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Intel 副社長兼テクノロジ&リサーチラボ最高技術責任者のパット・ゲルシンガー氏 |
会期:4月17日~19日
会場:東京国際フォーラム
東京国際フォーラムにおいてIntelは、同社の将来の戦略や製品計画などをエンジニアなどに対して説明するためのIntel Developer Forum(以下IDF)を開催している。
基本的には米国で2月に開催されたもののローカライズ版と言えるが、初日に行なわれた携帯電話に関するセッションなどでは日本向けだけの内容も含まれており、PCメーカー関係者やエンジニアなどにとっては注目の内容となっている。
2日目の本日はIntelの技術開発を統括する副社長兼テクノロジ&リサーチラボ最高技術責任者のパット・ゲルシンガー氏、そして副社長兼Intelアーキテクチャグループマーケティング統轄本部ディレクタのアナンド・チャンドラシーカ氏によるIntelの技術動向やIntelアーキテクチャの今後などに関する基調講演が行なわれた。
●「技術の改良によりムーアの法則にのっとった半導体開発サイクルは進む」とゲルシンガー氏
最初に壇上に立ったゲルシンガー氏は、自身が統括しているIntelラボの研究・開発について説明した。ゲルシンガー氏によればIntelラボでは以下の4つの面から開発が進められているという。
これに対して、シリコンと製造技術ではいくつかの新しい内容が明らかになった。ゲルシンガー氏は、今後同社の半導体開発にこれまでのシリコン技術に加えてMEMS(Micro-Electro Mechanical-System)と呼ばれる技術を応用していくことを明らかにした。
MEMSとはシリコン基板上に半導体微細加工技術を用いて、三次元的微小構造物をつくる技術のことを指している。これによりシリコン基板上に小さな機械システムを実装することが可能になる。
ゲルシンガー氏は「MEMSの技術はシリコン技術と類似している。MEMSとシリコン技術を組み合わせることにより、より強力な製品を作ることができる」と述べた。その応用例として、「シリコン上にマイクロ・ラジエターと呼ばれる冷却装置を実装することにより、チップを冷却する」(ゲルシンガー氏)などが検討されているという。
MEMSを説明するスライド。シリコンの上に3次元の小さな機械装置などが実装することができるようになる | MEMSの応用例としてマイクロ・ラジエータ(超小型冷却装置)などが紹介された。増え続ける発熱量の低減に貢献するか? |
IntelのPentium 4やAthlonなどCPUの消費電力の問題はより大きな問題となりつつあり、特にスリムデスクトップケースなどSFF(Small Form Factor)プラットフォームのPCが主流となっている日本市場では大きな問題としてクローズアップされつつある。ゲルシンガー氏はこの点についても触れ「CPUの消費電力は上がり続けている。特に電力密度は深刻で、既にホットプレートの熱さを超え、今後数年の間に原子炉やロケット噴射口などに到達してしまうだろう」と述べ、今後熱設計などによる放熱技術が非常に重要になるとの見通しを明らかにした。その上で日本の技術者に向け、「従来の手法では冷却技術は追いつかない、なんらかのブレークスルーが必要だ」と述べ、そうした技術へ取り組んで欲しいと語った。
最後に将来のマイクロアーキテクチャについて触れ、
●低消費電力版モバイルPentium III 600MHzを近い将来に出荷
Intel副社長兼Intelアーキテクチャグループマーケティング統轄本部ディレクタのアナンド・チャンドラシーカ氏 |
デスクトップPCに関してはPentium 4についての説明に時間が割かれ、「今年の第4四半期が終わった時点で、IntelのCPUにおけるPentium 4の比率は50%に達すると予想している」と述べ、Pentium 4の立ち上げが急速に進むという見通しを明らかにした。その理由として「Direct RDRAMの価格もPC800/128MBの価格が100ドル(日本円で約12,000円)を切るなど下落を続けている。さらに、今後6カ月以内にPentium 4に最適化されたソフトウェアが150以上登場するだろう」と述べ、プラットフォームや対応ソフトウェアなどの充実により、Pentium 4の普及が進むと予測した。
さらに、モバイルPC向けCPUに話が移ると「これからの市場を考えるとA4薄型がメインの市場になる可能性が高い。ただ、日本ではサブノート、ミニノートに対する需要がワールドワイド市場に比べると大きい」とし、Intelは日本市場にあわせた低電圧や超低電圧のモバイルCPUについても注力していくと述べた。その中でチャンドラシーカ氏は、同社が低電圧版のモバイルPentium III 750MHz、超低電圧版モバイルPentium III 600MHzを近々投入する予定があることを明らかにした。
チャンドラシーカ氏は具体的な発表日などを明らかにはしなかったが、OEMメーカー筋の情報によれば、5月後半にこれらのCPUの発表が行なわれ、特に超低電圧版モバイルPentium IIIに関しては搭載サブノート、ミニノートが数社からリリースされる予定であるとされている。チャンドラシーカ氏はそうした超低電圧版モバイルPentium IIIを搭載した製品の例として、DDIポケットのH"INを搭載した松下電器産業のサブノート(http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/20010418/pana.htm)を紹介し、今後こうした魅力的なノートパソコンが続々と登場すると述べた。
今年の終わりにはPentium 4が50%を占めるようになる | ワールドワイド市場とは異なり日本では携帯性が重視されている |
このほか、Intelが次世代モバイル用チップセットとして計画しているIntel 830Mについて触れ、「Intel 830Mは外部グラフィックスも内蔵グラフィックスもサポートされる柔軟性を持っており、ハイエンドからローエンドまで魅力的な製品となる」と述べ、プラットフォーム面でのIntelのリードをアピールした。OEMメーカー筋からの情報によればIntelはIntel 830には3つのバージョンを用意している。外部AGPの有無、内蔵グラフィックスコアの有無などが相違点となっている。
外部AGP | 内蔵グラフィックス | |
---|---|---|
Intel 830M | ○ | ○ |
Intel 830MP | ○ | × |
Intel 830MGM | × | ○ |
これにより、OEMメーカーは必要に応じて選択することができ、非常に魅力的なチップセットと言える。Intel 830Mファミリは0.13μmのモバイルPentium III(コードネーム:Tualatin)と同じ第3四半期にリリースされる予定だ。
□Intel Developer Forum 2001 Spring Japanのホームページ
http://www.intel.co.jp/jp/developer/idf-j/
□関連記事
【4月17日】IDF2001 Spring Japan 初日レポート
ネットワーク分野に力点、PDC向けチップセットなどを発表
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/20010417/idf01.htm
(2001年4月18日)
[Reported by 笠原一輝]