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SDRAMが利用できるIntel 840搭載マザーボード「SuperMicro PIIIDME」



SuperMicro PIIIDME
 Intelが10月に0.18μmプロセスのPentium IIIと同時に発表したサーバー/ワークステーション向けのチップセットであるIntel 840チップセットを搭載したマザーボードがSuperMicroから登場した。今回のHotHot Review!ではこのIntel 840チップセットの実力とその意味について考えていきたい。


●Intel 820よりもさらに高機能なIntel 840

 今回紹介するSuperMicro社のPIIIDMEはチップセットにIntel 840チップセット(以下Intel 840)を搭載したATXフォームファクタのSC242(いわゆるSlot 1)マザーボードだ。ボード上にはUltra160対応SCSIコントローラやコネクタを搭載するためのパターンも用意されており、それらを搭載したモデル(PIIIDM6/PIIIDM3)も用意されている。今回レビューしたPIIIDMEには搭載されておらず、空きパターンとなっている。

 さて、PIIIDMEの特徴を語る前にIntel 840の特徴について触れておく必要があるだろう。既に冒頭でも述べたようにIntel 840はIntelの最新サーバー/ワークステーション向けチップセットで、以下のようなチップから構成されている(ブロック図などに興味があるユーザーはIntelのサイトからデータシートをダウンロードしていただきたい)。

82840 Memory Controller Hub(MCH)
82803AA(MRH-R)
82804AA (MRH-S)
82806AA PCI64 Hub(P64H)
82801AA I/O Controller Hub (ICH)
82802 Firmware Hub(FWH)

 このうち、ICHとFWHは既に本コーナーでも取り上げたIntel 810/810EチップセットIntel 820チップセットと共通である。念のため説明しておくと、ICHはMCHとHub Interfaceと呼ばれる専用バスで接続され、PCIバス、USB、IDEインターフェイス、LPCといったいわゆるI/O(入出力)周りとのインターフェイスとなるチップだ。FWHはICHではISAバスが標準ではサポートされない(オプションのチップを利用すれば可能ではある)ため、これまでISAバスに接続されていたBIOS ROMを置き換えたもので、乱数生成機能など特別な機能も持ってはいるが、基本的にはBIOS ROMだと思えばよい。

 Intel 840のMCHはIntel 820のMCH(82820 Memory Controller Hub)とはいくつかの異なる点を持っている。主な違いは以下の2点だ。

・Direct RDRAMのチャネルを2チャネルサポート
・ICHを接続する8bitのHub Interfaceだけでなく、16bitのHub Interfaceをサポート

 Intel 820のMCHではDirect RDRAMのチャネル(Direct RDRAMのメモリ素子が接続されているバスのこと)は1チャネルのみがサポートされている。Direct RDRAMではメモリのバンド幅はPC800(400MHのDirect RDRAMを搭載したRIMM)を利用した場合に、1チャネルあたり1.6GB/秒のバンド幅を実現できる。つまり、Intel 820でDirect RDRAMをメインメモリとして利用した場合、最大1.6GB/秒のバンド幅が実現される。

 これに対して、Intel 840では、2チャネルのDirect RDRAMのインターフェイスがサポートされており、帯域は1チャネルあたり1.6GB/秒×2ということになるので、最大で3.2GB/秒ものバンド幅が確保できる。このように、かなり広いバンド幅を確保できることがIntel 840の最も大きな特徴といえる。現時点ではまだまだ数は多くないものの、バンド幅に影響されるアプリケーションを利用しているユーザーにはメリットがある。

 さらに、Intel 840はMRH-R(Direct RDRAM用Memory Repeater Hub)というオプションチップを利用して、Direct RDRAMのチャネルを仮想的に8チャネルまで増やすことができる。MRH-Rが1つで2チャネル分となっており、2つのチャネルにそれぞれ2つのMRH-Rを接続することができるため、2×2×2=8チャネルという計算になる。Direct RDRAMでは各チャネルに最大で32個までしかメモリチップを接続できないという制限がある。しかし、このMRH-Rを利用することで、32×8=336個のチップを搭載できるようになる計算になり、256MbitチップのRIMMを使った場合、最大で8GBまでメモリを搭載できるようになる(ただし、メモリコントローラから見ると、あくまで2チャネルにしか見えないのでバンド幅は3.2GB/秒のまま)。

 また、Intel 840のMTHは16bitのHub Interfaceをサポートしている。Intel 820のMTHやIntel 810/810EのGMCHがサポートしているのは8bitのHub Interfaceで、266MB/秒のバンド幅が確保されている。MTHではICHとの接続に、この8bit Hub Interfaceが使われているものの、もう1つの16bit幅のHub Interfaceは64bit PCIバスへのブリッジチップ(82806AA PCI64 Hub、P64H)との接続に使われる。これは、8bitのHub Interface(266MB/秒)を64bit PCIバスの帯域(66MHz動作時で533MB/秒)が上回っているためで、16bitのHub Interfaceは533MB/秒と64bit PCIと同等のバンド幅が確保されている。今回とりあげるPIIIDMEにもこのP64Hは搭載されており、2本の64bit PCIスロットが搭載されている(P64Hでは最大2スロットの64bit PCIスロットをサポート)。


●MRH-SでもやはりSDRAMの互換性の問題はある

マニュアルには、1枚のDIMMを使う場合は、バンク0か1を利用すると書かれている
 Intel 840の最も大きな特徴はDirect RDRAMを2チャネルサポートしていることだと述べた。しかし、今回取り上げたPIIIDMEでは、Intel 840でSDRAMを利用するためのオプションチップである82804AA (MRH-S)が搭載されており、SDRAMのみのサポートとなっている。MRH-S(SDRAM用Memory Repeater Hub)は、Direct RDRAMのインターフェイスをSDRAMのインターフェイスに変換するためのチップで、ちょうどIntel 820でSDRAMを利用するために利用されるMTH(Memory Translator Hub)のIntel 840版だと言える。

 MTHがDirect RDRAM 1チャネルにつき1つしか搭載できないのに対して、MRH-Sは1チャネルに付き2つまで搭載することができる(つまりDirect RDRAMのインターフェースを2チャネルサポートしているIntel 840では、合計で4つまで搭載できる)。さらには、2つのMRH-Sが搭載されている場合、それぞれのMRH-Sをインタリーブとして動作させることが可能になる。インタリーブとはメモリを複数のバンクにわけ、それぞれに交互にアクセスすることでウェイト(命令が発生してから実際にデータが転送されるまでの待ち時間)を無くしメモリの高速化を図る手法で、486の時代に使われていた手法だ。この場合、メモリモジュール1つに付き1バンクという事になるので、メモリは必ず2枚1組で利用することになる。

 PIIIDMEでも2つのMRH-Sが搭載しており、基本的にはインタリーブとして動作するはずだ。従って、2枚1組でメモリを使わなければいけないのだろうと思い、マニュアルを見てみたのだが、マニュアルには

「1枚のDIMMを使う場合は、バンク0か1を利用する」(もちろん英語)

と書いてあるだけで、具体的にどういうルールでDIMMを挿さなければいけないのか、2枚1組で利用しなければいけないのかなど、ちっとも書かれていない。
 そこで、SuperMicroのホームページを参照したところ、テクニカルノートのページに以下の記述を見つけた。

 なんということだろうか。マニュアルでは1枚でもOKのような書き方をしておきながら、このテクニカルノートでは2枚1組で利用しろとは、いったいどっちが本当なのかわからなくなってしまった。これではこのマザーボードを購入したユーザーは相当混乱しているのではないだろうか? SuperMicroといえば、サーバー/ワークステーション向けの信頼性のあるマザーボードベンダとして定評があり、筆者もこれまで安定性を必要とするようなサーバーに同社の製品を使ってきた。そうした意味では少々がっかりしたというのが正直なところだ。マニュアルに関しては早急にもっとわかりやすく改善していただきたいものだ。

 論より証拠ということで、とりあえずテストすることにした。試しに手持ちのCC820(MTHを搭載し、SDRAMが利用できるIntel 820マザーボード)で利用することができたPC100 SDRAMのメモリモジュールをバンク0に挿してみた。しかし、動作しなかった。同じくバンク1にも挿してみたが動作しなかった。結局、メモリモジュール1枚ではホームページでの記述通り動作しなかった。色々試してみた結果、動作したのは同じSamsungチップを採用した64MBのPC100 SDRAMのモジュールのペアをバンク0とバンク1に挿した時のみだった。それ以外のメモリ容量が異なるペアや、メモリチップが異なるペアでは起動しなかった。
 なお、メモリに関する注意点だが、件のSuperMicroのホームページでも、

(1)MTHやMRH-SではSPDが正しくないものやSPDがないPC100 SDRAMを正しく認識することはできない
(2)片方のサイドに4つのメモリチップが搭載されている64MBのSDRAM、両方のサイドに8つのメモリチップが搭載されている128MBのSDRAMなどでは問題があることがわかっている
 と書かれている。残念ながら筆者の手元には2枚同じDIMMが1組しかなかったので試せなかったが、メモリはショップなどで動作が確認されているものをチョイスした方が無難だろう。

AGP Proのスロットで物理的に利用できないカードもあり注意
 なお、本製品ではAGPのスロットはサーバー/ワークステーション向けに電源周りを強化したAGP Proが採用されている。しかし、電気信号などに関しては通常のAGPスロットと互換性があるので、AGPのビデオカードもそのままで利用できる(間違った位置にAGPのカードを挿さないように、シールが貼ってある)。ただ、ビデオカードのコネクタの形状によっては入らないカードもありそうなので注意したい。例えば、筆者の手元にあったCreative Technologyの3D Blaster RIVA TNT2 UltraのOEM版は、コネクタのでっぱりの部分が大きすぎて入らなかった。最近のカードでは問題ないとは思うが、以前のカードではこういう例もあるので注意したい。


●インタリーブの効果も若干だがある

 今回はインタリーブによりメモリの性能などが改善されているのか、またこうした製品が利用されるハイエンドアプリケーションのベンチマークで効果があるのかを確認するために、Intelが配布しているPlatform Testに含まれるPlatform Bandwidth Test、Ziff-Davis,Inc.のWinstone 99 Version1.1に含まれるHigh-End Winstone 99とデュアルプロセッサに関するテストを行なうDual Processor Inspection Testの2つでテストを行なった。今回は比較対照としてMTHを搭載したCC820を用意し、実際に同じメモリを利用して比較してみた。

 まず、メモリのバンド幅を計測するPlatform Testに含まれるPlatform Bandwidth Testだが、MTHを利用しているCC820に比べて36%程度向上していることがわかる。このことからもインタリーブの効果があり、SDRAMでバンド幅を追求したいユーザーにとって意味がある選択であることがわかる。ただ、High-End Winstone 99では逆に遅いという結果になった。もちろんデュアルCPUの効果を見るDual Processor Inspection Testでは、シングルCPUのCC820を上回ったため、やはりデュアルCPUをサポートしたようなアプリケーションなどでこそ本製品は真価を発揮すると考えていいだろう。

【ベンチマーク結果】
PIIIDME
 Platform Bandwidth Test    648MB/秒
 High-End Winstone 99       25.7
 Dual Processor Inspection Test  2.82

CC820
 Platform Bandwidth Test    473MB/秒
 High-End Winstone 99       26.6
 Dual Processor Inspection Test  2.37

【テスト環境】
CPU(Pentium III 600B MHz)
メモリ:PC100 SDRAM(64MB)×2
ビデオカード:Canopus SPECTRA 5400 Premium Edition
ハードディスク:IBM DHEA-34300(Windows NT)/WD14300(Windows 98)
OS:Windows 98(Platform Bandwidth Test)
  Windows NT(英語版)+ServicePack4
  (High-End Winstone 99、Dual Processor Inspection Test)


●64bit PCIを利用できることが最大のメリットか

 以上のようにMRH-Sのインタリーブの効果によりメモリ周りのパフォーマンスが向上したりとIntel 840+MRH-Sの組み合わせも、使い方によってはサーバー/ワークステーションの自作を考えているユーザーにとって十分魅力的な選択になることはわかった。しかし、やはりSDRAMの組み合わせでは問題が起きる場合があるなど、MTHやMRH-Sに関しては常にSDRAMの互換性の問題を抱えていると言わざるを得ない。そうしたリスクを抱えつつもこの製品を選択すべき魅力があるのかと問われれば、正直なところ440BXや440GXなどのデュアルマザーボードで十分ではないかと思える(現時点ではFSB100MHzのCPUも豊富に選択肢がある訳だし)。

 ただ、64bit PCIが利用できるのは440BXや440GXなどにはない魅力で、Ultra160などのSCSIカードと組み合わせて利用したいユーザーには有望な選択肢と言えるだろう。そうしたユーザーであれば、メモリの選択にだけは注意して本製品をチョイスしてみるのも悪くないだろう。

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【1月22日号】SUPERMICRO製i840搭載マザーボード「PIIIDME」が発売に
DIMMと66MHz/64bit PCIをサポートしたDualマザー
http://www.watch.impress.co.jp/akiba/hotline/20000122/i840.html

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(2000年2月3日)

[Text by 笠原一輝@ユービック・コンピューティング]


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ウォッチ編集部内PC Watch担当 pc-watch-info@impress.co.jp