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元麻布春男の週刊PCホットライン

Windows Meをレビューする(後編)


●起動時間は変わらない?

 Windows Meの新機能のなかで、評価が難しいのがFast Bootだ。レガシーデバイスを排除することでその初期化を不要にする、前回起動時に問題のなかったデバイスの起動時テストを省略するなどで、システムの起動時間を短縮し、PCをすぐに使えるようにしよう、というのがFast Bootだが、果たしてこの機能が本当に利用できているのか、どうも怪しい。

表1:テストシステム
CPUPentium III 600EB MHz
MotherboardIntel D815EEA
BIOS VersionP07
Memory128MB PC133 SDRAM
Graphics CardWinFast GeForce 2GTS
DriverDetonator 3 (Ver 6.18)
Sound CardLabway Xwave 6000 (YMF744)
DriverVxDタイプ(本文参照)
Network3Com 3C905-TX
FDDSuperDisk(LKM-F934)
HDDIBM DPTA-372050
CD/DVD-ROM東芝 SD-M1212
 今回、筆者はいつものテストシステム(表1)にWindows Meをセットアップし、起動時間を実測してみた。利用したマザーボードのD815EEAはFast Bootに対応したRapid BIOS搭載ということになっている。アップグレードではない通常版をクリーンインストールしたところ、BIOSの処理が終わりWindows Meの起動ロゴが見えるまで約15秒、その後Windowsログオンが表示されるまでも約15秒で、計30秒というところだった。

 起動時間が30秒というのは長いのか短いのか? IntelのWebサイトによると、Rapid BIOSを搭載したD815EEAとWindows Meの組み合わせ(ただし英語版)の起動時間は20.2秒ということになっている。

 このシステムに用いられているハードディスクがおそらくスピンドル回転数5,400rpmのハードディスクを使っているのに対し、筆者のシステムがスピンアップに時間のかかるスピンドル回転数7,200rpmのハードディスクであること、Ethernetカードが入っていること、さらにフォントファイルが大きい日本語版であることを考えれば、まぁこんなものかな、という気がしてくる。


 しかし、同じ条件でWinodws 98 Second Editionの起動時間を計測したところ、こちらも約30秒だった。Webサイトのデータでは、Rapid BIOSとWindows 98の組み合わせは36秒かかることになっており、Windows Meとの間に15秒ほどの差があるのだが、とてもそんな差は見られない。

 実は以前、Fast Bootを利用するには大手OEM(大手PCベンダ)に提供されるOAK(OEM Adaptation Kit)が必要になると、マイクロソフトの担当者から聞いたことがある。やはりパッケージで売られているWindows Meでは、Fast Bootは利用できないのかもしれない。

 なお、D815EEAのポート(COMポート、パラレルポート)をすべて無効にすると、1秒起動時間を短縮することができたが、正常に終了できないことがあるなど、若干安定度に問題が生じた。また、後述の期間限定特別パッケージでは、なぜか4秒ほど余計に起動時間がかかった(筆者の計時ミスや誤差である可能性もゼロではないのだが)。


●CD-ROMからシステムブートのできるOEM版

 このWindows Meだが、実に多くのパッケージが販売されている。1週間先行して販売されたOEM版は、本来はOEMがPCにバンドルするためのものだが、実際にはハードディスクやマザーボードのセットも販売されている。冒頭で述べたように、Windows 98ユーザーを対象にした期間限定の特別パッケージ(Windows 98専用のアップグレード版)が22日に、そして翌23日にはWindows 95からのアップグレード版と通常版(フルリテール版)が発売となった(ほかにアカデミーパックもある)。

 以上のうち筆者は、OEM版を14,800円で(別途ハードディスクを購入している)、特別パッケージを5,480円で、そしてフルリテール版を22,800円でそれぞれ購入した。

 問題はその中身だ。まずOEM版だが、CD-ROMからシステムをブートしセットアップできるのは、このOEM版のみである。セットアップはOEMSETUP.EXEによって行なわれるが、SETUP.EXEによるセットアップと異なり、必要に応じてFDISKやFORMATを実行してくれる点が、全く新しいハードウェアを前提にしたOEM版らしいところだ。


●割り高なフルリテール版

 Windows 98までは、以上がOEM版の特徴だったのだが、Windows Meでは、インタラクティブなチュートリアル(Microsoftインタラクティブトレーニング)のCD-ROMが加わり2枚組みとなっている。また、CD-ROMに「高度暗号化モジュール」との表記があるのもこのOEM版のみだ。

 なお添付のマニュアル(Windows Meクイックスタートガイド)は1色刷りで、付録Aが「Windows Meへのアップグレード」になっている。これは、Windows Meの新規インストールはPCベンダーのマニュアルでカバーされている、という前提があるからだろう。一方、OEM版で欠けている最大のものは、マイクロソフトによる無償サポートだ。OEM版を除くパッケージ版には、90日間の無償サポートが含まれるが、OEM版には含まれていない(その代わり2枚目のCD-ROMがある)。どうしてもサポートが欲しい場合は、有償サポートということになる。

 フルリテール版も、OEMSETUP.EXEが含まれる点はOEM版と同じだが、CD-ROMからのブートができず、セットアップ時に添付の起動フロッピーディスクからシステムを起動しなければならない点がOEM版と異なる(ある意味、フルリテール版の利用にはレガシーデバイスが必要という変なことになっている)。もちろん2枚目のCD-ROMはなく、「高度暗号化モジュール」とも書かれていない。添付のWindows Meクイックスタートガイドは、次の特別パッケージと全く同じもの。2色刷りで付録Aが「Windows Meの新規インストール」になっている。アップグレード用と同じマニュアルであるせいか、この付録Aの記述は、アップグレード版を想定した書き方になっており、フルリテール版では必ずしも必要でない手順(起動フロッピーディスクの作成など)も含まれている。

 特別パッケージは、フルリテール版から起動フロッピーとOEMSETUP.EXEを除いたもの。CD-ROMからの起動もできないため、いったんハードディスクからWindows 98を起動し、そこからCD-ROMのSETUP.EXEを呼び出すか、別途自分でCD-ROMドライブにアクセス可能な起動フロッピーを作成し、SETUP.EXEを呼び出す必要がある。この時ハードディスクが新品だと、自分でFDISKとFORMATを実行しなければならないのがOEMSETUP.EXEとの最大の違いだ。また、アップデート版であるため、セットアップ時にWindows 98の存在(ハードディスク、もしくはCD-ROM)がチェックされる。Windows Meクイックスタートガイドには「通常版CD-ROM」と書かれているが、筆者が試したところWindows 98のアップグレード版CD-ROMで、問題なくチェックをパスできた。おそらくアップグレード版は、チェックの対象がWindows 95にも広がっているだけで、ほかは変らないだろう。


●やはり買うならOEM版?

 以上の中から何を選ぶかは、人それぞれだ。価格と内容を見比べて選べば良い。が、フルリテール版を買う人はあまりいないだろう。すでに述べた通り、中身という点では8,000円安いOEM版に完全に負けている。それどころか今時8,000円あれば、10GBのハードディスクが買えてしまうのである(容量10.2GBのSeagate ST310212Aの最安値は7,580円。AKIBA PC Hotline!調べ)。

 90日間の電話サポートが必要という人(このコラムを読んでいる人にはあまりいないだろうが)、CD-ROMからシステムが起動できない人を除けば、フルリテール版に代えてOEM版を買わない理由がない。それだけサポートというのは高価なのだ、とマイクロソフトは言いたいのかもしれないが、5,480円の期間限定アップデート版にサポートが付いていては、その主張も台無しである(だからこそ、これは特別なのだろうが)。

 同様に、12,800円前後で売られているアップグレード版も、筆者には魅力が足りないように思える。Windowsがインストール済みのPCが40,000円で売られている例もある今日この頃、5,480円のアップグレード版と、14,800円のフルライセンス版の2本立てで十分なのではないだろうか。

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(2000年10月4日)

[Text by 元麻布春男]


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