速報:Intel Pentium 4 1.8GHz/1.6GHzレビュー



 世界最大の半導体メーカーであるIntelは、同社のパフォーマンスPC向けCPUとしては最高峰となるPentium 4 1.8GHzをリリースした。また、同時にこれまで、存在していなかった1.6GHzも追加され、Pentium 4のクロックグレードの選択肢が増えてきた。このレポートではPC用のCPUとしては間違いなく最高クロックであるPentium 4 1.8GHzと、同時に登場したPentium 4 1.6GHzに迫ってみよう。


●急遽投入されたPentium 4 1.8GHzと1.6GHz

 今回投入されたPentium 4 1.8GHz、1.6GHzはもともとIntelの予定にはなかった製品だ。Intelは2000年の11月に、1.5GHz、1.4GHzの2製品でPentium 4をリリースして以来、1月に1.3GHzを追加し、4月に1.7GHzのPentium 4が追加されている。これらは、Intelのもともとのロードマップに基づいたもので、順調に出荷が行なわれてきた。しかし、今回追加されたPentium 4 1.8GHzとPentium 4・1.6GHzは、つい最近までIntelのロードマップには載っていなかった製品で、ここ1カ月で急遽追加された製品だ。本来は、4月に1.7GHzがリリースされたあとで、9月頃に2GHzのPentium 4が追加されるというストーリーだった。

 しかし、5月に入り、急遽1.8GHzと1.6GHzの2製品が7月上旬に追加され、さらに第3四半期中には、2GHzと1.9GHzが追加される予定になっており、当初の予定にはなかった、1.9GHz、1.8GHz、1.6GHzの3製品が追加されていることがわかる。それでは、この3製品はどうして追加されたのだろうか? Intelアーキテクチャグループ ジェネラルマネージャ兼副社長のビル・スー氏は「(そうした製品を投入するのは)OEMメーカーがより多くのPentium 4の製品を必要としているからだ。既にPentium 4はかなりのスピードで普及を開始しており、OEMメーカーはより多くの価格帯を必要としている」( http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/20010606/comp08.htm )と述べている。

 IntelはPentium IIIからPentium 4への移行を急速に進めており、そのなかで多くのPCメーカーが搭載PCをリリースしている。さらに、今後普及を進めていくのに、さまざまな価格帯のPentium 4を用意することで、PCメーカーは多くの価格帯に製品を投入することが可能になるのだ。


●高クロックになるにつれ、NetBurstマイクロアーキテクチャの特徴が生かされつつある

 今回入手したPentium 4 1.8GHzのエンジニアリングサンプルは、Cステッピングのコアを利用しており、基本的にはPentium 4 1.7GHzの高クロックバージョンとなっている。動作電圧は1.75Vと特に変更はなく、Intel D850GBではBIOSアップデートなどの必要もなく動作した。

 今回行なったベンチマークはBAPCO( http://www.bapco.com/ )のSYSmark2001、MadOnion.com( http://www.madonion.com/ )の3DMark2001、id Software( http://www.idsoftware.com/ )のQuakeIII Arena、MadOnion.comのVideo2000のMPEG2 Encoding Testの4つだ。動作環境は表の通りで、Pentium 4側のマザーボードはIntelのD850GB(Intel 850搭載)で、比較対称として用意したAthlonは、ASUSTeK ComputerのA7M266(AMD-760搭載)を利用している。

【動作環境】
CPUPentium 4Athlon
マザーボードIntel D850GBASUSTeK A7M266
チップセットIntel 850AMD-760
メモリPC800PC2100(CL=2.5)
メモリ容量256MB
ビデオチップGeForce3(64MB、DDR SDRAM)
ハードディスクIBM DTLA-307030(30GB)
OSWindows 98 Second Edition(英語版)+DirectX 8.0a

 一般的なアプリケーションを集めたベンチマークであるSYSmark2001だが、オフィスアプリケーションの結果であるOffice Productivityの結果では、Pentium 4 1.8GHzはAthlon 1.4GHzを若干下回った。しかし、コンテンツ作成系の結果であるInternet Contents Creationや総合結果(Overall Rating)では、Pentium 4 1.8GHzがAMDのAthlon 1.4GHzを上回った。

【SYSmark2001】
Overall Rating 157
148
147
135
129
149
143
Internet Content Creation 171
160
158
146
139
146
139
Office Productivity 144
136
136
125
119
152
147
Pentium 4 1.8GHz
Pentium 4 1.7GHz
Pentium 4 1.6GHz
Pentium 4 1.5GHz
Pentium 4 1.4GHz
Athlon 1.4GHz
Athlon 1.33GHz

 Pentium 4ではオフィスアプリケーションの結果が良くないというのはよくきく話だが、クロックがここまで高速になったことにより、その点はカバーできるようになってきている。なによりもPentium 4が得意とするコンテンツ作成系アプリケーションでの高い性能は注目に値する。このあたりは、高クロックを容易に実現でき、コンテンツ作成系アプリケーションで高い性能を発揮することを主眼に設計されたNetBurstマイクロアーキテクチャの特徴がよく出ていると言える。これまでは、クロックがあまり高くなかったこともあり、それほど目立たなかったが、これだけ高クロックになってくると、弱点と言われ続けたオフィスアプリケーションにおける処理能力も十分カバーできていると言える。

【3DMark2001】
640×480ドット/16bitカラー 6,979
6,698
6,682
6,357
6,186
6,339
6,277
640×480ドット/32bitカラー 6,825
6,609
6,580
6,241
6,077
6,249
6,175
1,024×768ドット/16bitカラー 6,180
5,991
5,980
5,732
5,629
5,692
5,625
1,024×768ドット/32bitカラー 5,800
5,653
5,645
5,444
5,341
5,375
5,300
Pentium 4 1.8GHz
Pentium 4 1.7GHz
Pentium 4 1.6GHz
Pentium 4 1.5GHz
Pentium 4 1.4GHz
Athlon 1.4GHz
Athlon 1.33GHz

【Quake III Arena】
640×480ドット/16bitカラー 210.6
208.0
198.0
192.8
183.8
181.7
178.3
640×480ドット/32bitカラー 211.0
207.7
198.3
193.3
183.9
182.2
178.6
800×600ドット/16bitカラー 193.8
191.5
186.7
183.3
176.5
174.6
172.0
800×600ドット/32bitカラー 192.0
191.0
184.4
181.4
176.5
172.9
171.1
1,024×768ドット/16bitカラー 144.0
144.1
143.8
143.7
143.2
141.5
141.2
1,024×768ドット/32bitカラー 142.0
142.1
141.7
141.6
141.2
139.5
139.1
1,280×1,024ドット/16bitカラー 96.5
96.6
96.5
96.5
96.8
96.1
96.1
1,280×1,024ドット/32bitカラー 93.1
93.2
93.2
93.2
93.2
92.8
92.8
Pentium 4 1.8GHz
Pentium 4 1.7GHz
Pentium 4 1.6GHz
Pentium 4 1.5GHz
Pentium 4 1.4GHz
Athlon 1.4GHz
Athlon 1.33GHz

 3Dゲームにおけるパフォーマンスでも、Pentium 4 1.8GHzは、Athlon 1.4GHzなどを圧倒した。CPUによる差が出やすい低解像度(640×480ドット)の結果では、Pentium 4 1.8GHzは群を抜いている。SSEにしか対応していないVideo2000では、Athlonを上回ったのは当然として、Pentium 4 1.7GHzなどと比べても向上しているのがわかる。

【Video2000】
MPEG2 Encoding 44.39
42.68
40.63
38.52
36.52
35.96
34.87
Pentium 4 1.8GHz
Pentium 4 1.7GHz
Pentium 4 1.6GHz
Pentium 4 1.5GHz
Pentium 4 1.4GHz
Athlon 1.4GHz
Athlon 1.33GHz


●現時点での最高性能を誇るCPUだと言ってよいが、価格の下落に期待

 以上のように、ほとんどの項目でAthlon 1.4GHzを上回る処理能力を発揮したPentium 4 1.8GHzは、現時点で最も処理能力が高いCPUであるといっても過言ではないだろう。特に、処理能力の差が体感速度に直結するコンテンツ作成系アプリケーションや3Dアプリケーションなどで高い処理能力を発揮したことは評価していいだろう。

 ただ、その代わりにコストパフォーマンスは良いとは言えない。米国Intelが発表した1,000個ロット時の価格はPentium 4 1.8GHzが562ドル(日本円で約67,000円)となっており、Athlon 1.4GHzの本日時点でのリストプライスである253ドル(約3万円)に比べて圧倒的にコストパフォーマンスが悪い。ほとんどダブルスコアであることを考えると、Athlonのコストパフォーマンスの高さは評価できる。

 そうしたことを考えると、Pentium 4 1.8GHzはコストパフォーマンスよりも、とにかく処理能力を何よりも重視するプロフェッショナルユーザーなどにお薦めしたい。そうしたプロユースのユーザーは、何よりもコンテンツ作成系アプリケーションの性能が重要になるが、Pentium 4 1.8GHzのそうしたパフォーマンスは折り紙付きといってよく、これから何よりも性能重視でPCを購入しようと考えている、プロフェッショナルユーザーであれば、十分検討に値するCPUだと言えるだろう。

□関連記事
【7月2日】米Intel、Pentium 4 1.8GHzなどを発表
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/20010703/intel.htm
【6月29日】【Hothot】Athlon MPのパフォーマンスを計測する(デュアル編)
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/20010629/hotrev115.htm
【6月20日】【Hothot】Athlon MPのパフォーマンスを計測する(シングル編)
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/20010620/hotrev114.htm

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(2001年7月3日)

[Reported by 笠原一輝@ユービック・コンピューティング]


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