S3 Savage2000搭載ビデオカード「Viper II」登場 |
NVIDIA GeForce256同様、ハードウェアT&Lをサポートするビデオチップとして期待されている「S3 Savage2000」を搭載するダイアモンド・マルチメディア・システムズのビデオカード「Viper II Z200」が、'99年末秋葉原に登場した。製品の登場はライバルのGeForce256搭載製品にかなり先を越されてしまったものの、ハードウェアT&Lをサポートするビデオチップということで発表時点からかなり注目を集めていたこともあり、そのパフォーマンスは多くの読者も気になるのではないだろうか。そこで今回は、このViper IIを取り上げ、そのパフォーマンスを検証してみることにしよう。
■ハードウェアT&LをサポートするSavage2000
まずはじめに、Viper IIに搭載されているビデオチップ「Savage2000」についておさらいしておこう。
「Savage2000」は、S3が満を持して送り出した128bitエンジンの最新ビデオチップである。最大の特徴は、NVIDIAの「GeForce256」同様チップにジオメトリ演算機能(いわゆるハードウェアT&L)を内蔵しているという点だ。Savage2000ではこのジオメトリ演算機能のことを「S3TL」と呼んでいるが、実質的な機能はGeForce256のハードウェアT&L機能とほぼ同じと考えて良い。最大8個の光源を扱うことができ、従来CPUで行なっていたジオメトリ演算処理をより高速に処理できるようになるため、高い3D描画パフォーマンスを実現できる。
Savage2000の機能についてはS3TLに話題が集中しているが、それ以外にも特徴がある。
まず、1クロックで4つのテクスチャ処理を同時に行なえる「Single pass QuadTexture」エンジンを搭載することで、マルチテクスチャ能力が非常に高くなっている。また、従来のSavageシリーズでもおなじみの、S3独自のテクスチャ圧縮技術「S3TC」ももちろんサポートしている。こういった機能によって、従来よりも非常に高いレンダリング性能が実現されているという点もS3TLに並ぶ大きな特徴といっていいだろう。さらに、DVDアクセラレート機能は従来にも増して磨きがかかり、フルモーションでのDVDビデオ再生を可能としている。
内蔵するRAMDACは350MHz、ビデオメモリは最大64MB搭載可能で、利用可能なメモリはSDRAM、DDR SDRAM、SGRAMで、AGP 2Xおよび4Xをサポートする。
ところで、Savage2000は約1,100万個のトランジスタによって構成されている。これは、GeForce256のトランジスタ数2,300万個と比較して半分ほどしかない。もちろん、トランジスタ数が少ないからといってパフォーマンスが低いとは断言できないが、これだけの差があるとやはり不利といわざるを得ないだろう。
このSavage2000を搭載するビデオカードとして登場したのが、ダイアモンド・マルチメディア・システムズの「Viper II」である。カード上に搭載されているSavage2000チップは大きなヒートシンクに覆われておりその姿を見ることはできない。ビデオメモリは32MBで、SAMSUNG製の64Mbit SDRAMチップが4個搭載されている。映像出力端子はアナログRGBに加えて、コンポジットとSビデオ出力端子も用意されている。
赤丸を付けた部分がカード上に用意されているジャンパ。このジャンパ3つに付属のジャンパブロックを取り付けると、AGP 4X対応となる |
■Viper II付属のドライバはS3TLをサポートしていない
既に発売から時間が経過しているため、多くの読者のみなさんがご存じのことと思うが、現在発売されているViper IIに付属しているビデオドライバは、Savage2000のS3TLをサポートしておらず、Savage2000の最大の特徴であるジオメトリ演算機能が利用できない。
Savage2000の最大の特徴が活かされていないということで、失望したユーザーも多いことと思うが、もちろん発売元のダイアモンド・マルチメディア・システムズは、時期こそ不明であるが、近い将来S3TLをサポートしたドライバの供給を予定している。また、現状でハードウェアT&Lをサポートするソフトは、一部ベンチマークソフト以外にほとんどなく、実際に各種3Dソフトを利用する上でハードウェアT&L機能が有効に働くことはほぼ皆無であるということを考えると、それほど失望するようなことではないだろう。
ただし、ハードウェアT&Lをサポートするソフトが多数登場するようになってもS3TLをサポートするドライバが用意されないとしたら、大きな問題となることは間違いない。
■パフォーマンスにはやや不満が残る
では、3D Blaster GeForce Proを扱ったときと同様の条件で行なったベンチマークテストの結果を見ていくことにしよう。ちなみに、前回はVoodoo3 3500のテストが正常に行なえなかったが、今回Coppermineを利用した場合の不具合を修正されたVoodoo3 3000用のドライバが用意されたため、同時にVoodoo3 3000でもテストを行なった(Voodoo3 3500用の新ドライバはまだ用意されていない)。
○2D描画パフォーマンス
2D描画パフォーマンスの測定は、従来通りZiff-Davis,Incの「WinBench 99 Version 1.1」に含まれる「Business Graphics WinMark99」と「High-End Graphics WinMark99」を利用する。1,024×768ドット、リフレッシュレート85Hz、16bitカラーモードと32bitカラーモードで測定した。
Business Graphics WinMark 99 | High-End Graphics WinMark 99 | Business Graphics WinMark 99 | High-End Graphics WinMark 99 |
|
---|---|---|---|---|
1,024×768ドット16bpp | 1,024×768ドット32bpp | |||
Viper II | 262 | 580 | 235 | 659 |
3DBlaster GeForce Pro | 295 | 838 | 293 | 830 |
3DBlaster GeForce | 294 | 835 | 285 | 827 |
SPECTRA 5400 PE | 294 | 835 | 286 | 824 |
Millennium G400 | 296 | 848 | 287 | 831 |
RAGE MAGNUM | 249 | 785 | 211 | 755 |
Voodoo3 3000 | 269 | 787 | 260 | 777 |
結果を見ると、Business Graphics WinMark99の結果はほかのビデオカードと遜色ないが、High-End Graphics WinMark99の結果はかなり劣っている。結果にこの程度の差が生じるということは、アプリケーションによっては動作パフォーマンスに体感差が生まれる可能性も十分に考えられる。最新ビデオチップにしてはやや物足りない結果と言わざるを得ないだろう。
○Direct3D描画パフォーマンス
次に、Direct3Dベースでの3D描画パフォーマンスだ。MadOnion.comの「3DMark2000」と、Ziff-Davis,Incの「3D WinBench 2000」を使用し、1,024×768ドットと1,280×1,024ドットの16bitおよび32bitカラーモードにおけるパフォーマンスを測定した。
【3DMark2000/3DMark】
1,024x768ドット 16bpp | 1,024x768ドット 32bpp | 1,280x1,024ドット 16bpp | 1,280x1,024ドット 32bpp | |
---|---|---|---|---|
Viper II | 2,210 | 1,886 | 1,427 | 1,136 |
3DBlaster GeForce Pro | 4,539 | 3,481 | 3,247 | 2,188 |
3DBlaster GeForce | 3,918 | 2,651 | 2,723 | 1,619 |
SPECTRA 5400 PE | 3,256 | 2,420 | 2,226 | 1,389 |
Millennium G400 | 2,718 | 2,287 | 1,864 | 1,369 |
RAGE MAGNUM | 1,432 | 1,104 | 895 | 654 |
Voodoo3 3000 | 2,770 | d/s | 1,865 | d/s |
【3D WinBench 2000/3D WinMark 2000 (fps)】
1,024x768ドット 16bpp | 1,024x768ドット 32bpp | 1,280x1,024ドット 16bpp | 1,280x1,024ドット 32bpp | |
---|---|---|---|---|
Viper II | 61.3 | 50.1 | 41.4 | 30.8 |
3DBlaster GeForce Pro | 92.3 | 70.7 | 63.1 | 42.5 |
3DBlaster GeForce | 78.9 | 52.3 | 52.5 | 31.0 |
SPECTRA 5400 PE | 59.7 | 41.5 | 38.9 | 23.5 |
Millennium G400 | 46.4 | 33.2 | 31.1 | 20.0 |
RAGE MAGNUM | 26.4 | 19.4 | 17.9 | 11.6 |
Voodoo3 3000 | 動作せず | d/s | 動作せず | d/s |
まず3DMark2000の結果だが、ほかのカードと比較して結果がかなり悪い。ハードウェアT&LをサポートするGeForce256搭載カードだけでなく、SPECTRA 5400 PEやMillennium G400などにも大きく劣っている。しかし、3D WinBench 2000の結果は、DDR SDRAM搭載の3D Blaster GeForce Proには劣っているものの、SPECTRA 5400 PEやMillennium G400には勝っており、32bitカラーモードでは3D Blaster GeForceに肉薄している。
この結果の違いは、ベンチマークソフトのテスト内容や、どういった機能に重点を置いてテストを行なっているか、といったテスト方針の違いによるものといっていいだろう。例えば、Savage2000が持つマルチテクスチャやテクスチャ圧縮などの技術を利用するかしないかで結果は大きく違ってくる。当然、これは一般アプリケーションにも当てはまることで、Viper IIは、あるソフトでは十分高いパフォーマンスを示すものの、別のソフトではあまり良いパフォーマンスを示さない、といったことが十分起こり得ると思われる。
○DirectX 6.1ベース3Dゲームの描画パフォーマンス
DirectX 6.1ベースの3Dゲームソフトでの描画パフォーマンスは「Turok2:Seeds of Evil」を利用して測定する予定であった。ところが、Savage2000ではTurok2が正常に動作しなかったのだ。どうやらビデオドライバに問題があるようなのだが、米Diamond Multimedeiaのホームページにも製品版付属より新しいドライバは掲載されていなかったため、このテストは割愛することにする。今後最新ドライバが掲載され、この不具合が解消されたら改めて測定したいと思う。
【TUROK2:Seeds of Evil】
1,024x768ドット 16bpp | 1,024x768ドット 32bpp | 1,280x1,024ドット 16bpp | 1,280x1,024ドット 32bpp | |
---|---|---|---|---|
Viper II | 正常動作せず | 正常動作せず | 正常動作せず | 正常動作せず |
○OpenGLベース3Dゲームの描画パフォーマンス
最後にOpenGLベースのゲームソフト、Quake III Arenaの最新デモ版「Quake III Arena Demo 1.09」を利用して測定した描画パフォーマンスだ。
結果を見ると、SPECTRA 5400 PEやMillennium G400などの結果を凌駕し、32bitカラーモードでは3D Blaster GeForceの結果をも大きく凌駕している。Quake IIIはマルチテクスチャをサポートしており、それが結果を押し上げた大きな要因と考えられる。これだけのパフォーマンスが発揮されるのであれば、十分に満足できるといっていいだろう。
【Quake III Arena Demo 1.09】
1,024x768ドット 16bpp | 1,024x768ドット 32bpp | 1,280x1,024ドット 16bpp | 1,280x1,024ドット 32bpp | |
---|---|---|---|---|
Viper II | 56.4 | 48.5 | 35.9 | 28.6 |
3DBlaster GeForce Pro | 82.9 | 60.7 | 52.5 | 32.6 |
3DBlaster GeForce | 70.1 | 40.9 | 38.7 | 23.0 |
SPECTRA 5400 PE | 46.6 | 34.2 | 28.9 | 19.4 |
Millennium G400 | 39.7 | 32.9 | 24.9 | 18.8 |
RAGE MAGNUM | 23.7 | 17.8 | 14.9 | 9.7 |
Voodoo3 3000 | 42.4 | d/s | 26.5 | d/s |
■今後のドライバの更新に期待
ベンチマークテストの結果は全体的に芳しくないという印象が強かった。今回の結果がドライバの未熟さによるものなのか、チップの持つパフォーマンスがこの程度のものであるためなのか、現段階ではまだ何とも言えない。少なくとも、S3TLをサポートするドライバが登場するまでは、その判断を下すことは控えたいと思う。ただ、S3TLをサポートしているということをチラシなどで大々的に宣伝しておきながら、結局S3TLをサポートするドライバを付属せずに発売するというのは、メーカーとしてあまりほめられたことではないだろう。一刻も早く、S3TLをサポートするドライバの用意をお願いしたい。
しかし、一部のテストでは、Savage2000の持つパフォーマンスの片鱗を伺い知ることができた。GeForce256搭載カードの結果を上回る部分も存在しているということに加え、販売価格が2万円ほどと、GeForce256搭載カードよりも低く抑えられていることなどを考えると、十分競争力を備えた製品であるといってもいいだろう。
□AKIBA PC Hotline! 関連記事
【'99年12月25日号】Savage2000搭載のビデオカード「Viper II Z200」英語版が発売
http://www.watch.impress.co.jp/akiba/hotline/991225/viper2.html
[Text by 平澤寿康@ユービック・コンピューティング]