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Intel社長兼CEOのクレイグ・バレット氏 |
Intel社長兼CEOのクレイグ・バレット氏は、カリフォルニア州サンノゼで開催中のIntel Developer Forum Conference Spring '01で講演を行ない、PCなどに代表されるデジタル機器によるデジタルの世界の今後について語った。その中で、バレット氏はデジタル機器により構成される“デジタルワールド”は今後もインターネットを推進エンジンとして発展を続けると述べ、世界中に対してデジタルワールドへ投資を続けるべきと呼びかけた。
●IT業界の進化は今後も止まることがない
Intel Developer Forum Conference Spring'01(以下IDF)は、既にお伝えしているように昨日より開催されているが、基調講演が行なわれる本日が実質初日であり、会場には多くのIDF参加者が集まっていた。最初に壇上に登場したのはIntelの副社長兼CTOのパット・ゲルジンガー氏で、今回のIDFの簡単なオーバービューについて語った。そのゲルジンガー氏の紹介でクレイグ・バレット氏が登場した(ちなみに、今回のIDFではInternational CES[ http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/20010109/ces05.htm ]のような派手な登場ではなく、普通の登場だった)。
最初にバレット氏は「最近はデジタル機器の発展はこのあたりが限界ではないかという記事などをよく見かける。しかし、この業界はまだ幼年期にあり、今後より大きな発展の可能性を秘めている」と述べ、最近新聞などでよくみかけるようになったIT業界の景気が後退し、今後IT系企業が衰退するというような記事に異議を唱えた。
そうした限界を迎えていない証拠として「例えばアジアは数年後に世界中のオンラインユーザーの25%を占めるようになるし、日本ではPCユーザーのうち62%はインターネットに接続しているほか、NTTドコモのiモードに代表されるようなワイヤレスの普及率は非常に高い。ヨーロッパでもスウェーデンやノルウェーなどでは70%がインターネットユーザーであるほか、60%に携帯電話が普及している。さらに、ここ米国では昨年9千億ドル相当の取引がネットを通じて行なわれ、うち90%はB2C(企業対個人間の電子取引)になっている。さらに今年はB2B(企業間の電子取引)の普及が期待される。このように、世界中どの地域を見ても大きなビジネスチャンスがある。その発展の鍵を握っているのがインターネットで、今後もデジタルワールドはインターネットを推進剤に発展し続ける」と述べ、今後もIT業界は止まることなく発展し続けるという点を強調した。
そうした発展を止めないためにも、IntelやIT業界の企業がするべきことは「技術を進化させていくことこそが鍵であり、技術革新こそが何よりも重要である」と述べ、各企業が技術磨き、革新的な製品をだしていくことが重要であると述べた。そのために、Intelは75億ドルもの投資を行ない、そうした新しい技術の研究開発に43億ドルもの投資を行なっていると述べた。
【お詫びと訂正】初出時に75億ドルの投資先は対外的な投資であるとの記述がありましたが、誤りであり、75億ドルの用途はIntel社内の設備投資に当てられています。ご迷惑をおかけいたしました関係者の皆様にお詫びして訂正いたします。
●Intelは4つのアーキテクチャでデジタルワールド発展を支援
続いて、バレット氏はそうしたデジタルワールドの発展に対するIntelの役割・戦略を説明した。バレット氏は「Intelは4つアーキテクチャからなるビルディングブロックでデジタルワールドの発展に寄与していく。その4つのアーキテクチャとは、IA-32、Personal Internet Client Architecture、IXA(Internet Exchange Architecture)、サーバーの4つだ」と述べ、それぞれにあった半導体を投入することにより、デジタルワールドの発展を支援すると述べた。
IA-32に関する具体的な説明として、再び「エクステンデッドPC」というコンセプトについて再び言及した。エクステンデッドPCのコンセプトについては、International CESで説明した通り[ http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/link/ces01_i.htm ]で、PCが家電などを含めた周辺機器と接続されることにより、より使い勝手を向上させるというものだ。「このエクステンデッドPCに関してはビル・ゲイツ氏が言及しているほか、アップルのCEOであるスティーブ・ジョブス氏もMACWORLDで同じようなコンセプトに言及している。スティーブが我々のあとをフォローするなんて珍しい話なのだが」と述べると、会場からは笑いが起こった。
さらに、そのExtended PCのコンセプトを実現するPCに使われるCPUとして、IntelはPentium 4を提供していると述べ、「Pentium 4はオーディオ、ビデオなどのファイルを扱うのに適したCPU。今後はOSがより優れたものになり、PCはより使いやすくなる」と述べた。
そして、Microsoftのプラットフォーム担当副社長ジェームス・アルチン氏をステージに呼び、次期クライアント用OSであるWindows XPを紹介した。今回のデモに使われたWindows XPは開発中のβ2バージョンで、Build番号は2429。International CESで公開されたBuild番号2415に比べて若干Build番号が上がっていた。デモはPentium 4を搭載したDell Computerのマシンを利用して行なわれ、ビデオ再生とログイン画面をスムーズに切り替えたり、オーディオファイルのエンコードをしながら、ビデオ再生や3Dゲームをしてもコマ落ちがないことなどが強調された。
マイクロソフトプラットフォーム担当副社長ジェームス・アルチン氏がWindows XPをデモ | Windows XPのスタートメニューなどの画面 |
バレット氏はPersonal Internet Client Architectureについて言及した。これはIntelが携帯端末向けに用意しているXScaleを利用したアーキテクチャで、「これを利用することにより、携帯電話などにPC並の機能を持たせることなどが可能になる」と述べた。また、Internet Exchange Architecureでは次世代の高速ネットワークのインフラとなり、さらにサーバーは「IA-32ベースのサーバーだけでなく、今後はIA-64ベースのサーバーが立ち上がる。今後は現在のItaniumだけでなく、その後継についてもIDFで明らかにし、今後ともIA-64に力を入れていく」と述べ、IA-64のクラスタサーバーのデモなどを行なった。
バレット氏は「以上の4つのインターネットのためのアーキテクチャにより、今後もIntelはインターネットのビルディングブロックを提供していく」とインターネットの発展に今後も力を入れていくことを強調した。
Windows XPでビデオ再生とログイン画面を高速に切り替える様子(MPEG-1、3.6MB) |
●「現在のシリコンチップ技術であと5、6世代はいける」とバレット氏
続いてバレット氏はシリコンチップの話にうつり、「インターネットのためのこれらのアーキテクチャを実現するのは、それぞれに投入されるシリコンチップだ。この製造技術は非常に重要だ」と述べ、製造技術の重要性を強調した。
12インチ(300mm)ウェハを持つバレット氏。これからNorthwoodやTualatinなどが作られることになる | 12インチウェハ上のダイ。CPUのものだと思われ、下半分はL2キャッシュであるという。もしかするとNorthwoodか? |
バレット氏は現状の8インチ(200mm)ウェハを示し、「現在ではこのウェハをつかっているが、当社は製造プロセスルールが0.13μmに移るタイミングでウェハの大きさを12インチ(300mm)のものへ移行する」と述べ、0.13μmの12インチウェハを公開した。「この12インチウェハは、製造プロセスルールが0.13μmで、6層、配線は銅配線となる。1枚で200億個ものトランジスタが詰まっており、2GHz以上のクロックで動作するMPUを取り出すことができる」と述べ、さらに大きなコストダウンを期待できると述べた。この後、電子顕微鏡を利用したウェハの断面図を見せていき、6層となっている様子や、ゲート部分、トランジスタなどについてを見せていった。
ウェハの断面図。6層であることがよくわかる | トランジスタ部分の拡大 |
さらに、「現在、0.1μm、0.07μmと2世代先まで開発を続けており、今後も開発は続けられていく。現在5世代先の0.03μm程度までは実現可能と考えており、場合によってはその先も可能かもしれない」と述べ、現在のシリコン技術で、5、6世代先まで対応できるという見通しを明らかにした。
□Intel Developer Forum Conference ,Spring 2001ホームページ
http://developer.intel.com/idf/
□ニュースリリース(和訳)
http://www.intel.co.jp/jp/intel/pr/press2001/010228b.htm
□スピーチのトランスクリプト(英文)
http://www.intel.com/pressroom/archive/speeches/crb20010227idf.htm
(2001年2月28日)
[Reported by 笠原一輝@ユービック・コンピューティング]