WAP(Wrist Audio Player)に比較して確実に2まわりは小さなリストカメラ。毎朝どちらをして行くか悩んでいる。最後の手段は両腕に時計しかないか…… |
小さなデジカメや小さなMP3プレイヤー、小さなモバイルPCの必然性は一体どこにあるのだろうか。人間の手の大きさや、見える文字のサイズ、聞こえる音の大小は、多少の個人差があっても、過去から現在まで、国や人種を越えても同じ人類である限り大差は無い。しかし、国土の大きさや、気候、生活習慣、移動の手段などの違いは人間のライフスタイルに少なからず影響を与え、国によって自然と求めるサイズや機能が異なってくるのが普通だ。
一見、ごく普通のデジタル腕時計だ。アラームやストップウオッチ機能もある |
しかし、我々日本人は多少事情が異なる。平均的に小さく器用な手を持ち、多くのビジネスピープルは車では無く電車やバスで移動し、ほとんどの場合、それらの交通機関は混み合っている。ケータイ電話にしろ、ポータブルMDプレーヤーにしろ、デジタルカメラにせよ、小さなモノが大好きだ。また男性、女性を問わず、ある程度の年齢になってもポストペットやポケットボード等が好きで、見方によれば「欧米人に比較して成人度が低い」と考えられてもしかたがない要素がある。筆者もご多分に漏れず小さなガジェットが大好きな方だ。だからWAPもリストカメラも発売日にゲットしたのは言うまでもない。
画面の半分づつシャッターを切れるツーショット撮影など面白い機能も満載だ |
撮影レンズ(左側)と赤外線ポート(右側)が並んで配置されている。まさにディックトレーシーの世界だ |
モバイルPCの内蔵赤外線ポートはサポートされない。そのため、オプションの赤外線通信アダプターが必要となる |
ワイアレスでアップロードされた写真は順次画面に表示される | サムネイル表示は3サイズあり、BMP、JPG画像をハンドルできる。一般的な画像整理ブラウザーと考えても、シンプルながら良くできている |
リストカメラWQV-1は、通常のデジタル腕時計として、カレンダー、時刻表示やアラーム機能、ストップウオッチ機能を標準搭載し、カメラとしての撮影モードには、ごく普通に撮影する「ノーマルモード」以外に、画面を2分割し連続して撮影した左右の2枚を一枚に合成する「ツーショットモード」、画像を撮影時からモノクロ2値で撮影する劇画風の「アートモード」など、何れか任意の撮影モードを選択出来る。また、撮影済みの写真画像に、被写体の名前や電話番号など、最大24文字までの撮影データやメモ等を入力してビジュアルデータバンクとして活用することも可能だ。
任意の画像にコメントを付け加えたり、明るさやコントラスト、シャープネス、色相、彩度を変更できる |
撮影画像をパソコンに転送するには、リストカメラの撮影レンズのすぐ脇にある内蔵赤外線ポートを使用する。転送レートは標準の115Kbpsではあるが、なぜかWindows 98でサポートされ、ごく一般的なモバイルPCに標準搭載されている赤外線ポートを利用することができない。そのため、赤外線ポートが標準でサポートされているモバイルPCでさえ、オプションの「リストカメラ用PC接続キット」(7,000円)を別途購入し、PC内蔵の赤外線ポートではなく、わざわざシリアルポート接続の「赤外線通信アダプター」を経由してデータ転送することとなる。オプションキットの7,000円という出費はなんとか我慢できるとしても、本来、赤外線ポートを搭載しているモバイルPCでも、それを使用せずに、新たに別の「赤外線通信アダプター」を必要とするのは理解に苦しむところだ。
他のデジタルカメラで撮影した画像等をエディット、最適化してリストカメラ側に送り出すことも出来る |
WQV-Linkの設定画面には「ラップトップ、デスクトップPCのビルトイン赤外線ポート」という項目もあるのだが…… |
本来ならモバイル環境で、リストカメラの撮影データを即座に携帯しているモバイルPCに転送可能なのだが、そういう活用を前提にするならば、普段からモバイルPCとは別に「赤外線通信アダプター」も常時携帯しなければならない。9ピンのレガシーなシリアルポートを標準で搭載しているモバイルPCもどんどん減り、最悪の場合は、「USB→シリアル変換アダプター」の準備も考慮しなければならない。
しかし、何故かオプションの接続キットに含まれるリンクソフト「WQV-Link」のオプション設定画面には、同社の専用赤外線アダプター以外にも、「エクステンドシステムのJetEye」等と並んで「ラップトップ、デスクトップPCのビルトイン赤外線ポート」など全部で5種類の外部連携ポートをサポートしているかの様な設定画面がある。しかし実際に「ラップトップ、デスクトップPCのビルトイン赤外線ポート」を選択しても、撮影データの転送は不可能であった。メーカー保証では無いが、実際には動作する場合などに、ユーザーの使い勝手を優先考慮してこのような手段が取られるケースは他社でもよく見受けられるが、今回のケースはどうも例外らしい。
既に、カシオでは、リストカメラの次機種の製品企画などに入っている頃だろう。次機種は、まずカラー対応の、今より少し高画素なリストカメラだとは思うが、間違いなくモバイルPC内蔵の標準的な赤外線ポートのサポートと、Palm、WorkPad等PDAへのデータ転送サポートを確実に行なってほしいものだ。「リストカメラ WQV-1」は実用一点張りで面白い商品の少ない昨今、アイデア満載でとても面白い商品だと思うが、最後の詰めが甘く感じられるのが残念でならない。
□カシオ計算機のホームページ
http://www.casio.co.jp/
□製品情報
http://www.casio.co.jp/ww/WAP/index.html
□関連記事
【1月6日】カシオ、世界初の腕時計型デジタルカメラと腕時計型MP3プレーヤー
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/20000106/casio.htm
(2000年6月26日)
[Text by ゼロ・ハリ]