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第50回 : 自分のための出張用ノートPCを選ぶ(1) |
先週、PC2001システムデザインガイドの話をしたが、結局のところノートPCにデスクトップPCでのEasyPCのような変革は起こりそうにないというのが、僕なりの結論だった。つまり新しいシステムデザインを念頭に置いて、購入の時期を見計らう必要はないということになる。
そんなことを真剣に考えてみたのは、WinHECというイベントに参加したが故でもあるのだが、一方で自分も新しいノートPCの購入を考えているからでもある。安くなったとは言え、ノートPCの単価はデスクトップPCと比較して高い。新システムが出たからと言って、個人が簡単に買い換えられるものではないし、それはPCを生業としている僕のような職種でも同じ事だ。
だから、いつでも買い時を狙っている。そして僕にとっての買い時が、そろそろやってきていると感じているのだ。
■ 出張用に求めるノートの機能
出張用と言っても、その人の仕事の仕方によって色々な場面が考えられるが、自分用となると海外出張時に仕事をするためのノートPCということになる。
DVD/CD-ROM内蔵のフル機能で、原稿をデスクトップPCと同じように書ける画面サイズとキーボードサイズ、そして大量の電子資料を効率的に検索できるだけのプロセッサパワーが欲しい。また現在、Windows 2000 ProfessionalをOSとして利用しているので、正式にそれをサポートする機種が望ましい。もちろん、飛行機での移動を考えれば、バッテリ駆動時間も長ければ長いほどいい。
毎日持ち歩くためのPCではないため、ことさらに小型軽量を求める必要はない。もちろん、軽ければ軽いほどいいのだが、それが主眼ではないということだ。海外の取材現場では、PCを会場に持ち込んでその場で記事を書かなければならないこともあるので、軽量B5ノートという選択肢がないわけではないのだが、そのためにそれ以外の場面での作業性を犠牲にはしたくない(本当は軽量ノートPCとフルサイズノートPCの両方を持ち込めればいいのかもしれないが。これは少し後で考えることにしよう)。
つまり、出張時を意識したビジネス向けのA4フルサイズノートPCが主なターゲットになる。ギリギリでB5ファイルサイズ(実際にはレターサイズ相当)のLet's NOTE M1シリーズも対象に入れている。
一方で価格も重要だ。僕は年間6~7回程度、1週間づつの海外出張があり、その期間にノートPCで作業を行なう。実働日数にすれば1カ月程度。それ以外の時間はデスクトップPCを使っているのだから、あまりお金はかけられない。もちろん、単価が高いだけに少なくとも2年以上は使い続けたいという気持ちもあるので、パフォーマンスや拡張性が低すぎると結局高くつく可能性もある。パフォーマンスと価格のバランスをどこに落とし込むかもノートPCを選ぶ際の重要なポイントと言えるだろう。
■ まずは理想を考えてみる
こうした自分にとって必要な機能や利用環境を考えた上で、必要なスペックを割り出してみることにした。ある程度の理想像を作っておいてから、それになるべくマッチするマシンを選ぼうというわけだ。
- プロセッサ
低消費電力型モバイルPentium III 500MHz。本当は600、650MHzの方が望ましい(ホテルで利用するときにはフルパワーを利用できる)が、価格的にプレミアムがあるのならば、500MHzでも十分との判断だ。Willametteのモバイル版は数年先の話になるだろうし、Athlonのモバイル機がどのようになるのか先行きが見えないため、モバイルPentium IIIにさえしておけば、とりあえず満足できる結果を得られるだろう、との見込みからの判断。
SpeedStepの低消費電力時動作電圧1.1Vを実現する新モバイルPentium IIIが登場するとの噂があるため、購入の時期が今年後半にスライドするならば、それを狙うという手もある。しかし、価格や採用製品などは今のところ全くわからない。
- メモリ
最低限SO-DIMMスロットが2つあること。オンボード+DIMMの構成の場合、オンボードメモリは64MBが主流だろう。ノートPCが陳腐化しやすい原因の1つには、メモリ拡張性の低さがあると思うので、できればオンボードではない方がいい(オンボード+2DIMMならばいいのだが)。
- 液晶パネル
XGAはすでに標準的な解像度。サイズも13.1インチぐらいは欲しい。14インチになると、少しかさばるというデメリットが生じてくる。一部ハイエンドのノートPCには、XGAを越える解像度のパネルが採用されているが、今年はそれがミッドレンジにまで降りてくる可能性もある。しかし、夏ぐらいを目処に考えるならXGAが現実的だろう。秋ならば高解像度機種が購入レンジに入るかもしれない。
- DVD/CD-ROM
今年のWinHECでは、資料(実際には開発ツールキット)の一部がDVD-ROMで配布された。マイクロソフトは以前にもDVD-ROMを配布したことがある。それらを考えれば、DVDビデオを見ようと思わない場合でもDVD-ROMは欲しいところだ。
またCD-ROMを取り外して軽量化できること、バッテリと交換して長時間駆動を行なえるのも最低限の仕様として欲しい。
- バッテリ
標準で3時間以上の駆動時間は欲しい。また巨大な追加バッテリパックで10時間近い駆動時間……といった機種よりも、CD-ROMと交換でセカンドバッテリを搭載し、5~6時間の駆動が可能なものの方がいいと思う。追加バッテリが800gもあるようなら、あまり持ち歩きたくないからだ。中程度のバッテリをいくつか持ち歩くことにすれば、状況に応じて数を調整できる。
- 重さとサイズ
サイズは、出張用に利用するという目的がハッキリしているため、A4サイズで十分。ことさらに小型である必要はないことはすでに述べた。要はスクリーンサイズ、キーボードサイズ、キーボード配列などとのバランスだ。
重さに関してもDVD/CD-ROMドライブを取り外して2kgを少し超える程度までならば許容できるが、理想を言えば2kgを切って欲しいものだ。
- 操作性
なるべく変則的ではない配列で、デスクトップPCとの間で違和感なく利用できるものがいい。個人的にはThinkPadの配列が好みだが、この配列に近いキーボードはDELLにも採用されているほか、コンパックなども一部機種で使われている。キーピッチは標準の19mmが望ましいが、タッチ次第ではサブノートPCクラスのものでも(個人的には)問題ない。
よく議論になるポインティングデバイスに関しては、フルサイズキーならTrackPoint、縮小キーならパッドがいい。トラックボールは現在採用機がない。パッドはユーティリティの進化で、あまり邪魔なものではなくなったように思うので、ここにこだわりはない。
- 将来性
将来性とはハードウェアだけではなく、サポート面も含めた意味で考えたい。ノートPCの場合、BIOSが古いことで新しいOSがうまく機能しないこともある。これまでの実績を見ながら、新OSの機能に対応できるかどうか? などを考えておくべき。2001年は次期Windows 2000のWhistlerがリリースされる予定だ。
また一部ベンダーはデバイスを無線で接続可能なBluetoothに対応した機種を予定している。第1段は米国で発表された新ThinkPadシリーズになりそうだが、東芝を始め他のベンダーも追随するだろう。BluetoothをPCカードで拡張したくはないので、Bluetooth対応もしくはミニPCIなどでBluetoothレディを謳う機種を選択したい。
- 価格
30万円が上限だろう。できれば20万円台前半で購入したい。40万円のノートPCは、あまりにも高すぎる。ノートPCで全ての作業をする人であれば、40万円クラスの製品も視野に入れるべきだろうが、出張用と限定するとあまり高価な製品は使いたくない。
来週は、こうした(僕の勝手な)要求と実際のノートPCを比較しながら、実際に購入する出張用ノートPCを絞り込んでみたい。現在、様々な検討を重ねているのだが、当然のごとく理想と現実は離れている。スペックを満たす機種がないわけではなが、価格も合わせて考えると、完全にマッチするものはない。何をあきらめて、どこにこだわるのかを検討してみることにしたい。
[Text by 本田雅一]
ウォッチ編集部内PC Watch担当pc-watch-info@impress.co.jp