第100回:今さらながら、持ち歩きのススメ



 バッテリ持続時間の計測方法標準化について、さまざまな意見をいただいた。中でも多かったのは「どちらにしろ使い方によって時間は異なるのだから、どんな方法でもいいんじゃないのか」という点だ。

 もちろん、その通りだ。きちんとメーカー間の相対評価が可能で、判断基準となる情報が提示されるなら、どんな方法で計測されようとかまわない。しかし、JEITA案では非常に暗い輝度でのみ計測を行なうため、そのマシンの本当の実力を推し量る材料に乏しい。問題だと思うのはこの点だ。幸い、JEITAではベンチマーク評価を行なっている編集部、もしくは記事を書いている個人と面談して、意見交換をしながら最終的なツメを行なうようだ。

 なお、BatteryMarkの計測基準として「液晶輝度は設定可能な値の中間値」が正しいという指摘をいただいた。これに関しては、僕の勘違いだったようだ。自分でBatteryMarkを動かしてみようという人は注意して欲しい。現在のBatteryMarkはWindows 2000をサポートしておらず、また機種によってはテストを完走できないものもあることを付記しておく(これはJEITAがBatteryMarkを採用しなかった最大の理由でもある。また、僕自身はBatteryMarkを支持しているわけではない)。

 次にJEITA担当者のメッセージを紹介し、20社を越えるベンダーの意見をまとめた担当者に敬意を表したい。

「これまで全くバラバラであった各メーカーの測定法ならびにカタログ表記等を特に初心者ユーザーがわかりやすく横並びで比較出来るようにするための第一歩として、まず各メーカーをスタート地点に並ばせることが、現段階では最も重要であると認識しています」


●この半年、もっとも使ったデバイスは

 僕は普段、デスクトップPCで仕事をしている。同業者の中には、すべての作業をノートPCでこなしている人もいるが、仕事時間中のほとんどを過ごしている自宅の仕事部屋では、なるべく大きな画面で多くの資料を開きながら仕事をしたいと思うからだ。21インチディスプレイを2台並べ、それぞれ1,600×1,200ピクセルに設定するのが僕のワーキングスタイルだ。

 その代わりに、仕事で必要な情報は可能な限り電子化して、ノートPCとデスクトップPCでファイルの同期を行なっている。ポイントはWindows 2000のオフラインフォルダ機能を利用することと、電子メールやPIMデータ、ブラウザのブックマークやCookieの同期をどのように行なうかだろう。

 我が家には「いくら何でもこんなにたくさんいらないだろう」と自分でも思うほど複数のノートPCがあるが、最低限の作業で仕事中の情報を同期して即持ち出せる体制を整えることができたため、複数PCを使うことによる面倒なことはほとんどなく使えている。折りを見て、このあたりの運用方法も紹介することにしよう。

 昨年の前半は「もうノートPCを持ち歩かなくてもいいかな」と言っていたが、今思い起こすと恥ずかしい言葉だった。なにしろ、仕事で外出するときには、毎度PCをカバンに詰めているからだ。なぜそのようになったかは、以前にも書いたことがあるが、

ことなどが挙げられると思う。

 「いつも持ち歩いているのはどの機種ですか?」とメールで質問を受けることがあるが、出張時に持ち出すPCとしては軽量小型な2スピンドル機の日立のFROLA 220FXの利用頻度がもっとも高い。しかし、日常的な取材などではNECのLavie MX(反射型液晶モデル)の利用頻度が一番高い。

 反射型のLavie MXについては、この連載でも取り上げたことがあるが、振り返ってみるとこれほど外出先で使い倒した製品はなかったかもしれない。この機種を評価するときは、最後に必ず「暗いところでは液晶が見えないため、利用シーンが限定される。そうした制限を理解した上でなければ購入は勧められない」という一文が付く。

 それでも、もっとも持ち歩いているのは、バッテリ持続時間が圧倒的に長いからだ。液晶パネルも「字の小さい本を読める程度」なら十分に視認できる。万能ではないが、ニッチにフォーカスして“ファンレス、反射型液晶、リチウムポリマー電池”の3要素を組み込んだNECに拍手を送りたい(と同時にフロントライトとXGA化、無線LAN内蔵などにも期待したいところだ)。普通に考えれば、[反射型液晶]→[見栄えが悪い]、[リチウムポリマー電池]→[ハイコスト]、というネガティブな連想から製品化できなかっただろう。


●情報はすべてHDDに詰め込んでしまえ

 僕が欠かさずノートPCを持ち歩いた原因の1つは、上記のようにバッテリ持続時間が延びた(なにしろ、サスペンドさせずに昼前に取材に出かけて、夜帰宅するまで電源オンにしたままでも電池がカラにならないのだ!)こと以外にもある。

 それは、必要な情報を可能な限り電子データとして残すようにしたためだ。以前からWeb上のニュースは本文テキストを自動的に切り出し、秀丸エディタのGREP機能で検索できるようにしていたが、最近はWebで見かけた有用な情報は、その場ですぐにPDFに変換するようにしている。Webページをそのまま保存してもいいが、そうするといくつものファイルに分割されて管理が面倒になるためである。

 また、PC Watchでお馴染みの後藤氏や笠原氏は、紙で受け取った資料をスキャナで取り込み、PDFとして保管しているという。紙資料のスキャンは手間がとてもかかるため、僕自身はあまりスキャナを利用していなかった。しかし、Acrobat 5.0が登場したことでその考えを改め、紙資料のPDF化を試みている。

 Acrobat 5.0は、対応するOCRソフトと組み合わせることで、スキャン結果をOCRで認識し、認識結果を透明オブジェクトとして元のイメージにオーバーレイすることができる。ご存じのように、OCRで完璧に文字認識を行なうことはできない。誤認識は少なからず存在するが、元の文字はイメージとして残し、検索用に認識結果を透明に貼り付けるのであれば実用性は高い。

 OCRによる検索用文字オブジェクトの埋め込みを行なった後のAcrobatファイルで、文字検索を行なうと、きちんとヒットした場所を指し示してくれる(実際にはヒットした場所の上にオーバーレイされている透明なテキストがヒットしているのだが)。Acrobatに対応する検索ツールは、パッケージに付属する簡単な検索ツールから、インデックス生成が可能な高度なものまでそろっているため、Acrobat化を行なっておくと情報を探すのが非常に楽になる。

 外出先で手軽に個人情報を参照するには、当然ながらPDAが最適だ。メールによる連絡を受けるのも、携帯電話と連携するアプリケーションを使えばいい。しかし、電子的に扱える情報を一括して管理し、それを活用するという使い方はPCにしかできない。

 少し前までは数GBのハードディスクしか利用できなかったが、今やサブノートPCのHDDは20GB。夏以降は30GB HDDを採用するようになるだろう。こうなってくると、俄然、情報の持ち歩き活用が有用性を増してくる。そのうち容量がいっぱいになることを心配するかも知れないが、いっぱいになる頃には、さらに大容量のドライブが登場しているだろう。情報は消す必要なく、どんどんため込んでいけばいい。要はそこから情報を取り出す(検索する)ことができればいいのだから。

 加えてノートPCのワイヤレス対応も、年内にはさらに進んでいくことだろう。この夏発売を予定している持ち歩きを指向した製品の中には、無線LANやH"in内蔵のモデルもある。特に無線LAN内蔵は今後のトレンドになるだろう。都内の各所や空港、駅などで無線LANによるインターネットアクセスポイントの設置という話も耳に入ってくる。H"inも基本料金の問題を軽減するため、DDIポケットの中で調整を行なっていると聞いている。

 どうだろう? PCをどこでも活用するべく、持ち歩きを再考してみてはいかがだろうか? 使い手の立場次第、使い方次第ではあるが、スイートスポットにはまれば手放せなくなるはずだ。

(2001年5月8日)

[Text by 本田雅一]


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