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第45回 : PDAを捨てたあとのPDA



 先週、ほとんどPDAを持ち歩かなくなってしまった、なんて話を書いたら、読者ではなくPDAを作っている知り合いから、いくつかメールをいただいた。将来、携帯電話とPDAの差がどんどん小さくなっていくだろう、という話では一致しているのだが、どちら側からのアプローチが正解か? という部分では意見が分かれた。

 ただあくまでも個人的なコラムの視点から見ると、電話機の形をしていない電話機を使いたいとは思わないだろうなと思うし、実際自分でも使いたくはない。携帯電話のスクリーンは小さすぎる? いやPalmシリーズと比べてもそうは思えない。
 この連載ではモバイル向けのポータルサービス(今で言えばモバイル向けASPとなるか)や携帯電話の話を多くしてきたのだが、徐々に増え始めた個人でも利用できるモバイル向けネットワークサービスは、もう充分に実用的なレベルに達していると感じるようになってきた。

 先週はスケジュールの閲覧はできないがiモードに統一していると書いたけれども、iモードだけでスケジュール閲覧することをあきらめたわけではない。ピー・アイ・エムが試験運用を開始していた個人情報管理のASPの利用を検討しているからだ。発表当初は、まだ機能的に問題があるかな? と思っていたのだが、度重なる機能アップで非常に使えるサービスになってきた。

■ PIMをASPからサービスされる時の問題

 Webで提供される電子メールやPIMのサービスは、機能やユーザーインターフェイスなどが、使いやすい、使いにくい、できる、できない、といった視点で問題が出る場合があるが、その前のごく基本的な部分で問題が生じる場合がある。

 僕が特に問題と思うのが相互運用性だ。他にもセキュリティに関する不安などもあるだろうが、こちらは利用者の運用にも関連することなので、ここではひとまず置いておこう。ここでいう相互運用性とは、PCで使っているソフトウェアとのデータ互換性である。たとえばマイクロソフトのOutlookを使っている人なら、Outlookに対応した様々な同期ソフトを利用でき、またそこで管理している住所データなどを別アプリケーションで簡単に利用することもできる。

 しかしASPで提供されるアプリケーションの多くは、単独では充分に利用価値のある機能を実現しながら、従来持っているデータを移行する手段が無かった。また、いったんASPで運用し始めたデータを、別のアプリケーションで利用したい時にも解決策があるものが少ない。
 あるASPを利用していたとして、そのASPを利用し続けるのであれば、相互運用性の低さには目をつむれる部分もあるのだが、より高品質なサービスが別にできれば、そちらに移行したいと思うかもしれない。企業向けのASPであれば、ある程度はカスタマイズや特別対応などで対応できるかもしれないが、個人向けとなるとそのような対応は難しい。
 そんなわけで、インターネット上のPIMサービスには注目をしてきたのだが、実際に移行するところにまでは至っていなかった。


■ 今夏にPC用PIMとの同期が可能に

DoSule!
 僕が前述のピー・アイ・エムが提供するPIMサービス「DoSule!」に期待を寄せているのは、そうした相互運用性が解決されそうだからだ。その上、2月の試験運用開始から何度かの機能アップを果たし、機能、使い勝手の面でもかなり満足できるサービスになってきたからだ。しかも、サービスは無料というのだから、現在のところ個人ユーザーには最適なASPだと思う。

 DoSule!を簡単に紹介すると、Webブラウザを用いてスケジュールや住所録の管理を行なえるサービス。Webメール、メーリングリスト管理や他のDoSule!とのコミュニケーションに使える掲示板、共有フォルダ、ブックマークなどの機能がある。共有スケジュールを設定することで、グループスケジューリングを行なうことも可能だ。
 さらにiモードにも対応しているため、DoSule!で管理している情報に携帯電話からアクセスできる。現在試験運用中のDoSule!は、4月7日から正式運用を開始し、その時点でWAP対応することでEZweb、EZaccessでも利用可能になる。J Sky Web向けのサービスも検討中とのことだ。

 他メンバーとの情報共有機能は別としても、スケジューラや住所録といったデータだけでもDoSule!で管理しておけば、いつでも携帯電話でそれらを参照できることになる。僕の目的にはピッタリのサービスというわけだ。
 問題は前述の相互運用性である。が、現状(βサービス)でもある程度解決することが可能だ。DoSule!はCSVファイルによるデータ交換機能があり、CSVファイルのアップロードをすることでサーバに一括でデータ登録を行なうことができるため、容易にデータの移行を行なえる(ただし現在はOutlook 2000が出力するCSVファイルのみ対応)。
 さらにDoSule!で管理しているデータをCSV形式でダウンロードする双方向のデータ交換も行なえるので、DoSule!のデータを別のアプリケーションで利用したい場合や、DoSule!の利用をやめて別のアプリケーションで管理を行ないたい場合にも柔軟に対応できる。
 ただ、我が家の場合はExchange Serverを用いてほとんどのデータ管理を行なっているため、そう簡単に移行するわけにはいかない。だが、ピー・アイ・エムと電脳隊の合併に合わせたタイミングで、OutlookやLotus OrganizerなどとDoSule!の間で同期を行なうソフトを今年夏に無償配布するのだという。

■ マルチクライアント対応に期待

 というわけで、将来はOutlookとDoSule!を同期しながら使っていこうとの方針を固めたのだが、最終的にDoSule!を使おうと決めた要因はOutlookとの同期以外にももうひとつある。それはDoSule!がクライアントに依存しないコンテンツを指向していることだ。

 Webブラウザだけに対応したASPは数多いし、その中の何割かはiモードにも対応、もしくは対応を予定している。しかし、WAPも同時にサポートとなると、その数は激減するのが現状だ。
 現在、僕はiモードを使っているのだから、iモード対応だけでも問題はない。しかし、この先どのような端末を使いたいと思うかは予想できない。ピー・アイ・エムの素早い対応を見ていると、システム的に同じ情報から複数のフォーマットを出力する仕組みの部分に柔軟性があるように思える。もちろん、どんなフォーマットに対応するかは、ピー・アイ・エム次第だが、柔軟そうに見える姿勢に可能性を感じてDoSule!を選ぼうと思ったわけだ。

 またiモード自身も進化を続ける。来年にはW-CDMAサービスが開始されるが、それ以前、この秋にもJAVA対応端末が登場すると言われている。DoSule!では、JAVA対応端末への対応も表明している。情報端末としての携帯電話に付加価値を付けるサービスとして、今後もDoSule!の機能アップに期待したい。

□DoSule!のホームページ
http://www.dosule.com/

[Text by 本田雅一]


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