Click


←前回 連載インデックス↑ 次回→

Microsoftの次世代Windows構想「Microsoft.NET」

第2回:Windows.NETの最初のバージョンは2001年に登場!?



 22日(現地時間)に発表された「Microsoft.NET」については、新聞報道などでも伝えられていますが、構想の大きさと曖昧さから内容の把握が難しい状態です。この分野にくわしい山本雅史氏による解説を全3回の予定でおおくりします。(編集部)


■Microsoft.NETを構築するインフラストラクチャー

 Microsoft.NET構想を実現するため、さまざまなソフトウェアテクノロジーが絡み合っている。そして、ベースとなっているのはXMLだ。すべてのデータは、XML形式で表現されることになる。つまり、データ保存形式もXMLだし、ディスプレイ上に表示される形式もXMLになる。

 インターネット上でインタラクティブな通信を行なうときに問題になってくるのが分散オブジェクトの形式だ。つまり、現在のWebサーバーとブラウザのような静的なシステムではなく、相互に分散オブジェクトを利用して、インタラクティブに作業を進めるには、新しいシステムが必要になってくる(リモートアプリケーションとのインタラクティブ性)。

 Microsoftでは、Windows OS上の分散オブジェクトとしてCOM(Component Object Model)を開発した。さらに、ネットワーク上のほかのコンピュータにあるアプリケーションとの通信には、COMをベースとしたDCOM(Distributed Component Model)を利用する。同じような仕組みとしては、Object Management Groupが策定したInternet Inter-ORB Protocol(IIOP)もある。

 DCOMにしても、IIOPPにしても、イントラネットなどの閉じられた環境で利用するには、便利なシステムだが、インターネットなどの不特定多数のユーザーがアクセスしている環境においては、セキュリティ面で問題になる。そこで、多くの企業では、インターネットとイントラネットの間に、セキュリティを高めるため、ファイヤーフォールを設置している。ファイヤーウォールの存在が、DCOMやIIOPの通信をシャットアウトするため、結局インターネットを経由した分散オブジェクトの利用を妨げてしまう。

 このため、Microsoftは、IBMやLotusなどとともにhttpベースの分散オブジェクトプロトコル「SOAP(Simple Object Access Protocol)」をW3Cに標準規格として提案した。

 SOAPの特徴は、分散オブジェクトのプロトコル部分にXMLを利用していることだ。これにより、ファイヤーウォールが障壁とならないポート80を使用することになる。また、SOAPのコマンド自体はXML形式のため、SOAPはセキュリティの高いSSL(Secure Sockets Layer)プロトコル上に乗ってアクセスすることができる。

 Microsoft.NETは、XMLとインターネット上で分散オブジェクトをコントロールするSOAPという2つのテクノロジーがベースになって構築されている。そして、Microsoft.NET構想を構築する実際のアプリケーションやサービスとしては、Microsoft.NETプラットフォームがある。Microsoft.NETプラットフォームでは、さまざまなサービスと新しいユーザーインターフェイスが用意されている。


■Microsoft.NETプラットフォーム

Windows Platformから.NET Platformへの移行図

 現在のWindowsパソコンは、Windows OS(API、ファイルシステム、ユーザー・インターフェイス)、アプリケーションによって構築されている。しかし、Microsoft.NETでは、OSとアプリケーションのアーキテクチャ自体を大きく定義しなおしている。

 Microsoft.NETでは、OSやアプリケーションのレイヤを大きく変革しようとしている。Microsoft.NETプラットフォームは、ハードウェアはPCだけでなく、携帯電話やPDAなどさまざまなデバイスが対象になる。その上に.NET Building Block Servicesという、さまざまプログラム・モジュールが提供されている。これらのモジュールは、クライアント側で動作するだけでなく、企業のサーバー、インターネットを経由したサーバー上で動作する分散オブジェクトの集まりともいえるだろう。



.NET Building Block Servicesは、大きく7つの分野が提供されている。

 これらの機能をサポートしたクライアントOS Windows.NET(コード名:Whisler)は、最初のバージョンが2001年にリリースされる。また、これらの機能は、パソコンだけなくさまざまなデバイスでも提供される。これにより、互換性のあるサービスがPDAや携帯電話などでも利用できるようになる。

 また、サーバー側のシステムとしては、2000年にWindows 2000サーバーに対応した、Exchange 2000サーバー(メッセージングサーバー)、SQL Server 2000サーバー(データベース)、Application Center 2000(サーバーファームの管理ソフト)、BizTalk Server 2000(XMLデータをほかのコンピュータと交換する仕組み)、Commerce Server2000(電子商取引)、Host Integration Server2000(メインフレームとWindows 2000サーバーを接続するためのソフト)、Internet and Security Acceleration Server2000(プロキシーサーバー)などがパッケージ化された「Microsoft Servers」(開発ツールのVisual Studio6.0と合わせてWindows DNA 2000)という名称で提供される。さらに2002年にはMicrosoft.NETに対応したサーバー・アプリケーションや開発ツールを含む「Microsoft DNA.NET」へと進化していく。


■Microsoft.NET User Experience(ユーザーインターフェイス)

新UIの解説
 Microsoft.NETでは、PCだけでなく、PDAや携帯電話など、さまざまなデバイスで統合的にデータが扱える。データに関しては、XMLにより、どのデバイスででも、デバイスの表現力にあった形で表示できる。例えば、PC上ではGUIを使ってスケジュール帳を表示するが、テキスト表示しかできない携帯電話では簡易化して表示される。

 また、携帯電話のようにキーボードが利用できないデバイスのために、ユーザーインターフェイスがキーボードとマウスから、音声認識や手書き文字認識に変わる。自然言語処理をすることで、人と人が話しているのと同じ感覚(Natural Interface)で各デバイスが利用できるようにする。つまり、一昔前にAppleがエージェントという概念で実現しようとした機能をWindows上に構築しようというのだ。


 例えば、PCに電子メールを呼び出し、来た電子メールを読み上げたり、音声で電子メールを書いたり(音声認識によりテキスト化)することができる。それも、現在の音声認識ソフトのように、Windowsのコマンドをしゃべるって入力するような不自然なものではなく、秘書に対して仕事を依頼するように話せば自動的に処理してくれる。

Universal Canvas

 もうひとつ新しいユーザーインターフェースは、Universal Canvasだ。Universal Canvasでは、XML形式のデータをユーザーの望むままに編集して表示することができる。基本的には、現在Microsoftで提供されているデジタルダッシュボードの進化型と考えることができる。例えば、スケジュール帳やカレンダーはローカルのサービスで表示し、画面の一部に表示されているニュースのヘッドラインは、インターネット上のニュースサイトからXML形式で取り込んできたものとなっている。また、社内ネットにあるデータベースに接続して、売上や在庫のデータなどもリアルタイムに表示することができる。アプリケーションのGUIは定型的なものではなく、ユーザーが自由に変更/追加できる。

 Microsoft.NETは、このようなMicrosoft.NETプラットフォームの上にMicrosoftが提供するサービスやサードパーティのサービスによって構成される。


 次回はMicrosoft.NETのプロダクツを解説し、Microsoft.NETの実現時期を考えます。なお、記事中の写真はMicrosoftの報道用写真とWebキャストの画面をキャプチャして使用しています。(編集部)


□Microsoftのホームページ
http://www.microsoft.com/
□ニュースリリース
http://www.microsoft.com/presspass/press/2000/Jun00/ForumUmbrellaPR.asp
□関連記事
【6月23日】米Microsoft、ローカルとネットを組み合わせる「Microsoft.NET」を発表(INTERNET Watch)
http://www.watch.impress.co.jp/internet/www/article/2000/0623/msnet.htm

(2000年6月29日)

[Reported by 山本 雅史]


【PC Watchホームページ】


ウォッチ編集部内PC Watch担当 pc-watch-info@impress.co.jp