元麻布春男の週刊PCホットライン

DirectX 8に完全対応したGeForce 3搭載ビデオカード
WinFast GeForce3を試す(前編)


●実売49,800円のWinFast GeForce3

 2月のMacworld Conference&Expo / Tokyo2001でベールを脱いで以来、グラフィックス市場の話題の中心となってきたのがNVIDIAのGeForce3だ。現在、市場に君臨するNVIDIAが放つ次世代ビデオチップとして、あるいは初めてDirectX 8に完全対応したビデオチップとして、注目を集めてきた。そのGeForce 3を搭載したビデオカードが、発表から2ヵ月半近くが経過したゴールデンウィーク直前、ようやく登場してきた。

 筆者が購入したのはLeadtekのWinFast GeForce3というカードだ。本稿執筆時点で秋葉原等で流通しているのは、最初に販売されたPROLINKのXX-Playerと、VisionTekのGeForce3 Graphics Accelerator、そして本製品の3種のみ。基板デザインはすべてNVIDIAのリファレンスデザインを踏襲しているが、本製品のみがDVI-D(デジタル出力のみでアナログ出力に対応しない)端子を備えており、基板背面にSilicon Image製のトランスミッタチップが実装されている。

 リファレンスデザインが、通常のアナログRGB出力はVGA互換のミニ15ピンD-Sub端子、デジタル出力はDVI-D端子、という使いわけを行ない、両者をDVD-I端子で統合しなかったのは、DVIの普及率の低さを考えれば現実的な選択と言えるだろう(TwinView機能を持たないGeForce3でアナログRGBとアナログ/デジタル両対応のDVI-I端子を備えるのは現実的ではない)。WinFast GeForce3は、ビデオ出力用のS端子も備えており、出力についてはフル装備の仕様になっている。

 本製品のメモリチップ(64Mbitチップ×8で計64MB)には、Leadtekのロゴが刻まれたアルミプレート(ヒートシンクのようなフィンは持たないが、放熱用であることは間違いない)が貼り付けられており、実際に用いられているメモリのスペックはわからない。が、プレスリリース等によると最小アクセスサイクル4ns(最大同期周波数500MHz)のものが用いられている。GeForce3のスペックは、グラフィックスコアが200MHz動作、メモリバスが460MHz動作であり、十分なマージンを持つものだが、実際に本カードに添付されているユーティリティ(WinFOX)が表示するメモリバスクロックは458MHzであった。

WinFast GeForce3のブラケット部。十字型のアナログコネクタがないDVI-Dコネクタ、S端子、アナログRGBコネクタを備える WinFast GeForce3。巨大な銀色のヒートシンクが目立つ。用いられているGeForce3のリビジョンはA5であった

 ユーティリティの話が先に出てしまったが、本カードにはWindows 9x/2000用ともに、ディスプレイドライバとしてDetonator 12.00が添付されていた(なぜか添付のREADME.TXTファイルにはGeForce3の表記が欠落しているのだが)。このREADME.TXTファイルの日付が4月4日、BIOSの日付が4月23日で、CD-ROMのプレスまで考えると、本当に出来立てホヤホヤの製品であることがわかる。またドライバCD-ROMとは別に、ソフトウェアDVDプレーヤー(WinDVD)と、カラーマッチングソフトが収められたCD-ROMが添付されている。

 このWinFast GeForce3だが、筆者が購入した価格は49,800円(税別)。2月の発表時には、NVIDIAによる推定小売価格が499ドル~599とされ、カードベンダからも65,000円~7万円という推定価格が提示されていたのに比べれば、値下がりしているのだが、決して安価な製品ではない。それどころか、PC本体の価格低下、直前に実施されたIntelやAMDの値下げを考えると、かなり高価な製品だといえる。果たして価格に見合うだけのバリューがあるのか、誰しもが気になるところだ。


●ゲームを使った性能比較をしてみる

 そこで、まず最初に下に示した共通のプラットフォームを用いて、1世代前のアーキテクチャであるGeForce2 GTS(製品的にはGeForce2 Ultraだが、アーキテクチャ的にはGeForce2 GTSが1世代前となる)、そして現時点で実質的に唯一の競争相手であるATI TechnologyのRADEON 64MBと比較した。

【テストシステムの構成】
CPU:Pentium 4 1.7GHz
マザーボード:D850GB
メモリ:256MB PC800 RIMM
サウンドカード:X-Wave 6000 (YMF744)
ネットワークカード:Intel PRO/100+
デスクトップ解像度:1,024×768ドット、32bitカラー
リフレッシュレート:75Hz (Vsynch Off)
DirectX:DirectX 8.0a

 テストに用いたのは、Windows 2000 SP1上でViewPerf 6.1.2、そしてWindows 98 SE上で3DMark 2001と、3種類のゲームだ(解像度はすべてのテストに共通で、1,024×768ドット、32bitカラー)。ゲーム以外のアプリケーションを目的にこの製品を買うユーザーがいるかどうかは疑問だが、代表的な3D APIであるOpenGLを用いたテストとして、ViewPerfを実行した。Windows 98 SE上のテストは、GeForce3が完全対応したDirectX 8ベースのテストとして3DMark 2001を選んだほか、すでに流通しているゲーム(Expendable、Quake III、Serious Sam)をピックアップしている。

DirectX 7に対応したExpendable
(c) Rage Games Limited 1999 -all rights reserved
 まずExpendableだが、ExpendableはRAGE Softwareのアクションゲーム。DirectX 7ベースのゲームで、ちょっと前の作品だが、すでに流通している古いゲームの1例として、テストに加えてある。テストに際しては、すべてのグラフィックスオプションを有効にした上で、Timedemo 1を実行した(コマンドプロンプトでgo -timedemo)。Quake IIIは、OpenGLベースの3Dアクションシューティングゲーム。ここではアンチエイリアス機能の有無による性能へのインパクトを試してみた。テスト条件は、描画オプションを一旦High Qualityに設定した上で、解像度だけを1,024×768ドットまで上げて、Demo1を実施している。



 最後のSerious Samは、クロアチアのゲームハウス、Croteamの手による3Dアクションシューティング。こちらもOpenGLベースで、この種のものとは思えないくらい、フィールドが明るく(屋内もあるが)、広い。この広いフィールドに、敵味方合わせて多くのキャラクタが同時にたくさん出現するという点で、ほかの作品と趣向が大きく異なる。最新ゲームの一例として加えてみた。

ネットワークを介したマルチプレーヤーだけでなく、ゲーム機のように画面分割のマルチプレーヤーにも対応する 広大なSeriousSamのフィールド。プール脇に見える小さな点もキャラクタだし、プールの中に入ることもできる。太陽光線のハロもちゃんと表現されている もちろん、屋内での戦闘シーンもある。壁や柱のテクスチャが美しい
Serious Sam, the Serious Sam logo, Croteam and the Croteam logo are trademarks of Croteam Ltd. Godgames and the Godgames logo are trademarks of Gathering of Developers, Inc. c2001 Gathering of Developers, Inc. All Rights Reserved.

 なお、ここで用いたのは市販のパッケージではなく、ハードウェアとの互換性テストのためにリリースされたPublic Test 2と呼ばれるテスト版(約79MB)。このPublic Test 2に用意されている複数のデモの中から、ここでは最初に実行されるオートデモであるAuto-02Coop.demを選んだ。また、Serious Samではレンダリングオプション(描画の設定)が40項目以上用意されており、CPUやビデオカードの性能に応じて自動設定されるが、ここではすべてのテストで同じ設定になるように(ハードウェアの違いを無視して)、マニュアルでセットし直している(1つ1つの項目について触れるスペースはないが、基本ポリシーとしてすべてのオプションを有効に、効果の度合いを設定する際は極力MediumあるいはDefaultを選択している)。

 まずViewPerfの結果だが、ビューセットにより3つにわかれた。GeForce2 GTSに対し2倍近い性能向上を見せたもの(Awadvs-04、Light-04、MedMCAD-01)、逆に若干だが下回ったもの(DRV-07、ProCDRS-03)、そして若干上回ったもの(DX-06)だ。新しいチップである以上、性能が向上するのが当たり前だと思いがちだが、下回ったテストがあったことが興味深い。これは、まだドライバが初期段階にあることを示している可能性があると同時に、GeForce3のアーキテクチャが明らかに変わったことの現われとも考えられる。GeForce2 Ultraのような単純なクロックアップ版はもとより、いくつかのユニットを加えたりしたマイナーチェンジ版(GeForce 256に対するGeForce2 GTS)ならこうした結果にはならないハズだ。

 3DMark 2001は、DirectX 8ベースのベンチマークテストであるだけに、GeForce3の結果が良好だろうとの推測ができたが、実施した結果はやはりそれを裏付けるものとなり、GeForce3はGeForce2 GTSを6割以上上回った。3DMark 2001には、DirectX 8に完全対応していないとスキップされてしまうテストが含まれているが、もちろんGeForce3ではちゃんと実行された。

 それとは逆に、GeForce3の恩恵が全くなかったのがExpendableだ。結果を見るとGeForce2 GTSがトップで、GeForce3はRADEONをも下回る成績しかあげられなかった。だが、ビデオカード間の差が小さいことからして、どうもExpendableの性能でボトルネックになっているのはビデオチップではないようだ。GeForce3の評価用としては不適当なゲーム、というわけだが、Expendableのようなゲームの存在は、ひょっとすると、あなたがお気に入りのゲームの実行速度を改善しようと考えてGeForce3を購入しても、空振りに終わる可能性がある、ということを示唆している。

 次のQuake IIIでは、GeForce3の特徴の1つである、アンチエイリアス機能を試してみた。GeForce2 GTSやRADEONは、スーパーサンプリングによるアンチエイリアスをサポートしており、2サンプル(2x)あるいは4サンプル(4x)のアンチエイリアスが可能だが、性能(フレームレート)に与える影響が大きく、アンチエイリアスが実用に耐えるかどうかは微妙なところだった。GeForce3では、メモリアクセスの改善等によりアンチエイリアスを有効にしてもフレームレートに与えるインパクトが小さくなっているとされている。また、独自のQuincunxアンチエイリアスと呼ばれる技術により、4サンプル相当の画質を、2サンプル相当のフレームレートの低下で実現しているというのが、NVIDIAの言い分だ。

 アンチエイリアスがどのくらい画質に寄与するのかは、キャプチャした画面を見ていただこう。ここに示したのは画面全体の中で、特にアンチエイリアスの効果がわかり易い部分だ(キャプチャした画面はすべて640×480ドットフルカラーだが、これはベンチマークテストとは別に撮りなおしたものである)。一方ベンチマークテストだが、やはりGeForce3はアンチエイリアスによるインパクトが小さい。また、2x、4xとサンプル数を上げた場合の落ち込みが少ないのもGeForce3だ(RADEONは4xを選んでも2xのアンチエイリアスになってしまったようだ)。Quincunxアンチエイリアスの画質が4xに相当するかは難しいところだが、フレームレートに対する影響の少なさという点では、見るべきところのある技術であるに違いない。

アンチエイリアス なし アンチエイリアス 2x
アンチエイリアスが無効の通常の画面。赤で囲んだアーチ部分で特にジャギーが目立つ 2xのアンチエイリアスを有効にした画面。かなりきれいになったが、ジャギーがなくなったわけではない
アンチエイリアス 4x Quincunx
2xAAで残っていたアーチ部のザラザラ感が消え、ほとんど目立たなくなった 下側のアーチは4xAAに近いが、上部にはザラザラ感が残る。2xAAと4xAAの中間というところか
QUAKE III Arena TM (C)1999 Id Software, Inc. All Rights Reserved. QUAKE(R) and the id(R) logos are registered trademarks of Id Software, Inc. , QUAKE III ArenaTM and the Id SoftwareTM name are trademarks of Id Software, Inc. Activision(R) is a registered trademark of Activision, Inc. All other trademarks and trade names are properties of their respective owners.

キャプチャ画像(BMP形式)はこちらからダウンロードしてご覧ください(編集部)

【ほかのビデオカードとの比較】
Windows 2000 SP1
グラフィックスカードWinFast GeForce3 (64MB DDR)WinFast GeForce2 GTS (32MB DDR)Radeon 64MB
Core Clk/Mem Clk200MHz/458MHz200MHz/333MHz166MHz/333MHz
Driver VersionDetonator 12.00Detonator 12.005.13.01.3132
ViewPerf 6.1.2Awadvs-0480.3344.246.4
DRV-0716.8719.917.246
DX-0632.6628.8218.83
Light-048.6894.6252.249
MedMCAD-0128.114.9312.84
ProCDRS-0316.0718.0912.92
Windows 98 SE
Driver VersionDetonator 12.00Detonator 12.004.13.7103
3DMark 2001 (DirectX 8)デフォルト設定5796 3Dmarks3520 3Dmarks3103 3Dmarks
Expendable (DirectX 7)Average FPS(Min/Max)76.979310 fps(41fps/134fps)79.361702fps(41fps/129fps)77.158621fps(44fps/119fps)
Quake III Demo1(OpenGL)No AA 154.7fps100.1fps70.6fps
2x AA86.7fps38.0fps26.5fps
4x AA52.1fps23.6fps26.5fps
Quincunx AA72.2fpsN/AN/A
Serious Sam Test2(OpenGL)Auto-02Coop.dem62.8fps w/o excessive peaks45.7fps w/o excessive peaks35.2fps w/o excessive peaks


●ゲームに関しては優位性を証明

 今回用いたQuake IIIのようなアクション性の高いゲームでは、アンチエイリアスの重要度はそれほど高くない(そんなものを見ているヒマがあったら敵を探した方がいい)が、フライトシミュレータや電車シミュレータなど、アンチエイリアスが有効なゲームもある。また、アンチエイリアスはドライバレベルで強制的に有効にできるため、ゲームの対応状況如何にかかわらず、使えるというメリットもある。GeForce3の登場により、アンチエイリアスは実用期に入った、といえるかもしれない。

 最新のゲームの1例として取り上げたSerious Samだが、多くのエフェクト(視覚効果)を盛り込んでいるだけに、全体にフレームレートが低くなっている。それでも、GeForce3の優位性は明らかで、このような新しいゲームについてはGeForce3を用いることによる性能向上が期待できそうだ。ちなみに、ここで示した数値は、突出したピーク値を除外した平均フレームレートである。

(後編は明日9日に掲載します:編集部)

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【AKIBA】GeForce3搭載ビデオカードがLeadtekとVisionTekからも登場
http://www.watch.impress.co.jp/akiba/hotline/20010504/winfastgf3.html

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(2001年5月8日)

[Text by 元麻布春男]


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