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ApolloPro 133A搭載デュアルSlot 1マザーボード「PDVIA」



 Intel 820搭載マザーボードを最も早く秋葉原に登場させたメーカーとして一躍名をはせたRIOWORKSから、チップセットにVIA TechnologiesのApolloPro 133A(VT82C694X)を搭載したデュアルSlot 1マザーボードであるPDVIAが登場した。サードパーティチップセットベンダ初のデュアルサポートとなった本製品はどのようなパフォーマンスを持っているのか、検証しよう。


●実は前からデュアル機能をサポートしていたApolloPro 133A

 今回RIOWORKSから発売されたPDVIAは、チップセットにApolloPro 133Aを採用しているデュアルSlot 1マザーボードだ。これまでデュアルマザーボードと言えば、Intelのチップセットを採用したものばかりだった。その理由はIntelのCPUをデュアル動作させるのに必要なAPIC(Advanced Programmable Interrupt Controller)という割り込みの伝達方式を互換チップセットはサポートしていなかったためだ。このAPICに対応するには、もちろんCPUがAPICに対応している必要があるが、さらにチップセット側でもAPICに対応している必要がある。これまでIntelのデュアル対応チップセットとしては最もローエンドなチップセットであるIntel 440BX AGPset(以下440BX)では、「82093AA」というAPICのコントローラを追加することでAPICの機能を追加していた(最新のIntel 820などではもともとチップセットがAPICをサポートする機能を持っており、そうしたチップは必要ない)。デュアル動作するOSとして知られているWindows NTやWindows 2000には、このAPICに対応したHAL(Hardware Abstraction Layer)が添付されており、APIC対応にしておけばWindows NTやWindows 2000などで特にソフトウェアの追加が必要なく、マルチプロセッサのシステムを構築できるようになっていた。

 しかし、逆に言えばWindows NTやWindows 2000のマルチプロセッサのHALを利用するには、APICに対応している必要があるわけで、APICには対応していなかったサードパーティのチップセットではデュアルシステムを作りたくてもできなかった。しかし、各マザーボードメーカーも色々考えるもので、昨年の6月に開催されたComputex Taipeiでは、ApolloPro133にIntelのAPICコントローラである82093Aを追加することで強引にApolloPro133でデュアルSlot 1という構成にしたマザーボードも展示されていた。それはTyanのS1834Dというマザーボードだが、現在まで市場には登場していない。

 実はApolloPro 133Aのデュアルマザーボードが登場する予兆は、2月末に開催されたCeBITでもあった。筆者もうっかり原稿に書き忘れてしまったのだが、MSIのブースで展示されたApolloPro 133AのデュアルマザーボードであるMS-6321で、Computex以来登場しているVIAチップセットを利用したデュアルマザーボードだった。こちらは、チップセットにApolloPro 133Aを搭載し、PGA370(Socket 370)ソケットを2つ搭載したタイプだ。写真を見るとわかるのだが、APICコントローラは搭載していない。今回レビューするPDVIAもAPICコントローラは搭載しておらず、これから導き出せる結論は1つで、ApolloPro 133Aにも、Intel 820と同じようにAPICの機能が入っているとしか思えない。その点をVIA Technologiesに確認したところ、「以前よりAPICの機能は持っていた。ただ、これまで動作確認が終わらなかったので明らかにしなかっただけだ。今回の発表は動作確認がすんで正式にデュアル動作をサポートするという意味の発表だ」ということで、やはり以前よりAPICコントローラの機能は持っていたというのが真相のようだ。ただ、登場当初からそうだったのか、あるリビジョンからそうなったのかという質問には答えてもらえなかった。

CeBITで展示されていたApolloPro 133Aを搭載したMSIのデュアルマザーボード TYAN COMPUTERのS1832Dに搭載されているAPICコントローラの82093A ApolloPro 133Aデュアルマザーボード(PDVIA)でH.Oda!氏作のWCPUIDを実行した。きちんと2つのCPUが認識され、APICの項目が「Supported」になっているところに注目


●PC133 SDRAMを利用できる唯一のデュアルマザーボード

 今回取り上げたPDVIAの特徴は、言うまでもなくApolloPro 133Aをチップセットに採用していることだ。パッと見る限りはCPUスロットが2つあって、デュアル構成になっている以外は基本的にほかのApolloPro 133A搭載マザーボードとそう大きな違いはない。マザーボード上には2つのオプションチップを搭載するパターンが用意されていて、RIOWORKSのホームページを見ると、Intelの100Base-TX対応イーサネットコントローラ、およびSymbiosのUltra3 SCSIコントローラに対応していることがわかる。

 マザーボードのスペックも、基本的にはほかのApolloPro 133A搭載マザーボードとほぼ同等だ。サポートするシステムバス(FSB)のクロックは66/100/133MHzで、システムバス66MHzのデュアルCeleronからシステムバス133MHzのPentium IIIにまで対応できる。メモリは66MHzのSDRAM、PC100 SDRAM、PC133 SDRAMに対応している。これまで発売されているIntelチップセットを搭載しているデュアルマザーボードで、システムバス133MHzに対応したものはあったが、PC133 SDRAMに対応しているマザーボードは1枚も無かった(そもそもIntelのチップセットでPC133 SDRAMに対応しているものは1つも無いので当たり前ではあるが)。そうした意味では本製品はデュアルマザーボードとして初めてPC133 SDRAMに対応した製品であると言えるだろう。なお、メモリソケットは4スロット用意されており、512MBのDIMMを利用すれば最大で2GBまで増設することができる。さらに、ApolloPro 133Aなので、AGPスロットは4Xモードに対応している。サウスブリッジにはVIAのVT82C686Aが採用されているため、IDEのインターフェイスはUltra ATA/66に対応しているなど、440BXに比べてハイスペックとなっているのが特徴だ。


●パフォーマンス的には予想通り440BXに劣る

 ここまで述べてきたようにスペック上では440BXを上回っているApolloPro 133Aなのだが、実際のパフォーマンスはどうなのだろうか? シングルの440BXとApolloPro 133Aを比較した場合、「チップセットの純粋な性能を比べると、やはりIntel440BXに軍配を上げるべきだろう」というのが、本連載第30回「AGP 4XモードをサポートしたApollo Pro 133A搭載マザーボードが登場!」の結論だった。となれば、デュアルになってもその傾向は続く可能性があり、やはり440BXとの比較が焦点になるだろう。

 今回比較に利用したのは、Ziff-Davis,Inc.が配布するWinstone99 Version1.1に含まれるDualProcessor Inspection Testsだ。Dual Processor Inspection Testsは画像処理ソフトのMicroStation SEとPhotoshop 4.0、コンパイラのVisualC++ 5.0でデュアルCPUを利用した処理を実行してその処理能力を計測するテストだ。一般的にデュアルCPUの真価を発揮させるには、複数のCPUを利用できるようにアプリケーションを設計する必要があり、そうでないアプリケーションでは例えCPUがいくつあろうが結局はシングルの状態と処理能力には変化がない。前出の3つのアプリケーションはそれぞれ複数のCPUがある状態では、複数のCPUを利用するようにアプリケーションが設計されており、デュアルCPU時のパフォーマンスを計測するには最適なベンチマークテストと言える。Winstone99は日本語のOS環境では動作しないため、Windows NT 4.0(英語版)+ServicePack4という環境を利用した。今回は比較対照として440BXを搭載したTYAN COMPUTERのS1832Dというデュアルマザーボードを用意した。基本的には、メモリにPC100 SDRAMを利用した(PCVIAにはPC133 SDRAMを利用)以外は、同じ環境を用意し、純粋にチップセットの持つ性能を比較することにした。

 結論から言えば、総合スコア、MicroStation SE、Photoshop 4.0、VisualC++ 5.0の全てで440BXを搭載したS1832DがApolloPro 133Aを搭載したPDVIAを上回った。差は意外に大きく、残念ながらパフォーマンスという観点では予想通り440BXに軍配があがると考えて良さそうだ。

【ベンチマーク結果】
PDVIAS1832D
Dual-Processor Inspection Tests2.823.30
MicroStation SE MP3.043.19
Photoshop 4.0 MP 1.922.44
Visual C++ 5.0 MP4.675.44

【ベンチマーク環境】
CPU:Pentium III 650MHz×2
メインメモリ:PC133 SDRAM(133MHz:PDVIA)、PC100 SDRAM(S1832D)
ビデオカード:カノープス SPECTRA5400 Premium Edition(RIVA TNT2、32MB)
ハードディスク:Maxtor DiamondMAX 93073U6(30GB)


●価格が下がれば消えゆく440BXデュアルマザーボードの代替えとなるか?

 以上のように、スペック面ではシステムバス・メモリ共に133MHz対応、AGP 4X、Ultra ATA/66対応とIntel 440BXを上回っているものの、実際にデュアル対応のアプリケーションでベンチをとってみると逆に下回ってしまうというのがApolloPro 133A搭載デュアルマザーボードの現状だ。

 それでは、これをどう考えればいいだろうか? 筆者としては、パフォーマンスを重視するのであれば、やはり440BX搭載マザーボードを選ぶべきだと思う。しかも、最近440BXを搭載したデュアルマザーボードは2万円を切っており、PDVIAが2万円を超える価格をつけられていることを考えればコスト面でも440BX搭載デュアルマザーボードを選ばない理由はない。しかし、それは440BX搭載マザーボードが今後も潤沢に出回るという条件付きだ。既にIntelは440BXからIntel 820やIntel 840といった最新のデュアル対応チップセットに軸足を移しつつあり、440BXのデュアルマザーボードが今後品薄になる可能性は否定できない。そうした時に、Intel 820やIntel 840が代替えとなるだろうか?

 正直筆者はIntel 820やIntel 840のデュアルマザーボードが440BXデュアルマザーボードの代わりになるとは思えない。理由はメモリの問題だ。Intel 820/840の標準メモリはDirect RDRAMであるが、秋葉原におけるDirect RDRAMの価格はSDRAMの7倍~8倍にも達している。それでは、MTH(Intel 840ではMRH-S)を利用してPC100 SDRAMで利用すればいいという考え方もあるが、既にIntel 820搭載マザーボードの記事「Intel 820チップセット搭載マザーボード登場 ~820はニッチか、メインストリームか?」、およびIntel 840搭載マザーボードの記事「SDRAMが利用できるIntel 840搭載マザーボード「SuperMicro PIIIDME」」で述べたとおり、MTH(MRH-S)のDIMMの互換性には不安が残る。正直積極的にお奨めはできない。

 そうしたことを考えると現時点ではさほど意味はないものの、仮に秋葉原から440BX搭載デュアルマザーボードが姿を消したあとは、安価なデュアルマザーボードとして意味がでてくるだろう。現在は2万円以上とApolloPro 133A搭載マザーボードとしては高い価格が下がり、2万円を切ってくるとシステムバス133MHzのPentium IIIも利用できるデュアルマザーボードとして価値がでてくるのではないだろうか。そうなったら、買いに評価を変えるべき製品だろう。

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Akiba PC Hotline! Hothotレビュー
【4月8日】Apollo Pro133A搭載マザーで初のDual対応製品「PDVIA」登場
RIOWORKSの日本法人から発売、価格は26,000円前後
http://www.watch.impress.co.jp/akiba/hotline/20000422/pdvia.html

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(2000年5月1日)

[Text by 笠原一輝@ユービック・コンピューティング]


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ウォッチ編集部内PC Watch担当 pc-watch-info@impress.co.jp