速報:GeForce2 GTS搭載ビデオカードがついにデビュー!
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NVIDIAのGeForce 256は、昨年登場したビデオチップの中で名実ともにトップの性能を誇るチップであり、登場から半年以上が経過した現在でもその存在を脅かす製品は姿を現していない(ATIのRADEON 256など気になる製品も発表されたが、まだ市場に物は出回っていない)。リードをさらに広げるべく、NVIDIAが投入したのが、GeForceを超えるGeForceとして期待されるGeForce2 GTSである。チップの発表からまだ2週間程度しか経っていないが、秋葉原でGeForce2 GTS搭載ビデオカードの発売が開始されたので、早速その真価を検証してみたい。
●GeForce2 GTSとは?
0.18μmプロセスルールでの製造によって高いクロックでの動作を実現している |
GeForce2 GTSについては、後藤弘茂氏の記事「NVIDIA、“NV15”ことGeForce2 GTSを発表 ~レンダリング性能はGeForceの3倍~」が詳しいのでそちらを参照していただきたいが、GeForce 256と比較すると、
1.レンダリングパイプラインが強化され、1つのパイプラインで2つのテクスチャを貼れるようになった
2.コアクロックが高速化された(120MHz→200MHz)
という2点が改良されたことで、GeForce 256に比べてテクセル性能は約3倍、ピクセルフィルレートとジオメトリ演算性能はともに約1.6倍に向上している。テクセル性能とは、1秒間でどれだけのテクスチャを貼り込めるかということだが、GeForce2 GTSでは1.6Gテクセル/秒という高い性能を実現している。GeForce2 GTSのGTSは、Giga Texel Shaderの略で、ギガテクセルクラスの性能を持っていることを意味する。
ビデオメモリは、最大128MBまでサポートしている。GeForce 256では、従来のSDR SDRAM/SGRAMを搭載した製品と、より高速なDDR SDRAM/SGRAMを搭載した製品の両方が登場していたが、GeForce2 GTSでは基本的にDDR SDRAM/SGRAMを利用するように設計されている。
●最初に登場した台湾Leadtek ResearchのWinFast GeForce2 GTS
GeForce 256搭載ビデオカードは、カノープスやクリエイティブメディア、エルザなどの大手ベンダーから台湾の中堅ベンダー、日本ではあまり知られていないベンダーまで数多くの製品が登場したが、GeForce2 GTSの場合もそれぞれのベンダーからさまざまな製品が登場することになりそうだ。既に前述の3社(カノープスやクリエイティブメディア、エルザ)がGeForce2 GTS搭載ビデオカードの出荷をアナウンスしたほか、ASUSTeKなどからも登場する予定だ。その中でも真っ先にアキバの店頭に並んだのが、Leadtek ResearchのWinFast GeForce2 GTSである。GeForce2 GTS搭載ビデオカードは、ビデオメモリを32MB実装した製品と64MB実装した製品に大別できるが、今回入手したWinFast GeForce2 GTSは、32MB版だ。WinFast GeForce2 GTSは、非常に巨大なヒートシンク(ファン付き)がチップに装着されていることが、まず目を引く。GeForce 256も発熱が大きかったためファン付きのヒートシンクは必須であったが、WinFast GeForce2 GTSに採用されているヒートシンクはそれにもまして大きい。プロセスルールがシュリンクされたとはいえ、コアクロックは約1.6倍に向上しているので、GeForce2 GTSの発熱もかなりのものだと推測される。しかし、これだけ大きなヒートシンクが装着されているのなら、冷却を心配する必要はないだろう。
ビデオメモリとしては、InfineonのDDR SGRAM「HYB39D32322TQ-6」が採用されている。メモリチップ自体は、DDR版GeForce 256搭載ビデオカードで多く採用されているものと同じだ。
Leadtek ResearchのWinFast GeForce2 GTS。チップには非常に大きいヒートシンクが装着されている | メモリチップには、Infineonの32MbitDDR SGRAM「HYB39D32322TQ-6」が採用されている |
●DDR版GeForce 256と比べて最大1.44倍のパフォーマンスを発揮
それでは、早速性能を検証してみることにしよう。ビデオドライバは、製品に付属しているもの(バージョン4.12.01.0384)を利用した。なお、テスト環境はいつもと同じく、以下の通りである。
【テスト環境】
CPU:Pentium III 700MHz
マザーボード:ABIT BE6
メモリ:128MB SDRAM(PC100 CL=2)
ハードディスク:Western Digital Caviar AC14300
OS:Windows 98 Second Edition+DirectX 7.0a
(1)2D描画性能
2D描画性能の測定にはいつもと同様に、Ziff-Davis,Inc.のWinBench 99 Version 1.1に含まれるBusiness Graphics WinMark 99とHigh-End Graphics WinMark 99を利用した。結果は、下の表にまとめたとおりである。
2D描画性能に関しては、昨年前半に登場したRIVA TNT2やMGA-G400(Millennium G400)以降、ほとんど性能向上はみられていない。どのチップでも、既に十分すぎるほどの性能を持っているともいえる。GeForce2 GTSの2D描画性能は、2D描画性能の高さで定評のあるMillennium G400(MGA-G400)と互角以上であり、全く不満はない。
【WinBench 99 Version 1.1】
1,024x768 16bpp | 1,024x768 32bpp | |||
---|---|---|---|---|
Business Graphics WinMark 99 | High-End Graphics WinMark 99 | Business Graphics WinMark 99 | High-End Graphics WinMark 99 | |
WinFast GeForce2 GTS | 298 | 841 | 299 | 833 |
3D Blaster GeForce Pro | 295 | 838 | 293 | 830 |
3D Blaster GeForce | 294 | 835 | 285 | 827 |
Millennium G400 | 296 | 848 | 287 | 831 |
Viper II | 262 | 580 | 235 | 659 |
RAGE FURY MAXX | 292 | 829 | 276 | 812 |
(2)DirectX 7対応ベンチマークプログラムによるDirect3D描画性能
次に、最新のDirectX 7環境に対応しているベンチマークプログラムを用いて、Direct3D描画性能を測定してみた。ベンチマークプログラムとしては、MadOnion.Comの3DMark2000およびZiff-Davis,Inc.の3D WinBench 2000を用いた。3DMark2000は、ハードウェアT&Lエンジンを内蔵しているチップの場合、デフォルトでハードウェアT&Lエンジンを利用するようになっているが、比較のためにハードウェアT&Lエンジンを使わずに、ソフトウェアによってT&L処理を行なった場合でも計測してみた。
3DMark2000の結果は表を見れば一目瞭然だが、今まで最速であった3D Blaster GeForce Pro(GeForce 256:DDR SGRAM採用)と比べても、格段に高い値を出している。コアクロックが高速になっているのだから性能が向上するのは当たり前ともいえるが、数値は最大1.44倍にもなっているので、速度にとことんこだわるユーザーなら買い換えを考慮する価値はある。なお、GeForce 256ではCoppermineコアの高速なPentium IIIを使っている場合、ソフトウェアでT&L処理を行なわせたほうが、3DMarkの値が高くなることもよくあったが、GeForce2 GTSでは、ハードウェアT&Lエンジンの処理性能が向上したことで、高速CPUでもハードウェアT&Lエンジンを利用したほうがよい結果が得られるようになっている。
3D WinBench 2000の結果も3DMark2000と同様に、今までの記録を大幅に上回っている。3D描画性能に関しても、期待通りの性能を発揮しているといえる。
【3DMark2000/3DMark】
1,024x768 16bpp | 1,024x768 32bpp | 1,280x1,024 16bpp | 1,280x1,024 32bpp | |
---|---|---|---|---|
WinFast GeForce2 GTS (HW T&Lオン) | 5,485 | 4,398 | 4,678 | 3,009 |
WinFast GeForce2 GTS (HW T&Lオフ) | 4,534 | 4,282 | 4,400 | 3,138 |
3D Blaster GeForce Pro | 4,539 | 3,481 | 3,247 | 2,188 |
3D Blaster GeForce | 3,918 | 2,651 | 2,723 | 1,619 |
Millennium G400 | 2,718 | 2,287 | 1,864 | 1,369 |
Viper II | 2,210 | 1,886 | 1,427 | 1,136 |
RAGE FURY MAXX | 3,511 | 3,131 | 2,599 | 2,190 |
【3D WinBench 2000/3D WinMark 2000】
1,024x768 16bpp | 1,024x768 32bpp | 1,280x1,024 16bpp | 1,280x1,024 32bpp | |
---|---|---|---|---|
WinFast GeForce2 GTS | 126.0 | 85.9 | 89.2 | 56.7 |
3D Blaster GeForce Pro | 92.3 | 70.7 | 63.1 | 42.5 |
3D Blaster GeForce | 78.9 | 52.3 | 52.5 | 31.0 |
Millennium G400 | 46.4 | 33.2 | 31.1 | 20.0 |
Viper II | 61.3 | 50.1 | 41.4 | 30.8 |
RAGE FURY MAXX | 60.3 | 51.1 | 42.2 | 34.2 |
(3)DirectX 6.1対応3Dゲームにおける3D描画性能
DirectX 7が登場したとはいえ、まだまだDirectX 6.1ベースのゲームソフトも多い。そこで、DirectX 6.1対応ゲームである「Turok 2:Seeds of Evil」を利用して、3Dゲームにおける描画性能を計測してみた。
Turok 2では、GeForce2 GTSの内蔵ハードウェアT&Lエンジンは利用されないので、3DMark2000や3D WinBench 2000ほどの性能差はあらわれていないが、それでもやはり最速であることには変わりはない。1,280×1,024ドット32bitカラーでも70フレーム/秒を超える速度を実現している。一昔前と比べると、性能向上には驚くばかりだ。
【Turok 2】
1,024x768 16bpp | 1,024x768 32bpp | 1,280x1,024 16bpp | 1,280x1,024 32bpp | |
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WinFast GeForce2 GTS | 83.4 | 77.9 | 80.5 | 71.1 |
3D Blaster GeForce Pro | 80.3 | 78.9 | 77.5 | 60.1 |
3D Blaster GeForce | 79.1 | 70.0 | 73.3 | 41.9 |
Millennium G400 | 72.7 | 68.6 | 58.9 | 43.9 |
Viper II | 正常動作せず | 正常動作せず | 正常動作せず | 正常動作せず |
RAGE FURY MAXX | 80.0 | 80.0 | 74.3 | 62.5 |
(4)OpenGL対応3Dゲームにおける3D描画性能
最後に、OpenGL対応3DゲームソフトであるQuake III Arenaのデモ版「Quake III Arena Demo 1.09」を利用して、OpenGL環境での3D描画性能を測定してみた。OpenGL環境では、GeForce2 GTSの売りであるハードウェアT&Lエンジンの威力がいかんなく発揮される。こちらも、従来の最高成績であった3D Blaster GeForce Proの結果を大幅に上回っている。最低30フレーム/秒、できれば40~50フレーム/秒程度のフレームレートがあれば、3Dアクションゲームを快適にプレイすることができるが、GeForce2 GTSのパフォーマンスなら、1,280×1,024ドット32bitカラーという高解像度多色環境でも快適に遊ぶことができる。
【Quake III Arena】
1,024x768 16bpp | 1,024x768 32bpp | 1,280x1,024 16bpp | 1,280x1,024 32bpp | |
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WinFast GeForce2 GTS | 102.2 | 75.4 | 76.7 | 41.5 |
3D Blaster GeForce Pro | 82.9 | 60.7 | 52.5 | 32.6 |
3D Blaster GeForce | 70.1 | 40.9 | 38.7 | 23.0 |
Millennium G400 | 39.7 | 32.9 | 24.9 | 18.8 |
Viper II | 56.4 | 48.5 | 35.9 | 28.6 |
RAGE FURY MAXX | 59.8 | 52.3 | 40.4 | 33.2 |
「スピードランナー」でコアクロックとメモリクロックを変更することができる |
●NVIDIAは今年も快進撃を続けるのか?
今回のテストでは、GeForce2 GTSの性能の高さをはっきりと示す結果が出た。GeForce 256登場時の驚きがまた蘇ってきた感覚である。実売4万円程度という価格は、ビデオカードとしてはかなり高価な部類に属するが、ハイエンドゲーマーなど3D描画性能をとことん追求したい人には魅力のある製品であろう。RIVA TNT以降高性能ビデオチップベンダーとして、確固たる地位を築いたNVIDIAだが、今年もその勢いは衰えないようだ。しかし、NVIDIAの天下ばかりが続くのも面白くはない。そこでGeForce2 GTS対抗製品の筆頭として挙げられるのが、3dfxのVoodoo4/5(特に、4チップ構成のVoodoo5 6000)やATIのRADEON 256である。登場時期は夏のボーナス商戦時だと予想されているが(RADEON 256はもう少し後になるかもしれない)、GeForce2 GTSとの戦いが楽しみだ。
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【4月27日】GeForce2 GTS搭載ビデオカード早くも登場
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/20000427/geforce2.htm
(2000年5月12日)
[Text by 石井英男@ユービック・コンピューティング]
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