元麻布春男の週刊PCホットライン

期待していなかったCRTフィルタの効能


●眼精疲労でLCDへの移行を検討

 自慢するわけではないが、筆者は視力が良い。さすがに今は1.2程度まで落ちたものの、若い頃は、左右とも1.5~2.0程度の視力を維持していた。1日中、ディスプレイを見ていても、目が疲れたと感じることはあまりなかったし、視力が落ちることもなかった。

 しかし、奢れる者は久しからず、筆者もついに目に疲労を感じるようになった。まず異常に気づいたのは、TVに接続するゲーム専用機でゲームをしていた時だ。それほど長時間プレイしたわけでもないのに、目の疲労感が激しい。それどころか目が腫れてしまったのである。だが、この時点では、PCのディスプレイを見ている分には特に問題はなかったため、それほど深刻な問題とは考えていなかった。また、半日程度目を休めると(といっても、TVゲームを止めておくだけのことだが)、おおむね腫れはひいていた。

 この問題が洒落にならなくなってきたのは、今年に入ってからのことだ。ついに、PCディスプレイを見ていても、目が腫れるようになってしまった。常用解像度を1,600×1,200ドットから1,280×1,024ドットに下げると、大幅に緩和されることがわかったが、完全ではない。何より深刻なのは、PCディスプレイを見ることができなければ、仕事にならない、ということだ。

 これは何とかしなければならないのだが、一体どうすればよいのか。厄介なのは、おそらく問題の主原因が、筆者自身の老化にあると考えられることだ。残念ながら老化につける薬はない。実は、使用しているディスプレイの経年変化、ということも考えたのだが、それがゼロではないとしても、主な原因とは思いにくかった。TVゲームの例もあれば、テーマパークに設置されたようなディスプレイでも、PCディスプレイと同じような疲労感を感じたからだ。

 ただ、ここまででハッキリしていたのは、目の腫れはCRT方式のディスプレイでのみ起こるらしい、ということである。たとえばノートPCでは目の腫れは生じないし、映画館でも疲労は感じない。唯一TVだけが例外で、目が腫れたりはしないのだが、後はすべて問題が生じたのはCRTディスプレイだ。もちろん、デスクトップPCをメインにする筆者の場合、ノートPCの液晶と、デスクトップPCのCRTディスプレイでは使っている時間が違う。しかし、CRTディスプレイで生じる目の腫れや疲労感は、この時点では30分間から1時間でも生じるようになっていた。筆者といえども、これくらいの時間、連続してノートPCを使うことはある。程度の問題なのかもしれないが、やはりCRTディスプレイに何らかの原因があるのではないか、と筆者は考えるようになっていた。

 元々筆者は、ディスプレイデバイスとして、液晶よりCRTの方が好きである。反応速度、輝度、コントラスト、視野角などなど、ディスプレイデバイスの特性を表すほとんどの分野でCRTの方が優れている。液晶が優れているのは、薄型、低消費電力といった部分で、必ずしもディスプレイデバイスとして本質的な部分ではない(携帯デバイスとしては本質的な特徴だが)。CRTの方が好ましい、という気持ちに変わりはないが、肉体的な衰えでCRTに対応できなくなるのなら、液晶ディスプレイに切り替えることも考えなければならない。筆者が新しい仕事マシンのグラフィックスカードに、RADEON VEを選んだのは、もし液晶ディスプレイへの切り替えを余儀なくされるのであれば、その時はデジタルインターフェイス(DVI)にしたい、と考えたからである。

●予想外の効能

 とはいえ、21インチCRTを諦めて液晶ディスプレイに切り替える前に、まだ試してみることが残ってた。それは、いわゆるCRTフィルタだ。正直に言えば、これまで筆者はCRTフィルタの必要性や効果を信じたことはなかった。それどころか、CRTフィルタのようなものに、何万円も払うなんて馬鹿げている、とさえ思っていた。筆者がまだ会社勤めをしていた頃、社内にはCRTフィルタを使っているユーザーもいたが、筆者にはそのメリットがわからなかった。もちろん、フィルタを装着したディスプレイは、見え方が変わるが、それを目の疲労感という形で実際に体感できなかったのである(それくらい、頑丈な目をしていたわけだが)。差がわからない以上、筆者にとってCRTフィルタは、気休めのようなものに過ぎなかった。

 今回、著しい目の疲労を感じて、CRTフィルタを試してみようか、という気になった時も、ハッキリ言ってそれほど大きな期待があったわけではない。むしろ、液晶ディスプレイに買い換える踏ん切りをつけるために、打てる手はすべて打った、という「アリバイ」を作る気持ちが、心のどこかにあったように思う。

 そういう不純な気持ちを秘めての買い物だけに、あまり高価なものは買いたくなかった。実際に筆者が購入したのは、東レアイリーブ株式会社のEfilter シリーズの中で最も安価なEfilter Ifという製品である。販売店には実売価格が3万円を超えるような高価な製品もあったが、このEfilter Ifの実売価格は15,000円程度だったと思う(21インチ用だけに、若干高い)。半分、液晶ディスプレイを買うことを覚悟していたため、CRTフィルタに「無駄使い」したくない、という気持ちがあったことは否定できない。

 こうして、ほとんど何の期待もせず購入したCRTフィルタだが、その効果はてきめんだった。1,600×1,200ドット解像度を利用しても、全く目が腫れなくなったのである。にわかには信じがたく、もう1度フィルタを外すと、やっぱり目が腫れてしまう。筆者の場合、間違いなくCRTフィルタは効果を発揮している。

 Efilterシリーズのホームページ(http://www.t-tic.co.jp/cs/ )によると、Efilterの効能として、反射防止、紫外線防止、ちらつき防止、コントラスト向上、可視光線の透過率を適正なレベルにする、といったことが挙げられているが、この中のどれが効果を発揮したのか、筆者にはわからない(ほかに汚れ防止機能もあるが、これは目の腫れや疲労には直接関係していないだろう)。また、筆者が購入したのは、Efilterシリーズのローエンドモデルだが、上位モデルにしていたらもっと良いことがあったのかどうかも分からない。もちろん、他社製品と比べてどうか、ということも不明だ。ハッキリしているのは、このフィルタが筆者の目に劇的な効果をもたらした、ということだけだ。

 CRTフィルタのような製品は、極めて評価が難しい製品だと思う。筆者一人を考えても、若い頃は全く恩恵を感じなかったのが、今では不可欠なものになっている。おそらく効果には個人差があるだろうし、製品との相性ということもあるかもしれない。横並び評価がほとんど不可能な製品ジャンルだろう(見え方の違いは述べられるかもしれないが、それと疲労感の軽減効果との間に、どのような相関関係があるのか、よく分からない)。筆者に言えるのは、もしディスプレイを利用していて目に疲労を感じるのであれば、一度フィルタを試してみる価値があるかもしれない、ということだけである(液晶用のフィルタもあるところを見ると、液晶でも目の疲労が生じるのかもしれないが、これはまだ筆者には分からない感覚だ)。

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(2001年5月15日)

[Text by 元麻布春男]


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