第38回 :Packet対応でcdmaOneが魅力的に |
これだけ普及した原因は携帯電話キャリアとしての圧倒的な規模の大きさもあるが、iモードがパケット網を利用したことで、ネットワークへの常時接続ライクで簡単に利用できるアプリケーション/コンテンツを用意できたことも一因としてあると思う。一方、cdmaOne端末向けのiモードに準じる機能であるEZ Accessは、パケット網を利用しないため今一歩の使い勝手という印象だった。
それが今年の1月、やっとcdmaOneでもパケット網が利用できるようになり、それと共に64kbpsの高速通信とEZ Accessのパケット対応がはかられた。果たしてパケット網への対応は、cdmaOne端末の情報アクセス端末としての機能をiモード以上に魅力的なものに引き上げたのだろうか?
■ これまでのcdmaOne端末の問題点
純粋に電話器として考えたとき、サービスエリアの多少の違い(もちろんこれが大きな意味を持つ場合もあるが)こそあれ、cdmaOne端末はiモード端末(NTTドコモのPDC端末)よりもはるかに優れていると思う。
一部では「思ったほどではない」という声も聞かれるcdmaOneの音質だが、つい先日まで通常のハーフレート機しかラインナップされていなかったiモード端末と比較すれば、雲泥の差というのが正直なところだ。最新の208シリーズ、502iシリーズで採用されているHyperTalkは、僕が感じる限りは、改善は体感できるものの大した違いではない。
通話の切れにくさや、電波の反射によって二重に聞こえる音声、エコーのかかったような音になる場合があるなど、PDC端末を使っていてストレスを感じるような現象は、cdmaOne端末では皆無だ。首都圏での活動が多い僕の場合、純粋に会話に使うだけならばDDIポケットのエッジの方が優れるのだが、携帯電話の中で会話に使う端末を選ぶならば間違いなくcdmaOne端末を選択する。
しかしcdmaOne端末を情報アクセス端末として捉えると話は違う。EZ Accessのサービス内容うんぬんの前に、パケット網に対応していないことが致命的だったのだ。パケット網に対応していないEZ Access対応機は、基本的にPoint-to-Point、つまり地点間を結ぶ回線交換でしか通信を行なえない。このため、サービスへのアクセスを行なうたびにダイヤルアップ接続と同様の手順が発生し、サービスの使い勝手を損ねていたのだ。
たとえば電子メールにアクセスしようとすると、EZ Accessサービスに入る時に接続手順が発生し(つまり時間がかかり)、メールを読んたり他のサービスを検討している間にタイムアウトが発生して、別の情報にアクセスする際にまた接続手順が発生する。こんな事の繰り返しだったのだ。
通信速度がcdmaOneよりも遅く通信も安定しないiモードだが、パケット網対応であるため、そうした遅延はほとんど感じることはない。また、Point-to-Point接続のEZ Access端末ではメールを端末に自動配信してもらうことはできないが、iモードメールはメールを端末に自動配信することができるという大きな違いもあった。
EZ Accessで提供されるメールには、着信時に最初の100文字だけを切り出してショートメールとして端末に配信する機能があるが、最初からショートメールとして作られていないメールの冒頭100文字だけでは内容を把握できない場合も少なくない。以前、連載の中で紹介したEmComサービスなどを利用してメッセージを圧縮することもできるが、結局本文を見るときにはEZ Accessに接続しなければならない。
■ Packet網対応で使いやすさがグッと増したEZ Access
しかしPacket網に対応するPacketOneサービスが開始されたことで、EZ Accessに対する印象はかなり変化した。あれほど操作感を損ねていると感じた接続速度も、Packetになったことでほとんど気にならなくなっている。サービスの内容が本質的に変化したわけではないが、やっと本来あるべき使用感になったという印象だ。
こうなると、EZ Accessの本来持っている機能もより便利なものに見えてくる。たとえば、もっとも頻繁に利用すると思われるメール機能。iモードもPacketOneも、速度こそ異なる(iモード 9,600bps、PacketOne 14,400bps)がPacket網を利用することに変わりないように思える。しかしiモードのメールとPacketOneのメール(EZ AccessのEZ Mail)は本質的に異なる性質を持っている。
iモードでは電子メールはNTTドコモのメールサーバーで受信され、それがPacket網を通じて端末にプッシュ配信される。メールはiモードメールの上限である250文字まで、すべて端末側に配信され、配信されたメールはサーバー上に残らない。
ところがEZ Mailはサーバーからメールを受け取るのではなく、サーバー上のメールを端末上のブラウザから参照するという形になる。このため、メール着信の確認の仕組みが別途必要になる。メール着信確認は前述のようにショートメールを用いて端末側にプッシュ配信される仕組みだ。
従って、iモードメールは受信できるメールの上限は端末のメモリ容量に依存してしまう。たとえばN501iは最大50通までのメール受信容量を持っているが、今週の木曜日に発売予定のN502iは100通まで保存できる。これがEZメールならば、メールサーバーの容量が許す限りメールの受信容量に気を配る必要がなくなるわけだ。
実際にはEZ Mailには1通あたり2,000文字、受信箱に200件(最大7日間まで保存)、保存箱に100件(最大14日間保存)という制限があり、iモード端末のようにメモリ内にずっと置いておくといった使い方ができないデメリットも生じているが、端末の機能によらず多くの情報を保管可能で、将来的にサーバー側が対応すればより多くのメールを保存できる拡張性を備える。(上記はIDO端末の場合)
またEZ Mailはメールを読む際、本文全てを受信するのではなく、少しづつ複数ページに分けて閲覧するようになっている。さらにメール一覧ではタイトルのみを受信するため、読む必要がないと判断したメール本文は全く受信する必要がない。このため、すべてを受信するiモードメールよりも経済的と言えるだろう。
またEZ Accessでは、サーバー上にアドレス帳、スケジュール、タスクリストといった情報を保管し、cdmaOne端末からも通常のWebブラウザからもアクセスが可能なネットワークアプリケーションのEZ PIMが提供されている。プーマテクノロジーからは、OutlookやNotesといったPC上のアプリケーションとEZ PIMの情報を同期するIntellisync for EZaccessも販売されており、既存のPIMアプリケーションと連携させることもできる。
これらの機能は、Packetになったから提供されたというわけではなく、以前から利用できたものだったのだが、Packetになったことによって「接続してから利用する」ではなく「その場で見れる」という感覚に変わった。このちょっとした感覚の違いにより、EZ Accessはiモードと同じ土俵で戦えるようになったと思う。
ではiモードユーザーをcdmaOneに引っ張り込めるだけのものになったか?というと、少々話は複雑になる。どちらが適しているかは、ユーザーの利用環境によって異なるだろう。たとえば僕の場合、いくつかの理由から今週発売のN502iを購入しようと(今のところは)思っている。
なぜそう思うのか、64kbpsの高速Packet通信はどうした、といった話は、追って来週に話をしたい。
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【'99年11月25日】DDI-セルラーとIDO、パケット通信サービスを1月7日開始(Mobile Central)
http://www.watch.impress.co.jp/mobile/news/1999/11/25/pone.htm
[Text by 本田雅一]