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前回は、正式にドライバがリリースされたことを受けて、主にAthlonに対応したマザーボードで、GeForce 3の再テストを行なった。今回は、Intel対応マザーボードでのテスト結果について触れることにしたい。また、前回まで悩まされていた、3DMark 2001の描画エラーについても、とりあえず回避する方法の見当がついたので、それも取り上げたいと思う。
まずその前に、1つ訂正から。前回掲載した表の記述のうち、DDR SDRAMに対応したK7T266Proのメモリの項(表1と表2で各1ヵ所)が「256MB PC2100 CL2.5」になっていたのを、「256MB PC2100 CL2」に訂正します。単純な筆者のうっかりミスでした。ごめんなさい。
●6枚のIntel系マザーボードでテスト
さて、今回取り上げたIntelプロセッサ対応のマザーボードだが、前回も参考に使った純正マザーボード2種(D850GBおよびD815EEA)に4種を加えた。うち1枚はi850を用いたサードパーティ製Pentium 4マザーボード(AOpen AX4T)、残りはすべてSocket 370対応のもの。初期のApollo Pro 133AマザーボードであるSoltekのSL-67KV、ほとんど普及しなかったi820EマザーボードであるASUS TekのCUC2、そして最新のApollo Pro 266チップセットを用いたDDRメモリ対応のEpox EP-3VHAの3枚だ。組み合わせる周辺機器、実施したテスト等は、基本的に前回と同じで変更はない。
【表1:GeForce 3を用いたテスト】
マザーボード | Intel D850GB | AOpen AX4T | Intel D815EEA | ASUS CUC2 | Soltek SL-67KV | Epox EP-3VHA |
---|---|---|---|---|---|---|
BIOS (Version) | AMI (P13) | AWARD (R 1.02) | AMI (P07) *1 | AWARD (1024) | AWARD (F8.1) | AWARD (1528) |
チップセット | i850 | i850 | i815E | i820E | Apollo Pro 133A *2 | Apollo Pro 266 |
チップセットドライバ | 2.90.007 | 2.90.007 | 2.90.007 | 2.90.007 | 4in1 4.31V | 4in1 4.31V |
ソケット | Socket 423 | Socket 423 | Socket 370 | Socket 370 | SC242 (Slot 1) | Socket 370 |
CPU | Pentium 4 1.7GHz | Pentium 4 1.4GHz | Pentium III 1B GHz | Pentium III 1B GHz | Pentium III 1B GHz | Pentium III 1B GHz |
メモリ | 256MB PC800 | 256MB PC800 | 256MB PC133 CL2 | 256MB PC800 | 256MB PC133 CL2 | 256MB PC2100 CL2 |
3DMark 2001 | ||||||
描画品質(著しい描画エラーの有無) | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ |
スコア | 5,728 | 5,317 | 4,766 | 4,738 | 4,588 | 4,869 |
SYSmark 2001 | ||||||
Rating | 147 | 125 | 111 | 108 | 107 | 113 |
Internet Content Creation | 161 | 134 | 110 | 111 | 107 | 113 |
Office Productivity | 134 | 116 | 112 | 105 | 108 | 114 |
【共通項目】
ビデオカード | Leadtek WinFast GeForce3 TD |
---|---|
ビデオドライバ | Detonator 12.41(オフィシャル) |
解像度 | 1,024x768/32bit/85Hz |
OS | Windows 98 Second Edition |
DirectXランタイム | DirectX 8.0a |
サウンド | YMF744 |
LAN | 3C905-TX |
HDD | DiamondMax Plus 60 |
●やはり振るわないi820E
早速その結果だが、何と言っても注目は同じPentium III 1GHzを用いた4枚のマザーボード間の比較だろう。ここではi815Eチップセットを用いたD815EEAの性能が、1つの「ものさし」となる。最も性能が振るわないのはSL-67KVだが、マザーボード、チップセットともに最古参の部類に入る。それを考えれば止むを得ないところか。ただし、このマザーボード、BIOSの更新だけは地道に続いている。
そのSL-67KVと大差ない成績なのが、i820Eチップセットを用いたCUC2だ。最も高価なメモリ(Direct RDRAM)を使っているのにこれでは、バリューライン向けチップセットであるi815シリーズに駆逐されたのも止むを得ない。i820がi820Eにマイナーチェンジする頃には、すでにi820の運命は決まっていたため、それを採用したCUC2も成功した製品とは言いがたい製品になってしまった。その結果、BIOSは正式には1度も更新されなかったのだが、1GHzプロセッサでの起動時に警告メッセージが出るため、ベータ版のBIOSをここでは用いている。
●問題を抱えながらも良好なパフォーマンスを示したEP-3VHA
i815Eに対し、大きな差とはいえないものの、最も良い成績をおさめたのは、DDR SDRAMに対応したEP-3VHAである。この差をもって、やっぱり次世代のメモリはDDRなどと言うことはできないと思うが、とりあえずすべての成績で一番だった、というのは重要なことだ。
しかし、残念ながらEP-3VHAは良いことばかりではなかった。実は、最初、システムが起動しなかったのである。原因は冒頭でも触れたCL2のPC2100 DIMM(Apacer製、チップはNANYA)だ。このメモリを2枚インストールした状態で、電源を投入すると、メモリカウントが終了した状態でフリーズしてしまう。ちょうどIDEのデバイスリストを表示する直前だったため、最初はIDEデバイスの問題かと思ったのだが、何をやっても効果なし。筆者は、マイナーデバイス(SuperDisk)の愛好者であるため、念のために普通のフロッピードライブに代えたりもしたのだが、問題は解消しなかった。
そこで、メモリをMicron製(PC2100 CL2.5)に差し替えたところ、あっさりと動いてしまった。この状態でまずBIOSを最新版(1528)に更新し、再びApacer製のDIMMに差し替えたところ、今度はちゃんと動いた。ベンチマークテストはこの状態で計測したものである。とりあえず問題は解消したし、ベンチマークテストプログラムが落ちたりすることもなかったのだが、BIOSの完成度という点では、まだ十分ではない、というのが率直な気持ちだ。無難で手堅いのは、やはりi815シリーズということになってしまうだろう。
●アパチャーサイズを変更して描画エラーを回避
実は、このEP-3VHAとSL-67KV、2枚のマザーボードでも、これまで筆者を悩ませてきた3DMark 2001の描画エラー問題に遭遇した。そして、とりあえずこのエラーが起こる原因が見つかった。それは、BIOSセットアップのAGPアパチャーサイズの設定である。AGPアパチャーというのは、AGPグラフィックスチップがメインメモリを参照するのに使う、アドレス空間上の範囲のこと。これがあまりに小さすぎると、AGPの意味がなくなってしまう。どれくらいが適正であるかは、難しいところだが、筆者は少しでも性能を良くするため、ベンチマーク時はAGPアパチャーを最大サイズに設定している(ほとんどのBIOSが256MBを最大としているようだ)。ところが、描画エラーが生じたマザーボードも、AGPアパチャーを小さくすれば、描画エラーが生じなくなることが分かった。
もう1つ分かったのは、AGPアパチャーが256MBのままでも、Windows 2000なら描画エラーの問題は生じない、ということだ。Windows 9x系のOSのみで、メモリアドレスを余分に確保した場合に生じるエラーというと、思いつくのはVcacheのアドレス範囲とのコンフリクトだ。MicrosoftのKnowledge Base文書番号Q253912に書かれている通り、Windows 9x系OSの32bitプロテクトモードキャッシュドライバ(Vcache)は、仮想アドレス0xC0000000から0xFFFFFFFFまでの1GBの空間(システムエリア)を利用する。ところが、この同じシステムエリアは、OSの様々なサービスに加え、DOSプロンプト(仮想マシン)やAGPアパチャーも利用する。ひょっとして、AGPアパチャーを大きくしすぎたことで、他のサービスやアプリケーションとコンフリクトしたのだろうか。
これを確認するため、AGPアパチャーのサイズとメインメモリの実装量を変えながら、3DMark 2001を実行してみた。メインメモリの実装量を変えるのは、Vcacheの初期値が起動時に物理メモリの実装量と同じになるように決定されるからだ(SYSTEM.INI等で指定しない限り)。つまり、メインメモリを減らせば、それだけシステムエリアのアドレスに空きができる(元々Q253912は、512MBを超えてメモリを大量に搭載した場合に、逆にメモリ不足のエラーメッセージが出る現象について述べたものである)。
この結果をまとめたのが表2だ。Windows 2000では、AGPアパチャーのサイズにかかわらず、描画エラーは生じない。が、Windows 98 SEでは、メインメモリの実装量にかかわらず、AGPアパチャーを256MBにすると、必ず描画エラーが生じた。もし、システムエリアでAGPアパチャーが他のサービスやアプリケーション等とコンフリクトしているのなら、AGPアパチャーを256MBのまま、メモリを128MBに減らすことで、問題を回避できなければならない(AGPアパチャーが128MBの時、メインメモリが256MBで問題が生じないということは、両者の合計を384MBに抑えることで、問題は回避できるハズ)。だが、実際には、メインメモリを減らしても、AGPアパチャーを128MB以下に設定しない限り、描画エラーは生じた。少なくとも、システムエリアのコンフリクトが描画エラーの原因ではない。
【表2:AGPアパチャーサイズと描画エラーの発生状況】
Epox EP-3VHA | ||
---|---|---|
AGPアパチャーサイズ | 256MB | 128MB |
Win98SE/メモリ搭載量 256MB | × / 3,624 | ○ / 4,892 |
Win98SE/メモリ搭載量 128MB | × / 3,610 | ○ / 4,834 |
Win2000/メモリ搭載量256MB | ○ / 4,904 | ○ / 4,901 |
●回避方法さえわかれば特に問題はない
前回、そして今回と、計11枚のマザーボードで、GeForce 3のテストを行なった。このうち、AGPアパチャーを256MBに設定して3DMark 2001で描画エラーが生じたのは、今回の2枚にGA-7ZX(ただしBIOS FDまで)を加えた3枚。偶然にもすべてVIA製チップセットを用いたマザーボードだが、KT133Aを用いたAK73Pro (A)で問題がないことを考えれば、チップセットの問題とは考えにくい。おそらく問題の原因はBIOSにあるものと考えられる。が、AMIとAWARD、どちらかのBIOSに必ず問題が生じるというものでもなさそうだ。要するに、個別のBIOSの問題ではないかと考えられる。
ただし、回避策が分かってしまえば、この問題はそれほど深刻なものではない。AGPアパチャーを問題が生じないサイズに縮小すれば良いのである。AGPアパチャーサイズを256MBから128MBに小さくすることで、ほんのわずか性能が低下する傾向があるようにも思うが、ほとんど測定誤差に近いレベルだ。気にする必要はほとんどない。
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【6月13日】再び、GeForce 3搭載ビデオカードを試す
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/20010613/hot150.htm
(2001年6月20日)
[Text by 元麻布春男]