会場:San Francisco Moscone Convention Center
SEYBOLD SEMINARS SFの展示会がスタートする29日、オープニング・キーノートの講演者として、昨年に引き続きApple Computerの最高経営責任者であるSteve Jobs氏がステージにのぼった。午前9時から始まる講演を聞こうと、朝早くから数多くの来場者がホールの前に長い行列を作った。
■9月13日はまだ夏!? 公約を果たすべくMac OS X パブリックβはパリでデビュー
おなじみになったMac OS Xのロードマップ。2001年に予定されている出荷は、ハードウェアへのプリインストールをもって行なわれる |
「Mac OS Xの開発スケジュールは遅れてはいない」。基調講演がなかばにさしかかったあたりで、Steve Jobs氏はこう断言した。今年1月、同じMoscone Centerで開催されたMacworldで、今夏のMac OS Xリリースを示唆し、5月のWWDCではその出荷形態をパブリックβ版と定義づけた。もっとも期待の大きかった7月開催のMacworldでは、9月からの配布が明らかになり、開発の遅れもささやかれてはじめていた。
そこで、テーマがMac OS Xに変わるやいなや、Jobs氏は、冗談混じりにスクリーンにスライドを表示。そこには、辞書から引用されたとおぼしき“夏”の定義が表示され、会場の爆笑を誘った。つまり夏とは、春と秋の間にある季節で6月の夏至から9月の秋分(equinox)までということ。さらにスライドは続き、春分・秋分(equinox)の定義が登場。そこには昼と夜の長さが同じになる3月21日と9月23日と書いてある。つまり「9月23日までは、夏ということなんだよ」と言いたいわけである。そして、次のスライドで正式に発表されたXデー(まさに!)は、9月13日。フランスのパリで開催される『Apple expo 2000』での配布が明らかになったわけである。
ちなみに、『Apple expo 2000』は、AppleComputerが主催するヨーロッパで最大のMacintoshイベント。今年の会期は9月13日から9月17日で、13日にはSteve Jobs氏の基調講演が予定されている。
続いて、出荷されるMac OS Xのパブリックβに含まれる新たな機能がいくつか紹介された。まず、デベロッパ向けリリースでは別途インストールする必要のあったOpenGLをあらかじめ搭載。Java2も利用することができる。さらに、SMP(Symmetric MultiProcessing)に対応して、先日発表されたデュアルプロセッサ搭載のPowerMac G4もOSレベルでデュアル動作がサポートされることになる。またPowerBook G3へのインストールも正式に対応し、これまでは時間のかかったスリープ状態からの復帰がわずか1秒で実現するという。この機能に関してはJobs氏みずからデモを披露しようとしたが、残念ながら失敗に終わった。これらはいずれも出荷時のインプリメントを公約してきたもので、いよいよ製品の完成が近づいたことをうかがわせるものである。
Mac OS Xにバンドルされているアプリケーションも、これまでのおさらいを含めていくつか紹介された。Carbon化されたInternet Explorer5は以前からデモされていたが、新たにこれに対応するShockwaveの搭載が決まった。ほかに目新しいものでは、MP3プレーヤーの搭載がある。インターフェイスまわりでは、これまでブルー系統だったAQUAのカラーが、Graphiteも選択できるようになった。これは、やや派手めだったこれまでのAQUAではグラフィック関連のソフトを利用するときに気になるというデベロッパのフィードバックを受けての対応だという。
さらに、Dock部分ではアプリケーションの起動過程で、Dock内のアイコンが弾んでいるアニメーションが加わったり、タスクが割り振られているアプリケーションにマークが付くようにもなった。一見気が付きにくいところだが、細部のブラッシュアップがさらに進んでいるようだ。フォントまわりの目玉であるOpenTypeも、日本語フォントであるヒラギノフォントを何種類か表示してみせ、パブリックβでの搭載を予感させた。旧漢字を使ったデモはわれわれ日本人にとっては、表示可能文字種の大幅な増加という点でお馴染みだが、聴衆のほとんどを占める米国人はMac OS Xでは標準的に漢字を表示できることしか気が付かなかっただろう。
Mac OS X対応アプリケーションのデモンストレーションでステージに上ったのはMacromediaのTony Campitelli氏。Mac OS X対応のDreamweaverとFireworksを使って、今秋に迫った米大統領選挙にかけて「Steve Jobs for Prisident Campaign」というWebページを作ってみせ、会場の笑いを誘った。
□Apple expo 2000のホームページ(英文)
http://www.apple.com/euro/appleexpo/
■ハードウェアのデモはプロフェッショナルユーザーを意識した内容
時間は前後するが、講演の前半は7月にニューヨークで開催されたMacworldのおさらいとでもいうべき内容で、ハードウェアの新製品や新しい情報は盛り込まれなかった。ただし、聴衆の大多数を占めるグラフィックやパブリッシングのプロフェッショナルを意識してか、iMacやG4 Cubeよりもデュアルプロセッサ搭載のPowerMac G4に比重を置いての講演になった。Photoshopを使ったギガヘルツPentium IIIとのスピード競争はすでにお約束という感もある。サードパーティをステージに呼んでのアプリケーションデモでは、昨日発表されたばかりの『Adobe Photoshop 6.0』と、Discreet Logicの『Combustion』が披露された。いずれも、プロフェッショナルユーザーを意識した内容となっている。
□SEYBOLD SEMINARSホームページ (英文)
http://www.key3media.com/seyboldseminars/
(2000年8月30日)
[Reported by 矢作 晃(akira-y@st.rim.or.jp)]