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DDR SDRAMをサポートしたAthlon/Duron用チップセット
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先週末以来、AMD-760チップセット、ALiMAGiK 1チップセットなどDDR SDRAMをサポートしたチップセットを搭載したAthlon Duronマザーボードが秋葉原などで販売されている。次世代メモリの本命と見られていたDirect RDRAMが大きな躓きを見せたため、次の本命はDDR SDRAMであると長らく言われてきた。これまでは実際の製品が登場したわけではなく、その本当のパフォーマンスがどの程度かわからなかったのだが、いよいよDDR SDRAMもパフォーマンスを計測することが可能になったのだ。そこで今回はAMD-760を搭載したGIGA-B TechnologyのGA-7DXC、ALiMAGiK 1を搭載したIwillのKA266-Rの2製品を取り上げ、そのパフォーマンスを探ってみよう。
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AMD-760のノースブリッジAMD-761 | ALiMAGiK 1のノースブリッジM-1647 |
●DDR SDRAMを搭載したPC-2100/1600を利用できるAMD-760、ALiMAGiK 1マザーボード
今回紹介するのは、AMD純正のAMD-760チップセットを搭載したGIGA-Byte TechnologyのGA-7DXCとALi(Acer Laboratories Inc.)のALiMAGiK 1を採用しているIwillのKA266-Rだ。既に冒頭でも述べたように両チップセットともに、今話題のDDR SDRAMに対応している。
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GA-7DXC | KA266-R |
DDR SDRAM(Double Date Rate SDRAM)の特徴は、従来のSDRAMに比較して1クロックで送れるデータ量が倍になっていることだ。SDRAMはメモリに同期してデータの転送を行なうが、通常1クロックで1つのデータを転送する。これに対して、DDR SDRAMはクロックの両エッジ(要するに波の右側と左側)で1つずつデータを送信するようになっている。つまり、同じ1クロックでもSDRAMは1つのデータしか送ることができないのに、DDR SDRAMは2つのデータを送ることができるのだ。下図のように、同じ時間でSDRAMが7つのデータを転送できる場合には、DDR SDRAMでは14のデータを送ることができる。
DDR SDRAM
クロック┌─┐ ┌─┐ ┌─┐ ┌─┐ ┌─┐ ┌─┐ ┌─┐
┘ └─┘ └─┘ └─┘ └─┘ └─┘ └─┘ └
データ (1)(2) (3)(4) (5)(6) (7)(8) (9)(10)(11)(12)(13)(14)
では具体的に現在PCで利用されているSDRAMと比較してみよう。例えば、100MHzのSDRAMはPCで利用する場合は、64bitのバス幅のメモリモジュール(PC100 SDRAM)で利用される。一般的には帯域やバンド幅などと表現される1秒間に転送できるデータ量(以下バンド幅)は0.8GB/秒となっている。計算式は単にクロックの数字にバス幅をかければよく、64bit=8Byteであるので、
100M×8Byte=800MB=0.8GB
という計算になる。メモリのクロックが200MHzで、バス幅が64bitであれば、
200M×8Byte=1,600MB=1.6GB
という計算になる。
それでは、DDR SDRAMではどうなるのだろうか? 既に述べたように、DDR SDRAMでは同じ1クロックで倍の2つのデータを転送できるのだから、先ほどの計算式に2をかければよい。例えば、100MHzのDDR SDRAMであれば
100M×8Byte×2=1,600MB=1.6GB
という計算になる。つまり、DDR SDRAMは実際のクロックが100MHzであっても、倍のクロックの200MHzのSDRAMと同じバンド幅を実現できるのだ(このため、100MHzのDDR SDRAMを慣例的に200MHzのDDR SDRAMと呼ぶことがあるが、実際のクロックは100MHzだ)。なお、133MHzのDDR SDRAMでは
133.3M×8Byte×2≒2,100MB=2.1GB/秒
という計算になる。こちらも266MHzのSDRAMと同等の2.1GB/秒のバンド幅が実現され、実際のクロックは133MHzであるのだが、慣例的に266MHzのDDR SDRAMと呼ばれる。
現在、PC用のDDR SDRAMメモリモジュールとして規格化されているのは、2つのメモリモジュールがある。それがPC-2100とPC-1600だ。
ピン数 | クロック | バンド幅 | |
---|---|---|---|
PC-2100 | 184ピン | 133MHz(266MHz) | 2.1GB/秒 |
PC-1600 | 184ピン | 100MHz(200MHz) | 1.6GB/秒 |
簡単に言ってしまえば、2.1GB/秒を実現する133MHz(266MHz相当)のDDR SDRAMチップを搭載したPC用のメモリモジュールがPC-2100、1.6GB/秒を実現する100MHz(200MHz相当)のDDR SDRAMチップを搭載したPC用のメモリモジュールがPC-1600となる。「2100」「1600」の数字の意味は言うまでもなく、それぞれのバンド幅を示しており、クロックでPC800、PC700などとしているDirect RDRAMよりも高速であるという印象をユーザーに与えることを狙った名前だと言える。
●システムバスとメモリバスは同期
AMDはAMD-760と同時にシステムバス266MHz(実はEV6バスもDDR SDRAMと同じように1クロックで2つのデータを転送するので、実際のクロックは133MHz)に対応したAthlonプロセッサ(以下Athlon)を出荷している(1.2GHz、1.13GHz、1GHzの3製品がそれに当たる)。これまでのAthlonのシステムバスは200MHz(同じ理由で実際には100MHzで動作する)だったが、AMDのロードマップでは今後新しくリリースされるより高クロック製品はほとんどすべてが266MHzになるとされている。
それでは、システムバスが266MHzのAthlon、200MHzのAthlonそれぞれを利用する場合、PC-2100とPC-1600のどちらを利用することができるのだろうか? 結論から言えば、現時点では以下の組み合わせでしか利用できない。
CPU | メモリモジュール |
---|---|
Athlon 266MHzバス | PC-2100/266MHz |
Athlon 200MHzバス | PC-1600/200MHz |
なぜかと言えば、AMD-760、ALiMAGiK 1のどちらもシステムバスとメモリバスは同期しているためだ。VIA TechnologiesのApollo KT133では、システムバスとメモリバスは非同期になっている。例えば、200MHz(実際には100MHz)のシステムバスのAthlonを利用している場合でも、メモリバスは133MHzに設定することができる。そうした意味では、技術的に不可能ということはないのだが、AMD-760ではAMDはシステムバスとメモリバスは同期だと明言している(なお、ALiMAGiK 1は仕様上は非同期にできるが、IwillのKA266-Rは同期のみサポートしている)。従って、PC-2100を利用したい場合には、システムバス266MHzのAthlonが必要になる。しかし、現時点ではシステムバス266MHzのAthlonが単体販売されておらず、現時点では200MHzシステムバスのAthlonとPC-1600との組み合わせのみ利用できる(なお、PC133 SDRAMをPC100 SDRAMとして利用するのと同じように、PC-2100をPC-1600として利用することは可能)。
なお、GA-7DXC、KA266-R両製品ともに、PC-2100のDDR SDRAMが付属している状態で販売されている(GA-7DXCは128MB、KA-266-Rは64MB)。いずれも付属してくるのはMicron Technologyのチップが搭載されているPC-2100で、なんと「ENG SAMPLE」(技術者向けサンプル)と大きく書かれたシールが貼れれているという、前代未聞の“商品”だ。もちろん、動作には全く問題はないのだが、なんとなく気になるシールではある。GA-7DXCはバーテックスリンクという正規代理店の扱いでちゃんと保証もされるし、筆者が使っている限り、特に問題なかったので、あまり気にする必要はないだろう。
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GA-7DXCに付属のDDR-SDRAM(左)とKA266-Rに付属のDDR-SDRAM(右)。いずれもエンジニアサンプルだ |
●266MHzのシステムバス+PC-2100の効果は絶大
今回はAMD-760システムと比較するために、3つのベンチマーク(SYSmark2000、3DMark2000、StreamD)を行なった。SYSmark2000はWord、Excelなどの実在するアプリケーションコードを利用して実行するアプリケーションベンチマークで、3DMark2000は3Dゲームをシミュレーションした3Dベンチマーク、StreamDはバージニア大学が開発したメモリのバンド幅を計測するテストだ。
基本的に、GA-7DXC、KA266-Rを利用し、CPUにはAthlon 1GHzを利用している。今回利用したAthlon 1GHz(100MHz×10)は初期に購入した製品で、CPUの倍率を変更することが可能だ。GA-7DXCはマザーボード側で倍率を変更することができなかったが、KA266-Rは倍率変更が可能だったので、システムバスを133MHzに、倍率を7.5倍にした1GHz(133MHz×7.5)でもテストしてみた。テスト環境は下記の通りだ。
【テスト環境】
CPU:Athlon 1GHz
メモリ:PC-2100/1600 128MB
HDD:IBM DTLA-30730
ビデオカード:GeForce2 GTS 64M DDR
OS:Windows 98 Second Edition+DirectX 8
Overall Rating | 189![]() |
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194![]() |
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202![]() |
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Internet Content Creation | 186![]() |
192![]() |
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201![]() |
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Office Productivity | 192![]() |
195![]() |
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202![]() |
SYSmark2000
Bryce 4 | 228![]() |
---|---|
248![]() |
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264![]() |
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CorelDraw9 | 228![]() |
238![]() |
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241![]() |
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Elastic Reality 3.1 | 215![]() |
238![]() |
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244![]() |
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Excel 2000 | 203![]() |
210![]() |
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216![]() |
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NaturallySpeaking Pref 4.0 | 171![]() |
157![]() |
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176![]() |
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Netscape Communicator | 194![]() |
199![]() |
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202![]() |
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Paradox 9.0 | 180![]() |
198![]() |
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205![]() |
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Photoshop 5.5 | 128![]() |
123![]() |
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128![]() |
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PowerPoint 2000 | 204![]() |
203![]() |
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212![]() |
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Premiere 5.1 | 194![]() |
199![]() |
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211![]() |
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Word 2000 | 168![]() |
171![]() |
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174![]() |
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Windows Media Encoder 4.0 | 181![]() |
182![]() |
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194![]() |
3DMark2000
640×480ドット/16bitカラー | 8,553 ![]() |
---|---|
8,381 ![]() |
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9,129 ![]() |
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640×480ドット/32bitカラー | 7,736 ![]() |
7,776 ![]() |
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8,347 ![]() |
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800×600ドット/16bitカラー | 8,059 ![]() |
7,918 ![]() |
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8,547 ![]() |
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800×600ドット/32bitカラー | 6,328 ![]() |
6,755 ![]() |
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7,007 ![]() |
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1,024×768ドット/16bitカラー | 6,693 ![]() |
7,017 ![]() |
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7,326 ![]() |
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1,024×768ドット/32bitカラー | 4,740 ![]() |
5,053 ![]() |
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5,155 ![]() |
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1,280×1,024ドット/16bitカラー | 4,936 ![]() |
5,248 ![]() |
|
5,365 ![]() |
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1,280×1,024ドット/32bitカラー | 3,238 ![]() |
3,365 ![]() |
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3,395 ![]() |
StreamD(MB/s)
COPY32 | 487.15![]() |
---|---|
429.53![]() |
|
587.16![]() |
|
COPY64 | 507.94![]() |
484.85![]() |
|
581.82![]() |
|
SCALE | 680.85![]() |
653.06![]() |
|
831.17![]() |
|
ADD | 700.73![]() |
671.33![]() |
|
756.91![]() |
|
TRAID | 623.38![]() |
545.45![]() |
|
700.73![]() |
結果はグラフの通りで、どのベンチマークでもKA266-Rのシステムバスを133MHzにした状態が、ほかの2つを上回った。特に、ビデオカードの処理能力がボトルネックにならず、CPU周りの処理能力で差がでやすい3DMark2000の低解像度(VGAやSVGA)ではシステムバスが100MHzの時に比べて大きな性能のゲインが得られていることがわかる。さらに、メモリのバンド幅を計測するStreamDでも、転送レートが上がっていることが確認できる。システムバスが100MHzになっている時のAMD-760とALiMAGiK 1の比較では、SYSmark2000はALiMAGiK 1、3DMark2000とメモリのバンド幅ではAMD-760が相手を上回った。
●やはりシステムバス266MHzのAthlonと組み合わせて利用したい
今回はテスト期間の都合で、SDRAMを利用したAthlon 1GHzとの比較ができなかったので、SDRAMとDDR SDRAMの比較もできず、DDR SDRAM自体の効果に関する結論を出すことはできなかった(来週にでも、同じ環境で追試してみたい)。
今回のテスト結果で言えることは、やはりシステムバスとメモリバスの広域化は性能面でのメリットをもたらすということだ。今回はAMD-760でシステムバス266MHzのAthlonでのテストができなかった(そもそも現状のGA-7DXCはシステムバス266MHzとPC-2100をサポートしていない)が、ALiMAGiK 1では大きな効果があることは確認できた。そうした意味では、やはりDDR SDRAMはシステムバス266MHzのAthlonと組み合わせて利用したい。となると、システムバス266MHzのAthlonが入手不可能な現時点では、既にSocket AのAthlonを持っているユーザーは購入してもよい(あとでCPUだけ買い換えればよい)が、これからAthlonを購入しようと考えている場合にはもうすこし待ったほうがよいと言えるだろう。
□Akiba PC Hotline!関連記事
【11月25日】初のDDR SDRAM対応マザーボード「GA-7DXC」「KA266-R」がデビュー
両製品ともDDR SDRAM DIMMを同梱して販売中
http://www.watch.impress.co.jp/akiba/hotline/20001209/ddrmb.html
(2000年12月15日)
[Reported by 笠原一輝@ユービック・コンピューティング]