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プロカメラマン山田久美夫の

今夏主流の「1/2.7インチ211万画素ズーム機」比較チェック & 実写画像


 中堅機の部類でこの夏主流となった、“1/2.7インチ・211万画素CCD”搭載のズームモデル。その実力は機種によって、どのような違いがあるのか。その点をチェックすべく、今回、同クラスの主要モデルを同じ条件で使ってみた。その感触をレポートしよう。

 今回、実写テストを行なったのは、オリンパス 「C-990ZOOM」、旭光学「ペンタックスEI-200」(最終ベータ機)、カシオ「QV-2300UX」(ベータ機)、キヤノン「IXY DIGITAL」、ソニー「Cyber-shot DSC-S50」の5機種。発売前の「QV-2300UX」を除き、実販価格はいずれも59,800円から69,800円と、まずまず手頃なレベルに収まっている。

 実際の画質については各機種での比較画像を見ていただくとして、ここでは各モデルの使用感を簡単にレポートしよう。

 人物は、それぞれの機種の標準モードで撮影。人物の顔でフォーカスロック後、構図を整えて撮影している。フルオート撮影だが、ストロボ発光のみOFFに設定。(編集部)


■ オリンパス C-990ZOOM

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「C-990ZOOM」実写画像
 中堅デジタルカメラの定番シリーズである「C-900ZOOM」系の最新モデル。

 ボディは従来からの「C-960ZOOM」と同じもので、IXY DIGITALなどに比べると、かなり大柄な印象を受けるが、なかなか持ちやすく、ホールド感は良好だ。操作系も、メインスイッチ兼用のレンズバリアを開くだけで撮影でき、わかりやすい。

 起動時間は約3秒。記録待ち時間は約1秒となかなか軽快なものに仕上がっている。今回のライバル機に比べて撮影間隔が短いため、人物の表情を連写的に追って撮影したいときに便利なモデルだ。
 ただ、バッファが効かない再生表示はかなり遅く、ストレスを感じる。

 光学ファインダーの見え味は比較的良好で、視度調整機能も備わっている。また、メインスイッチOFF時にはファインダーがボケて見える点も親切だ。
 液晶モニターは、1.8インチの高視野角タイプで、日中での視認性もなかなか良好。ただ、EI-200と同様に、メインスイッチONと同時に点灯させるモードがないため、いちいち手動で液晶をONにしなければならない。

 ロングセラー機がベースなだけに、操作性はよく練られており、なかなか使いやすいものに仕上がっている。また、メニュー表示が日本語で、しかもフォントが見やすい点は好感が持てる。

 本機で気になる点はストロボだ。もちろん、自動発光モードを備えているが、ストロボ自体が手動ポップアップ式なので、コンパクトカメラのようなフルオート感覚で屋内撮影までカバーしたい人には不向きだ。もっとも、普段はストロボOFFで使い、必要なときだけ発光させて使いたい人にはかえって好都合ともいえる。また、最新モデルながらも、基本設計が古いせいか、USB転送に対応していない点は気になるところだ。

 画質は、このクラスの中でも安定したもの。フルオートのままで、大抵のシーンで安定した写りが得られるため、失敗が少ないモデルだ。色調も比較的安定しているが、まだ、補色系CCDらしい濁り感を感じるケースもある。

 いい意味で実用本位なモデル。“モノ”としての面白みはあまりないが、大きな欠点もなく、失敗も少ない。あれこれ迷ったときの、一番無難な選択肢といえそうだ。

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■ 旭光学工業 EI-200

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「EI-200」実写画像

 ペンタックスブランド久々のパーソナル向けデジタルカメラ。今回のモデルは、HP(ヒューレット・パッカード)との共同開発によるもので、画質に関する部分はHPが担当しているが、ボディやレンズ、回路設計などは旭光学が担当している。

 デザインは銀塩コンパクトカメラにかなり近いもの。サイズはC-990ZOOMとほぼ同じで、結構大きめだが、グリップ感も良い。操作部もシンプルで、デジタルであることをさほど意識せずに撮影できる点がいい。また、光学ファインダーの視認性も比較的良好で、視度調整機能がきちんとついているあたりは、いかにもカメラメーカーらしい心遣いといえる。

 米Flash PointのDigita OSを採用しているが、従来のDigita搭載機に比べると、起動時間も約3秒と早く、遅さを感じることはない。撮影間隔も約3秒程度と実用十分な早さを実現している。
 また、サンプリング音ながらも、シャッター音がするため、光学ファインダー使用時でも、いつ撮れたのかわかる点が好ましい。ただ、シャッター音がのんびりとした音なので、一眼レフユーザーはスローシャッターだと誤解しそうだ。

 気になるのは液晶モニター。サイズは2インチだが、周囲に枠がつくため、ファインダーとして使える範囲が狭い。さらに、Digita OSの仕様上、液晶が常にフルカラー表示のため、最近のモデルとしてはややレスポンスが遅い。 また、デフォルトでは、メインスイッチONで自動的に液晶ファインダーをONにすることができない(撮影モード、カメラ設定、ディスプレイ、プレビューをオンにすると表示できる)。  このほか、ストロボ設定が、起動時に標準設定の自動発光モードに戻ってしまう点も面倒だ。

 画質はなかなか良好。HPによる画づくりのためか、他機種とはやや色調が異なっており、全体に“こってり”としたものに仕上がっている。好みの世界はあるが、これくらいの色調の方が見栄えがいいと感じる人も多いだろう。
 今回は日程の関係で、人物カットのみ製品版で撮影したが、自然光で撮影したカットでも、ハイライトが明らかに白飛びしている点は気になるところだ。

 本機は、とてもコンパクトカメラ的なモデルであり、デジタルであることをあまり意識せずに使える点が大きな特徴といえる。実売価格も安いため、携帯性よりも実用性を重視する人に向いたモデルだ。

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■カシオ QV-2300UX

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「QV-2300UX」実写画像
 QVシリーズ伝統のレンズ回転式超多機能3倍ズーム機。同クラスのライバル機が、気軽なスナップ向きの簡易操作指向なのに対して、本機は考え得る範囲の機能をほとんど網羅したような超多機能機指向のモデルといえる。

 デザインは往年のQV風で、厚みはかなりあるが、どこかQV-10的な雰囲気を備えたもの。サイズも「C-990」よりやや小振りに仕上がっている。分厚く見えるが、グリップ部がしっかりしており、意外に持ちやすい。本機には光学ファインダーは無いが、レンズが回転できるため、常に見やすい角度で液晶ファインダーを見ることができる。さらに、本機が採用している同社のHAST液晶は、日中の屋外での視認性がよく、液晶に多少の直射光が当たっても表示画像が見える。また、暗い場所では液晶ファインダー表示が自動的にゲインアップされることもあって、視認性の点で光学ファインダーの必要性を感じることは少ない。

 操作性は、初期の頃のQV-10系に近い配列で、ダイアルや十字パッドがなく、ボタン操作のみ。最初は面倒な感じで、多少の慣れは必要だが、少し使い込むと違和感なく使えるようになる。とくに、本機には、PC的なショートカット機能が採用されており、2つのボタン操作の組み合わせで、自分がセットした機能を簡単に呼び出すことができる点はなかなか便利だ。

 ただし、使用頻度の高い、メインスイッチやズームレバー、記録再生切り替えスイッチなどが、小さくて安っぽく、使い勝手は今ひとつといったところ。これらはカメラとしての基本部分だけに気になるところだ。

 機能は驚くほど豊富で、風景、ポートレート、夜景と言った代表的な撮影モードはもちろんのこと、より細かな撮影シーン別の最適化モードであるシーンセレクト機能も装備されている。このガイドに従って撮影することで、カメラ側の諸モードが自動設定されるうえ、どのように撮影すればいいのかも同時に表示される点はなかなか親切だ。このモードをきちんと使いこなすのは結構大変だが、デジタルカメラで写真を勉強したい人にとっては、とても有効な機能だろう。

 また、本機には、ノイズ軽減機能による最長60秒まで(バルブ撮影も可能)の長時間露出モードがあり、夜景撮影などに威力を発揮する。また、レンズ前1cmまでの強力なマクロ機能も搭載されており、かなり多彩な撮影を楽しめる点は大きな魅力といえる。

 本機を使って気になった点は、カメラとしての質感と機能。このクラスのモデルは、もともとコスト的な制約が厳しいわけだが、ボディーの質感もそれなりに頑張って、価格相応の高級感を出そうとしている。だが、本機の場合には、機能とコスト重視で、あまり外装に力を入れていない感じがある。もっとも、標準価格が65,000円と安価で、実販49,800円程度であれば、まずまず納得できるレベルではあるが、それでもやはり、もう少し高級感が欲しいところだ。

 なお、本機には、メモリーカードが付属しないため、CFカードを持っていない場合には、カードを別途、購入する必要があるので注意が必要だ。

 起動時間は3秒強と実用十分なレベル。撮影間隔は約1秒とクラストップレベルの高速さを実現しており、なかなか軽快だ。また、カシオの場合、撮影時に再生表示専用のサムネールデータを生成しているため、再生表示がきわめて高速な点も大きな特徴といえる。

 今回使用したのはベータ版モデルだが、画質は全体に素直なもの。ベータ機のためか、解像度は若干低め。もともと近年の同社のモデルは輪郭強調処理が控えめなため、このような印象を受けやすいわけだが、このあたりはカメラの設定で輪郭強調を強めに設定することで改善される。オリジナルデータを大切にするという考え方で、このような絵づくりとなっているのだろうが、このクラスの中堅機の場合には、最初からもう少し見栄え優先の設定になっていてもいいのではないだろうか? このあたりはやや疑問を感じる。
 また、色調も全体に渋めの仕上がりだが、こちらも設定次第で鮮やかにすることができるので安心だ。

 手頃な価格で、テクニックを駆使した多彩な撮影を楽しみたい人向きのモデル。上級者の人はもちろん、これからデジタルカメラで本格的に写真を楽しんでみようという人にもお勧めだ。もっとも、今秋には、同機の姉妹機となる光学8倍ズーム機「QV-2800UX」が発売され、価格差も小さいことから、そちらを待つという手もあるだろう。

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■ ソニー 「DSC-S50」

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「DSC-S50」実写画像

 Cyber-Shot“Sシリーズ”の中堅機。2.5時間、2,500枚の連続撮影とうたわれているスタミナぶりと、角度が変えられ、回転もできる液晶モニターが特徴だ。

 また、今回の5機種では唯一、パソコン接続キットが同梱されているため、別途接続キットや画像処理、動画編集ソフトを購入せずに楽しめるというメリットもある。もちろん、充電式バッテリーとチャージャーも付属しているので安心だが、付属するメモリースティックが4MBタイプなのは、少々心許ない。

 サイズ的には、カシオとほぼ同等で、「C-990Z」や「EI-200」よりも横幅がかなり短いが、大型バッテリーを収納するため、結構な厚みがある。また、レンズが沈胴式でないため出っ張っており、一見小さくみえる割に収納スペースを食うスタイリングだ。ただ、実際に手にしてみると意外に持ちやすいので、その点は安心だ。

 ファインダーは液晶モニターのみという割り切ったもの。だが、液晶ファインダーは角度が自由に変えられる上、左右方向に回転させることもできるため、常に見やすい角度に調整できる点が大きなメリット。また、明るさも十分にあり、日中の屋外での視認性も悪くない。さらに、液晶をクルリと回すことで、自分撮りができる点もいい。

 操作性は、Cyber-shot系共通のもので、上部には静止画/動画/再生切り替え用レバーがあり、背面に十字パッドを配したもの。使用頻度の高いフォーカス切り替え(マクロ)やストロボモード、露出モードなどには専用ボタンが配置されているため、操作は比較的わかりやすい。

 一方、他のCyber-shotシリーズ同様、比較的使用頻度の高い露出補正機能が液晶メニューのなかにあるため、即座に補正しにくい。この点はぜひ改良して欲しいところだ。

 機能もなかなか充実している。本機には、シャッター速度優先AEや絞り優先AE、ピントのマニュアル調整などもきちんと網羅されており、使用頻度はそう高くないが、凝った撮影を楽しみたい人にとってはうれしい装備といえる。

 本機の特徴である電池の持ちの良さは、まさにスタミナと呼ぶにふさわしいレベル。実際に、通常の撮影ではフル充電で2時間以上の撮影ができ、しかも残り時間が液晶モニター上で分単位で確認できる点は、実に安心だ。これだけ持てば、バッグに入れっぱなしで充電し忘れて使っても、実用十分な枚数の撮影ができるケースが多い。また、約2時間強もバッテリーが持つので、比較的短時間の撮影であれば、いちいちメインスイッチを切らなくても安心して使えるという大きなメリットもある。

 起動時間は約2秒と比較的速く、撮影間隔も約1秒強と高速で軽快だ。ただ、AF動作は他機種よりも若干だが遅めで、測距に迷うケースも他機種に比べやや多めだ。そのため、シャッター半押しによるAFロックをせずに、一気にシャッターを押し込むと、撮影までにかなり時間がかかるような印象を受ける。だが、通常どおり、AFロックしてから撮影したときのタイムラグはさほど長くはない。

 使用上注意すべき点は、暗いシーンでの自然光撮影時のノイズ。本機は通常モードの場合、ブレを軽減するために、スローシャッターが最長でも1/60秒に制限され、露出不足分はゲインアップ(ソフト的な感度アップ)で補う仕様になっている。

 本機のような中堅機の場合、ノイズで画像が多少荒れるよりも、ブレによる救済しようのない失敗を未全に防ぐ仕様になっているのは、しごく当然のことであり、異論はない。だが、ユーザー側もそれを理解して使う必要があるわけだ。もちろん、シャッター速度優先AEモードにすれば、このゲインアップ機能をカットすることができ、三脚を併用するなどブレを防ぐことで、ノイズの少ない画像を得ることができるので、この点をきちんと理解して使う必要がある。

 画質はなかなか良好。実質的な解像度も高く、レンズ周辺部での画質低化も少ない。また、色調は若干派手めの設定で、なかなか見栄えのするもの。無調整でプリントしてもきれいな仕上がりになるケースが多いため、画像処理などに不慣れなユーザーでも安心だ。

 もっとも、前述のとおり、暗めの場所での自然光撮影では、ややノイズっぽくなるわけだが、それが気になる人はシャッター速度優先AEにするか、ストロボ撮影をすれば解消することができる。

 同じSシリーズでも、300万画素機の「S70」のほうが人気が高いが、動作が機敏で、液晶モニター回転式の本機のほうが使いやすいケースが多く、楽しめるモデルに仕上がっている。

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■ キヤノン 「IXY DIGITAL」

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「IXY DIGITAL」実写画像
 この夏の話題をさらった感のある人気モデル「IXY DIGITAL」。まさに“IXY”といえる超小型ボディーに、1/2.7インチ211万画素CCDと光学2倍ズームを搭載したモデルだ。

 デザインとサイズは、まさにAPS版IXYそのもの。ステンレスを多用した外装は質感も高く、洗練された印象がある。このデザインであれば、銀塩コンパクトカメラと比べても、違和感のないところだが、そのぶん、デジタルカメラらしい部分がもう少し欲しいような気もする。

 ファインダーは光学式と液晶式の両方を備えており、液晶は1.5インチタイプとやや小さいものの、視野率100%と正確で、写る範囲と液晶表示との差がないため、正確なフレーミングができる点は大きな特徴といえる。また、光学式ファインダーは視度補正機能こそないが、なかなか見やすい仕上がりだ。

 操作性は比較的よく考えられており、操作頻度の高いズームレバーやシャッターボタンが大きく、比較的よく利用するストロボやマクロ切り替え機能には専用ボタンが設けられている。また、設定したモードは、メインスイッチを一度OFFにしても保持される点は便利で実用的だ。もっとも、詳細設定はメニュー表示をたどる必要があり、この部分の操作性はあまり感心しない。

 機能は比較的シンプルなもので、フルオートのグリーンモードと、詳細な設定ができるマニュアルモードの2種がメイン。また、被写体別モードもあるため、実用的にはこれで十分という感じだ。

 本機の特徴は、なんといっても携帯性のよさ。とにかくコンパクトで、胸ポケットにもすっぽりと収まる。さらに、レンズが沈胴式で、2倍ズームとは思えないほど薄型で、レンズバリアも装備しているため、ケース無しで気軽に持ち歩ける。

 気になる点としては、レンズを含めた実効感度が低めで、ボディーが小型なこともあって、他機種に比べてぶれやすい点があげられる。一方で、本機は3点測距式のAF機能を装備しており、画面の中央に被写体がなくても、ピントを逃すことが少ない。だが、マクロ撮影時にはややピントを逃す確率が高い点が残念だ。

 常時携帯機として持ち歩くときに、やや気になるのは「電池」。持ち自体はそう悪くはないが、本機のように日常的に持ち歩くタイプのモデルで、しかも専用形状の電池の場合には、出先で電池切れを起こすと対処しようがないため、やはり予備の電池を1つ持っていたほうが安心だ。

 画質はこのクラスのモデルのなかでも、良好な部類に入る。解像度はこのクラスのなかでも比較的高く、色再現性も適度に見栄えのする仕上がり。肌色の再現性も素直で好感が持てる。ただ、若干シャドー側が黒く潰れやすい傾向がある。これはシャドー側のノイズを目立たなくするという効果もあるわけで、このあたりは苦肉の絵づくりという感じがしないでもない。とはいえ、ポストカードの作成用やWeb用途には十分なクォリティーを実現しており、画質に不満を感じるケースは少ない。

 むしろ、ホワイトバランスの制御がやや弱い印象があり、オートホワイトバランスのまま撮影すると、やや不自然な色調に仕上がるケースが多い。そのため、通常の使用では、デーライトに固定して撮影した方が安定した結果が得られる。

 また、前記の通り、3点測距式のオートフォーカス機能は、一般的なシーンでは中抜けも少なく信頼できるが、マクロ撮影時にはピントを逃すケースが多いので注意が必要だ。

 ある意味で本機は、中堅デジタルカメラの新しい価値基準を作ったモデルであり、今夏の1/2.7インチ211万画素機の代表的な存在だ。コンパクトで質感も高く、小型なわりに操作性もよく考えられている、多くの人に好まれるオールマイティーなモデルといえる。もちろん、今回の5機種の中で唯一の光学2倍ズームであり、しっかりとホールドするにはやや小さすぎるという面もある。高機能よりも質感や携帯性を重視したい人にお勧めの新世代デジタルコンパクトカメラといえるだろう。

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【まとめ】

●いずれ劣らぬ個性的な新鋭機

 今回は、今夏の「1/2.7インチ211万画素CCD」搭載5機種を見てきたわけだが、各機種とも、なかなか個性的で意欲的なモデルばかりだ。

 デザインや携帯性といった面で見ると、やはり「IXY DIGITAL」の完成度の高さが際だつ。あらためて比較するまでもないほどコンパクトであり、デザイン的にも洗練されている。また、質感の高さという点でも、他機種を大きく引き離している。

 機能面で見ると、カシオ「QV-2300UX」の充実度が際だっている。ライバル機が比較的シンプル指向なのに対し、本機は多機能指向であり、デジタルカメラで本格的な撮影をする楽しさを重視したモデルといえる。もちろん、その意味で、同シリーズの本命は光学8倍ズーム機の「QV-2800UX」であり、本機は携帯性とコストとのバランスを考えた3倍ズーム版という位置づけといえる。

 また、違った意味でユニークな機能を備えた機種として、「EI-200」があげられる。本機はDigita OSをベースにしているため、購入後にソフトをバージョンアップしたり、アプリケーションを追加することができるわけだ。実際に本機では、一種のエミュレーションソフトを使って「Doom」や「パックマン」ライクのゲームを液晶上で楽しむこともできる( http://digita.mame.net/ )。また、近い将来にはカメラの赤外線転送機能を使って、NTTのISDN公衆電話からデータをアップロードすることも可能になるなど、拡張性という意味ではなかなか楽しみな面もある。もちろん、それがデジタルカメラの機能として実用的かどうかは別の問題だが、特徴であることは確かだ。

 操作面で見ると、「DSC-S50」の使い勝手の良さが目立つ。本機の場合、バッテリーの持ち時間が他機種に比べて圧倒的に長く、持ち歩くときにもさほどバッテリーの残り容量を気にしなくても実用になる。また、電池の持ちがいいため、頻繁に再生表示をする人にもオススメだ。

 さらに、液晶モニターが回転式であり、自由なアングルからの撮影が楽しめるうえ、自分撮りもできる点も好ましい。

 また、コンパクトカメラ感覚で軽快に撮影できるという点では、やや大きめではあるが、「C-990Z」の操作性の良さも特筆ものだ。実際にレンズカバーを開くだけで撮影ができるため、デジタルカメラに不慣れな人でも違和感なく撮影できる点は大きなポイントといえる。さらに、撮影間隔も短く、連続撮影にも強いため、軽快にスナップできる点も大きな魅力だ。


●どの機種を選ぶか?

 画質面では、どの機種も同じ1/2.7インチ211万画素CCDを搭載しているわけだが、各社ともに、微妙に絵作りの違いがあり、一概にどの機種が優れていると言い難い部分もある。

 もちろん、記念写真をはじめとしたスナップ的な撮影であれば、いずれの機種でも実用十分なレベルの画質を実現しており、その点では安心して使える。ホームページやポストカード作りなどに使うのであれば、このクラスのモデルでも十分な実力といえる。

 価格面で見ると、8月3日現在では、CFカードや接続キットなしの「QV-2300UX」が49,800円、メモリカードと接続キット込みの「DSC-S50」が69,800円。メモリカード付きの残りの3機種が59,800円(いずれも、ヨドバシカメラ新宿OA館)。カシオはやや割安だが、それ以外のモデルは事実上、ほぼ同価格といえるのが現状だ。

 さて、今回、1/2.7インチ211万画素CCD搭載機5機種を使ったわけだが、正直なところ、カメラとしての完成度という点では、やはり「IXY DIGITAL」が一歩抜きんでている。

 これはサイズやデザインはもちろん、質感といった面から見ても、明らかに他社を一歩も二歩もリードしている印象だ。もちろん、レンズが光学2倍ズームである点や動画撮影ができない点、液晶モニターが小さいといった欠点はあるが、それを上回る魅力を備えたモデルといえる。

 3倍ズーム機で、しかもコンパクトカメラと同じような感覚で撮影したい人であれば、「EI-200」と「C-990Z」もなかなか魅力的な存在だ。いずれもやや大きめで、携帯時にはやや嵩張る印象があるが、撮影しやすく、操作性もコンパクトカメラに近いため、違和感なく扱えるモデルだ。このあたりは、いかにもカメラ系メーカーの製品らしい。

 一方、同じ3倍ズーム機でも、デジタルならではの楽しさを堪能したい人には、レンズや液晶回転式の「DSC-S50」や「QV-2300UX」が適している。いずれも、自由なアングルから撮影ができるうえ、絞りやシャッター速度優先AEの撮影でが可能だ。また、ソニーは電池の持ちが抜群によく、カシオはきわめて多機能であり、方向性はやや異なるとはいえ、いずれも撮影する楽しさを備えたモデルだ。

 また、今回はやや仕様が異なるため横並びでの比較をしなかったが、富士フイルム「FinePix 40i」も実質的なライバルであり、実際にはこのあたりも視野に入れた機種選びをする必要がありそうだ。


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■注意■

(2000年8月3日)

[Reported by 山田久美夫]


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