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7月6日が特別な意味を持つという言葉の裏には、実はもう一つの意味がある。鋭い読者諸氏には、すでにおわかりと思うが、これに先立つ5日前、かの「Diablo II」が全世界で同時発売になっているのだ。ニュアンスは全くといっていいほど異なるものの、ゲームの基幹をなすシステムとして、どちらもアクションというリアルタイム要素を多分に含んだ共通点を持つ両作品の発売がこれだけ接近しているのには、不思議な因縁のようなものを感じてしまう。
さらに、その翌日の7月7日には「ファイナルファンタジーIX(プレイステーション)」がリリースされている。どちらもパソコンゲームからしてスタートしたメーカーながら、かたや徹底してPCゲームの開発のみを続けてきた日本ファルコムと、早い時期からファミコンなどコンシューマ市場に移行したスクウェア。対照的なまでに方向性や経緯の異なる両者の最新作が、わずか1日の差でリリースされた日。ここにも「Diablo II」とはまた別の、縁のようなものを感じてしまう。もっとも、こんな話をしても理解していただけるのは、最低でも20歳中盤以降……実感していただけるのは30歳以降の方だけだろうとは思うのだが。
【オープニングムービー】 | ||
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本作のヒロイン“リリア”。倒れていたアドルを見つけ助けるが、実は自らも重い病に冒されている | 2つの月の下、魔物の跳梁する世界観を表している | 前作でアドルが攻略したダームの塔が沈黙したことから、物語が始まる |
● 徹底的に作り込まれた「イースIIエターナル」
キャラクターグラフィックのカットインが随所に挿入され、ストーリーを盛り上げていく |
通常、リメイク作品はオリジナルのファンのものという認識があるが「イースエターナル」ではユーザーの約半数が、この作品で初めて「イース」に触れている新規ユーザーだという。単なるリメイクなら、ここまでの結果は出なかっただろうし、オリジナルが優秀であればあるほど、ユーザーは移植作にも当時のイメージを求めるようになる。中途半端な移植や独自要素の追加は、かえってイメージダウンにつながってしまうのだけれど、この「イースエターナル」シリーズではこうした声はほとんど聞かれなかった。当時、今のマシンに比べれば圧倒的にパワーも低く、グラフィックも貧弱なマシンでプレイした「イース」シリーズのプレーヤー誰もが心の中に持っている「イース」世界のイメージ。それが「イースエターナル」では、そのままディスプレイ上に再現される。今のゲームのレベルを保持した内容だから新規ユーザーにも評価され、支持されているが、当時のプレーヤーにとっては格別の感情を抱かせる、そんなゲームだ。少なくとも、当時あきれるほどに熱中し、この世界で仕事をするようになったきっかけの一因は間違いなく「イース」シリーズだと確信している筆者が、こうして諸手を上げて歓迎している、というレベルの作品であることは断言できる。
● シンプルなゲームシステム
吹雪舞うノルティアノ氷壁。立ち止まっていても、アドルの足下から雪煙が舞い上がる |
前作「イースエターナル」にはなかった要素として、魔法の概念がある。これは、オリジナルでも「イースII」で追加された要素で、敵に攻撃するファイアの魔法や、立ち寄った場所にテレポートできるリターンの魔法、魔物に姿を変えることで敵と話をできるようになるテレパシーの魔法など、様々なものがある。特定の魔法を使わなければ進めないなど、謎解きの要素にも使われ、ゲームに一層の厚みを与えているのが特徴だ。また、ボス戦では主に魔法での戦闘が主体となる。攻撃の要、ファイアの魔法は溜め撃ちができるようになり、特定のアイテムとの組み合わせで効果を高めることができるので、効果的に使えるようにしたい。魔法の使い方ひとつで、難易度は大きく変化することだろう。巨大なボスとの戦闘も、このシリーズの魅力の一環を担っているが、そのエフェクトには感心させられる。特に最終ボスとの戦闘シーンは、その美しさに目を奪われること必至だ。
溶岩の熱気と毒ガスの樟気。あらゆる生命を死に追いやる厳しいエリアだ | あるアイテムを使うと、モンスターのステータスがわかるようになる。自分のステータスなども表示できるので、必要に応じて切り替えるといいだろう | テレパシーの魔法を使えば魔物との会話も可能になる。重要なヒントを得られることもあるが、このように魔物には魔物の立場があると実感できるセリフも多い |
● ゲームクリア後も楽しめる。2周目には追加イベントも登場
店では、買い物以外にも会話をすることで情報を入手できることも |
さらに、このゲームには実は2周目が存在する。2回目のプレイを始めると、1回目には見られなかったイベントが随所に追加されるので、1回クリアしたからといって安心せず、もう一回挑戦してみて欲しい。プレイした感じでは、1周目はオリジナルの「イースII」に準じたイベント構成、2周目で「イースIIエターナル」独自のイベントが追加されるという感じだ。そういう意味では、2周目こそが本当の「イースIIエターナル」だということになるだろう。村人など登場人物すべてに好感度のパラメータが用意されていて、好感度が上がるとアイテムや情報を提供してくれたり、ほかにもさまざまなボーナスが得られるなど、ゲーム本編以外の部分でも追加要素は多い。もちろん、リリアにも好感度はあって、これが高くなると……あとはぜひ自分の目で確かめてみてほしい。
モンスター図鑑には、これまでに遭遇した魔物が記録されていく。ステータスが「???」なのは、まだ情報が確定していないもの。さらなる戦闘を繰り返せば、少しずつ埋まっていく | 群れ遊ぶ鳩や、村内のお知らせ掲示板。オリジナル「イースII」には存在しなかった要素だ | 宝箱をあけると、あふれ出した光と共にアイテムが手に入る |
● DVD-Videoも付いて、お得なパッケージ
巨大なボスとの一騎打ち。エフェクトもハデで、倒したときの喜びもひとしおだ |
今回の記事制作に先立ち、発売日の翌日である7月7日にアキバの街を歩いてみたが、午前中の段階で、ほぼすべての店で完売。特にDVD-ROM版は全くといっていいほど見あたらず「売り切れ」の表示の横でデモだけが流されている店も少なくなかった。今月中旬には限定版の二次出荷もあるということなので、買いそびれてしまった方にもチャンスは残されている。より確実を期するなら、日本ファルコムのホームページでも通販を受け付けているので、これを利用するのもいいかもしれない(通信販売二次出荷分を受付再開)。
この限定版、近年まれにみる豪華かつ戦略的な内容で、非常に興味を引かれた。上製本の豪華マニュアルとか音楽や壁紙を収録したCD-ROMの同梱。このあたりはファルコム製品の特典としてはおなじみだろう。特筆すべきはOVA版「イース 天空の神殿」ビデオ全4巻を収録したDVD-Videoの同梱だろう。発売されてから年月が経過しており、最近では店頭でもあまり見かけなくなっているとはいえ、1本30分、5800円(税別)のOVAを4本分、120分まるごと収録したDVD-Videoを特典につけるというのは驚き以外の何ものでもない。もちろん、これはこの春に発売されたプレイステーション2の普及を見越した上で決定されたことだろう。極めて大胆で、戦略的な特典だと思う。
国内のコンシューマやPCゲームの不振が囁かれる中、気持ちがいいほどの売り上げを見せた「イースIIエターナル」。歯ごたえはあるけれど、頭を使えば必ず解ける謎や、三段階に設定可能な難易度(ちなみに、どうしてもクリアできない方は一度ファルコムのホームページを訪ねてみるといいだろう。掲示板には多くのイースファンが集い、活発な意見交換が行なわれている)。国産のファンタジー作品としてみても秀逸なシナリオなど、どこを切っても「良質」という言葉がしっくりくるゲームだ。
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【筆者紹介】
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