第59回 : 出張用ノートPC選び、その後 |
もちろん、開発を行なっている人たちにとって、サービス間でどのようにメッセージ交換を行なうのか? 開発を行なう際、インフラとなる技術プラットフォームや開発ツールにはどのようなものがあるのか? 詳細なガイドラインを持つ開発フレームワークはあるのか? など気になる面もあると思う。
しかしアプリケーション開発に直接関わらないのであれば、現状の周辺技術にとらわれない方が「こんな風になればいいのに」と想像力をかき立てられると思ったからだ。また、今すぐに手に入るものばかりでもない。
現在、XMLは様々な方面で採用され、開発フレームワークを構築するために欠けている要素の標準化推進や、開発ツール、XML対応サイト構築のためのサーバースイート、XML対応のミドルウェア、サーバーソフトウェアなどの開発が進んでいる。
特にモバイルに関連するところでは、XMLデータベースからスタイルシート変換規則のXSLTを通じ、XHTML(XMLで拡張されたHTML)コンテンツで携帯電話向けのサービスを行なうためのプロトコルおよびフレームワークがWAP Forumで検討されている。NTT DoCoMoはJavaベースでアプリケーションを構築する方向にあるようだが、WAPに参加する企業(NTT DoCoMo以外のほとんどの携帯電話キャリア)はXMLを中心としたアプリケーションプラットフォームへと進むようだ。
今のペースで製品開発が進めば、あと半年から1年もすれば、もっと製品レベルに近い話ができると思う。と、相変わらず前置きが長くなったが、今回のお題はXMLでも携帯電話でもない。少し前に話をしていた、出張用ノートPCを選ぶ、の結果報告をしたい。
● 検討機種にFLORA220FXとLet's NOTE L1Xを追加
これまでの話は、個人的に出張時に仕事で利用するノートPCに関して、CD-ROM(可能な限りDVD-ROMドライブ)内蔵、バッテリー持続時間、操作性、重量、価格、メーカーサポートの信頼性などの条件を元に機種を絞り込み、現在使用しているThinkPad 570の代替機にしようというものだった。
大柄だが高機能で、サイズの割には軽く(CD-ROMドライブを外せば約2kg)、バッテリー持続時間も3時間を超えるThinkPad T20を第1候補。魅力的だと思いつつも見送り続けてきた軽量なCD-ROM内蔵機のLet's NOTE M1シリーズ後継機(現在、既にM2シリーズとして発表済み)のいずれかにしたい……というところで話が終わっていた。実はその後、あの話はどうなったんだ、とのメールが舞い込んでいたのだが、いくつか気になる点もあって先送りにしていた。
気になる点のうちひとつは、連載の時に取り上げなかった機種について、追加で検討してみようと考えたからだ。その理由のひとつは、Let's NOTE M1の後継機であるLet's NOTE M2が、僕の好みとは別の方向に進んでしまったことが挙げられる。M2にはM2の長所(CD-RWが内蔵可能でType2スロットが利用できる)はあるが、お気に入りだったLet's NOTE ace/A44、A77から少しづつ大きく、重くなってきたことで少し興味を失ってしまったということもある(今回の話はあくまで個人的な購入の話なので、興味を持てるかどうかも重要な要素だと思う)。
その代わりに検討してみたのが、日立のFLORA220FXと松下のLet's NOTE L1Xだ。日立の候補がパーソナル向けのPrius NOTE 220PではなくFLORA220FXを選んだのは、PriusがWindows 2000モデルを用意しておらず、Ethernetも内蔵していないためだ。
● 候補からThinkPad T20を削除
前回検討した際、ThinkPad T20を第1候補に据えたのは、高い品質感と高機能、重量、バッテリーがうまくバランスしており、キーボードなどのインターフェイスに関しても、充分に満足できると思ったからである。キー配列ひとつ取ってもコスト優先で、全体を長方形に配列しキーを減らす方向の製品が多い中、頑固に以前からのレイアウトを守っている。現在の機種から移行する上で、新たなキカイに慣れる必要もない。少々重くなってしまうのが難点だが、なんとか機能を考えれば納得できると考えたわけだ。
しかしいかんせん価格が高い。現時点、つまりボーナス商戦が終わってもThinkPad T20のパーソナルモデルは発表されておらず、上位機種では45万円前後にもなる価格は下がる傾向がないどころか、順調に売れているようでパソコン売り場では品切れの札も目立つほどだ。それだけのバリューを市場が認めた結果とも言えるが、デスクトップPCであれば10万円で充分に高速な製品が買える時代に、40万円以上の投資をするのは抵抗がある。
実はこの原稿を書く前、ある仕事上のパートナーから「条件が厳しすぎるのではないか」との意見を頂いた。そう、軽量かつ高機能で、しかも数年先まで使える性能と拡張性を持つ製品が20万円で買えるわけはない。条件をすべて満たすものは存在しないのだ。しかし、あらかじめ制限枠を意識して欲しいものを選ぶのではなく、厳しい条件の中から、自分なりの妥協点を見つけていく方が、パソコン選びのプロセスとしては正しいと考えるので、今回のような選び方になっている。
ThinkPad T20の場合、重量は少しオーバーしているが、これは妥協できる。しかし、製品としての満足度は高いものの、価格的には他の製品と比較しても割高感があり、妥協できなかったということだ。趣味ではなく仕事で使う以上、その道具から得られる価値と価格がマッチしていなければ購入できないと思う(逆に趣味であれば別の選択肢もあるだろう)。そこで最初にThinkPad T20を候補から外した。
● 海外取材の用途にマッチしたFLORA220FX
あらかじめ候補からLet's NOTE M2を外していたので、残りの候補はFLORA220FXとLet's NOTE L1Xである。この2機種、機会があれば店頭で比べてみるといいが、仕様的に非常に似通っている。これにLet's NOTE M1を加えると、FLORA220FXをはさんで3機種がまるで兄弟のように見えるのだ。
いずれもCD-ROMドライブを内蔵しながら可能な限り軽量化を図り、CD-ROMドライブを取り外してバッテリーと交換することもできる。Ethernetとモデムの両方を内蔵し、XGAの液晶パネルを採用。ハードウェアの機能だけを取り上げていくと、いずれも不満はあまりない。DVD-ROMドライブはどうした? との声もあると思うが、薄型のDVD-ROMドライブがないためか、強い需要がないためか、ThinkPad T20以外にはDVD-ROMドライブのオプションがないため、今回は妥協することにした。
両者のどちらを選ぶかのポイントは、サイズと重量の違い、バッテリー駆動時間の違い、Windows 2000のサポートの3点だ。(搭載プロセッサも異なるが、ここでは問わない)
Let's NOTE L1Xが19ミリフルピッチのキーボードを備え、13.3インチの液晶パネルを採用している代わりに、CD-ROMドライブ装着時に1.98キロの重量がある。FLORA220FXは12.1インチとXGAにしては少し小さめのスクリーンでキーピッチも18ミリだが、重量はCD-ROMドライブ装着時で1.85キロ(Lバッテリー装着時)と僅かながら軽量である。
一方、バッテリー性能はスペックを見る限りLet's NOTE L1Xが上回る。標準バッテリーで3.5時間のスペックで、CD-ROMドライブと交換にバッテリーを取り付ければ7時間までスペックアップする。FLORA220FXはLバッテリー装着時(Sバッテリーは1時間しか保たないため、今回は除外している)に2時間と心許なく、CD-ROMドライブと交換でバッテリーを装着し、やっと3.5時間に達する。よって、3.5時間駆動可能な状態で比較すると、両者の重量はより近づくはずだ。ただし両者の計測基準が同一ではないと考えられるため、あくまで参考値である。予備バッテリーは充電の手間もあるため、出来る限り持ち歩きたくないので内蔵可能な条件でのみの比較とした。
この選択は非常に悩むところだが、上記の違いは決定的な差とまでは思わなかった。ドライブベイバッテリーを使っても伸び悩むFLORA220FXのバッテリー持続時間は気になるが、3.5時間ならば、なんとかなると思ったからである。一方、もうひとつの要素であるWindows 2000のサポートは、現在の僕の仕事環境から考えると必須条件であり、妥協できないと判断してFLORA220FXを候補リストの最後に残し、購入に向けての検討に入ることにした。おそらくWindows 2000のサポートがあれば、Let's NOTE L1Xを選んでいただろう。
● ニューヨークで目撃してしまったCrusoe機
FLORA220FXは企業向けモデルのため、店頭ではあまり扱われていない。そこで以前に取引のあったディーラーに問い合わせたところ、32万円前後の見積もりを得た。決して安くはない。しかし、ここで妥協せねば、今年中の買い換えは無理だろう。そこで購入の方向で話を進めていたのだが、その間にあったニューヨークへの出張で目撃したのが、TransmetaのCrusoe搭載機だった。
あくまでも参考出展だったが、FLORA220FXの筐体をそのままに、TM5400とTM5600を搭載した機種が展示されていたのである。日立の担当者の話から
本来、Crusoeのように上限の熱設計電力を低く設定して開発しているプロセッサでは、それを活かした専用設計の筐体の方が、より特徴を活かした製品設計ができる。そうした製品を他社が開発している可能性もあるが、それは残念ながら望めないようだ。しかしCrusoe搭載PCは、CD-ROMなど内蔵しないサブノートPCが中心だと思っていたため、CD-ROM内蔵モデルの展示は興味深かった。
またPentium III/Celeron搭載機にある冷却ファンがなく、かつ筐体全体が低い温度で安定していたことも興味を持った理由のひとつだ。「これは待ってみる価値がある」というのが正直な感想である。
TM5x00は、決して安いプロセッサではないため、非Intelプロセッサ機と言っても低価格化は望めないかもしれないが、FLORA220FXを選ぶならば、Crusoe搭載機を待ってみようというのが結論だ。
ここまで引っ張っておいてけしからん、という意見もあるだろうが、それまではしばらく、ThinkPad 570のハードディスクを拡張することで当面を凌ぐことにした。
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【5月9日】自分のための出張用ノートPCを選ぶ
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/20000509/mobile50.htm
[Text by 本田雅一]