元麻布春男の週刊PCホットライン

RDRAMとPC133 SDRAMの速度を再検証


●仕事マシンをVC820ベースに移行

 前々回のこのコラムで書いたように、筆者はWindows XPを待たず、新しい仕事マシンに移行することを決めた。新しい仕事マシンのベースとなるマザーボードはIntelのVC820なのだが、Intel製マザーボードを仕事マシンに使うのは、ひょっとすると初めてかもしれない。

 ご存知の通り筆者は、実験マシンのベースにIntelの純正マザーボードを用いている。特にSlot 1になってからは、ほぼIntelのマザーボードを使いつづけている。筆者の仕事マシンは基本的に実験マシンの「お古」の使いまわしであり、その意味ではすでにIntel製マザーボードを仕事マシンに使っていても良かったハズだ。実際、今回VC820を仕事マシンに採用した理由の1つとして、VC820を実験マシンからリタイヤさせる、ということが挙げられる。

 昨年の11月まで、筆者の実験マシンは、Performance PC用にVC820、Value PC用にD815EEAという構成であった(他にAthlon用のマザーボードも併用するが)。しかしPentium 4の登場で、筆者にとってPentium IIIはもはやPerformance PC用のプロセッサではなくなった(AthlonのDDRプラットフォームに対して、Pentium IIIのDDRプラットフォームに対する興味が低いのも同じ理由だ)。要するにVC820はD850GBに押し出される格好で、余剰となったのである。

 今までも同様なことがあったにもかかわらず、Intelの純正マザーボードを仕事マシンに使ってこなかったのは、筆者にとって致命的な互換性問題があったからにほかならない。それはキーボードだ。筆者が愛用しているキーボードは、初代Quarter Lに付属していたAXキーボードという骨董品。最近の新しいマザーボード(BIOS)の中には、この古いキーボードのイニシャライズを待ちきれないものが少なくない。つまり、AXキーボードが認識されないのである。現在の仕事マシンがASUSのP3B-Fベースなのも、これが理由だ。当時、IntelのSE440BXが余剰になっていたのだが、AXキーボードを認識しなかったため、仕事マシン用にマザーボードを新規購入せざるを得なかった。ところが、VC820はAXキーボードをちゃんと認識する。最大の難関はクリアされた。

●Direct RDRAMとPC133の性能差

 さてVC820というと、デビュー時にゴタゴタがあった(直前にRIMMスロットの数が変更になるなど)だけに、どうしてもマイナスイメージがつきまとう。加えて、サポートするDirect RDRAMの価格がなかなか下がらなかったこと、高価なDirect RDRAMを用いても価格相応の性能メリットがなかったことなどから、決して人気のあった製品とは言いがたい。一応Intelのラインナップには、VC820をSocket 370に改めたD820LPというマザーボードもあるのだが、売っているのを見たことがないという有様である。

 もう1つVC820で記憶に新しいのは、Intel自身が公表したPerformance Briefにおいて、はるかに安価なPC133メモリを用いたD815EEAより性能で劣る、と読めるデータを公表したことだ。これではIntel自らが、VC820は高くて性能が悪いと公言しているようなものであり、人気商品になるハズなどなかった。Direct RDRAMにも同様なことが言える。

 では、本当にVC820とDirect RDRAMの性能は悪いのだろうか。正直言って、筆者は性能を追い求めているわけではない(テストには現在の市場価格を考え1B GHzのPentium IIIを用いているが、筆者の仕事マシンのCPUはPentium III 600EB MHzに過ぎない)のだが、ここでもう1回、簡単に確かめてみることにした。比較の対象として用意したマザーボードは、当然D815EEA。組み合わせるメモリとして、VC820にはPC800 RIMMとPC700 RIMMの2種類、D815EEAに対してはPC133 DIMM(CL2とCL3の2種類)とPC100 DIMMを用意した(すべて128MBのモジュールを2枚用い、計256MBでテストしてある)。OSは、SYSmark 2000を動かしやすいことからWindows 98 Second Editionを選んだ。

マザーボードVC820D815EEA
メモリPC800PC700PC133/CL2PC133/CL3PC100/CL2
AKIBA PC Hotline!
の最安値(128MB当り)
14,900円7,980円5,360円3,800円3,800円
SYSmark 2000
Rating193191195193180
Internet Content Creation195192193194178
Office Productivity192190196193181
3Dmark 2001
3D Marks2,8102,7562,6572,6042,402
Sandra 2001
ALU/RAM Bandwidth388MB/sec368MB/sec328MB/sec319MB/sec244MB/sec
Memory BW
FPU/RAM Bandwidth489MB/sec464MB/sec365MB/sec351MB/sec266MB/sec

 そのSYSmark 2000の結果だが、ほぼIntelのPerformance Briefを裏付けるものとなった。Performance BriefではPC133 DIMMはCL2のものだけが使われており、PC800を上回る性能となっているが、それはここでも変わらない。SYSmark 2000を見る限り、PC800 RIMMの性能はCL3のPC133相当であるにもかかわらず、価格は4倍近くする。不人気もむべなるかな、というところだ。

 しかしよく見ると、PC133の性能が上回るのはOffice Productivityの分野で、Internet Content CreationではPC800の方が上回っている。つまり、WordやExcelといったOfficeアプリケーションではPC133、グラフィックスツールやAV関連のアプリケーションではPC800、という結果になっており、トータルでPC133が若干優勢、ということなのである。

 同様に、3Dmark 2001もPC800の方が上回る、という結果になった。こちらでは、各メモリのスペック上のピーク帯域の順番に性能が並んでいる。念のため、Sandar 2001でメモリの帯域のデータもとってみたが、3Dmark 2001と同じ結果となっている。

 以上のことから筆者が推定するのは、SYSmark 2000のOffice Productivity(およびそれに使われている各種のOfficeアプリケーション)が、メモリの帯域よりメモリのレーテンシに大きく影響を受けるのに対し、Internet Content Creationや3Dmark 2001はメモリの帯域の影響をより強く受ける、ということだ。つまり、VC820/Direct RDRAMとD815EEA/PC133 SDRAMでは、性能が違うというより、性能の性格が違うわけである(だからといって、i820の性能が優れていると言えるわけでもないし、今さらわざわざ買うだけの魅力があるとも思えないが)。

 また、この結果から分かるのは、PC800とPC700の性能差が小さいことだ。Pentium 4対応チップセットであるi850では、PC700はPC600としてしか利用できない(PC700のメモリクロックが100MHzになってしまう)ため、性能差が大きくなるが、FSB133MHzのプロセッサを用いる限り、i820ではPC700のメモリクロックが133MHzとなるため、性能差は小さい。該当するユーザーは少ないだろうが、もしi820でPC800 RIMMを使っていて、Pentium 4の導入を考えているのなら、i820システムのPC800 RIMMをPentium 4システムに回し、i820には安価なPC700を調達して使う、というのも1つの手だと思う(もちろんPentium 4ではPC800 RIMMが2枚セットで必要になるが)。これは筆者のプランでもある。

 もう1つ分かったのは、i815チップセットでFSB133MHzのプロセッサとPC100メモリを組み合わせた時の性能の低さだ。この理由としては、FSBのクロックとメモリバスのクロックが整合しないため、レーテンシが増えているのではないか、ということが考えられる。実際には、PC133メモリ(CL3)とPC100メモリで価格差がないため、新規に購入する場合にこれが問題になるとは思えないが、古いパーツを流用しようという場合は注意した方が良いかもしれない。

 言うまでもなく、D815EEAで最も高い性能を発揮したのはCL2のPC133メモリだ。以前はCL3の数倍の価格で現実味の薄かったCL2だが、ここにきて大幅に値下がりしている。体感できるような性能差ではないものの、これだけリーズナブルな価格差になれば、選ぶ人も増えることだろう。D815EEAは、メモリについてほとんど設定する余地はなく、SPDのデータにしたがってメモリのタイミングは決定される。それでもちゃんと違いが出ると分かったことが、個人的には収穫だった。

●補遺:FinePix用の予備パーツを入手

 3月14日付けの本コラムで、FinePix6800Zを取り上げた。その際筆者は、専用のUSBケーブルとクレードルについて、スペアが欲しいこと、商品としては流通していないものの、部品扱いで取り寄せできそうなことを述べた。FinePix6800Zが比較的新しい製品であるため、部品の供給が本体へのバンドルを優先しているようで時間がかかったが、ようやく入手することができた。

 まず専用ケーブルだが、Parts Numberは「DRFZ04053-100」。筆者の購入価格は1本710円で、2本購入したため1,420円の出費となった(価格はすべて税別)。1本は次に述べるクレードルにセットし、もう1本はノートPCのアクセサリを入れたバッグに放り込んでおくつもりだ。これで、いちいち出かける際に、ケーブルを外したりしなくて済むし、何よりケーブルを忘れる事故を防止できる。この予備のケーブルを欲しいという需要は結構あるようで、サンワサプライなどのサードパーティ製品も登場している。

 クレードルのParts Numberは「DRFZ04032-100」で、筆者の購入価格は2,160円である。合わせてもう1個ACアダプタ(こちらは商品として単体で流通している)を購入した(3,200円)ため、計5,360円の出費となった。ケーブルまで含めるとクレードル一式で6,070円ということになる。アクセサリとして、決して安くないとは思うものの、仕事部屋とリビングルーム、あるいは自宅と職場の両方にクレードルを置きたいというユーザーも少なくないハズだ。3点をセットにし、商品として流通させることで、こうしたニーズに応えることが可能だろうし、価格ももう少し安くできるのではないかと思う。

□Intel VC820製品情報(英文)
http://developer.intel.com/design/motherbd/vc/index.htm
□Intel D815EEA製品情報(英文)
http://developer.intel.com/design/motherbd/ea/ea_ds.htm
□関連記事
【4月3日】サンワサプライ、コネクタが光るUSBケーブル
--ソニーP1やFinePix対応のミニUSBケーブルも発売
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/20010403/sanwa.htm

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(2001年4月25日)

[Text by 元麻布春男]


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