Click


番外編:ギガヘルツ時代の始まりを告げるAthlon 1GHz



AMDのリファレンスマシンに搭載されたAthlon 1GHz
 最終コーナーまで抜きつ抜かれつが繰り広げられたギガヘルツプロセッサの出荷競争だが、少なくとも発表に関してはAMDがまさに「鼻差」でIntelを振り切って先に行なうことができた。次は、どちらが先に実際の製品を大量に出荷できるか、さらにはそのAthlon 1GHz、Pentium III 1GHzがそれぞれどの程度のパフォーマンスを発揮するかが次の焦点と言えるだろう。そうした注目を集めるなかで、AMDから提供を受けたAthlon 1GHz搭載マシンを本日入手したので、Athlon 1GHzの速報レポートをお届けしたい。


●Intelより先にサンプル提供を開始したAMD

 当然の事ながら本誌ではAthlon 1GHzだけでなく、Pentium III 1GHzを搭載したPCの入手も試みてみた。しかし、日本でもインテル株式会社からPentium III 1GHzのリリースは出されたものの、現時点ではPentium III 1GHz搭載マシンの発売を発表したOEMベンダーはなく、残念ながら入手できなかった。少なくともメディアに提供できるサンプルを持っているという意味ではAMDが一歩リードしているといえる。なお、Pentium III 1GHzについてもベンチマークテストを行ないたいと希望しているので、御協力戴けるベンダーの方はpc-watch-info@impress.co.jpまで御一報頂きたい。

 さて、Athlon 1GHzだが、基本的には従来のAMDの最高速クロックであるAthlon 850MHzと同じCPUコアである「K75」コアが採用されているが、実はパフォーマンスに影響を与える大きな変更がある。言うまでもなく、L2キャッシュの倍率だ。現状のAthlonのL2キャッシュは、CPUコアとは別にCPUモジュール上にSRAMが搭載されるいわゆるオフダイのL2キャッシュとなっている。このL2キャッシュのクロックは、基本的にはCPUコアクロックの何分の1かで動作している。この倍率はクロックごとに異なっており、これまで発表されたCPUでいえば500MHzから700MHzまでは1/2(0.5)倍、750MHzから850MHzまでは2/5(0.4)倍となっていた。AMDが公開しているデータシートによれば、今回発表されたAthlon 1GHz(および950/900MHz)のL2キャッシュの倍率は1/3(0.33…)となっており、L2キャッシュの倍率はさらに下がっている。つまり、AthlonのL2キャッシュのクロックは次のようになっている。

 これを見てわかるように、実クロックでは高速なAthlon 1GHzも、L2キャッシュのクロックという観点ではAthlon 850MHzやAthlon 700MHzに劣っているということがわかる。どうしてこのように、L2キャッシュの動作速度が300MHz台で留まっているかといえば、それはコストと大量のボリューム確保のためだ。AthlonのL2キャッシュとして利用されているSRAMは、高クロックになればなるほど高コストになるし何よりも大量に確保するのが難しくなる(つまりCPUを大量に生産できなくなる)。このため、AMDはL2キャッシュの倍率を変更することで、ボリュームゾーンである300MHz台のクロックにとどめているのだ。

 最近ではL2キャッシュがオンダイ(CPUダイにL2キャッシュが統合されていること、K6-III、CeleronやCoppermineコアのPentium IIIがこれに相当する)のCPUがトレンドになっており、特にビジネスアプリケーションなどにおける処理能力は、L2キャッシュの動作速度の影響を受けやすい。逆に言えばAthlonはクロックが上がれば上がるほど、L2キャッシュのクロックはコアクロックに比べて遅くなる訳で、特に整数演算の性能に影響を与える可能性が小さくないと言える。このあたりがAthlon 1GHzでベンチマークを取る時のポイントとなるだろう(なお、AMDもThunderbirdのコードネームで呼ばれる次世代のAthlonベースCPUコアでは、L2キャッシュがオンダイとなる)。


●現時点では最高性能は間違いないが結論はPentium III 1GHz待ち

 さて、今回は時間も限られていたので、とりあえずZiff-DavisのWinBench99 Version 1.1に含まれるCPUmark 99とFPU WinMarkの2つのテストに絞って行なってみた(来週の前半に予定している詳報ではもう少し多くのベンチマーク結果をお届けする予定だ)。今回AMDより提供されたマシンはハードウェア構成を変更してはならないという条件があったため、以前に掲載したベンチマーク結果とはやや環境が異なっているため、参考結果としたい(ただ、CPUmark99やFPU WinMarkはほとんどハードディスクやグラフィックスカードなどに依存しない)。

 結論から言えば、どちらのテストもAthlon 1GHzはこれまでの最高の結果を出していたPentium III 800EB MHz(CPUmark99)、Athlon 800MHz(FPU WinMark)を大幅に上回った。

【CPUmark 99】
Athlon 1GHz80.9
Pentium III 800EB MHz(RDRAM)71.4
Athlon 800MHz70.8
Pentium III 800EB MHz(SDRAM)69.4
Pentium III 750MHz(SDRAM)67.1
Athlon 750MHz66.6
Pentium III 733(RDRAM)66.2
Pentium III 733(SDRAM)66.0
Athlon 700MHz65.0
Pentium III 700MHz62.4
Pentium III 667MHz(RDRAM)60.9
Pentium III 667MHz(SDRAM)60.9
Athlon 650MHz59.4
Pentium III 650MHz58.4
Athlon 600MHz55.7
Pentium III 600E MHz54.9
Athlon 550MHz51.7
Pentium III 550E MHz50.9
Pentium III 533EB MHz(SDRAM)50.3
Pentium III 533EB MHz(RDRAM)50.2
Athlon 500MHz47.7
K6-III/40047.3
Pentium III 500E MHz46.9
Pentium III 600B MHz(SDRAM)44.2
Pentium III 600MHz44.2
Pentium III 600B(RDRAM)44.1
Pentium III 550 MHz40.7
Pentium III 533B MHz(SDRAM)39.6
Pentium III 533B MHz(RDRAM)39.5
Celeron 533MHz37.4
Pentium III 500MHz37.1
Celeron 500MHz35.9
Celeron 466MHz34.2
Celeron 433MHz32.5
K6-2/50032.2
K6-2/45030.8
Celeron 400MHz30.7
K6-2/47530.6
K6-2/40029.9
Celeron 366MHz28.8
Celeron 333MHz26.7

【FPU WinMark】
Athlon 1GHz5,440
Athlon 800MHz4,380
Pentium III 800EB MHz(RDRAM)4,300
Pentium III 800EB MHz(SDRAM)4,280
Athlon 750MHz4,060
Pentium III 750MHz(SDRAM)4,030
Pentium III 733MHz(SDRAM)3,930
Pentium III 733MHz(RDRAM)3,920
Athlon 700MHz3,800
Pentium III 700MHz3,760
Pentium III 667MHz(RDRAM)3,570
Pentium III 667MHz(SDRAM)3,570
Athlon 650MHz3,530
Pentium III 650MHz3,490
Athlon 600MHz3,260
Pentium III 600E MHz3,220
Pentium III 600MHz3,040
Pentium III 600B MHz(RDRAM)3,030
Pentium III 600B MHz(SDRAM)3,030
Athlon 550MHz2,980
Pentium III 550E MHz2,950
Pentium III 533EB MHz(RDRAM)2,850
Pentium III 533EB MHz(SDRAM)2,850
Celeron 533MHz2,850
Pentium III 550MHz2,790
Athlon 500MHz2,710
Pentium III 533B MHz(RDRAM)2,690
Pentium III 533B MHz(SDRAM)2,690
Pentium III 500E MHz2,680
Celeron 500MHz2,680
Pentium III 500MHz2,530
Celeron 466MHz2,500
Celeron 433MHz2,320
Celeron 400MHz2,140
Celeron 366MHz1,960
Celeron 333MHz1,780
K6-2/5001,660
K6-2/4751,580
K6-2/4501,490
K6-III/4001,350
K6-2/4001,330

 さて、気になるL2キャッシュの影響だが、CPUmark99の結果をクロックで割って100を掛けてみた(つまり100MHzあたりのCPUmark99のスコアを求めた)ところ、おもしろい結果がでた。Athlon 500MHz~700MHzまでは9の前半から半ば、Athlon 750MHz、800MHzは8の後半、Athlon 1GHzは8.09という結果になった。このように、L2キャッシュ1/2、2/5、1/3ごとにきれいに別れており、やはりL2キャッシュの倍率が下がった分による影響があると言える。となると、L2キャッシュがオンダイで、CPUコアクロック=L2キャッシュクロックとなるため、L2キャッシュのクロックが1GHzにも達するPentium III 1GHzが、Athlon 1GHzを上回る可能性も十分にあるし、その可能性も高いだろう。そうした意味でも、早くPentium III 1GHzと対決させてみたいものだ。

【100MHzあたりのCPUmark99】
Athlon 1GHz8.09
Athlon 800MHz8.85
Athlon 750MHz8.88
Athlon 700MHz9.29
Athlon 650MHz9.14
Athlon 600MHz9.28
Athlon 550MHz9.40
Athlon 500MHz9.54

□関連記事
【3月7日号】日本AMD、Athlon 1GHz正式発表。リテール市場には4月以降
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/20000307/amd.htm

バックナンバー

(2000年3月10日)

[Text by 笠原一輝@ユービック・コンピューティング]


【PC Watchホームページ】


ウォッチ編集部内PC Watch担当 pc-watch-info@impress.co.jp