●Windows Me発売
先週の金曜日(9月22日)、正式にWindows Meが発売になった。本来の発売日は23日なのだが、恒例になった? 深夜のカウントダウン販売(23日午前零時)は販売店等に迷惑がかかる、ということで1日前の16時からの発売になったもの。前評判的に、いま1つ盛り上がりに欠けるWindows Meを何とか盛り上げようということだったのだろう。だが、もともとWindows 98の焼き直し的な印象が強いこと(そのWindows 98もWindows 95の焼き直しと言ってしまえばそれまでなのだが)、その1週間前、15日にはOEM版がすでにリリースされていたこともあって、盛り上げようという狙いはあまり上手くはいかなかったようだ。
とかく新味に乏しいと言われるWindows Meだが、確かにそれは否めない。かといって、全く新しい点がないのかというと、それも違う。当然のことながら、新しくリリースされたWindows Meには、Windows 98より新しいソフトウェアモジュールが添付されているし、中にはWindows 98にはなかったものもある。たとえば、IME 2000、IE 5.5、Media Player 7といったソフトウェアはWindows 98に搭載されていた同種のものより新しい。こうしたモジュールは無償ダウンロードが可能であり、雑誌の付録CD-ROMにも収録されているなど、Windows Meでなければ入手できないわけではないが、最初から付属しているに越したことはない。
また、Windows Meに添付されているWindows Movie Makerは、Windows 98に相当するものはないし、標準添付のゲームも増えている。もちろん、こうしたモジュールが最低でも数1,000円はかかるアップデート料金に見合うかどうかは、また別の問題であり、おそらくその答えは個人によって違うのだろう。こうしたソフトウェアモジュールの評価を行なうことは、本稿の目的ではないし、たぶん筆者より適任な方による機能評価なり紹介がすでに行なわれているものと思う。何より筆者の職業的興味とは少々異なるので、ここでは扱わないことにする。
●Intel 815もようやく正式サポート
こうしたソフトウェアモジュール以外に、Windows Meではハードウェアサポートも拡充されている(こちらが、筆者のフォーカスでもある)。毎回のことであるとはいえ、現時点で最新のチップセットであるIntel 815/Eが標準サポートされたのは、このWindows Meからだ。もちろん、INFデータベースをアップデートするユーティリティはIntelから提供されており、これを用いることでWindows 98やWindows 2000でもIntel 815/Eを認識させることが可能だが、Windows Meなら一手間省ける。
また、USBストレージの標準サポートも、Windows 98 Second Editionにはなかった機能である(Windows 2000ではサポート済み)。USB接続のメモリカードリーダやZIPドライブといったデバイスを、特にドライバを組み込まなくてもそのまま利用することが可能だ。IEEE-1394による家庭ネットワークの実現を可能にするTCP/IP over IEEE-1394も、今のところWindows Meだけの機能である(Windows 2000にはない。IEEE-1394のストレージサポートはWindows 98 SEやWindows 2000で実現済み)。さらにUniversal PnPの実装も、このWindows Meが初めてということになる。ただ正直言って、TCP/IP over IEEE-1394とUniversal PnPは、「実用」のためというより、OSにインプリメントすることによりサードパーティ(IHV)による製品開発を促す、という色彩が強いように思う。そういう意味では、Windows 95 OSR 2.1のUSBサポートに似た雰囲気がある(同じことは、今のところWindows MeだけがサポートしているDRM(Digital Right Management)にも言える)。
こうしたバスレベルのサポート以外にも、当然のことながら多くのデバイスがWindows Meでサポートされている。たとえば、筆者が常用するYMF744ベースのサウンドカードだが、Windows 98 SEではドライバサポートがなかったが、Windows Meでは標準サポートされている。だが、S/PDIF出力をサポートしないなど、標準ドライバが必ずしもハードウェアの全機能をサポートしておらず、過大評価は禁物な点はこれまで通りだ。
ちょっと話が脱線するが、Windows MeのサウンドドライバもWindows 98同様、伝統的なWindows 9x用のVxDドライバと、Windows NTのドライバモデルに近い(Windows 2000の標準ドライバモデルでもある)WDMドライバのどちらかを選んでインストールすることができる。当然のことながらMicrosoftはWDMドライバを強く推奨しているのだが、S/PDIF経由によるドルビーデジタルのマルチチャンネルパススルーをサポートしているのは、いまだにVxDドライバだけのようだ。
Windows Meの標準ドライバはもちろん、ヤマハのリファレンスドライバでもWDMタイプのドライバ(Win 2000/MEとなっているdsxgwin2k.exe)ではソフトウェアDVDプレーヤーによるドルビーデジタル出力は得られなかった(もちろんWin 95/98用のVxDドライバであるyamaha_dsxg_driver.exeを使えば、Windows Meでもドルビーデジタル出力が得られる)。CreativeのSoundBlaster Live!も、同社が提供するFAQによると、Windows 2000ではドルビーデジタルのマルチチャネルパススルーはサポートされていない。ひょっとすると、WDMタイプのドライバでドルビーデジタルのパススルーをサポートしたものはこの世に存在しないのかもしれない。もしそうなら、VxDドライバをサポートしないWindows 2000ではドルビーデジタルのマルチチャネル出力をサウンドカードのS/PDIF端子から出力することは現状ではできないということになる。これがWDMの仕様の問題なのか、DDKに添付されているサンプルソースコードの問題なのか、はたまたプレーヤー側の問題なのかはハッキリしないのだが、この調子でWhistlerは大丈夫? と心配になってしまう。
マイクロソフトはWindows 2000をコンシューマにも使って欲しいと言うのだが、こういう細かい部分にちゃんと手を入れないと無理なのではないか、とも思う。ドライバのデジタル署名とか言い出すのなら、まずその前にWindows CD-ROMに含まれる署名済みドライバをもっとちゃんとしたものにして欲しいと思うのは筆者だけだろうか(これはサウンドに限った話ではない)。現状のWHQLは、OSのライセンス料が割り引きになるなど、OEMには意味があっても、エンドユーザーにはほとんど意味がないものになっているように感じる。遅くて機能が限定された署名ドライバと、最適化が進みハードウェアの全機能を利用可能な無署名ドライバがあった場合、大企業はともかく、コンシューマは後者を選ぶのではないか。逆に、前者を選んだところで、トラブルがゼロになるわけでもなければ、マイクロソフトがトラブルの責任をとってくれるわけでもなく、単なる「おまじない」と大差ない。
●サポートがうち切られるAXキーボード
さて、ハードウェアサポートが拡充される一方で、サポートが打ち切られるデバイスもまた存在する。Windows Meはレガシーフリーに対応したOSだと良く言われるが、これはレガシーを排除したPCをサポート可能ということであり、レガシーを持ったPCをサポートできないOS、ということではない。つまり、サポート対象外になったデバイスはそれほど多くないのだがいくつかは存在する。その1つがAXキーボードやJ-3100日本語キーボードといった、「DOS/V」以前のレガシーキーボードだ。画面1に示したのは、Windows Meがサポートする標準キーボードの一覧だが、Windows 98 SEのそれ(画面2)と比べれば、サポートするキーボードが減ったことがわかるだろう。Windows 98でこれまでAXキーボードを使っていて、Windows Meに上書きアップデートした場合は、Windows 98のAXキーボードドライバがそのまま保持されるため問題ないのだが、全く新規にインストールする場合はちょっと工夫が必要になりそうだ(対象となるユーザーは少ないだろうが)。
画面1 | 画面2 |
Windows Meがサポートするキーボード | Windows 98 SEがサポートするキーボード |
もう1つ、サポートが打ち切られてはいないものの、打ち切られる寸前なのがテープデバイスだ。テープデバイスは、Windows 98に添付されていたMS Backupがサポートしたことから本格的にサポートされた(Windows 95のテープデバイスサポートはフロッピーインターフェイスを利用したものに限定されていた)が、Windows MeではMS BackupはCD-ROMには収められているものの、インストールオプションには含まれておらず、別途ユーザーがインストールする必要がある。ハードディスクの急速な大容量化が、あっという間にテープデバイスをコンシューマにとって価値の低いものにしてしまったことは事実だし、Windows Meから「システムの復元」と呼ばれるユーティリティが添付されたのはMS Backupの現実的な代替品ということなのだろう。システムの復元は決して万能ではないが、ほかに選択肢がない、ということも事実だ。
(2000年9月27日)
[Text by 元麻布春男]