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前回は、プラットフォームを固定してGeForce3とほかのビデオカードを比べてきた。今回はビデオカードを固定して、プラットフォームを変えてみる。要するに、GeForce3を使うにあたって、Pentium 4 1.7GHzのようなハイエンドのCPUが必ずしも必要なのか、ということを検証しようというわけだ。実際にはCeleronのプラットフォームに、5万円もするビデオカードを組み合わせることなど考えられないかもしれないが、あくまでもテストとして見ていただきたい。また、サードパーティ製(非Intel製)チップセットは、新しいビデオカードとの互換性に問題があることも多い。それを確かめる意味もあり、KT133のプラットフォームを加えてある(表に示したハードウェア以外は前回と同じ)。
●GeForce 3のスタートラインはPentium IIIやAthlon 1GHzクラス
その結果だが、予想通り、ほぼCPUの能力に比例したものとなった。が、よく見るといくつかの特徴がうかがえる。まずViewPerfだが、前回のテストにおいて3つのビューセット(Awadvs-04、Light-04、MedMCAD-01)でGeForce3が極めて高い性能を示した。ビデオカードをGeForce3に統一した今回のテストにおいても、この3つのビューセットはPentium 4で極めて高い性能を示している。GeForce 3のディスプレイドライバ(少なくともここで用いたDetonator 12.00以降)では、Pentium 4に対する最適化がかなり進んでいるようだ。
GA-7ZXでの描画エラーの例 |
さて、前のテストではビデオカードを変えても成績があまり変わらなかったExpendableだが、ここではCPUを変えた効果がそれなりに出ている。とはいえ、Celeron 700MHzとAthlon 850MHzやPentium III 1GHzとの劇的な差を、Athlon 850MHzやPentium IIIとPentium 4の差と比べれば、Pentium III 1GHzあたりでそろそろ性能に頭打ちの傾向が出ているもの(ソフトウェア自身がボトルネックになっている)と考えられる。あまりハードウェアの投資に見合わないゲームのようだ(ただし、こういう特徴と、ゲームの内容は無関係である)。
非常に興味深いのが、Quake IIIを用いたアンチエイリアスのテスト結果だ。アンチエイリアスを無効にした状態では、CPUによる性能差が大きく見られるものの、アンチエイリアスを有効にした途端、その差は大きく縮まる。というより、アンチエイリアスを有効にしてしまうと、Pentium 4 1.7GHzも、Pentium III 1GHzも、Athlon 850MHzも、フレームレートに大差がなくなってしまう。このテストでストレスが加わっているのは、主にビデオチップのようだ。逆にいえば、Quake IIIをアンチエイリアス有効で遊ぶのなら、Athlon 850MHz~Pentium III 1GHzくらいのCPUパワーがあれば、十分GeForce3が活用できる、ということである。残念ながらCeleron 700MHzクラスのCPUでは力不足、ということになるが、それでもQuincunx AAを有効にして、1,024×768ドット解像度のQuake IIIがフルカラーで60fpsを超えるのは立派だ。
Serious Samの結果は、ほぼCPUパワーから想像される通り。GeForce3を用いるには、Celeronでは力不足のように思われる。Pentium IIIやAthlonの1GHzクラスが、このところ急激に安くなっており、価格バランスの点でも性能的な釣り合いの点でも、GeForce 3のスタートラインといえそうだ。
【プラットフォームによる違い】
Windows 2000 SP1 | |||||
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CPU | Pentium4 1.7GHz | Pentium III 1GHz | Celeron 700MHz | Athlon 850MHz | |
マザーボード | D850GB | D815EEA | D815EEA | GA-7ZX | |
チップセット | i850 | i815E | i815E | KT133 4in1 4.30Beta |
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メモリ | 256MB PC800 RIMM | 256MB PC133 CL2 | 256MB PC133 CL2 | 256MB PC133 CL2 | |
ViewPerf 6.1.2 | Awadvs-04 | 80.33 | 56.93 | 45.28 | 61.52 |
DRV-07 | 16.87 | 11.59 | 8.179 | 11.45 | |
DX-06 | 32.66 | 14.92 | 10.78 | 18.31 | |
Light-04 | 8.689 | 4.713 | 3.323 | 5.597 | |
MedMCAD-01 | 28.1 | 18.89 | 13.08 | 19.75 | |
ProCDRS-03 | 16.07 | 16.06 | 15.97 | 16.06 | |
Windows 98 SE | |||||
3DMark 2001 | デフォルト設定 | 5796 3Dmarks | 4796 3Dmarks | 3558 3Dmarks | 3104 3Dmarks * |
Expendable | Average FPS(Min/Max) | 76.979310 fps (41fps/134fps) | 71.5fps (44fps/110fps) | 44.633466fps(27fps/85fps) | 70.327044fps(45fps/117fps) |
Quake III Demo1 | No AA | 154.7fps | 112.2fps | 67.5fps | 105.8fps |
2x AA | 86.7fps | 86.1fps | 65.9fps | 85.7fps | |
4x AA | 52.1fps | 52.0fps | 51.8fps | 52.0fps | |
Quincunx AA | 72.2fps | 71.9fps | 63.9fps | 71.9fps | |
Serious Sam Test2 | Auto-02Coop.dem | 62.8fps w/o excessive peaks | 53.2fps w/o excessive peaks | 29.0fps w/o excessive peaks | 50.7fps w/o excessive peaks |
●コアな海外ゲームファンにはお勧め
というわけでGeForce3だが、3Dグラフィックスに関する限り性能、機能ともに優れたチップだと筆者は考える。問題は、それが価格に見合うだけのものか、見合うとしたらどういうユーザーか、という点にある。筆者はパスしてしまったが、本来GeForce2 GTSとGeForce3の間には、GeForce2 GTSのクロックアップ版であるGeForce2 UltraとGeForce2 Proが存在する。GeForce2 GTSに対しては多くのテストでそれなりに差をつけることができたが、GeForce2 Ultraに対してはその差は縮まるハズだ。
また、アーキテクチャが変わったことは、すべてのゲームで(特に古いゲームで)必ずしもGeForce3の真価が発揮されるとは限らないことも意味している(このあたりの事情はPentium 4とPentium IIIの議論にも通じる部分である)。コストパフォーマンスという観点から見れば、GeForce3の登場で値下げされたGeForce2 Ultra、あるいはそれより値ごろ感のあるGeForce2 Proあたりが上回るのは間違いない。値下げされたとはいえ、5万円というのはビデオカードに支払うにはあまりに大きな金額である。
たとえば、これから新規に高性能PCを買う、あるいは高性能PCを買い増す、ということを考えた場合、予算をどう配分するかは難しいところだ。今回のテストで、GeForce3を搭載したPentium III 1GHzマシンと、Pentium 4 1.7GHzにGeForce2 GTSを組み合わせたマシンは、性能的に結構近い。表4にこの2通りの構成による、現在の価格をまとめてみた(ケースやドライブ類など共通部分は除いてある)が、ほとんど差がない。本当にゲームに命をかけているユーザーなら、Pentium IIIにGeForce 3の方が幸せになれると思うが、果たして一般的にはどうだろうか。
【価格】
P4コース | GeForce3コース | |
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CPU | 57,500円(Pentium 4 1.7GHz+128MB) | 28,400円(Pentium III 1GHz) |
メモリ | 不要(上記に同梱) | 4,800円(128MB PC133/CL2) |
マザーボード | 23,800円(D850GB) | 17,500円(D815EEA) |
ビデオカード | 19,800円(WinFast GeForce2PRO TV) | 49,800円(WinFast GeForce3) |
合計 | 101,100円 | 100,500円 |
おそらくGeForce3は、素晴らしいけれど飛びつくべき製品ではない、というのが現時点での一般的な評価だろう。GeForce3の真価を発揮できるDirectX 8(あるいはそれに相当するOpenGLエクステンション)に対応したゲームが出るまで待った方が良い、というのは誰しもが思うところだ。進化の早いこの世界では、ゲーム(ソフトウェア)の対応は、ハードウェアに対して後手後手に回るのが常。DirectX 8対応ゲームが世に溢れる頃には、GeForce3 MXがメインストリーム向けに登場している可能性さえ考えられるのだ。
となると、GeForce3を買うべきユーザーは、前述したようなゲームに命をかけているユーザー、それも最新の海外ゲームに常に目をくばっているユーザーだろう。このコラムなど読まなくてもSerious Samくらい知っているし、もう買ってる、という人は、GeForce3が欲しくなっているだろうし、筆者も止めるつもりはない。
また、PCゲームの開発者に限らず、X-Box対応タイトルの開発を考えている者も、とりあえずGeForce3を手にした方が良いかもしれない。Microsoftは、DirectX 8とX-Boxに共通するグラフィックステクノロジとしてNVIDIAの技術をライセンスしたのだから、両者の共通点は多い。
最後に、GeForce2 Ultraをパスした筆者が、GeForce3を購入した理由を述べておこう。それは、まさにアーキテクチャが変わったからだ。筆者にとってGeForce2 Ultraは、どれだけ性能が向上していようと、クロックアップである以上、それはGeForce2 GTSから想像できる範囲にある。しかし、GeForce3は、新しいアーキテクチャであり、今まで実現しなかったアプリケーションが実現する可能性を秘めている。たとえそれがどんなにつまらないデモであろうと、GeForce3でしか見ることのできないものなら、筆者は買う価値があると思ってしまう。まぁこれも、今や4万円を切るPentium 4 1.4GHzを、10万円近い金額で買った(しかもそれを後悔していない)男のたわごとではあるのだが。
(2001年5月9日)
[Text by 元麻布春男]