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第51回 : 出張用ノートPCを選ぶ(2)



 実はこのテーマで書き始めた直後、海外出張に行ってきた。携えて行ったのは昨年から引き続き使用しているThinkPad 570。壊れたときの用心のため、サブマシンとしてコンパックのARMADA M300も持ち込んだ。

 ずいぶんマイナー? そう、特にM300はマイナーかもしれない。ThinkPad 570にしても、560時代ほどユーザーの支持はないし、そもそも先週条件として挙げたDVD/CD-ROMドライブ内蔵といった条件を満たしていない。理由は簡単。昨年の前半は、まだPCを普段の仕事で持ち歩いていたからだ。さすがに電車での移動が中心の利用スタイルでは、CD-ROMドライブ内蔵の機種を使うのは辛い。
 なので、新しく考えた条件に近いノートPCは、我が家には存在していない。今回、新たに製品を選ぶにあたって、少々斬新な製品でもすでに所有している製品と性格がかぶるものは除外した。たとえば16日に発表されたVAIOノートSRは、薄型・軽量とバッテリーライフの両立を果たしたという意味で注目すべき製品だが、個人的な購入のリストには加えていない。

■ 堅実だが少々高いThinkPad T20

 BIOSアップデートやユーティリティ類の配布など、IBMの新OSに対する対応が素早いことは、これまでにも充分経験してきた。ThinkPad 560、570いずれも新OSへの移行は非常にスムース。廉価なモデルでは、これまでのThinkPadに対する品質とサポートの神話が崩れてきている、といった意見も出始めているが、それでもこのブランドに対する信頼感は高い。Windows 2000のサポートも問題ない。

 T20はDVD/CD-ROMドライブ内蔵モデルのThinkPad 600後継モデルで、ウルトラポートは将来Bluetoothにも対応することがアナウンスされているほか、ドライブのホットスワップにも対応する。詳しい仕様はIBMのWebサイトを見ていただくとして、出張に利用するビジネス向けのノートPCとして、かなり不満のないスペックだ。4時間駆動の標準バッテリ駆動時間を実現しながら、ウェイトセーバーベゼル使用時には2kgをわずかに上回る程度の重さに収まっている点も特筆できる(IBMホームページ記載の重量はDVD/CD-ROMドライブ内蔵時の重さ)。

 ThinkPad T20を使っておけば、まず大きな失敗はないだろう。しかし14.1インチディスプレイパネルを収めるため、全体的に大きすぎるのも(長所の裏返しの)欠点といえるかもしれない。また、最低でも30万円台後半、メモリなどのオプションを購入すれば40万円クラスの買い物になるのが問題と言えるかもしれない。


■ 薄型で低価格なARMADA M700

 企業向けモデルのサポートは、コンパックも大いに期待できる。コンパックの場合、米国のWebサイトに日本語版ユーティリティなどが登録されている場合もあり、またBIOSなどは英語版をそのまま利用すればいい。なので、ThinkPadと同列にARMADAも扱ってみた。Windows 2000インストールモデルはないが、ユーティリティを含めインターネットから対応モジュールをダウンロードできる。
 DVD/CD-ROMドライブを内蔵した比較的軽量なA4モデルというと、設計が少し古いARMADA M700しか該当機種がない。最新のThinkPadと比較すると新味に欠けるのは事実だが、2.8cmの厚さはこのクラスではかなり薄い。

 ただし、重さはThinkPadより重いのにバッテリーが2時間程度のスペックは不満が残る。また、CPUも一世代前のラインナップだ。このサイズ/重さならせめて3時間以上は欲しいところだ。その分、価格もこなれているようでオプションを含めて30万円を超える程度に収めることができる。


■ Windows 2000をフルサポートした新VAIOノートXR

 斬新なスタイルで人気のソニーVAIO XRが、Windows 2000対応モデルを発表した。主な特徴は昨年から変更なしだが、独自のソフトウェアを含めWindows 2000にフル対応した点には注目したい。これまでのソニーのサポートスタイルからして、新OSに対して先行してサポートモジュールを提供することは考えにくいが、これだけちゃんとした形でWindows 2000に対応してくれれば、現時点での不満はない。

 ただし、装備が豪華なためか、それとも機能を考えれば比較的低い価格設定(Pentium III 600MHzモデルで予想小売価格33万円程度。メモリを足しても35万円程度に収まる)のためか、重量は少々重い。ウェイトセーバーベゼル使用時で2.8~2.7kgの重さは、いくら毎日の移動時に持ち歩かないとは言え少々辛い。それでいて、バッテリー駆動時間はThinkPad T20より短いのだ。

 LANインターフェイスを内蔵していないのも、個人的にはマイナスポイント。最近のトレードショウではプレスワーキングルームにイーサーネット接続を用意している場合もあるからだ。


■ もっとも軽量なCD-ROM内蔵機、Let's note M1

 松下電器産業のLet's note M1は、ベースとなっているLet's note A/77の登場からかなりの期間が経過しているにも関わらず、現在でももっとも軽量なCD-ROM内蔵モデルの座を維持している。B5ファイルサイズというよりは、レターサイズクラスのきょう体は17ミリピッチのキーボードながら、タッチはしっかりとしており、慣れれば大きな違和感なく原稿を入力できる。
 ウェイトセーバベゼルを使えば1.5kg、セカンドバッテリーを搭載しても1.8kgにまで届かない。セカンドバッテリー搭載時には6.2時間のバッテリー駆動を実現する。携帯性のみを考えるのであれば、本機を上回る製品を僕は思いつかない。しかもコンパクトながらモデムとLANインターフェイスの両方を内蔵している。
 Pentium III 500MHzを搭載する上位機種のLet's note M1ERはすでに流通在庫のみの販売となっており、近く仕様のグレードアップが行なわれる可能性が強いが、在庫があるならば30万円を切る程度の価格で入手できる。

 問題はWindows 2000への対応だ。Let's noteシリーズは旧機種を除き、Windows 2000への対応BIOSなどを利用可能だが、パッドのユーティリティがWindows 2000に対応していない。スクロール機能などはあきらめるとしても、キー入力時の誤タップを抑制する機能が使えないのが難点。ソニーのVAIOシリーズがWindows 2000にフル対応した後だけに、間もなく発表されると思われる夏モデルに期待したいところだ。


■ 機能と性能のThinkPad T20か、携帯性のLet's note M1か

 今回ピックアップしなかった機種の中にも、検討すべきモデルは存在するかもしれない(なぜアレが入っていないといったお叱りの声が聞こえてきそうだ)が、現在のところ目に留まったものということで、頭の中にあるモデルを挙げてみた。当然ながら機能的に満足のいく最新製品は高価であり、発売から時間を経過したモデルは値頃感がある。

 また海外ベンダーの製品は利用事情を反映してか、DVD/CD-ROMを内蔵したA4以上のサイズで携帯性を狙った製品があるのに対し、国内ベンダーの製品は携帯性というとDVD/CD-ROMドライブを内蔵しないものが多い。A4以上のクラスは、国内では省スペースデスクトップ機を意識した製品が多い。Let's note M1は数少ないオールインワンのモバイル機だ。もし、DVD/CD-ROMドライブ内蔵という枠を外したならば、もっと多くの機種をピックアップできたと思う。

 もしお金に糸目を付けないのであれば、迷うことなく僕はThinkPad T20を選択するだろう。質実剛健で遊びのない機種だが、そこには欲しいものが全て揃っている。具体的なスケジュールなどは見えてこないものの、BlueToothに対応可能な点も気に入っている。決して軽量で、楽々持ち運びできる機種ではないが、14.1インチのディスプレイやデスクトップ機並のキーボード、4時間のバッテリー駆動時間(海外サイトでの実験では3時間40分利用できたとの報告もある)などを考えれば、むしろ非常に軽量であると評価したい。

 一方、Windows 2000対応を含め、間もなく発表されるだろう夏モデル次第ではLet's note M1シリーズも視野に入れたい。キーボードサイズや配列の点で、先週挙げた理想から離れてしまう機種だが、圧倒的に優れた携帯性は捨てがたいものがある。機能的には平凡だが、サイズや軽さを考慮すると非凡な存在であり、ThinkPad T20と共に(現在のところ)抜きんでた印象を持っている。

 ただ、もう少し時期的に待ちたいという気持ちも同時にある。というのも、ThinkPadシリーズは、前回同様にしばらく後から低価格な個人向けモデルを追加する可能性があり、Let's note M1シリーズはそろそろ新モデルが出てくると思われるからだ。

 いくら優れた製品でも、仕事に使う以上、自分の仕事に対して効果をもたらしてくれる以上の予算は割きたくない。今回選んだ2機種の仕様を基準に、価格の動きを見ながら“ボーナス商戦後”にノートPCの買い換えを実行に移してみたい。

[Text by 本田雅一]


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