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第62回 : 進化するインスタントメッセージング



 先週は携帯電話番号のポータブル化が競争促進のために必要なことだ、という話を書いたが、これに関して読者の方から有用な情報を提供していただいたので、簡単に紹介したい。

 香港は携帯電話番号のポータブル化を、'99年3月、世界で3番目に実施済みという。香港の場合、もともと狭い地域で6社11サービスが入り乱れて携帯電話サービスを行なっており、これがポータブル化によって競争促進され、サービスの多様化と充実、通話料金の低下、そしてそれらによってユーザー数の大幅な増加という結果が得られているそうだ。
 '98年9月の段階で42%だった香港の携帯電話普及率は、現在54%にも達し、さらに増え続けている。普及率と利用頻度の向上は、さらなる料金引き下げやサービスの充実にも繋がり、ユーザーは競争によるメリットをさらに受けることになるだろう。

 社会の末端に位置する僕にできるのは、日本でも電話番号に縛られない自由な競争の促進が必要であるという話をすることだけだが、せめてポータブル化に向けての議論や協議ぐらいは開始して欲しいとだけ記しておきたい。電話番号のポータブル化は、単にルールを作ればいいだけではなく、携帯電話会社の料金システムを変更しなければならない。そうしたシステムの開発や相互運用試験などを合わせれば、議論が始まり、決定し、実行に移るまで何年かかるか想像もできない。今からでもスタートして欲しいものだ。


● 新MSN Messengerが米国への無料通話をサポート

 Windowsユーザーなら、Microsoftが無料で配布しているMSN Messengerをご存知の人も多いだろう。オンライン中の相手にリアルタイムのメッセージを送ったり、登録した友人や仕事仲間が、現在オンラインかどうか、オンラインであればどのような状態なのかを知ることができるサービス、いわゆるインスタントメッセージング(IM)というアプリケーションだ。
 IMは元々ICQというツールを発端に爆発的にユーザーが増えたのだが、現在は単にメッセージを交換するためのツールとしてだけではなく、他の様々なアプリケーションと連携するための基本コンポーネントとしての性格付けもされてきている。このため、自社のIMツールを使ってもらうために、各社はIMサービスの充実に力を入れている。

 MSN Messengerを開発するMicrosoftは、同社のネットワークサービスに関するフレームワークであるドットネットの中で、IMサービスを基本ビルディングブロックのひとつとして組み込み、ドットネット上の様々なサービスがMSN Messengerの機能と連動する仕組みを構築しようとしており、その前段階としてユーザー数獲得に奔走している。
 先週発表されたMSN Messenger 3.0では、とうとう米国内への電話と無料で通話する機能が組み込まれた。これは米国のIP電話サービス会社のNet2Phoneとの契約で実現したもので、インターネットにさえ接続されていれば全米のあらゆる電話と無料で通話できる。相手が米国の電話であれば、PC側は世界中どこにあっても構わない。試しに米国の固定電話、携帯電話にかけてみると、問題なく接続できてしまう。
 同様のサービスはアメリカオンラインのIMサービスでも行われる予定だが、こちらは1回1セントの料金を徴収する予定だ(もっともMicrosoftの発表により、その予定が変更されることもあり得る)。

 実は先週、サンフランシスコへ取材に出かけていたため、家族にこのことを知らせてホテルに電話をかけてもらったのだが、音質があまり良くないことを除けば、意外に遅延時間も少なく簡単な会話ならば問題なく行なうことができた。数年前に使った音声チャットと比べると遥かに快適。ただし、このときはホテル側が固定電話、日本の自宅側はOCNエコノミーという環境だったが、場合によっては海外への経路環境によっては状況が異なるかもしれない。
 マイク付きのノートPCをお持ちなら、PCとPCの間でも簡単に通話できるので(IMは通話相手を簡単に指定できるのも大きなメリット)、米国ならずとも電話代が気になる遠距離の通話では是非お試しを。ビジネス用途でなければ充分に実用的だ。


● 次は携帯電話とIMの接続

 サンフランシスコへの出張というのは、携帯インターネットを行なうためのサーバー製品や携帯電話向けマイクロブラウザの開発元として知られるPhone.comが開催したUnwired Universe 2000への出席が目的だったのだが、ここでも“IM”や“awareness”というキーワードを数多く目にした。
 WAP Forum CEOのScotto Goldman氏によると、WAP ForumではPCのIMサービスと、携帯電話のショートメッセージやページャとの相互運用に関する取り決めを検討中とのことだ。Phone.comはWAPに準拠する形でそれらを将来のサーバ製品に実装する。これが実現されれば、PCのIMクライアントからメッセージを送る携帯電話が通話可能状態かどうかを確認したり、IM同士と同じようにメッセージ送信をな行うことができるようになる(もちろん逆に携帯電話からPCのIMクライアントにも送信したり状態確認することも可能)。

 IMは、現在のところ各社それぞれに仕様を決めてサービスを行なっているが、通信や所在確認のためのプロトコルに関しては標準化を行なう方向で進んでおり、WAPはIM標準が確定した段階でそれに対応する方向のようだ。
 実は先に挙げたMSN Messenger 3.0は、米国内のユーザーであれば携帯電話やページャ、Palm VIIなどへインスタントメッセージを送信可能なのだが(標準化されているわけではなく、独自の機能としてだが)、日本国内では対応していない。またメッセージ送信のみで、相手の所在や状態までは知ることができない。

 米国の携帯インターネットがPCとの相互運用を重視しているのに対し、日本の携帯インターネット文化は携帯電話単体で収束する傾向が強いように思う。なので、日本でのサービスがどうなるのか。あるいはWAP以外、つまりiモードがどうなるのか、といった話は不透明だが、PCを利用する機会が多い一ユーザーとしては、PCのIMサービスと携帯電話の相互運用が実現することを願いたい。

[Text by 本田雅一]


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