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●数年後を見据えたマイクロプロセッサがPentium 4だ
Intelデスクトッププロダクトグループジェネラルマネージャ兼副社長 ルイス・バーンズ氏 |
最新のアーキテクチャのマイクロプロセッサがより長く使い続けられたという例として、バーンズ氏は「以前、Pentium II 450MHzとPentium III 500MHzの違いは、50MHzの違いで5%程度の違いであるとされた。しかし、2年経った現在では利用されるソフトウェアが変わったことにより40~70%の違いが出ており、当時Pentium IIIを購入したユーザーは今も使い続けられている」と述べ、新しいアーキテクチャのCPUを買うことが結果的に投資が無駄にならないという見解を述べた。
さらに、「NetBurstマイクロアーキテクチャに基づくPentium 4プロセッサは、1.5GHzからスタートし、今日2GHzを超えた。今後もクロックは急速に上がっていくだろう」と、Pentium 4は今後もクロックを上げることが容易であるという認識を明らかにした。
また、プラットフォーム面についても触れ、「Intelは2週間後に、SDRAMが利用可能なIntel 845チップセットを発表する。これによりパフォーマンス重視のユーザーは2チャネルのDirect RDRAMが利用可能なIntel 850を、コストパフォーマンス重視のユーザーはIntel 845を選択可能になり、より充実する」と述べ、Intel 845の発表時期を2週間後と具体的に明らかにした。
●Northwoodへのアップグレードパスとなる478ピンのPentium 4
今回発表されたPentium 4プロセッサは、従来のPentium 4 1.8GHzに比べて0.2GHz、0.1GHzクロックを向上した2GHzと1.9GHzの2製品だ。マイクロアーキテクチャは従来と同じNetBurstマイクロアーキテクチャで、20ステージにおよぶハイパーパイプライン、12kのμOPSによるトレースキャッシュ、8KBのL1データキャッシュ、256KBのL2キャッシュという仕様には変更はなく、基本的には従来モデルの高クロック品であると言っていいだろう。
会場に展示されていたPentium 4。奥が新しい478ピンのμFC-PGA2パッケージ、手前が従来の423ピンのPGAパッケージ |
従来のPentium 4は423ピンのPGAパッケージで提供されていたが、今回2GHzのリリースと同時に478ピンのμFC-PGA2パッケージも提供されることになった。このμFC-PGA2は、1.8GHz以下のクロックでも提供され、1.5GHz~1.8GHzも併せて提供される。今後しばらくは423ピンPentium 4が1.3GHz~2.0GHzまで、478ピンPentium 4が1.5GHz~2.0GHzまでラインナップされ、PCメーカーは目的に応じてどちらかを選択することになるが、今後は478ピンのμFC-PGA2が増えていく可能性が高い。
SDRAMが利用できるIntel 845。裏側を見ると、奥に写っているIntel 850に比べてピンのピッチや配置が変わっているのがわかる。このため、マザーボードへの実装は若干容易となる |
478ピンμFC-PGA2パッケージが利用可能なmPGA478ソケットを搭載したIntel製Intel 850マザーボードのD850MV |
NorthwoodではL2キャッシュが現行Pentium 4の倍である512KBに増強されるため、大幅な性能向上を期待できるとして注目を集めている。このNorthwoodは478ピンのμFC-PGA2でのみ提供される予定であり、同じマザーボードでNorthwoodもサポートしたいメーカーは478ピンのPentium 4を選択するからだ。
現時点では、NorthwoodはA2ステップの段階にあり、PCメーカーなどにはA2ステップのサンプルが配布されている。第4四半期の頭には、製品版と同等のBステップが配布される予定になっており、8月初旬時点では11月の終わりから1月にかけての発表が計画されているようだ。なお、Northwoodに関しては明日のIntelアーキテクチャグループジェネラルマネージャ兼上級副社長のポール・オッテリーニ氏の基調講演で詳細が明らかになると見られている。
●Compaq ComputerやIBMがSFFのPentium 4搭載パソコンを展示
Compaq ComputerのEvo D500。日本でも第4四半期に投入される計画があるという |
Pentium 4 2GHzのTDP(Thermal Design Power:熱設計電力)は75.3Wと非常に大きくなっており、現在PCメーカーがスリムタワーで利用している冷却機構と同じコストでは、スリムタワーで使うのは難しいとされている。しかし、今回Compaq Computerが参考出品したEvo D500という小型デスクトップPCでは、日本のスリムタワーなみに小型化されており、CPUにPentium 4 2GHz(478ピン)、Intel 845チップセット、メインメモリはSDRAMという構成になっている。
CPUのクロックやスペックなどによるが、ディスプレイなしのシステム価格では1,000ドル以下をターゲットにしているという。出荷は第4四半期が予定されており、日本でも計画が進んでいると担当者は説明していた(日本では本体を立ててスリムタワーケースとするということだ)。なお、CPUとしてはNorthwoodにも対応可能であるということで、Northwoodが出荷された場合にはそちらを搭載する可能性もあるということだった。
IBMが公開していたのは、同社の企業向けの省スペースPCであるNetVista X40の後継となる、新製品でこちらも秋頃の出荷が予定されているという。NetVista X40はCPUにPentium IIIを採用し、液晶ディスプレイの後部にマザーボードやハードディスクを装着し、底部にDVD-ROMドライブを格納する形状になっており、アームで机に固定できるようになっているなどユニークな形状となっている。
IBMのNetVista Xシリーズの最新モデル。Pentium 4 1.7GHzを搭載し、液晶の背面にマザーボード、ハードディスクなどが格納されているほか、下部にDVD-ROMドライブなどが装着されている |
NECのブースに展示されていたPackard Bell NECのミニタワーマシン。あくまで米国向けで日本には投入される予定はないという |
容積が7リットルや8リットル級の日本のSFF(Small Form Factor)スリムタワーに比べるとやや大きいものの、SFFにPentium 4を入れようとした点は注目に値する。果たして、日本メーカーがこのPentium 4をどのように自社のSFFであるスリムタワーに入れてくるか、そうしたマシンが出揃うであろう10月頃の動向に注目したい。
Intelの新しい子供用コンピュータトーイのDigital Movie Creater。動画を録画し、ドックに置くことでその動画をPCに転送して楽しむことができる。サウンドモーファーの動画版と考えるといいだろう |
●2GHzの大台に達したPentium 4を迎え撃つAMDはどう出るか?
Intelが、Pentium 4を2GHzというもう1つの“大台”に載せたことは、対AMDというマーケティング戦略上、非常に大きな意味を持っている。AMDの現時点での最高クロックはAthlon 1.4GHzであり、2GHzという数字が登場したPentium 4と何か大きな差を付けられてしまったような印象をコンシューマユーザーに与える可能性が高い。
実際、PCメーカーのマーケティング担当者はほぼ例外なく「コンシューマユーザーはCPUの性能というのを、実際にベンチマークで計測した数値などで比較することはまずない。CPUの性能とするのはCPUの実クロックでしかない」と指摘する。
PC業界の関係者やパワーユーザーであれば、AthlonとPentium 4を実クロックで比較した場合にはAthlonの方が高い処理能力を発揮することを知っているだろう(詳細は関連記事を参照していただきたい)。しかし、一般のコンシューマユーザーにとってはそんなことは難解な技術的な内容であり、理解して貰うのは至難の業だ。
ただ、こうした状況は別に今に始まったことではなく、AMDを初めとするいわゆるサードーパーティCPUメーカーは、以前よりこうした状況に直面してきた。例えば、AMDのK5は同じクロックのIntel Pentiumプロセッサよりも高い処理能力を発揮したし、古くはCyrixのM1もPentiumよりも高い処理能力を発揮した。そこで、これらのメーカーはP-Ratingという仕組みを作った。具体的にはZiff-DavisのWinstone 96で測った数値を元に、そのCPUがIntelのCPU(具体的にはPentium)でどれと同等であるかというのをわかりやすくしたものだった。
一見、これは良い方法と思われたのだが、PCのパフォーマンスをWinstoneだけで決定できるのか、またそのP-Ratingでクロック表示されたCPUを買ったユーザーから「200MHzだと思って買ったのに、実際は150MHzだった」とクレームが出るなど(実際、イギリスでは訴訟沙汰となった)問題が解決できず、その後、AMDはK6でP-Rating表示をやめ、最後まで使っていたCyrixも会社自体がVIAに買われて結局無くなってしまった。P-Ratingはユーザーにはわかりやすいとも言えたが、いくつもの問題を抱えており、結局成功しなかったのだ。
第3四半期の終わり頃(つまり9月末から10月頭あたり)に発表されるといわれているコードネームPalomino(パロミノ、開発コードネーム)のデスクトップ版は、リリース当初は1.53GHzと1.5GHzのクロックが発表されると言われている。SSEにも対応するPalominoでは、同クロックのPentium 4との性能差がさらに開くと見られている。しかし、先ほど述べたようなコンシューマユーザーにとっては、2GHzに対する1.5GHzでしかないのだ。それ以上でもそれ以下でもない。
このため、AMDは実際のパフォーマンスでは差があるということをユーザーに理解してもらえるようなプロモーションを行なう必要がある。既にP-Ratingのような仕組みはAMD自身が禁じ手としてしまったこともあり、AMDがどうするかに注目が集まっている。
AMDは2002年後半にアーキテクチャを一新したHammerをリリースする。情報筋によればHammerのパイプライン構造などはAthlonと同じであるため、Hammer登場時にPentium 4(現在のIntelのロードマップだと2.4GHz以上となる)を実クロックで上回ることができるかは明確ではないという。
しかし、上回るにせよ、上回らないにせよ、Hammerが登場するまで1年近くあるので、それまでは現状のAthlonそしてこれから登場するPalominoコアでPentium 4に対抗していかなければならない。それは、やはり何らかのマーケティングプログラムになるだろう。おそらく、今頃AMDのマーケティングチームはそれを検討しているだろうし、もうフィックスして走り出している時期かもしれない。果たしてそれが刺激的で注目を集める戦略であるのか? AMDの反撃に業界の大きな注目が集まっている。
□Intel Developer Forum Conference Fall 2001ホームページ
http://www.intel94.com/idf/index2.asp
□関連記事
【8月28日】AKIBA PC Hotline! Hothotレビュー by Ubiq Computing
史上最高クロックのPentium 4 2GHz登場!
~478ピンPentium 4 & FSB 266MHz Athlon全クロックCPUのベンチマークデータつき
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/20010828/hotrev123.htm
【8月27日】Intel、Pentium 4 2GHzを正式発表
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/20010827/intel.htm
(2001年8月28日)
[Reported by 笠原一輝@ユービック・コンピューティング]