会場:San Francisco Moscone Convention Center
SEYBOLD SEMINARSはパブリッシングのプロフェッショナルを対象にしたイベント。必然的に展示されている製品やソフトウェアも、大型の業務用印刷システムや、プリプレス、ワークフロー制御など専門的かつハイエンド向けのものがそのほとんどを占める。しかし、そんななかでもいくつかはコンシューマ向けと思われる製品を見つけることができた。AppleやAdobeなど有力ブースの出展とあわせ、展示会場レポートとして紹介する。
■AppleブースはG4プロセッサ搭載機のオンパレード
会場のMoscone Centerは、道路をはさんで南側のSouthホールと北側のNorthホールの二館で構成されるサンフランシスコで最大のコンベンション施設(さらに、Westホールの建設もはじまった)。それぞれのホールは地下の通路で結ばれていて、来場者は道路に出ることなく自由に行き来することができる。
Apple Computerは例年どおり、出展者のなかでも最大のブースをSouthホールの中央に構えた。ホール入り口から正面にあたる位置に大きなプレゼンテーション用のスクリーンを用意し、そこに至る通路の両脇にはデモ用のG4 Cubeがずらりとならぶ。他にブース内に4つの島を用意して、Mac OS X、QuickTimeなどソリューション別の展示コーナーが設けてある。これらの展示コーナーで使用されているデモ機材はほとんどがPowerMac G4とChinema Displayで、iMacはQuickTimeのエリアに数台が用意されているだけ。こんなところもプロフェッショナル層にターゲットを絞った展示内容であることをうかがわせる。
スクリーンでプレゼンテーションされているのは、Mac OS Xとビデオ編集用ソフトのFinal Cut Pro、そしてG4 Cubeの3つのステージ。立ち見が出るほどに混雑しているのはやはりMac OS Xのステージだ。同様にMac OS Xの展示コーナーにも来場者が数多く集まっていて、矢継ぎ早にくりだされる質問に担当者が次々と回答している様子がありあり。昨日発表された9月13日からのパブリックβ版の配布方法などについては、昨日の基調講演以上の内容は聞くことができず、すべてはパリでのアナウンス待ちということになる。
■OLYMPUSのプリンタ内蔵デジタルカメラは10月に出荷予定
展示会場内にはNIKON、Canon、OLYMPUS、KODAK、FUJIFILMなどをはじめ、デジタルカメラを出展しているブースも数多い。とはいえ、出展内容はハイエンド傾向に振られている。コンシューマ向けの製品では、日本でも28日に発表されたNIKONの「COOLPIX880」や、Canonの「Powershot S100」(日本での製品名はIXY DIGITAL)などに注目する来場者がやや多い程度。面白いのは「COOLPIX880」で、日本では本体カラーがシルバーに一新されたにもかかわらず、米国仕様は従来製品どおり黒のままだ。デモを見せてくれた説明員によれば純粋にマーケティング上の理由だそうで、「ボクには、なんで日本はシルバーを選んだのかわからないね」というコメントを残している。ちなみに、ヨーロッパ向けの製品もシルバーになるらしい。米国仕様もファームウェアは共通のようで、言語選択で日本語表示のメニューに変更することもできる。入手の手間さえ惜しまなければ、ブラックボディのCOOLPIX880を手に入れることもできるというわけだ。
デジタルカメラでもうひとつの注目製品は、OLYMPUSのプリンタ内蔵デジタルカメラ「C-211 ZOOM」。210万画素(1,600×1,200ピクセル)で、光学3倍ズームを搭載するデジタルカメラに、ポラロイド製のプリントエンジンを内蔵している。プリント用紙はポラロイドのタイプ500を利用。記録メディアはスマートメディアに対応し、米国では10月に出荷される予定だ。
■QuarkXPress5.0はCarbon化を見送り。Carbon化のタイミングに悩む各社
Mac OS Xが成功に至るカギのひとつが、既存の有力アプリケーションの対応。具体的にはCarbon化ということになるが、いずれも正式発表や対応にはもう少し時間がかかるといったところだ。すでにMicrosoftのOfficeのように次期バージョンはOS 9ベースで、さらにその次のバージョンからのCarbon化を明らかにしているケースもある。QuarkのQuarkXPressも同様で、次期バージョンの5.0でのプラットフォームはOS 9。以降のバージョンでCarbon化を図ることになる。開発期間を考えるといたしかたないが、Apple Computerが期待するほどCarbon化が簡単ではないことがうかがえるコメントもあった。有力で大型のアプリケーションほど開発期間も長く、バージョンアップのタイミングにあわせて即Carbon化というには、なかなか方向転換が難しい側面もある。パリでのパブリックβ配布開始以降、こうしたMacintoshのキラーアプリケーションを抱える各社が、どんなスケジュールでCarbon化を進めていくのか、徐々に明らかになるはずだ。
□SEYBOLD SEMINARSホームページ (英文)
http://www.key3media.com/seyboldseminars/
(2000年8月31日)
[Reported by 矢作 晃(akira-y@st.rim.or.jp)]