バリューPC向けCPU、御三家700MHz対決!?
~VIA Technologies C3プロセッサ



 以前のこのコーナーでは、当時Samuel2のコードネームで呼ばれていたVIAのバリューPC向けCPUの速報レビュー( http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/20010205/hotrev94.htm )を行なった。その後、3月に行なわれたCeBITにおいて、Samuel2のブランド名はC3プロセッサに決定し、既に秋葉原などでも販売が開始されている。今回はこのSamuel2ベースのC3プロセッサ/700MHzを入手し、同じくバリューPC向けCPUであるAMD DuronプロセッサとIntel Celeronプロセッサの同じく700MHzのCPUと比較してみた。


●謎が深まる仕様通りではないC3プロセッサ

 さて、今回編集部が入手したC3プロセッサ(以下C3)は、2月に入手したSamuel2のように、エンジニアリングサンプルであることを示す「ES」のマーキングこそないものの、ロゴは従来と同じ「CyrixIII」となっており、一見するとそれがC3であるかどうかの判断に苦しむ。しかし、クロックの部分をよく見てみると「700A MHz」となっており、Samuel2ベース、すなわちC3であることがわかる。

 CyrixIII(Samuel1)とC3(Samuel2)の違いをまとめると以下のようになる。

【CyrixIIIとC3の違い】
CyrixIIIC3
コードネームSamuel1(C5A)Samuel2(C5B)
システムバスP6バスP6バス
システムバスクロック100/133MHz100/133MHz
L1キャッシュ128KB128KB
L2キャッシュ-64KB
製造プロセスルール0.18μm0.15μm
コア電圧1.9V1.5V

 見てわかるように、最も大きな変化は64KByteのL2キャッシュが追加されたことだろう。既に本コーナーのCyrixIIIのレポート( http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/20000622/hotrev66.htm )でも書いたとおり、CyrixIIIではL2キャッシュがなかったため、本来得意なはずのビジネスアプリケーションにおいてもパフォーマンスが低く、同クロックのCeleronなどに大幅に劣るという結果になっていた。しかし、今回のC3ではL2キャッシュが搭載された事により、少なくともL2キャッシュがなかった分のハンディはなくなることになる。

 もう1つの特徴は製造プロセスルールが0.15μmへと微細化され、ダイサイズが55平方mmと小さくなったことと、これにあわせてコア電圧(Vcore)も1.5Vへと下げられたため、消費電力が小さくなり、AthlonやPentium IIIのように放熱周りにさほど注意しなくてもよいことだ。しかし、今回入手したサンプルのVcoreは1.6Vとなっており、VIAの公式発表よりも0.1V高くなっている。おそらく、CPUにマージンを持たせて安定動作させるためと推測される。元々消費電力が低いCPUであるので、この程度の違いであればさほど気にする違いではないだろう。


●確かに発熱量は小さく小型のファンでも安定して動作する

 今回はC3 700MHzの比較対象として、Celeron 700MHz、Duron 700MHzの2製品を用意し、3つのバリューPC用CPUを700MHzという同クロックで比較してみることにした。テストの環境は表の通りで、比較に利用したテストはBAPCO( http://www.bapco.com/ )のSYSmark2000、MadOnion.com( http://www.madonion.com/ )の3DMark2000 Version 1.1、id Software( http://www.idsoftware.com/ )のQuakeIII Arenaの3製品だ。

【動作環境】
CPUC3CeleronDuron
クロック700MHz700MHz700MHz
システムバスクロック
(実クロック)
100MHz66MHz100MHz
倍率7倍10.5倍7倍
チップセットApollo Pro133AApollo KT133A
マザーボードGIGA-BYTE GA-6VX7-4XASUS A7V133
メモリPC133 SDRAM
(128MB、CL=3)
PC100 SDRAM
(128MB、CL=2)
PC133 SDRAM
(128MB、CL=3)
ビデオカードELSA GLADIC MX(GeForce2 MX、32MB)
ハードディスクIBM DTLA-307030(30GB、Ultra ATA/100)
OSWindows 98 Second Edition+DirectX 8a

 結論から言えば、どのベンチマークテストでもC3 700MHzは、Celeron 700MHz、Duron 700MHzを下回る結果にしかならなかった。もともと浮動小数点演算が得意ではないので3DMark2000やQuakeIII Arenaでは、だいぶ差がついている。ただ、SYSmark2000でアプリケーション別に詳しく見ていくと、C3の得意な分野が見えてくる。例えば、Excel 2000、Netscape Communicator、Paradox 9.0、PowerPoint 2000、Word 2000などではCeleron 700MHzを若干下回る程度か、アプリケーションによっては上回っている(ただし、Duronには負けている)。

 こうしたことから、ビジネスアプリケーションに関しては同クロックのCeleronとほぼ互角の性能を発揮するが、浮動小数点演算を多用するようなコンテンツ作成系ソフトや3D系のアプリケーションではやや厳しいというのがC3のパフォーマンスの傾向であると言える。

【SYSmark2000】
Overall Rating 084
146
116
Internet Content Creation 065
145
118
Office Productivity 101
146
115
Bryce 4 078
171
110
CorelDraw9 082
171
136
Elastic Reality 3.1 072
172
135
Excel 2000 107
145
121
NaturallySpeaking Pref 4.0 077
129
110
Netscape Communicator 113
144
116
Paradox 9.0 109
139
106
Photoshop 5.5 050
099
114
PowerPoint 2000 110
154
118
Premiere 5.1 071
153
118
Word 2000 115
141
113
Windows Media Encoder 4.0 058
144
117
C3 700MHz
Duron 700MHz
Celeron 700MHz

【3DMark2000 Version1.1】
640x480/16bit 1,809
3,959
3,055
640x480/32bit 1,803
3,877
3,016
800x600/16bit 1,806
3,901
3,084
800x600/32bit 1,799
3,745
3,001
1,024x768/16bit 1,802
3,805
3,031
1,024x768/32bit 1,774
3,123
2,768
C3 700MHz
Duron 700MHz
Celeron 700MHz

【QuakeIII】
640x480/16bit 057.9
109.0
072.2
640x480/32bit 057.7
101.0
071.5
800x600/16bit 056.4
098.1
071.1
800x600/32bit 055.5
076.4
067.5
1,024x768/16bit 054.6
071.7
066.2
1,024x768/32bit 047.5
049.5
052.9
C3 700MHz
Duron 700MHz
Celeron 700MHz

 なお、C3のもう1つの特徴である消費電力の低さを見るために、C3とCeleronの温度を比較してみた。発熱量はCPUの消費電力に比例するものであるため、発熱量が低ければ、消費電力も低いと言える。今回テストに利用したGIGA-BYTE TechnologyのGA-6VX7-4Xは、CPUソケットの内部にフィルム状の温度センサーがついており、これをCPUに接地させてCPUの温度を計測できる。両者に同じCPUクーラーを利用し、3DMark2000を一度実行し、CPUに負荷をかけたあとで、CPUの温度を計測してみると、Celeron 700MHzが43度であったのに対して、C3 700MHzは31度と12度も低かった。

【温度】
CeleronC3
温度43度31度


●スリムPCやインフォメーションPCなどに最適なCPU

 このように、C3はDuronにはかなわないものの、同クロックのCeleronであれば少なくともビジネスアプリケーションではほぼ同等の性能を発揮し、かつ発熱はCeleronよりも少ないという特徴を持つ。となれば、スリムフォームファクタ(SFF)のデスクトップPC向けなどにはもってこいと言える。現在、IntelもAMDも、CPUのクロックを上げていっているが、その分発熱量も増大しており、PCメーカーはSFFのケースに、これらのCPUを入れるのに四苦八苦しているという。その点C3は確かに浮動小数点演算を多用するアプリケーションでの性能には難はあるが、そのかわりそうした苦労はしないで済む点はメリットと言える。また、ビジネスアプリケーションに強いというメリットを生かすのであれば、VIAがインフォメーションPCと呼ぶ、バリューPCよりさらに下のセグメントであるインターネットオリエンテッドなPCにこうしたCPUを利用するというのも悪くない選択だろう。このように、PCメーカーにはそれなりに魅力的なCPUだと思う。

 しかし、自作ユーザーが本製品を買うべきかと問われれば、難しいところだ。価格は、Celeron 700MHzの秋葉原における相場が9,000円台の半ば、C3 700MHzは7,000円台の半ばだ。PCメーカーレベルでは1つにつき2,000円の差は、利用する数を考えれば差が大きいと言えるが、1台しか作らない自作PCユーザーレベルでは2,000円の差は、差と言えないレベルと言える。あと4,000円足せば、Duron 900MHzが購入できるわけで、DuronよりもC3を買うかと言われれば、難しいとしかいいようがない。ただ、自作PCレベルでもSFFのPCを作る場合には、放熱周りに気を使わないでよいというのはメリットと言え、ビジネスアプリケーション専用と割り切れるようであれば、買って損はないだろう。

□Akiba PC Hotline!関連記事
【5月4日】C3 667A MHzの動作電圧1.6Vバージョンが登場、謎は深まる一方
http://www.watch.impress.co.jp/akiba/hotline/20010504/etc.html#c3
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【2月5日】【Hothot!】登場間近のSamuel2コアのCyrix IIIを切る![速報編]
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/20010205/hotrev94.htm
【2000年6月22日】【Hothot!】番外編:VIA Technologies Cyrix III日本最速レビュー
~Cyrix IIIはバリューPC市場で選択肢となりうるか?~
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/20000622/hotrev66.htm

バックナンバー

(2001年5月18日)

[Reported by 笠原一輝@ユービック・コンピューティング]


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