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Celeron 800MHzがフライングで登場
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先週より秋葉原で、Intelがまだ発表していないCeleron 800MHzが出回りはじめている。複数のOEMメーカー筋の情報によれば、Intelは来年の1月3日(米国時間、日本時間では1月4日)にCeleron 800MHzを発表する予定とされているが、そうした発表前のCPUが既に販売されているなど秋葉原は相変わらず世界の最先端を突き進んでいる。今回はこのCeleron 800MHzをレビューしよう。
●システムバスが100MHzとなったCeleron 800MHz
Celeron 800MHzはこれまでのCeleronとは大きく異なっている部分がある。それがシステムバスのクロックだ。Celeronのシステムバスはこれまで66MHzに制限されてきた。なぜかと言えば、上位モデルであるPentium IIIと差別化を図るためだ。Pentium IIIのシステムバスは、これまで100MHzと133MHzが混在していた。しかも、本来システムバス133MHzを加速させるはずだったIntel 820チップセットが、Direct RDRAMの問題で躓いてしまったこともあり、システムバス133MHzへの移行に思ったよりも時間がかかってしまった。しかし、PC133 SDRAMと133MHzの両方をサポートするIntel 815チップセットの登場により、システムバス133MHzのPentium IIIの数が増え、現在Pentium IIIではシステムバス133MHzのPentium IIIが主流となっている。そうしたこともあり、Celeronのシステムバスも100MHzに引き上げられることになった。
OEMメーカー筋の情報によれば、今後登場するより高クロックのCeleronはすべてシステムバスが100MHzになるとIntelは説明しているそうで、2001年の第2四半期に投入される予定のCeleron 850MHzもシステムバスは100MHzになるという。なお、余談だがCeleron 850MHzからは、利用されるCPUコアのステッピングが現行のCステップからDステップへと変更される。
今回のCeleronの機能面での変更点は基本的にはシステムバスが100MHzに引き上げられただけで、そのほかには大きな変更点はない。同じ800MHzのPentium III(800MHz/800EB MHz)との違いをまとめると以下のようになる。
Celeron | Pentium III | |
---|---|---|
システムバス | 100MHz | 100/133MHz |
L2キャッシュ | 128KB | 256KB |
SSE | ○ | ○ |
PSN | × | ○ |
このように、現行のCeleronはインターネット・ストリーミングSIMD拡張命令(SSE)に対応しているため、差はL2キャッシュ、PSN(プロセッサ・シリアル・ナンバー)のみとなっている(システムバスが133MHzのPentium IIIの場合はシステムバスも異なる)。
●ベンチマークではDuron 800MHzを下回る
Celeronのシステムバスが100MHzとなったことで、アーキテクチャ的な違いはともかくとして機能面でのAMDのDuronプロセッサ(以下Duron)との比較は以下のようになる。
Celeron | Duron | |
---|---|---|
システムバス | 100MHz | 100(DDRで200MHz) |
L1キャッシュ | 32KB | 128KB |
L2キャッシュ | 128KB | 64KB |
拡張命令 | SSE | エンハンスド3DNow! |
こうして見ていくと、L1キャッシュの容量とシステムバスではDDRで200MHzを実現しているDuronが有利、L2キャッシュの容量ではCeleronが有利となる。Celeronのシステムバスが66MHzに制限されていた時にはDuronにかなり負けていたのだが、それがシステムバス100MHz化によりどの程度詰まるのかが重要なポイントと言える。
今回はベンチマークとしてBAPCOのSYSmark2000、MadOnion.comの3DMark2000 Version1.1とVideo2000の3つのテストを行なった。
SYSmark2000は実在のアプリケーションのコードを利用してシステム全体のパフォーマンスを計測するベンチマークで、実アプリケーション環境におけるユーザーの体感に比較的近い結果がでると定評がある。結果は、全体の結果を意味するOverall Rating、インターネット向けのコンテンツを作るアプリケーションの総合であるInternet Content Creation、オフィスアプリケーションを利用するときの総合であるOffice Productivityの3つがある。このほか、アプリケーションごとに1つ1つ結果をだしてくれる。
3DMark2000 Version1.1は3Dゲームにおけるパフォーマンスを計測し、Video2000は動画再生や作成などにおける性能を計測する。3DMark2000は解像度ごとに計測し、640x480ドットから1,280x1,024ドットまで16bitカラー(65,536色)、32bitカラー(1,677万色)の2つのモードで計測している。Video2000はクオリティなどを計測する項目もあるがテスターが手動で判断するのでそれは利用せず、動画再生・作成のパフォーマンスを計測するPerformanceとMPEG-2の作成性能を計測するMPEG-2 Encoding Performanceの2つを採用した(数字はいずれも大きいほうがパフォーマンスが高いことを示している)。なお、動作環境は以下の通りだ。
【動作環境】
マザーボード:Intel D815EEA(Celeron、Intel 815E)
ASUSTeK COMPUTER A7PRO(Duron、Apollo KT133)
メモリ:PC100 SDRAM(Celeron、100MHz、CL=2)
PC133 SDRAM(Duron、133MHz、CL=3)
ビデオカード:GeForce2 GTS 64MB DDR SDRAM
ハードディスク:IBM DTLA-30730(30GB、Ultra ATA/100)
結論から言えば、ほぼすべての項目でDuron 800MHzがCeleron 800MHzを上回った。SYSmark2000では細かなアプリケーションではいくつかCeleronが上回った部分もあったが、Overall Rating、Internet Content Creation、Office Productivityの3つの総合数値ではDuron 800MHzを下回った。さらに、3DMark2000でも、ビデオチップがボトルネックとなる高解像度・多色モードでは差がなかったが、CPUの処理能力が決め手となる低解像度ではDuronがCeleronを圧倒した。なお、Video2000に関しては、MPEG-2 Encoding PerformanceこそCeleronが勝利したが、総合値であるPerformanceではほぼ同等という結果になった。
Overall Rating | 147 |
---|---|
150 | |
Internet Content Creation | 149 |
153 | |
Office Productivity | 145 |
148 | |
Bryce 4 | 137 |
179 | |
CorelDraw9 | 161 |
178 | |
Elastic Reality 3.1 | 179 |
185 | |
Excel 2000 | 151 |
142 | |
NaturallySpeaking Pref 4.0 | 132 |
127 | |
Netscape Communicator | 147 |
148 | |
Paradox 9.0 | 141 |
151 | |
Photoshop 5.5 | 133 |
105 | |
PowerPoint 2000 | 150 |
157 | |
Premiere 5.1 | 152 |
160 | |
Word 2000 | 133 |
142 | |
Windows Media Encoder 4.0 | 148 |
149 |
3DMark2000
640x480/16 | 5,089 |
---|---|
6,695 | |
640x480/32 | 5,000 |
6,430 | |
800x600/16 | 5,043 |
6,513 | |
800x600/32 | 4,838 |
5,921 | |
1,024x768/16 | 4,848 |
6,072 | |
1,024x768/32 | 4,357 |
4,780 | |
1,280x1,024/16 | 4,472 |
4,999 | |
1,280x1,024/32 | 3,202 |
3,263 |
Video2000
Performance | 492 |
---|---|
497 | |
MPEG2 Encoding Performance(fps) | 24.12 |
20.95 |
●Intelプラットフォームをどう評価するかが購入のわかれ目
以上のように、性能に関してはシステムバスが66MHzであったころに比べて縮まりはしたものの、実際のところ性能面ではまだDuronに遅れをとっている状況であるといっていいだろう。純粋に性能で考えた場合、Intelはもうひと踏ん張りが必要であると思う。
こうした結果を踏まえると、現状ではDuronよりも安価でない限りCeleronを買う理由は少ないと言える。ところが、現在秋葉原では1万円強でDuron 800MHzのリテールボックスを買うことができるのに対して、Celeron 800MHzは2万円台の半ばと非常に高い価格設定となっている。現時点では発表前のフライング販売であり、いわゆる「初物価格」であることを考え合わせてもCeleronの価格は高いと言わざるを得ない。これなら、マザーボード(1万円台半ば)を買い換えるコストを入れたとしても、Duronの方がお買い得と言える。
しかし、来年の1月3日(米国時間)と伝えられる正式発売日以降は値段も適正なものに戻る(2万円を切るぐらい)と思われることを考えると、既にCoppermineコアが利用できるマザーボードを持っているユーザーであれば、アップグレード用のCPUとして購入するのは決して損ではないだろう。ただ、今後もこの傾向が続く可能性が高いことを考え合わせると、これを機にマザーボードを含めてDuronへの移行を図ってしまうのも悪い選択ではないということを付け加えておきたい。
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http://www.watch.impress.co.jp/akiba/hotline/20001216/celeron800.html
(2000年12月22日)
[Reported by 笠原一輝@ユービック・コンピューティング]