会場:Slicon Valley Conference Center
Platform Conferenceは小さいながらも展示会を併設しており、各社がマザーボードやチップセットなどを展示している。今回はその中から気になった展示や、初日のレポートではカバーできなかったチップセットに関する話題などを追加しておきたい。
●メモリベンダー各社がAMD-760マザーボード「CORONA-EVT3」を展示
今回、Samsung、Hyundai、InfineonといったメモリベンダーのブースではAMD-760を搭載したマザーボードを利用した展示が行なわれていた。4月のWinHEC 2000、6月のPC EXPO2000でAMDがデモンストレーションに利用していたAMD-760のマザーボードは、「Tecote EVT2」というコードネームのリファレンスマザーボードで、マザーボードに雷鳥の刻印が打たれたものだった(詳しくはWinHECのレポートを参照)。しかし、今回各メモリベンダーで利用されていた新しいリファレンスマザーボードと見られるボードは「CORONA-EVT3」という名前に変更されていた。外見上の違いは3点ある。
(1)Tecote EVT2のメモリスロットが2スロットに対して、CORONA-EVT3は4スロット
(2)基板の色がTecote EVT2では青に対して、CORONA-EVT3は緑に変更
(3)サウスブリッジの刻印がTecote EVT2では「AMD-757」だが、CORONA-EVT3ではAMD-766
(3)に関してはWinHECのレポートでもお伝えしたとおり、AMDでチップセットを担当しているロン・ハッフ氏自身が「単なる間違いでAMD-766が正しい」としていたので、これも順当な変更と言える。
AMDの新リファレンスマザーボード「CORONA-EVT3」 | CORONA-EVT3に搭載されていたAMD-760チップセットのサウスブリッジAMD-761 | AMD-760のサウスブリッジAMD-766。今回はマーキングがAMD-766に直っていた |
なお、この4スロット化にともなってか、DIMMスロットの周辺にはおびただしい数のレジスタ(抵抗)が搭載されていた。AMDのマザーボードのデザインに関するセッションはなかったが、Micronの「Samurai-DDRチップセット」を利用したマザーボードデザインに関するセッションでMicron Technology インテグレーテッドプロダクトグループ アプリケーションエンジニアのジャスティン・スキーズ氏は「DDR-SDRAMのマザーボードではターミネータが必要になる」とのべ、ノイズを押さえるために両エンドにターミネータが必要になることを明らかにした。ただ、「設計の仕方によってはシングルエンドに設計することも可能であり、当社のSamurai-DDRでは製造過程の削減などコストの観点からシングルエンドの方向を奨励する」と語った。
CORONA-EVT3の文字表示。CORONAには雷鳥のマーキングはなかった | CORONA-EVT3のメモリソケット周辺に取り付けられているレジスタ。これだけのレジスタをつけるとなるとコストが上りそうだが、果たして…… |
CORONA-EVT3の場合、MicronのSamurai-DDRを搭載したマザーボードに比べても圧倒的にレジスタが多い。これだけのレジスタを装着するとなると、製造工程が増えるのでマザーボードメーカーがPCB(基板)を作るコストが上がり、結果としてマザーボードの価格が上がってしまう可能性が高い。また、PCBの層だが、スキーズ氏は「Samurai-DDRは64bit PCIをサポートしているので6層になっているが、そうでなければ通常のSDRAMと同じ4層で可能」と語っている(なお、CORONAが何層かは不明)。果たして、AMD-760が登場するときにどのようなリファレンスデザインになるのか、興味深い展示だった。
MicronのSamurai-DDRを搭載したサンプルマザーボード。6層基板で、64bitPCIをサポートしている | Micronのマザーボードのメモリスロット周辺。MicronによればすべてのDDR-SDRAMマザーボードはこのレベルまでレジスタを減らすことが可能であるということなので、AMD-760も登場時にはもう少しレジスタが減る可能性もあると言える |
なお、Micron Technologyが計画中と言われる、Athlon/Duron用チップセットについて、Micronの関係者に質問してみたが、いずれもノーコメントだった。筆者が独自に取材した範囲では、Micron TechnologyはScimitar(シミター)というコードネームで呼ばれるAthlon/Duron用の1チップのチップセット(つまりノースとサウスが統合されたチップセット)を計画しているという。このScimitarは第3四半期にも投入されると見られているメモリクロック266MHzのAthlonやし、PC-2100/1600のDDR SDRAMに対応、4XのAGPスロット、Ultra ATA/66などのスペックになると見られており、2001年の第1四半期をターゲットに開発が進んでいるという。Samurai-DDRでもわかるように、Micronはチップセットに関しても高い技術力を有している。そのMicronがAthlonのチップセットを作るというのは、AMDにとってはよいニュースであり、今後の展開に期待したい。
●ACRのアドバンテージを強調するACR SIG
WinHEC 2000に続いてブースを出していたACR SIGが強調していたのが、ACR(Advanced Communication Riser)のCNR(Communication and Networking Riser)に対するアドバンテージだ。VIAのセッションでACRについての説明を行なったVIA Technologiesサウスブリッジプロダクトマネージャのベンジャミン・パン氏は「ACRのCNRに対するアドバンテージは、2つある。1つはAMRとピン互換であることで、もう1つが単なるイーサネットやHomePNAだけでなく、xDSLやケーブルモデムなどにも対応できる」とのべ、柔軟性がACRのアドバンテージであるというところを強調した。
確かに、ACRでは従来のCNRでサポートされているAC-LINK、MIIというインターフェイス以外に、EEPROMのためのシリアルインターフェイス、USB、IPBというxDSLモデムなどのための独自インターフェイスなどがサポートされており、カードメーカーにとって、より高度な複数ファンクションのカードが作りやすくなっている。ただし、そうしたカードを作ればコストが上がってしまうし、マルチファンクションのカードは自由度が低いという問題を抱えててしまう。
ACR SIGのブースに展示されていたADSLとイーサネットのマルチファンクションカード | VIAのACRをサポートしたサウスブリッジVT8231 |
今回はそうしたACR陣営のアピールをかねて、ACRの規格を策定しているACR SIGがACRのカードを多数展示していた。WinHEC 2000ではモデムとイーサネットなどのマルチファンクションカードが展示されていたが、今回はADSLとイーサネットのマルチファンクションカードなどが追加されていた。
●ALiはデスクトップ向けDDR SDRAMチップセットのロードマップを公開
このほか、ALiは同社のデスクトップPC用とモバイル用チップセットロードマップを公開した。それによれば、ALiは2000年の第2四半期中に、Aladdin Pro4B(M1641B、Pentium III Celeron用)とAladdin K7(M1647、Athlon Duron用)のDDR SDRAMチップセットをリリースし、2000年後半にはそれぞれにグラフィックスコアを統合したM1642(Pentium III Celeron用)、M1648(Athlon Duron用)をリリースする予定であるという。モバイル向けとしてはAladdin-Pro4B(M1641B、Pentium III Celeron用)とAladdin-K7(M1647、Athlon Duron用)を第2四半期に、そのグラフィックス統合版としてM1644(Pentium III Celeron用)、M1646M(Athlon Duron用)をリリースする予定になっているという。
DDR Desktop Northbridge Roadmap | DDR Portable Northbridge Roadmap |
COMPUTEX TAIPEIで展示されていたAladdin-K7 |
(2000年7月21日)
[Reported by 笠原一輝@ユービック・コンピューティング]