特別編:Athlon 1GHz搭載マシンレビュー |
●マザーボードにはASUSTeK ComputerのK7V-RMを利用
今回テストに利用したマシンは日本AMDより提供を受けたAthlon 1GHz搭載マシンだ。スペックは以下のようになっている。
CPU:Athlon 1GHz
マザーボード:ASUSTeK Computer K7V-RM(Apollo KX133採用)
メモリ:256MB(PC133 SDRAM)
ビデオカード:GeForce256搭載カード(ブランド不明)-32MB(DDR SGRAM)
CeBIT 2000に展示されていたASUSTeK ComputerのK7V。今回のテストマシンにはこのK7VのmicroATX版が採用されていた |
前回のレポートでも述べたように、今回のシステムではパーツなどの交換はできないという条件がついていたため、これまで利用してきたシステムとは異なる環境でのテストとなった。このため、今回は通常のようにこれまでのデータを利用する形ではなく、先日秋葉原に出回ったばかりのAthlon 850MHzとの比較という形で評価していきたい。なお、Athlon 850MHzの評価に利用したマシンも、日本AMDから提供を受けたマシンでスペックは下記のようになっている。
CPU:Athlon 850MHz
マザーボード:GIGA-BYTE Technology GA-7IX
メモリ:256MB(PC100 SDRAM)
ビデオカード:GeForce256搭載カード(ブランド不明)-32MB(DDR SGRAM)
若干スペックが異なるので直接の比較はできないが、参考としては充分だろう。
●当然ながら現時点では最高の結果を叩き出す!
今回ベンチマークソフトとして利用したのは先週の速報でも利用したZiff-Davis,IncのWinBench99 Version1.1、BAPCoがリリースしているSYSmark 2000、Ziff-Davisの3D WinBench2000の3つだ。
今回新しく実行するBACPoのSYSmark 2000について説明しておこう。BACPoはAdaptec、Compaq Computer、Dell Computer、Hewlett-Packard、IBM、Intel、Microsoft、Motorola、NECなどによって構成されているコンソーシアムで、主にビジネスアプリケーション環境におけるPCの性能を計測するベンチマークを作っている団体だ。今回紹介するSYSmark 2000もそうしたベンチマークの最新版で、Word、Excel、Netscape Communicator、Photoshopといったメジャーなアプリケーションの実際のコードを利用してその実行時間や相対性能などを計測する。ちょうどZiff-DavisのWinstone99に近いベンチマークソフトだ。
【WinBench99 Version1.1】
CPUmark99 | FPU WinMark | 3D WinBench2000 | |
---|---|---|---|
Athlon 1GHz | 80.9 | 5,400 | 66.0 |
Athlon 850MHz | 74.3 | 4,610 | 64.5 |
【SYSmark2000】
SYSMARK 2000 Rating | Internet Content Creation | Office Productivity |
|
---|---|---|---|
Athlon 1GHz | 183 | 177 | 187 |
Athlon 850MHz | 162 | 160 | 164 |
Bryce 4 | CorelDraw9 | |||
---|---|---|---|---|
Run Time | Rating | Run Time | Rating | |
Athlon 1GHz | 83.45 | 210 | 91.67 | 225 |
Athlon 850MHz | 94.68 | 185 | 108.14 | 191 |
Elastic Reality 3.1 | Excel 2000 | |||
---|---|---|---|---|
Run Time | Rating | Run Time | Rating | |
Athlon 1GHz | 49.01 | 204 | 66.33 | 187 |
Athlon 850MHz | 54.82 | 183 | 76.12 | 163 |
NaturallySpeaking Pref 4.0 | Netscape Communicator | |||
---|---|---|---|---|
Run Time | Rating | Run Time | Rating | |
Athlon 1GHz | 107.44 | 153 | 70.30 | 219 |
Athlon 850MHz | 111.81 | 147 | 92.30 | 167 |
Paradox 9.0 | Photoshop 5.5 | |||
---|---|---|---|---|
Run Time | Rating | Run Time | Rating | |
Athlon 1GHz | 100.43 | 176 | 92.21 | 119 |
Athlon 850MHz | 109.93 | 161 | 100.46 | 109 |
PowerPoint 2000 | Premiere 5.1 | |||
---|---|---|---|---|
Run Time | Rating | Run Time | Rating | |
Athlon 1GHz | 73.51 | 189 | 68.65 | 200 |
Athlon 850MHz | 81.31 | 171 | 76.33 | 180 |
Word 2000 | Windows Media Encoder 4.0 | |||
---|---|---|---|---|
Run Time | Rating | Run Time | Rating | |
Athlon 1GHz | 96.46 | 169 | 64.81 | 172 |
Athlon 850MHz | 108.87 | 150 | 70.92 | 157 |
結論から言えば、もちろんAthlon 1GHzは全てのテストでAthlon 850MHzを上回った。SYSmark 2000でも順当にAthlon 1GHzがAthlon 850MHzを上回ったが、特にNetscape Communicatorのテストでは、30%近い伸びを記録した。このほかのアプリケーションでも10%前後の伸びを記録するなど、オフィス系のアプリケーション(Word、Excel、PowerPointなど)でも、マルチメディア系のアプリケーション(CorelDraw、Photoshopなど)でもAthlon 850MHzとの差を確認することができた。
●処理能力優先の仕事をしているユーザーにはお奨め
このように、Athlon 1GHzは現時点で“秋葉原で入手可能なx86互換CPU”としては最高速のAthlon 850MHzを全てのスコアで上回っており、入手可能になればその時点で最高速のCPUになることは間違いないだろう。
ただ、問題は“いつ”入手できるようになるかだが、短期的に見れば正直見通しは明るくない。日本AMDは3月6日に行なわれた発表会で「3月中はGateway、Compaq Computerの2社に優先して供給する」ことを明らかにしており、残念ながらリテールやバルクとしてCPU単体で出回るのはどんなに早くても4月以降という可能性が高い。TWOTOPなどの予約を開始しているショップも、「納期は4月末?」としている。また、コンパックの日本支社はAthlon搭載マシンを発売していないため、現時点では日本ゲートウェイからしか購入できない。筆者が3月6日に日本ゲートウェイに問い合わせたところ、「Select1000は納期1カ月、850であれば2週間」という答えが返ってきた。どちらにせよ4月までは日本でAthlon 1GHz(ないしは搭載PC)を入手するのは不可能ということになる。
となると、1GHzのAthlon登場を待つか、あるいは待たないで850MHz搭載マシンを購入するかがポイントになるだろう。そこで、価格差を見てみたところ、日本ゲートウェイではCPU以外はほぼ同じスペックのSelect 1000とSelect 850の価格差は9万円ほどある。納期が2週間近く遅いのにCPUだけの差で9万円というと、正直考えてしまう(もう1つAthlon 850MHzが買える値段である)。これでは、個人ユーザーや自作ユーザーにとってはよほど予算に余裕がない限りは積極的に購入する理由は、「1GHzという人が持っていないCPUを持っている」という自己満足以外は見あたらない(そもそも自作ユーザーは現時点では買うこともできないわけだが……)。AMDが2月下旬から3月上旬にかけてOEMメーカーに配布したロードマップでは、「5月にL2キャッシュがオンダイになったThunderbirdコアのAthlon 900MHzを、6月にThunderbirdコアのAthlon 1GHzと950MHzを出荷する」と説明されている。AMDが予定通りThunderbirdを出荷できるのであれば、どうせ1カ月待つのだからもう少し待ってL2キャッシュがオンダイになり処理能力が向上すると見られるThunderbirdに切り替わってから購入するのも悪い選択ではないだろう。
これに対して、プログラマやCGデザイナーなどCPUの処理能力が仕事の能率にダイレクトに反映するようなハイエンドユーザーであれば、少しでもクロックが速いことにより多くのメリットを享受できる訳で、納期にさえ折り合いがつけばお奨めできると言えるだろう。
□関連記事
【3月7日号】日本AMD、Athlon 1GHz正式発表。リテール市場には4月以降
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/20000307/amd.htm
【3月10日】Akiba PC Hotline! HotHotレビュー
番外編:ギガヘルツ時代の始まりを告げるAthlon 1GHz
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/20000310/hotrev52.htm
(2000年3月17日)
[Text by 笠原一輝@ユービック・コンピューティング]