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WinHEC 2000デモショーケースレポート

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AMDとIntelが新チップセットを展示

4月25日~27日 開催(現地時間)
会場:New Orleans Morial Convention Center

 WinHECはハードウェアのエンジニアに向けたカンファレンス(有り体に言えば勉強会)だが、世界中からエンジニアが集まることもあって、ハードウェアメーカー、特にコンポーネント系のメーカーにとっては売り込みのチャンスだ。ハードウェアの展示を行なうデモショーケース(こちらも有り体に言えば展示会)が昼休みや夕食の時間などに用意されており、多くのエンジニアなどでにぎわっている。このレポートではそうした展示で際だったものを取り上げる。


●AMD-760の詳細が徐々に明らかになる

 AMD、Intelの両メーカーは、WinHECのスポンサーになっていることもあり、あちこちでロゴを見かけることができる。デモショーケースも例外ではなく、ともにブースを構えている。

 両社の展示で最も注目を集めていたのが、間もなくリリースすると見られている新チップセットだ。AMDは昨日お伝えしたように、AMD-760チップセットを利用したデモンストレーションを行なっている。AMD-760はPlatform2000のレポート「AMD、Athlon用AMD-760/770など2000年のチップセット計画を公開」でもお伝えしたように、2000年後半にリリースすると公式にアナウンスしているチップセットで、DDR SDRAM対応などの機能をサポートしている。今回の取材で明らかになったことも含め、AMD-760の機能は以下のようになっている。

 AMD-761(ノースブリッジ)
 ・FSB:200/266MHz
 ・メインメモリ:PC-2100/PC-1600(266/200MHz動作のDDR SDRAM、
         最大4スロット/8GBまで、バッファあり/なし両方サポート)
 ・AGP 4X

 AMD-766(サウスブリッジ)
 ・Ultra ATA/100
 ・4ポートUSB
 ・LPC
 ・STR(Suspend-to-RAM)サポート

サウスブリッジに関してだが、実際にはAMD-757と書かれていた。従来のAMD-750チップセットが

 AMD-751(ノースブリッジ)
 AMD-756(サウスブリッジ)

という構成になっていたのに比べると、

 AMD-761(ノースブリッジ)
 AMD-757(サウスブリッジ)

 と、ややこれまでのルールからはずれたネーミングになっている。しかし、AMDのチップセットの責任者でコンピューテーションプロダクトグループディビジョンマーケティングマネージャのロン・ハッフ氏によれば、展示されていたサンプルマシンは開発用のもので、実際にはサウスブリッジも「AMD-766」という型番になるということだ。

 ハッフ氏によれば「AMD-760ではPC133 SDRAMなどのSDRAMはサポートされない。DDR SDRAMのみだ」という。現在IntelはIntel 820で2RIMM+2DIMMという構成をサポートしており、最初はSDRAMで利用してDirect RDRAMの値段が下がったらSDRAMからDirect RDRAMへ徐々に乗り換えるという構成になっている。しかし、AMD-760を搭載したマザーボードでは、現在ユーザーが所有しているSDRAMを使うことはできず、DDR SDRAMを購入しなければならない。これに対して、ハッフ氏は「DDR SDRAMはDirect RDRAMにようにSDRAMと比較し大幅にコストが上がるということはない。その点はあまり問題にはならないだろう」と述べた。さらにAMDのブースで説明にあたっていたNECのメモリ担当エンジニアも、DDR SDRAMの値段はさほどSDRAMとかわらないとしている。このあたりはDDR SDRAMがSDRAMに比べてどれほど高くなるのかが見えてきてから、もう一度議論する必要があるだろう。

 なお、AMD-760のリリース時期については、ハッフ氏は「秋だ」とだけ述べた。その秋が第3四半期なのか第4四半期なのかと聞いたところ、「それは言えない」と述べ、それ以上の明言は避けた。なお、情報筋によれば、AMDはOEMメーカーに対してAMD-760のリリースは9月と説明しているそうで、ハッフ氏の言い方が微妙であったことも考えて、9月、10月あたりと見るのが妥当と言えるだろう。

AMD-760を搭載したデモマシン。ソケットタイプのCPUはThunderbird。動作クロックは明らかにされなかった AMD-760のノースブリッジであるAMD-761。DDR SDRAMをサポートし、AGP 4Xモードに対応 AMD-760のサウスブリッジ。現在はAMD-757というマーキングがされているが、実際にはAMD-766というマーキングになる

チップセットの脇に書かれた怪しい名前「Tecate EVT2」。おそらくこのマザーボードのコードネームだと思われる マザーボードに書かれている雷鳥のマーキング。もちろんThunderbirdにちなんだものだろうが、カッコいいので製品版でも残してほしい


●IntelはIntel 815Eを覆面展示

 Intelは、2月に開催されたIntel Developer Forumでも展示していたDVIとCNR(Communication and Network Riser)のデモンストレーションを行なっていた。このデモンストレーションに利用されていたのが、Intel 815Eを搭載したPCだ。ただ、表示にはIntel 815Eとは書いておらず、ひっそりとCNRとDVIのデモと書かれたボードが張り付けてあるという状態で、よく見ないとIntel 815Eだとは気がつかない。外部AGPスロットにはAIMM(Agp Inline Memory Module)が挿入してあり、内蔵されているグラフィックスコアであるIGT(Intel Graphics Technology)コア(Intel 810/810Eに内蔵されているグラフィックスコアとほぼ同等のもの)を利用しているのがわかる。

 既にIDFのレポートでも述べたように、Intel 815は以下のような3通りのグラフィックス設定を持っている。

 (1)IGTのみ
 (2)IGT+AIMM(4MBのディスプレイキャッシュ)
 (3)外部AGPカード

 最初の設定は(1)でIGTのみの利用で、これはディスプレイキャッシュを搭載していないIntel 810-LおよびIntel 810とほぼ同等の使い方と言える。これに対して、(2)のIGT+AIMMという構成はIntel 815/815Eからの新しい機能で、マザーボード上に搭載されているAGPスロットにAIMMという4MBのメモリが搭載されているメモリモジュールを挿入することで、この4MBがディスプレイキャッシュとして動作するようになる。つまり、Intel 810-DC100ないしはIntel 810E相当として機能する。(3)がIntel 815/815Eで初めてサポートされる機能で、通常のビデオカードを、AGPスロットに挿して利用する方式となっており、このようにIntel 815/815Eは3段階のグラフィックス構成が可能で柔軟性に優れている。

 今回展示されていたマシンはAIMMを利用していたので(2)の構成になっていた。この状態で、ディスプレイのデジタルインターフェイスであるDVIの端子を出すためのドーターボードが接続されており、デジタル液晶ディスプレイに画面を表示するというデモンストレーションが行なわれていた。ただ、Intel 815EそのものであるGMCHとICH2に関しては黒いシールが貼られていて型番がわからないようにされていた。

 なお、Intel 815/815Eのリリース時期については、説明員はこの製品がIntel 815/815Eであることも明らかにはしてくれなかったため、そうした質問もできなかった。ただ、情報筋によれば、IntelはOEMメーカーに対してIntel 815/815Eのリリース時期は米国時間6月19日であると通知してきているそうで、あと2カ月もすればIntel 815/815Eマザーボードが入手可能になるだろう。

TIのブースに展示されていたIntel 815搭載マシン上のAIMMモジュール。2MBのメモリが2つ搭載されている Intelの展示マシンに搭載されていたICH2。黒いシールが貼られていて、型番などはわからない Intelのブースに展示されていたIntel 815E搭載マザーボード。ケーブル類でノースブリッジの型番が見えないようにしているあたりが上手い!


●「CNR vs ACR」でも激しくぶつかるIntelとAMD
~さりげなく展示されていたVIAの新サウスブリッジ

 AMD、Intelの争いはチップセットだけではなかった。実はオーディオやモデムコーデックなどを搭載するライザーカードの規格でも激しく争っている。それがIntelの推進するCNRとAMDが推進するACRだ。

 CNRに関してはIntel Developer Forumでも展示されており、従来のAMR(Audio Modem Riser)に、ネットワークなどの機能を追加したものだ。コネクタは全く新しいものを利用し、AMRとは互換性はない。AMRはアップグレード用に利用するというよりは、BTOメーカーなどが出荷時に構成を簡単に変更できるように作られた規格なので、互換性を保つ必要はないと判断したのだろう。

Intelが計画しているCNRのモデムカード VIAのApollo KX133搭載リファレンスマザーボードに搭載されたACRのスロット(右)。PCIとちょうど反対についているのがわかる AMDが作成したACRのHomePNAカード。一番下のポートはUSBポート

 これに対して、ACR(Advanced Communications Riser)はAMDなどが中心になって推進している規格で、CNRと同じような機能を持っているスロットだ。CNRと同じように、単にオーディオやモデムなどでなく、ネットワークやUSBなどの機能が追加されている。ACRはPCIバス用ソケットをひっくり返して利用しており、AMRと互換性があるように設計されている。ACRではバスの先端部分だけを利用した場合はAMRスロットとなり、後ろのスロットを利用した場合はACRカードとなる。今回はAMDが作成したHomePNAとUSBのマルチファンクションカードが展示されていた。

VIA Technologiesのリファレンスマザーボード上に搭載されていた次世代サウスブリッジであるVT8231。Ultra ATA/100に対応している
 ところで、そのACRの展示に利用されていたマザーボードは、VIA TechnologiesのApollo KX133搭載リファレンスマザーボードだった。ノースブリッジに関してはApollo KX133だったのだが、サウスブリッジに関しては見たことがないVT8231というチップが採用されていた。現在、VIA TechnologiesのサウスブリッジはVT82C686Aだが、それとは違う新製品だった。実はこのVT8231は、VT82C686Aの後継として計画されているサウスブリッジであり、Ultra ATA/100、イーサーネット、HomePNAなどの機能が追加されたている。これで、AMD、Intel、VIAの3社のUltra ATA/100対応サウスブリッジがそろったことになり、いよいよUltra ATA/100時代の幕開けも近い。

□WinHEC 2000のホームページ(英文)
http://www.microsoft.com/winhec/

(2000年4月26日)

[Reported by 笠原一輝@ユービック・コンピューティング]


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