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DVI対応液晶ディスプレイを試す:ソニー「SDM-M81」


●ディスプレイインターフェイスをデジタルにする必要性

 前々回のこのコラムで、筆者はCRTフィルタを取り上げた。その際、筆者が一時期、真剣に液晶ディスプレイへの切り替えを検討していたこと、切り替えるのならデジタルインターフェイス(DVI)にするつもりであることを述べた。現時点で、CRT以外のディスプレイデバイスというと、事実上液晶ディスプレイしかない(特殊な用途向けにはプラズマディスプレイも存在するが)。もしCRTディスプレイが利用できないのだとしたら、ほかに選択の余地はない。

 一方、デジタルインターフェイスのDVIについては、おそらく異論のある人もいることだろう。いちがいに今すぐDVIに移行すべきだ、と言えない理由として、現行のDVI製品は製品相互間での互換性が必ずしも十分ではない、という事情があることは理解している。DVIに対応した製品(ビデオカード、ディスプレイ、そしてケーブル)が割高であることも承知しているつもりだ。しかし、これらの問題は、新しいインターフェイスが登場してきた時は、必ず生じるものであり、時間とともに解決するものと信じている。闇雲に飛びつくことはお勧めしないが、自分自身としてはそのリスクを負う覚悟はあるし、「それが商売」みたいな部分もある。

 そもそも筆者は'97年春の段階で、すでになくなった某誌の巻頭コラムにおいて、ディスプレイインターフェイスをデジタル化することの必要性を唱えている。当時みんなに笑われたものだし、今でも疑問に感じている人が少なくないと思うが、筆者の気持ちに変わりはない。せっかくデジタル処理したデータを、わざわざ劣化しやすいアナログデータに変換してディスプレイに転送するのは不合理である。ましてや液晶ディスプレイのようにデジタルインターフェイスを持つディスプレイの場合、デジタルデータをアナログ変換したあと、ケーブルで転送し、再びデジタル変換するというのは、なんとも奇妙な話だ。

 そういういきさつもあって、IDFで初めてDVIのデモを見た時、筆者は次に買うディスプレイは絶対にDVI対応のものにすると、周囲に宣言した(ただし、この時点で筆者の念頭にあったのは、液晶ディスプレイではなく、DVI対応のCRTディスプレイだったのだが)。残念ながら、それから今に至るもディスプレイの買い替えに踏み切ってはいないため、いまだに筆者はDVIディスプレイのユーザーにはなっていない。それでも、仕事マシンのビデオカードにRADEON VEを選んだように、DVI対応ディスプレイへ移行する準備は密かに? 進めている。


●DVI対応液晶ディスプレイ「ソニー SDM-M81」

 そんな筆者の元に、PC Watch編集部から、最新の液晶ディスプレイを見てみます? という誘いがあった。まず届いたのはソニーのSDM-M81だ。

 1,280×1,024ドット(SXGA)解像度対応の18.1インチTFT液晶パネルを採用したSDM-M81は、DVI-IとアナログRGB計2系統の入力に対応した製品。つまり、アナログとデジタルの2系統としてだけでなく、アナログ2系統としても利用できる(ただしDVI-I端子をアナログで使うかデジタルで使うかは切り換えスイッチで事前に設定する必要がある)。しかも、2系統の映像入力に合わせて、内蔵スピーカーも2系統の入力を用意してあるのは偉い(2系統の映像入力を備えたディスプレイでも、意外と2系統の音声入力を備えたモデルは少ない)。以前であれば18インチクラスの液晶ディスプレイなど、筆者が購入を検討できるような価格帯ではなかったが、本機の実売価格は16万円前後と、思ったよりもリーズナブルだ。

 SDM-M81でまず気づいたのは、その重量だ。7.7Kgという重量は、CRTディスプレイに比べればはるかに軽いのだが、14~15インチクラスの液晶ディスプレイ(4kg前後)のつもりで扱おうとすると、ビックリさせられる。本機の電源がACアダプタ方式であることを考えると余計に驚くが、この重さが本機の「座り」の良さにつながっている部分もある。SDM-M81に付属するスタンド(取り外し可能)は、可動範囲の広い、つまり調整範囲の広いものだが、どのポジションにしても、不安定さを感じることは少ない。

DVI-Iと、アナログRGBの2系統だけでなく、内蔵スピーカー入力も2系統あるのが偉い 電源はACアダプタだが、重量は7.7kgと重い。しかし重量が「座り」の良さにつながっている


●一昔前の液晶ディスプレイとは明らかに一線を画した画質

 このSDM-M81と組み合わせたビデオカードは、ATI TechnologiesのALL-IN-WONDER RADEONとRADEON VEの2枚に、LeadtekのWinFast GeForce3 TDを加えた3枚。いずれもDVIに対応したデジタルインターフェイスを備えている。ATIの2種はいずれもTMDSのトランスミッタ(自社開発)を内蔵しているのに対し、GeForce3 TDはSilicon Image製のトランスミッタを外付けする。ALL-IN-WONDER RADEONとRADEON VEでは若干開発時期が異なると思われるため、両方を試してみた。

 評価は主にデジタルインターフェイスを用いて行なったが、上記の3枚のカードで特に問題は見られなかった。一部に、SDM-M81とALL-IN-WONDER RADEON間の互換性問題を指摘する声があるのは聞いていたのだが、筆者の手元にきた評価機では問題は生じなかった(すでに対策済みという可能性はあるが、それなら第2ロットからは修正されて出荷される可能性が高いだろう)。

 実際に使ってみたが、デジタルインターフェイスを採用している以上、どのビデオカードとの組合せでも、画質が著しく異なるということはない。基本的にはどれも同じだし、どのビデオカードとの組合せにおいても、ピッチ調整やフェーズ調整といった調整は不要だ。ほぼPlug and Playで利用できるわけで、画質的なメリットだけでなく、使い勝手の面でもメリットが大きいと感じる。

 画質全般という点で感じたのは、SDM-M81がCRTにかなり近い画質を備えたディスプレイである、ということだ。輝度、コントラスト、視野角、反応速度など、一昔前の液晶ディスプレイとは明らかに一線を画す。これならCRTディスプレイの代わりに使っても、それほど違和感はないだろうと思う。それどころか、これだけ輝度が高いと、液晶ディスプレイといえど、フィルタがあった方が良いと感じるほどだ。また、1,024×800ドットや、800×600ドットといった、本来の解像度より低い解像度で用いた場合も、画質の低下は少ない。以前の液晶ディスプレイに比べて、スケーリングの品質が大幅に向上している。

 では、現実問題として、筆者が次のディスプレイにSDM-M81を選ぶか、といわれると、それはちょっと辛い。最大の理由は、今使っているディスプレイが1,600×1,200ドット解像度であるのに対し、SDM-M81の解像度が1,280×1,024ドットどまりであることだ。CPUのスピード同様、一度ディスプレイの解像度を上げ、それに慣れてしまうと、なかなか低い解像度には戻れない。ならば、2台使えばどうか、ということになるのだが、いくら安くなったとはいえ、このクラスの液晶ディスプレイを2台購入するのは、なかなか勇気がいる。かといって1,600×1,200ドット以上の表示が可能な液晶ディスプレイは、なお筆者の予算を超えているのである。

■写真撮影
若林直樹(STUDIO海童)

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http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/20010417/sony.htm

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(2001年5月30日)

[Text by 元麻布春男]


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