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Intel、Crusoe対抗のモバイルプロセッサ戦略を10月10日に発表か?


●IntelがMicroprocessor Forumで急きょモバイルロードマップを発表へ

 いよいよ始まったTransmetaのモバイル向けx86 CPU「Crusoe」搭載ノートPCの波。今のIntelのモバイルCPUでは難しいフォームファクタや機能(ファンレスなど)を実現した個性的な機種が、これから年末までに相次いで登場する。しかし、Intelもこのまま黙っているわけではなく、カウンタープランを用意している。そして、どうやらその発表を米国時間10月10日に設定したようだ。

 米サンノゼで10月10日から始まるプロセッサ業界のカンファレンス「Microprocessor Forum」に、Intelは急きょモバイルのセッションを設けた。フォーラムを主催するCahners MicroDesign Resourcesによると、Intelはここで同社の最新のモバイルPC向けCPUのテクノロジロードマップを初めて公開するという。このセッションは、Intel内部でx86系モバイルCPUを担当するMobile Platforms GroupのPrincipal engineerのBob Jackson氏が担当するようだ。

 Intelは、もともとMicroprocessor ForumではPentium 4関連の発表しか行なう予定がなかった。それが、直前になってのいきなりのモバイルロードマップの発表。タイミング的に、今秋のCrusoeの攻勢に対抗するためと考えるのが自然だ。つまり、より低消費電力の方へと、モバイルCPUのコースを変える戦略を明らかにする可能性が高い。というのも、Intel幹部は、8月に開催した技術カンファレンス「Intel Developer Forum(IDF)」(8月22~24日、米サンノゼ)以降、低消費電力化へ向かう戦略をインタビューの度に示唆していたからだ。


●低消費電力へのアプローチを示唆するIntel幹部

 例えば、IDFでは、アルバート・ユー上級副社長が「プロセッサの消費電力を下げるための、新しいグループを編成した。このグループは、Intelのプロセッサの、平均消費電力と熱設計電力(TDP)のどちらも下げる研究を行なう。これまで、公式に語ったことはなかったが、次のIDFかそのあたりで、ロードマップについて語ることができるだろう」とインタビューで語っている。ここで触れている公式発表が、10月に早まった可能性がある。

 また、IDF直後に来日したIntelのフランク・スピンドラー副社長兼事業部長(Intel Architecture Group, Mobile Platforms Group)も、「われわれは、モバイルグループの中で、モビリティセグメント(モバイル利用が主体のノートPC)をターゲットにした新しいプログラムを始めている」、「低消費電力は、Intelにとって重要だと受け止めている。より高性能な製品が、最小のノートPCにも入れられるように、低消費電力の製品を開発し続ける必要があると感じている」とインタビューで答えている。

 Intelが低消費電力へ向けて方向を変える兆しは、IDFのセッションでも見られた。例えば、IntelはモビリティセグメントのノートPCの割合が'99年の30%から2004年には75%にまで急拡大するという予測を示している。Intelがモビリティセグメントと呼んでいるのは、「Thin&Light」と「Ultra Mobile」とIntelが分類するノートPCで、A4薄型(米国では30mm厚以下を指す)以下のサイズのノートPCのことだ。


●3つの方向から低消費電力デバイスを目指す

 現在判明している限り、Intelは低消費電力モバイルCPUに関して3つの方向で開発を進めている。

  • ノートPC向けCPUの低消費電力化
  • 非PC向けの低消費電力x86 CPUの研究開発
  • 非PC向けのStrongARM/XScale CPUの開発

     ノートPC向けCPUの低消費電力化は、スピンドラー氏が語っているプロジェクトで、Intel Architecture Groupの中のMobile Platforms Groupが担当している。Bob Jackson氏がMobile Platforms Groupであることを考えると、Microprocessor Forumでロードマップが発表されるものと思われる。

     Intelは、この方面では強力な武器を持っている。それは、低電圧駆動だ。Intelは、他のどのPC向けCPUメーカーよりも低電圧で高クロックにCPUを駆動することができる半導体技術を持っている。例えば、Intelの低電圧版モバイルPentium III 600MHzは1.1V時に500MHzで動作する。消費電力はキャパシタンス×電圧の二乗×周波数で決まるので、低電圧化は二乗で効いてくる。Intelが、これを活かした製品を出してくる可能性はある。

     非PC向けの低消費電力x86 CPUの研究開発は、スピンドラー氏によると、Intel Architectureグループの中のローパワー(低消費電力)グループが担当しているという。このグループは、IntelアーキテクチャのCPUを非PCのアプライアンス的なデバイスに搭載できるように研究している。そのために、現行のIntelプロセッサの派生品を研究するだけでなく、長期的に新しいCPUの研究も行なっているという。このカテゴリは、Transmetaの組み込み向けx86 CPU「Crusoe TM3000」シリーズと完全にターゲットが重なる。このグループの活動に関しても、Microprocessor Forumで概要が明らかにされるかもしれない。

     Intelの10月10日の発表の内容はまだわからない。しかし、モバイルCPUを巡る攻防が激しくなっているこの時期、Intelがかなり突っ込んだ発表をする可能性は高い。

    □関連記事
    【9月8日】Intelの2001年モバイル戦略
    Intel、フランク・スピンドラー副社長兼事業部長インタビュー(前編)
    http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/20000908/kaigai01.htm
    【9月11日】Intel、フランク・スピンドラー副社長兼事業部長インタビュー(後編)
    http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/20000911/kaigai01.htm

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    (2000年9月28日)

    [Reported by 後藤 弘茂]


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