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●サーバー向けに超低電圧のCPUを提供?
Intelは、サーバー向けに超低電圧(ULV)版Pentium IIIを出そうとしている。えっ、サーバーに超低電圧CPU?
本当にそうなのだ。米サンノゼで今週開催されたIntelの開発者向けカンファレンス「Intel Developer Forum(IDF)」で、Intelは低電圧版&超低電圧版サーバーCPUのロードマップを発表した。しかし、なぜサーバーに超低電圧CPU?
それは、今いちばん必要とされているサーバーCPUだからだ。Intelは、地元ベイエリアのニーズに応えるためだけでも、超低電圧サーバーCPUを迅速に製品化しなければならない。未曾有の電力危機と慢性的なスペース不足状態にあるのだから。
Ultra-Dense Server Roadmap |
これのロードマップを見るとわかる通り、このウルトラデンスサーバー用CPUはまるでノートPC向けのラインナップのようだ。だが、それも不思議はない。このCPUの目的は、サーバーの消費電力と容積を劇的に減らすこと、つまりノートPCで要求されていることと同じだからだ。
●Crusoeとサーバー市場で戦う
米国では、インターネットの普及とともに、サーバーファームと呼ばれる膨大な数のサーバーを設置したWeb系企業やアプリケーションサービスプロバイダ(ASP)などが急増した。こうした企業では、省スペースのラックマウントタイプのサーバーを使っているが、それでもスペースと電力が大きな問題になりつつあるという。
よく知られている通り、この冬、ベイエリアは深刻な電力危機に陥り、電力カットなどが行なわれる事態となった。また、この苦境を脱するために電力料金が引き上げられることになった。一方オフィススペースは、ベイエリアでは常に足りない、あっても高いという状態になっている。そのため、サーバーファームは、電力消費やスペースをできるだけ抑える方向へ向かわなければならなくなった。
そこで、こうした状況の解決策として、このところ、Transmetaの「Crusoe」を搭載するサーバーの製品化計画の発表が相次いでいる。低消費電力で低熱設計電力(TDP:Thermal Design Power)のCrusoeを使えば、消費電力が少なく容積当たりのCPU密度の高いラックマウントサーバーを実現できるというわけだ。米国でのCrusoeは、ノートPCでもインターネット家電でもなく、サーバーで突然芽が出始めた格好だ。
そして、今回のIntelによるウルトラデンスサーバーCPU発表は、まさに、こうした動きに対応したものだ。つまり、ノートPCでの対Crusoe戦略として超低電圧版モバイルPentium IIIが登場したのと同様、サーバーでの対Crusoe戦略としてサーバー用超低電圧版Pentium IIIが登場したと見ることができる。
IDFのキーノートスピーチでは、2U(約88mm)厚のユニットに8つのサーバーと2つのスイッチを詰め込んだ超低電圧版Pentium IIIシステムが公開された。各サーバーはサーバーブレード(server blade)と呼ばれるユニットになっており、それぞれ超低電圧版Pentium III 500MHz、1GB ECCメモリ、10/100 Base Ethernet、30GB HDDを搭載する。つまり、これを42Uのラックに詰め込むなら、計算上は最大で160以上のサーバーを1ラックにまとめることができる(実際には他のユニットが入るのでこれより少なくなる)わけだ。ウルトラデンスという意味はここにある。
●Fosterの正式名はIntel Xeonに
IA-32 Continuing in the Enterprise |
今回の発表で、Xeonは、サブブランドから独立したブランド名に昇格したことになる。これは、Intelがサーバー&ワークステーション市場にますます力を入れることを示すと同時に、この市場でもIA-32が有力なアーキテクチャとして残ることを明確にした。つまり、5年前にIntelが言っていたようなサーバー市場でのIA-32からIA-64へのドラスティックな移行は当面はないということだ。また、これはサーバー市場が多様化し、用途に合わせたアーキテクチャが必要になったことも示している。
一方、IA-64アーキテクチャの「Itanium」については、予想に反して次世代Itanium「McKinley(マッキンリ)」の解説はほとんど行なわれなかった。一応、McKinleyやその後継となる、0.13μm版ハイパフォーマンスCPU「Madison(マディソン)」と、0.13μm版高プライスパフォーマンス版の「Deerfield(ディアフィールド)」について言及はされたが、内容のある説明はなかった。むしろ、キーノートスピーチは、現在のItaniumのラウンチや性能を強調するという内容だった。
この理由は明快だ。まだ最初のItaniumがきちんとラウンチしていないのに、次世代CPUの突っ込んだ説明を行なうわけにいかないからだ。1年後に、2倍の性能で、しかもコードの最適化が異なるCPUが出るとなったら、Itaniumの勢いが削がれてしまうだろう。
このほか、Fister氏はサーバー向け高速インターコネクトテクノロジである「InfiniBand」の紹介も行なった。InfiniBandは、昨年10月にSpec 1.0がフィックス、Intelはその直後にインターフェイスチップをテープアウト、12月にサンプルチップを完成させた。そして、今回のIDFでは世界初のデモも公開された。もっとも、ステージ上のデモは見事に失敗してしまったが。
(2001年3月2日)
[Reported by 後藤 弘茂]