DDR SDRAMとAMD-760の本領を発揮させる
266MHzベースの新Athlon 1.2GHz



 AMDのDDR SDRAMをサポートしたチップセットであるAMD-760チップセットは、昨年の10月に発表され、既にこのコーナーでも取り上げたのだが、これまでAMD-760はその本来の能力を発揮していなかった。新しいシステムバス266MHzに対応したAthlonプロセッサが入手不可能だったからだ。ところが、今週のはじめに秋葉原のPCショップなどにこのシステムバスクロック266MHzに対応したAthlon 1.2GHzが並びはじめた。早速この新しいAthlon 1.2GHzの実力を探っていこう。


●AMD-760の本領発揮にはシステムバス266MHzのAthlonが必要

 AMD-760に関しては、以前のこのコーナーで一度取り上げている。その当時はシステムバスクロックが266MHz(実際には133MHzのDDR)のAthlonが出荷されていなかったため、200MHz(100MHzのDDR)のAthlonでのテストとなっていたのだが、この状態ではAMD-760の本当の力を発揮している状態ではなかった。というのも、AMD-760はシステムバスとメモリバスが同期しており、システムバス200MHzのAthlonを利用した場合には、メモリバスも200MHz(実際には100MHzのDDR)となってしまい、PC1600(200MHz、ピーク時バンド幅1.6GB/秒)しか利用することができない。

 バンド幅がより広いPC2100(266MHz、ピーク時バンド幅2.1GB/秒)で利用するには、システムバスクロックが266MHzである必要があり、この状態になってこそAMD-760の本領が発揮されるというのは、AMD-760を取り上げた回の結論で述べたとおりだ。そうしたシステムバスクロック266MHzのAthlonだが、今回それが発売されたわけで、いよいよAMD-760の本領を発揮できる環境が整いつつあると言える。既にAMD-760搭載マザーボードを持っているユーザーであれば非常に注目な製品であるのは間違いない。

 ただ、今回登場したシステムバスクロック266MHzのAthlonは、基本的に従来のThunderbirdベースのAthlonと同等であり、システムバスのクロック、倍率などが変更されただけで、特に大きな違いはない。外観上も大きな違いはなく、「L6」の設定が従来の200MHzベースのAthlonと違っている程度だ。既に倍率変更できるAthlonを利用して、倍率を下げてシステムバスのクロックをあげて利用しているユーザーには新鮮さはないと思うが、266MHz動作が正式サポートされ、AMDが266MHzでの動作を保証する点などがメリットと言える。


●266MHz化とPC2100により大きなパフォーマンスアップを確認

 今回はAthlon 1.2GHz、そしてAMD-760とPC2100の組み合わせの威力を探るために、以下の組み合わせを用意した。

【表1:ベンチマークの設定】
A12/266+AMD760+PC2100A12/200+AMD760+PC1600A12/200+KT133+PC133
CPUAthlon 1.2GHzAthlon 1.2GHzAthlon 1.2GHz
システムバスクロック266MHz200MHz200MHz
マザーボードASUSTeK COMPUTER
A7M266
ASUSTeK COMPUTER
A7M266
ASUSTeK COMPUTER
A7PRO
チップセットAMD-760AMD-760Apollo KT133
メモリPC2100(CL=2.5)PC1600(CL=2)PC133 SDRAM(CL=3)
メモリ容量128MB
HDDIBM DTLA-307030
ビデオカードGeForce2 GTS(64MB、DDR SDRAM)
解像度1,024×768ドット/16ビットカラー

 CPUには、システムバスクロックが266MHzと200MHzのAthlonを用意し、それぞれAMD-760マザーボード(ASUSTeK COMPUTER A7M266)とPC2100/PC1600 DDR SDRAMのメモリモジュールを利用した。また現行のPC133 SDRAMのプラットフォームと比較するため、200MHzベースのAthlon 1.2GHz+PC133 SDRAM+Apollo KT133という環境も用意した。利用したベンチマークはBAPCOのSYSmark2000、MadOnion.comの3DMark2000、id SoftwareのQuakeIII Arena、Virginia大学が開発したメモリのバンド幅計測テストであるStreamDの4つだ。

 なお、以下266MHzベースのAthlon+AMD-760+PC2100を“A12/266+AMD760+PC2100”、200MHzベースのAthlon+AMD-760+PC1600を“A12/200+AMD760+PC1600”、200MHzベースのAthlon+Apollo KT133+PC133 SDRAMの組み合わせを“A12/200+KT133+PC133”と呼ぶ。

 SYSmark2000の結果だが、少し詳しく見ていこう(全ベンチマークデータはこちら)。この結果を見る限り、ビジネスアプリケーション(Excel2000、Word2000など)では“A12/266+AMD760+PC2100”と“A12/200+AMD760+PC1600”の差は小さい。例えば、「Word2000」の結果では“A12/266+AMD760+PC2100”の191に対して、“A12/200+AMD760+PC1600”は189とほぼ誤差と言ってよい。こうしたビジネスアプリケーションではシステムバスやメモリバスのバンド幅をめいっぱいに使うような処理はほとんど行なっておらず、こうしたアプリケーションではシステムバスやメモリバスのバンド幅による違いは出にくいのだ。なお、“A12/200+KT133+PC133”はDDR SDRAMの2つに比べると成績が悪いが、これはメモリの違いというよりはチップセットの違いによるものと考えるのが妥当だろう。

【グラフ1 Word2000の結果】
Word 2000 191
189
183
Excel 2000 250
248
239
A12/266+AMD760+PC2100
A12/200+AMD760+PC1600
A12/200+KT133+PC133

 しかし、システムバスやメモリバスのバンド幅が効いてくると考えられる、「Windows Media Encoder 4.0」の結果では、メモリなどによる差がでている。“A12/266+AMD760+PC2100”が232、“A12/200+AMD760+PC1600”が222、“A12/200+KT133+PC133”が202となっており、こうしたタイプのアプリケーションではDDR SDRAMのような高いバンド幅を実現するメモリの本領を発揮させることができると言える。

【グラフ2 Windows Media Encoder 4.0の結果】
Windows Media Encoder 4.0 232
222
202
A12/266+AMD760+PC2100
A12/200+AMD760+PC1600
A12/200+KT133+PC133

 こうした傾向は3DMark2000やQuakeIIIなどでも確認することができる(全ベンチマークデータはこちら)。こうした3Dアプリケーションにおけるベンチマークでは、高解像度ではCPUよりもグラフィックスカードがボトルネックとなってしまい、CPUやメモリを変えた場合でもほとんど差がでない。例えば、グラフ5はQuakeIIIの1,280x1,024ドット/32bitカラーの結果だが、CPU、チップセット、メモリの違いは結果になんら影響を与えていない。そこで、低解像度の結果に注目してみたい。グラフ3(3DMark2000/640x480ドット/16bitカラー/HW TLオン)、グラフ4(QuakeIII Arena/640x480ドット/16bitカラー)はともに、640x480ドット/16bitカラーにおける結果だが、どちらでもシステムバスとメモリのバンド幅の向上が性能アップに貢献していることが見て取れる。グラフ4で見てみると、“A12/266+AMD760+PC2100”が179.2、“A12/200+AMD760+PC1600”が160.9、“A12/200+KT133+PC133”が140と、“A12/266+AMD760+PC2100”が“A12/200+KT133+PC133”に比べて28%も向上していることがわかる。

【グラフ3 3DMark2000/640x480ドット/16bitカラー/HW TLオン】
640×480/16/HW TL 10,225
09,823
08,855
A12/266+AMD760+PC2100
A12/200+AMD760+PC1600
A12/200+KT133+PC133

【グラフ4 QuakeIII Arena】
640×480/16 179.2
160.9
140.0
1,280×1,024/32 053.9
053.9
053.7
A12/266+AMD760+PC2100
A12/200+AMD760+PC1600
A12/200+KT133+PC133

 実際にメモリのバンド幅を実測するStreamDのうちADD(加算)テストでも、“A12/266+AMD760+PC2100”が834.78MB/秒、“A12/200+AMD760+PC1600”が727.27MB/秒、“A12/200+KT133+PC133”が415.58MB/秒と、PC2100(ピーク時2.1GB/秒)がPC133 SDRAM(ピーク時1.06GB/秒)の倍近いスコアを叩き出しており、スペック通りにバンド幅の向上という意味ではDDR SDRAMの効果があることが見て取れる。

【グラフ6 StreamD】
COPY32 556.52
556.52
374.27
COPY64 581.82
484.85
376.47
SCALE 888.89
727.27
376.47
ADD 834.78
727.27
415.58
TRIAD 727.27
623.38
426.67
A12/266+AMD760+PC2100
A12/200+AMD760+PC1600
A12/200+KT133+PC133


●DDR SDRAMで性能向上を加速したAMD、Intelの反撃はいかに?

 以上のように、ビジネスアプリケーションではさほど効果はないものの、動画ファイルのエンコードや3Dといったシステムバスやメモリバスのバンド幅をめいっぱい利用しているようなアプリケーションではシステムバスクロック266MHzのAthlonとDDR SDRAM(PC2100)の組み合わせは性能向上に寄与すると言える。今回はSDRAMのマザーボードがApollo KT133(266MHzは未サポート)だったため、システムバスクロック266MHzのAthlon+PC133 SDRAMという組み合わせはテストしていないが、動画ファイルのエンコードや3Dなどはメモリに大量のデータを展開するタイプのアプリケーションなので、システムバスだけでなくメモリバスのバンド幅もワイドである必要があり、さほど意味はないと言えるだろう。PC133 SDRAMとPC2100で大きな差がついたStreamDの結果がその証拠となるだろう。

 以上のように、システムバス266MHzのAthlonとAMD-760の組み合わせは、Athlonのパフォーマンスを最大限に引き出す魅力を秘めており、Athlonのプラットフォームを選択するのであれば、システムバス266MHzのAthlon+AMD-760+PC2100という組み合わせが最もお薦めであるのは間違いないだろう。これからAthlonシステムを入手したりする場合には、迷わずこの組み合わせを選択したい。

 ライバルとなるPentium 4も、Direct RDRAMという高いバンド幅を実現するメモリを採用しており、3Dや動画のエンコードといった作業では大きな威力を発揮する。そのパフォーマンスだけを見るのであれば、おそらくAthlon 1.2GHz+AMD-760+PC2100という組み合わせよりもPentium 4 1.5GHz+Intel 850+PC800という組み合わせのほうが上回っていると思う。

 しかし、Athlon 1.2GHz+AMD760+PC2100という組み合わせが8万円弱で購入できるのに対して、Pentium 4 1.5GHz+Intel 850+PC800という組み合わせは11万円強と高く、このコストパフォーマンス面のデメリットをいかに覆すかが、Intelの課題だ。そうした意味ではIntelが2002年1月に計画していると言われるDDR SDRAMサポートのチップセットであるBrookdale-DDRに期待したいところだが、いかんせんそれも1年後。となると、それまでにいかにPentium 4のコストを下げることができるか、それこそがIntelが不利な状況を覆す鍵となるだろう。

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【2月19日】FSB 266MHz対応のAthlon 1.2GHzが秋葉原で販売開始
実売価格は4万円前後で入荷量は極少数
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/20010219/athlon.htm

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(2001年2月23日)

[Reported by 笠原一輝@ユービック・コンピューティング]


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