisk WinMarkではビジネス向けで25%、ハイエンド向けで15%も向上しており、大きな効果があることがわかる。これに対してシーケンシャルアクセスを計測しているDisk Inspection TestのDisk Transfer Testsでは、逆にIntel Application Acceleratorをインストールしていない方が高速だった。
こうしたことから、Intel Application Acceleratorはディスクキャッシュの効率を上げるタイプのドライバである可能性が高いと言えるだろう。ただ、実アプリケーション環境ではこうしたドライバは非常に効果があるので、ICH、ICH2を搭載したマザーボードを持っているユーザーであればインストールしてみる価値はあるだろう。なお、Intel Application AcceleratorはIntelのWebサイトよりダウンロードが可能だ。
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Intel Application Acceleratorなし Intel Application Acceleratorあり |
□Intel Application Accelerator
http://www.intel.com/support/chipsets/iaa/index.htm?iid=update+010910b
●概ね10~25%程度の性能下落を確認
写真はLANも備えたIntelの845マザーボード「D845WNL」 |
【動作環境】
Intel845 | P4X266 | Intel850 | |
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CPU | Pentium 4 1.6GHz | ||
マザーボード | D845WN | VT5580A | Intel D850GB |
メモリ | PC133 SDRAM(133MHz、CL=3) | DDR SDRAM(266MHz、CL=2.5) | Direct RDRAM |
容量 | 256MB | ||
ビデオカード | GeForce3(64MB) | ||
ハードディスク | IBM DTLA-307030 | ||
OS | Windows 2000+ServicePack2 |
結果はグラフの通りで、アプリケーションベンチマークのSYSmark2001、Winstone 2001のいずれも、Intel 845はIntel 850に比べて11~12%程度の性能下落が見られた。この傾向はメモリの帯域幅をより使うと見られる3Dアプリケーションでは顕著だ。
【SYSmark2001】
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Intel845 Intel850 P4X266 |
【Winstone 2001】
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Intel845 Intel850 P4X266 |
3DMark2001、QuakeIII Arenaにおける最も低解像度の640×480ドット/16bitカラーでは、3DMark2001で14%、QuakeIII Arenaに至っては23%もの性能下落が確認できた。さらに、SSEやSSE2における性能を確認するIntel Pentium 4 Processor Application Launcherにおいても性能下落は著しく、MP3のエンコーダソフトであるeJay/MP3 Plus 1.3では20%もの性能低下を確認できた。
【3DMark2001】
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Intel845 Intel850 P4X266 |
【QuakeIII Arena】
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Intel845 Intel850 P4X266 |
【Intel Pentium 4 Processor Application Launcher】
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Intel845 Intel850 P4X266 |
こうした性能低下の原因は、言うまでもなくメモリ帯域幅の減少だ。メモリの帯域幅が減少していることはシステムバスとメモリの帯域幅の性能を計測するStreamD(Stream for DOS)を利用すると端的にわかる。
StreamDは、CPUからメモリへデータを大量に転送することで、システムバスとメモリの帯域幅を計測するアプリケーションだ。Intel 845はIntel 850に比べて50~57%程度、帯域幅が実際に減少していることがわかる。このことは、システムバス、メモリのどちらかの帯域幅が狭い場合、それに引っ張られて性能が向上しなくなることを示しており、これが原因でIntel 845の性能が上がらないことは間違いないだろう。
【StreamD】
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Intel845 Intel850 P4X266 |
●パフォーマンス重視の自作ユーザーにはIntel 850マザーがお薦め
以上のように、Intel 845はIntel 850に比べ、実に10~25%程度性能が落ちることがわかる。今回はPentium 4 1.6GHzでテストしたが、前回のPentium 4 2GHz+Intel 850のベンチ結果[ http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/20010828/hotrev123.htm ]を見てわかるように、Pentium 4 1.6GHz+Intel 845は、1クロック下のPentium 4 1.5GHz+Intel 850よりも低い。実際には(前回の記事には結果は掲載していないが)Pentium 4 1.4GHz+Intel 850とほぼ同等のパフォーマンスであり、Intel 850からIntel 845に変更することで、-200MHz相当性能が下がると言ってもいいだろう。
こうしたことから、前回記事の結論でも述べたように、パフォーマンスを重視する自作PCユーザーには、Intel 845はお薦めできない。システム価格での価格差が1万円程度でしかない現状では、パフォーマンスプレミアムがあるIntel 850を選択すべきだろう。もちろん、Northwoodへの移行を見据えてmPGA478ソケットを搭載したマザーボードを選択すべきであるのは言うまでもないが、現時点では選択肢が少なく、入手性があまりよくないのが玉にキズだ。
コスト重視のユーザーやメーカー製PCを購入する場合には、Intel 845を選択ということになるだろう。確かにパフォーマンスではIntel 850だが、システム全体で約1万円ほど安くあがる。特に、大手PCメーカーにとっては、Intel 845ではなくIntel 850を選択する理由はほとんどないだろう。現状ではコンシューマユーザーがPCを購入する場合、性能の指標としているのはCPUの実性能ではなく、CPUのクロックだ。
多くのユーザーはPentium 4 1.7GHz+Intel 850、Pentium 4 1.7GHz+Intel 845をほぼ同等の性能を持っていると認識している。ユーザーがどちらでも同じと考えているのに、1万円も価格が違ったら、ユーザーは安いシステムを選択するだろう。こうした理由から、メーカー製PCは今後ほとんどがIntel 845へ移行していくことになるだろう。
□関連記事
【9月11日】Intel、SDRAM対応Pentium 4用チップセット「845」を正式発表
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/20010911/intel.htm
□Akiba PC Hotline!関連記事
【8月25日】i845搭載新型Socket 478マザーが続々とフライングでデビュー
台風11号とともに各メーカーが大挙してフライング販売スタート
http://www.watch.impress.co.jp/akiba/hotline/20010825/i845mb.html
(2001年9月11日)
[Reported by 笠原一輝@ユービック・コンピューティング]